最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第六十六話アルー奪還作戦

バルーン平野迎撃戦より1週間後 リュウセイ基地 会議室

「アルーの奪還!?」

 

「えぇ。これを見てください」

 

この日、リュウセイ基地にはムーの西部方面軍の重鎮と皇国軍の重鎮が揃って会議を開いていた。ムー側は基地司令のパーマーの他、キールセキ駐屯地司令ホクゴウ、マイラス、西部方面軍航空団総司令ガリュー、西部方面軍総司令カサダラといった面々が。皇国側は神谷以下、今回編成された戦闘団の司令を務める村今、下山、栗森、派遣航空隊司令上村と言った面々が参加している。

 

「これまではアルーとキールセキを結ぶ鉄道路線が、アルーからの避難民輸送時に破壊されていました。しかし現在は完全に復旧しています。これを使い、アルーへ乗り込むのです」

 

この作戦は下山の考えた作戦である。下山は元は機甲部隊上がりなのだが、それ故か戦車や重装甲の兵器を運用させると本当にうまいのだ。

 

「しかし鉄道では、レールを破壊されればそれまでですぞ?」

 

ガリューがそう指摘する。前にも話した通り、列車はレールが無くては動けない。流石の皇国とて、銀河鉄道よろしく空は飛べない。

 

「列車は我々の持ち込んだ、装甲列車『アイアンレックス』を使用します。この列車は様々な武装を搭載しており、レールを破壊される前に敵を殲滅する事が可能です。尤も、爆薬でも仕掛けられていたらそれまでですが。

この列車はあくまで強襲要員。本隊は空路で輸送し、空洞山脈を超えて展開します。一部はヘリボーンによる、強襲を敢行しますがね」

 

「だとすると、またそちらだけで行われるつもりか?」

 

前回のアルーで神谷と少し揉めたホクゴウが、案の定噛み付いてきた。だがこれは、当然の反応でもあるだろう。

 

「いえ、今回は其方との共同作戦としたいと思っております。流石に空洞山脈超えは大変ですので我々の航空機で行いますが、以降の陸上戦は寧ろ其方に矢面に立って貰いたいと考えています。今回、我々は後方からの支援や前線での撹乱に重きを置こうかと」

 

この一言にムー側はザワついた。ムー単独では勝てないだろうが、皇国からの支援があれば勝てるかもしれない。これまで我が物顔でこの辺り一帯を闊歩していたグラ・バルカス帝国に、一泡吹かせられる機会が漸く巡ってきたのだ。乗らない手はない。

逆に皇国としても、そろそろムー統括軍に恩を売っておきたいのだ。流石に「靴輪を並べて共に戦おう」では、練度以前に戦い方が違うので無理である。だがこちらが支援に回れば、恐らくムーでも倒せる筈だと考えたのだ。ムーは「自国の軍で領地を奪還した」という事実が得られ、皇国は資源の節約になる。ウィンウィンなのだ。

 

「そうとなれば、我々としても異存はありません。ねぇ、カサダラ大将」

 

「あぁ。我が軍の戦い、とくとご覧頂きたい。それに例の新兵器を、こちらに少数だが回せて貰える事になったのだ。皇国の皆様方、これまでの我らとは一味違いますぞ」

 

「それはそれは。頼もしい限りです」

 

この後、更に詳細を詰めていき会議は終了した。作戦としてはまず空洞山脈を空路で突破し、陸上部隊を展開。そのままアルーへと侵攻。侵攻してる間に秘密裏に、特殊作戦群二個分隊が偵察と陽動撹乱攻撃を行う。

これに続き神谷戦闘団とアイアンレックスが突入し、市街を混乱させて本隊が市内に突入。街を開放し、ついでに付近のFOB4ことドーソン空軍基地も開放する手筈となっている。

 

「それにしても、これ行けるんですかね?」

 

「行けんじゃないの?一応しっかり準備はしてるっぽいし、俺達は最精鋭の神谷戦闘団だぞ?これ位やれなくてどうする」

 

 

参加兵力

大日本皇国軍

神谷戦闘団

・46式戦車 4両

・34式戦車I型 15両

・34式戦車II型 6両

・34式戦車改 8両

・47式指揮装甲車 20台

・44式装甲車

※イ型 120台

 ロ型 80台

 ハ型 90台

 ニ型 15台

 ホ型 15台

 へ型 40台

 ト型 50台

・39式偵察車 20台

・40式小型戦闘車 258台

・44式230mm自走砲 12門

・49式対空戦闘車 30台

・WA1極光 1000機

・AH32薩摩 15機

・OH8風魔 20機

・VC4隼 230機

・VC5白鳥 150機

・AVC1突空 150機

 

 

村今戦闘団

・34式戦車I型 18両

・34式戦車II型 5両

・47式指揮装甲車 10両

・44式装甲車

※イ型 280台

 ロ型 150台

 ト型 95台

・39式偵察車 40台

・40式小型戦闘車 358台

・WA1極光 1500機

・UH73天神 230機

・CH63大鳥 90機

・AH32薩摩 60機

 

 

下山戦闘団

・46式戦車 15両

・34式戦車改 30両

・36式戦車 45両

・49式対空戦闘車 80台

・47式指揮装甲車 20台

・44式装甲車

※イ型 300台

 ハ型 90台

 ホ型 30台

 ト型 50台

・39式偵察車 20台

・40式小型戦闘車 258台

 

 

栗森戦闘団 

・47式指揮装甲車 8台

・44式装甲車

※ニ型 24台

 ホ型 5台

 ト型 30台

・39式偵察車 15台

・40式小型戦闘車 258台

・44式230mm自走砲 24門

・96式160mm榴弾砲 36門

・53式多連装ロケット砲 16両

・49式対空戦闘車 30台

 

 

陸軍

・装甲列車『アイアンレックス』

 

 

空軍

・MQ3彩雲 2機

・VC4隼 120機

・VC5白鳥 70機

・C3屠龍 30機

・AC180迅雷 4機

・第28航空隊『ガルーダ』

・第66飛行隊『ガルム』

・第122戦術飛行隊『サイクロプス』

・第124戦術飛行隊『ストライダー』

・第707特殊戦術飛行隊『スカーフェイス』

 

 

特殊作戦統括局

・特殊作戦群(SFGp) 二個分隊

・特殊航空輸送隊『夜鷹』 MH4雀 2機

 

 

 

ムー

陸軍

・軽戦車クーロン*1 120両

・中戦車キャスター*2 40両

・ハノマーク装甲兵員輸送車*3

※I型 180両

 II型 90両

・イーデン野戦高射砲*4 30門

・プリドゥエン自走砲*5 150両

 

空軍

・戦闘機パシフィカ*6150機

・急降下爆撃機ルーデル*7 60機

・襲撃機エアラコ*8 50機

・駆逐機テーラー*9 20機

・バラクダル 94機

 

 

リュウセイ基地を飛び立ったVC4隼とVC5白鳥は、ムー陸軍が集結しているキールセキ駐屯地を目指す。隼に歩兵や車両を、白鳥には戦車を積載して、積載の完了した機体から随時、集結地点の空洞山脈西方1.5km地点に降ろす。これを数時間繰り返す事になる。

集結地点に先行して下山戦闘団の機甲部隊が警戒に当たっており、更に同じくリュウセイ基地からガルム隊とロングレンジ部隊が先行しており、集結地周辺を哨戒飛行している。これで例え迎撃部隊が来たとしても、問題はないだろう。部隊の輸送が90%程終わると、キールセキの操車場からは列車が発進する。

 

「アイアンレックス、発進!!」

 

ブフォォォォォォォォォォォォォン

 

獣が唸るような低い汽笛と共に、アイアンレックスが駅を出ていく。時を同じくして、キールセキ駐屯地からも特殊航空輸送隊『夜鷹』の運用する真っ黒なMH4雀が、特殊作戦群を乗せて飛び立った。

 

「今回の我々の任務は、攻撃前の偵察と攻撃誘導にある。アルーでは占領後、多数の民間人が捕虜になっており、民間人への被害は限りなくゼロにしたい。その為、民間人の収容場所を突き止め、それを他部隊に共有する。これが第一の任務だ。

第二に、敵陣地や敵の防衛戦力の把握。これは民間人より優先度は低いから、片手間で問題はない。

第三に、陽動。これは適当な燃料集積地でも火薬庫でも、そう言ったところに爆弾仕掛けるなり、家を燃やすなりして敵の注意を背けさせろ。

第四に、攻撃誘導。本隊の攻撃と同時に、我々は弾着観測や迅雷の攻撃誘導を行う。以上だ」

 

隊長が最後の確認として、任務内容をもう一度全員に無線で共有する。雀はアルー近くの森林に着陸し、特殊作戦群を降ろすと即座に撤収した。

 

「行くぞ」

 

隊長の短い命令に、全員が陣形を素早く組んでアルーを目指す。暫く進むと、歩哨の2人組がいた。

 

「にしても、昨日は気持ちよかったな」

 

「あぁ。1人しゃぶらせすぎて、窒息して逝きやがったがな。あのメスの死に様は、マジで傑作だったぜ」

 

大方、昨日の夜は捕えた民間人女性でお楽しみだったのだろう。コイツらに生きる価値はないが、情報源としての価値はある。

 

「今日は誰にハメッ!?」

 

「おいどッ!!」

 

「動くな、喉切るぞ」

 

「兄ちゃん、俺達みたいな連中いるかもしれねーのに話してる場合か?」

 

素早く2人の背後に回り込んで、首筋にナイフを突き付けて口を押さえる。そのまま茂みの奥まで引き摺り込み、簡単に尋問して詳しい情報を吐いてもらう。

 

「基地の構造、兵力を言え」

 

「誰が言うか!」

 

「そうだ!!」

 

「あっそ」

 

捕虜の目の前でもう1人の喉を、ゆっくりジワジワと切って殺す。

 

「基地の構造と兵力は?」

 

「い、言うので殺さないでください.......」

 

目の前で同僚をジワジワと殺されれば、そりゃ言うしかない。

この捕虜が言うには、アルー中心部に民間人は固められているらしい。通称『娼館』と呼ばれる建物が中心部に6軒あり、ここに女性が拘束されている。そこから連れ出された女性は、元宿屋だったり家屋だったり、場合によっては屋外なんかで慰み者にされる。さらに中心には『嘆き屋』と呼ばれる施設があり、ここでは妻や彼女が拘束されている男がおり、その目の前で妻や彼女が犯されるの見せられる場所もあるのだと言う。

この他、ある程度の防衛施設も判明した。

 

「さ、さぁ、早く解放してくれ。はなしただろ?」

 

「あぁ。すぐに解放してやる」

 

そのままゆっくりと首筋を切って、約束通り解放してあげた。

 

「どうだ、解放されただろ?テメェの肉体から魂が」

 

「お前達、まずはこの監視所を落とすぞ。アルファチーム、前進しろ。ブラボーチーム、狙撃で支援しろ」

 

ここで部隊を2つに分け、アルファチームはそのまま前進。ブラボーチームは近くの高台から、マークスマンとして支援を開始する。43式小銃はその特性上、高倍率スコープやスタンドを装備するだけでマークスマンライフルに早変わりするのだ。

因みに32式戦闘銃も同様にマークスマンには出来るが、こういう特殊作戦に必須となってくるサプレッサーを装備できないので不向きである。いや、一応装備はできる。だが元の音がデカ過ぎて、殆ど意味をなさないのだ。

 

『こちらブラボー、目標地点に到着。蝶による偵察を開始する』

 

「アルファ了解」

 

ドローンによる偵察により、進路上の敵を哨戒。排除できる敵は適宜、ブラボーチームが狙撃で排除。アルファチームはその間に監視所へと向かう。

 

「あー、なんかムシャクシャするぜ」

 

「嘆き屋行けば?」

 

まさか攻撃されるとは思っていなかったのだろう。監視所の兵士達は、雑談に興じたりポーカーしてたりして暇潰しをしているらしい。そんな連中、特殊部隊からしてみればカモだ。即座に射殺されて、監視所を占領されてしまう。

 

「このまま爆弾を仕掛けに行くぞ。続け」

 

特殊作戦群がC5を仕掛けに向かっていた頃、ドーソン空軍基地の定時哨戒機が接近中のアイアンレックスを発見。直ちに爆装した攻撃隊が離陸した。

 

「隊長!10時の方向より、敵編隊接近!!」

 

「迎撃用意!搭載機を全て上げろ」

 

「了解!!」

 

MQ5飛燕が射出され、攻撃機編隊へと襲い掛かる。AIである以上は機体制御が単調になりやすいが、それでもマシンスペックに圧倒的な差があれば問題にならない。

編隊が飛燕に踊らされてる間に、アイアンレックスは自身の射程圏内まで前進。迎撃を開始する。

 

「迎撃開始!!」

 

まさか、いきなり列車から濃密な弾幕が飛び出すとは思っていなかったのだろう。編隊は一気に混乱に陥り、連携が途絶える。

 

「あれ列車だろ!?なんだこの攻撃は!!!!」

 

「列車じゃねぇ!戦艦だ、ありゃ戦艦だろ!!!!」

 

「あり得ない!!!!」

 

不運というのは続く物で、こんな事言ってる間に、エース部隊まで飛来したのだ。しかも、よりにもよってエース級の中でも最も最古参のこの部隊が。

 

『フェニックス、エンゲージ』

 

『スラッシュ、エンゲージ』

 

『エッジ、エンゲージ』

 

まさかの『皇国の不死鳥』の通り名を持つフェニックスが指揮するエース級部隊、スカーフェイス隊が来てしまったのだ。この部隊は皇国空軍初のエース級部隊であり、その練度は未だにトップクラスである。

 

『こちらキーノート、敵の数は大半が残っている。全機撃墜しろ』

 

『またイージーミッションだな!』

 

『スラッシュ、そんなこと言っていると足元掬われるわよ』

 

『そうだぞスラッシュ、お前がそんなこと言ってる間にフェニックスは4機落としている』

 

『全くいつもながら、文字通り不死鳥っぷりだな』

 

スカーフェイス隊の前に、グラ・バルカス帝国の航空機はなす術なく堕とされていく。ここまで大騒ぎしていれば、アルーを占領する兵士達の関心はそっちへと向く。お陰で特殊作戦群の作戦が想定より早く終わり、上空の神谷戦闘団へ合図を送る。

これを受けた神谷達のAVC1突空は、直ちに高度を下げ強襲へと入る。

 

「突空から通信来ました」

 

「それじゃ、起爆!」

 

「起爆!!」

 

近くの燃料タンクに仕掛けたC5を起爆し、火柱が上がる。ついでに近くのパイプにも引火して、そっちでも炎上してるので一気にアルー市街は大混乱である。

 

「ブラボーチーム、戦闘団の華道を作ってやってくれ」

 

『了解。対空火器を潰します』

 

ここで隊長、粋な事をしてくれる。本来であれば対空火器は突空がミサイルや機関砲で潰すのだが、先に潰す事にしたのだ。こうすれば突空の弾薬を温存できるので、より部隊の支援に全力を注げれる。

 

「HQ、こちらブラボーチーム。攻撃支援を要請する」

 

『こちらHQ、了解した。目標をマークしてくれ』

 

今回作戦に参加しているMQ3彩雲には、パイロンにSGB1暗鬼を搭載している。この爆弾は滑空爆弾の一種であり、高い誘導性能を誇る。

今回は敵の主力高射砲となる、八八式七糎半野戦高射砲によく似た高射砲を破壊してもらう。

 

「ターゲットをマーク」

 

『drop ready now』

 

投下された暗鬼は正確に高射砲を全て破壊し、残る対空火器は機関砲だけとなった。対空機関砲では、突空の脅威とはなり得ない。寧ろ撃たれたら撃ち返す、位の事をやってのける。

 

「あら?特戦群の皆さん張り切ってるな」

 

「ホントだ。事前情報にあった高射砲が全部破壊されてますね。後は多分、25mmの機関砲だけでしょう」

 

「なら突空には脅威にならんな。さっさと掃除しちまおう」

 

知っての通り、突空には数々の機関砲が搭載されている。それもドアガンでお馴染みのM134ミニガンやM2の様な、一応人間向けの口径ではなく、20mmと30mmのバルカン砲が何門も搭載されているのだ。こんな大きさでは、簡単に機関砲ごと破壊し尽くされてしまう。

 

「対空戦闘!!目標右30°!仰角50°!」

 

「対空戦闘用意良し!」

 

「撃て!!」

 

25mm三連装機銃に良く似た銃座が、神谷の乗る漆黒の突空を狙う。そのまま指揮官が指揮棒で勢いよく刺し、兵士がトリガーとなるハンドルを回して撃つ。

 

ダダダン!ダダダン!ダダダン!

 

「ま、全く効いてないぞ!!」

 

「撃ちまくれ!!」

 

「弾込めぇぃ!!!!」

 

だが機関砲位で倒せる程、柔な装甲はしてない。AVCのAは『Armored』のA。伊達に『重装突撃輸送機』や『アサルトガンシップ』の異名は持っていない。

突空はそのまま旋回し、撃ってきた機関砲の方を向き、機首の30mmバルカン砲を浴びせる。

 

「周辺はクリア!!いつでもどうぞ!!!!」

 

「野郎共、行くぞ!!」

 

神谷を先頭に、隊員達がアルーへと降り立つ。そのまま目に付く敵は容赦なく殺して周った。

時を同じくして、アイアンレックスが強引にアルー駅に飛び込んで要塞となる。

 

「応戦用意!!」

 

「全客車、装甲板下ろします!」

 

「対空火器、対地モードに変更。射撃開始!!」

 

アイアンレックスの客車の窓は、戦闘時には銃眼付きの装甲シャッターが降りてくる。ここから中の兵士が安全に、個人携行火器で応戦ができる様になっている。更に小型PLSLバルカン砲が片側に40基、車体上部側面に搭載されており、本来は対空兵装だが弾幕を張って敵を近づけさせない事もできる。

因みに今回、砲塔車はI型とII型を引っ張ってきているが、流石にI型の250mm三連装砲を駅構内でぶっ放せないので、比較的小口径の火器で頑張っている。え?砲塔車III型の46cm砲はって?460mmの大口径砲なんざ使えば、街が民間人や味方ごと吹っ飛びかねんので連結すらしていない。

 

「装甲列車だ!!」

 

「応戦しろ!!!!」

 

ドカカカカカカカカカカ!!

ピュピュピュピュピュピュピュ!!

 

「遮蔽物に隠れろ!!」

 

「ダメだ!遮蔽物ごと貫通してく」

 

「クソッ!!!!!!兎に角下がれ!!戦車だ!戦車を呼べ!!」

 

駅構内に入ってきてすぐは手榴弾なんかをぶん投げてはいたが、34式戦車の砲撃に耐えうる装甲の前には手榴弾程度では火力が足りない。そればかりか、アイアンレックスは火力に物を言わせて隠れている遮蔽物ごと破壊して撃ってくるので打つ手がない。

もしここにパンツァー・ファウストやバズーカでもあれば、また話は違ったかもしれない。だがグラ・バルカス帝国の兵士に、そんな便利アイテムはない。精々が対戦車ライフルと対戦車グレネード、後は擲弾筒位だろう。

 

「今だ!行けよ、ムーの精鋭さん!!!!」

 

「感謝する!!」

 

ここで更にムーの精鋭部隊、『最硬』の第五師団隷下、第309突撃連隊が客車から飛び出した。この第309突撃連隊はメインウェポンにムー製AK47であるカラシ自動小銃を装備し、特殊作戦用に開発されたM3っぽい見た目のグリスをサブウェポンとして装備している。

更にRPG2ことカーチェンも一部隊員は装備しており、防具も防弾ヘルメットに防弾アーマーを装備している。勿論ランクはレベルIIIなので、フルサイズのライフル弾でも防ぎ切る。

 

「突撃!!」

 

「マーチングファイア舐めんな!!」

 

「撃ち返せるものなら撃ち返してみろ!!!!」

 

圧倒的弾幕で駅にいた帝国兵は、応戦どころか牽制射撃すら間々ならない。兎に角後方に下がるしかできなかった。

駅構内や市街地では地獄が広がっている訳だが、アルーの入り口でも地獄が始まる。

 

「おい!駅と南方で戦闘が始まったらしいぞ!!」

 

「なに!?ならここもヤバいんじゃねーか!?!?」

 

「そうだ!お前達、ここから本隊が来る可能性がある!!迎撃準備だ!!!!」

 

指揮官が部下達にそう命じると、素早く銃を構えて塹壕や土嚢の裏へと隠れる。だがその様子は、特殊作戦群のマイクロドローンがしっかり捉えていた。

 

「こちらアルファチーム。敵は塹壕に隠れた。砲撃を要請する」

 

『こちら砲撃大隊!了解した!座標を送ってくれりゃ、速達で砲弾をお届けに上がる』

 

「座標はブロックE(エコー)13、X-39、Y19」

 

E(エコー)13、X-39、Y19了解!備えてくれ!!』

 

後方の皇国とムーの合同砲撃陣地から、無数の野戦砲が砲撃に移る。何十門という数の一斉射撃を加えれば、即席の防衛陣地では太刀打ちできない。

 

「初弾命中。続けて3回、効力射を頼む」

 

『了解した』

 

だが、グラ・バルカス帝国とてタダでやられはしない。機甲部隊を出して、迎撃してきたのだ。

 

「敵影、前方より来ます!」

 

「初弾、込め!」

 

「装填完了!!」

 

「撃て!!」

 

てっきりトラックの集団かと思い、初弾は榴弾を込めた。だが何処か、敵の見た目がおかしい。トラックにしては遅いし、何より見た目が可笑しい。トラックであれば箱の様に見えるが、目の前の敵は箱が二個重なっているように見える。

 

「!?接近中の敵は戦車です!!!!」

 

「ムーは戦車を持っていない。とすると、皇国だな。よーし、対戦車徹甲弾、装填!!」

 

「装填完了!」

 

「撃て!!」

 

だがこれは、皇国の戦車ではなかった。ムーの戦車だったのである。今回、皇国の戦車は最後尾にいた。前衛はクーロンだったのだが、クーロンの正面装甲をハウンドの主砲では貫徹できないのだ。一応、2、3回当たれば倒せるのだが。

 

「な!?」

 

「効いてないのか!!クソッ!!!!側面に回り込むぞ!!」

 

知っての通り戦車というのは、側面や背後の装甲というのは薄い。だがそれは戦車初心者のムーでも知っているので、しっかり対策してある。戦車の砲撃で牽制しつつ、別の連中に任せる。それも1番の天敵に。

 

「全機、我に続け!」

 

航空機である。今回はかつてヨーロッパで戦車を破壊しまくった、スツーカとエアラコブラが出張ってきている。勿論スツーカにはジェリコのラッパ機能を、しっかりと実装しているので音が鳴る。1941年以降の生産機には搭載されてなかったらしいが、ムー技術陣の良い言い方をすれば粋な計らい、悪く言えば悪ふざけで搭載が決まったのだ。

エアラコブラも本来は大型機の迎撃目的で開発されたのに、レンドリースされたソ連では戦車破壊しまくる方向にシフトチェンジして大活躍している。因みに開発元のアメリカでは結構冷遇されてたり、何なら機首の37mm砲を魚雷艇乗組員にぶん取られて魚雷艇に移植されたりとか、結構可哀想な機体である。

かつて敵であった2つの機体が、今度は同じ陣営で戦車を破壊しに行くのは熱い展開なのだが、帝国兵からしてみれば文字通り物理的に熱い展開になるだろう。

 

「航空機接近!!」

 

「何!?爆弾が来るぞ!!!!ジグザグ走行とかで、投弾タイミングをずらすんだ!!」

 

確かにエアラコには一応爆弾を搭載しているが、ルーデルには37mm砲を2門搭載している。しかも今回の攻撃方法は、生憎と爆弾よりも37mmで破壊する戦法なので投弾タイミングもへったくれも無いのだ。

 

ダダン!ダダン!

 

「ほ、砲弾です!!あの機体、大砲を搭載してます!!!!」

 

「なんて事だ.......」

 

「車長、指示を!!」

 

「撤退だ。街に撤退して立て篭もるんだ!!」

 

生き残った10両程度が、街へと撤退を始める。だが逆にキャスターとクーロンの砲撃で、数を減らしてしまう。88mmや76mmの主砲の前では、ハウンドの正面装甲は破られてしまう。

それだけではない。この撤退を見ていた特殊作戦群のブラボーチームが、よりにもよってコイツらに攻撃支援を要請してしまったのだ。

 

「こちらブラボーチーム。迅雷へ。門周辺の敵戦車を破壊してくれ」

 

『よし来た任せてくれ』

 

空中にいるAC180迅雷に攻撃要請してしまったのだ。この機体には無数の火器を搭載しているのだが、その誰もが機関砲を除けば真正面から2、3両貫通する位の威力を持つ。それを真上から撃たれたら一溜りもない。

 

ドカカカポポポン!ドカカカポポポン!ドカカカポポポン!

 

一定間隔のリズムで機関砲と榴弾砲を撃っていき、戦車を木っ端微塵に破壊していく。20mm機関砲ですら、真上からでは脅威となる装甲に130mmとか200mmの砲弾が降り注げば、もう見るも無惨な物になる。

というか何なら既に機関砲掃射ですでに破壊されてるのに、そこに砲弾が更に降ってきているので完全なるオーバーキルでしかない。

 

「今だ!!全車、アルーに突撃せよ!!!!」

 

戦車を先頭に、アルー目指して突撃していく。だがそれを許してくれる程、グラ・バルカス帝国だって甘くはない。シリウス型爆撃機を投入して、戦車を破壊しようと試みる。

 

「もうちょい....... もうちょい.......」

 

「させるか!!」

 

ズドドドドドド!!

 

だがそれを、パシフィカが許さない。20mm機関砲4門の洗礼を持って、戦車隊に近付く不埒者にしっかり罰を与える。しかも砲弾に薄殻榴弾という、簡単に言うと威力の高い砲弾を装填しているので、シリウスを穴だらけどころか機体をへし折りに掛かっている。

中にはその洗礼を掻い潜る者もいたが、しっかりゴールキーパーだっているのだ。

 

「敵爆撃機、来ます」

 

「迎撃しろ。機関砲で良い」

 

「了解」

 

キュィィンブオォォォォォォォォォォン!!!!!

 

随伴している49式対空戦闘車、もしくは44式装甲車ト型が迎撃に当たる。ムーは対空戦車を持っていないが、皇国は違う。49式は35mmバルカン砲6門を搭載しており、圧倒的弾幕を持って機体を破砕できる。

ト型も六連装の短距離対空ミサイルを搭載しているので、チャフ、フレアといった妨害手段がない帝国機にはなす術ない。

 

「アルーに突っ込め!!」

 

攻撃隊の攻撃を凌いだ部隊は、そのままアルーに突入。歩兵を展開して、少しずつ帝国兵を中心へ追い立てる。だが中心部には既に、神谷戦闘団と第309突撃連隊が掌握している。

 

「神谷閣下!早く、民間人の救助を!!」

 

「まあ待ってくださいよ連隊長さん。別に中にいるからって、今すぐ死ぬわけじゃない。多分そろそろ敵が来ますから、逆にここで民間人に構ってると流れ弾で死にますよ。なーに、ちょっと中に居るだけで死ぬ確率が減るんだ。気にする事ありません。

とは言え、流石に待つのも飽きたな」

 

なんて言っていると、何も知らない帝国兵達がやって来た。中心部にいる民間人を盾にするつもりなのかもしれないが、それをする為には大量の精鋭達の屍を越えなくてはならない。

 

「お、来た来た」

 

「全員殺せ!!!!」

 

「「「「「おぉぉ!!!!」」」」」

 

「国掛かってる連中は、こうなるから恐ろしいんだわ。よーし、こっちも撃っちゃって。はーい、Fire Fire」

 

圧倒的な弾幕を前に帝国兵はバタバタと倒れ、街道には死体の山ができ血が川の様になっている。

 

「よーし、こんなもんだな。連隊長さん、ドーソンはそっちが攻めますか?」

 

「いえ、我々はこのまま残って民間人を保護します」

 

「了解です。ならこっちは、サクッと占領してきますよ。行くぞ!!!!」

 

ここで神谷戦闘団はドーソン空軍基地攻略の為、基地へと続く街道をジェットパックで飛ぶ。だがすぐに、空港を監視しているアルファチームから連絡が入った。

 

『長官、基地に動きあり。どうやら将官共が逃亡するみたいです』

 

「部下見殺しにして、自分は悠々と敵前逃亡とは中々にふざけてるな。よし、殺そう。マジで殺そう。迅雷で滑走路ごと壊してやれ」

 

『うわぁ、エゲつねぇ。了解です、迅雷でボコボコにします』

 

神谷からのオーダーは直ちに実行に移され、迅雷4機による全力砲撃が行われるも、四式重爆っぽいの3機とアンタレス8機を取り逃してしまった。

 

「あちゃー、逃げたか」

 

「いえ、どうやら追撃隊がいる様ですよ」

 

向上が指差す方向を見ると、ムーのテーラーが全機で果敢に襲い掛かっていた。圧倒的弾幕を前に、四式重爆っぽい機体は瞬く間に火だるまになって落ちていく。だがアンタレスは、その運動性に物を言わせてテーラーに襲い掛かるが、テーラーを追い払うとそのまま逃走した。

 

「逃げましたね」

 

「逃げたな。まあ良いだろ。追いかけるだけ無駄無駄。それより、民間人の救護だ。ここにヘリを降ろして、仮説の救護所にしよう」

 

こうしてアルー奪還作戦は、ムーも皇国も被害を殆ど出さずに終了した。しかしアルーに取り残された民間人の多くは心に傷を植え付けられ、取り残された者の29%が精神に異常をきたす後味の悪い結果となった。

 

 

 

 

*1
クロムウェル巡航戦車を元に製造した戦車で、武装は76mm砲と7.7mm機関銃であり、Mk.IV、Mk.Vに酷似している。ただし日本製のエンジンの搭載により、最大で84kmを叩き出す

*2
M4シャーマン・ファイアフライを元に製造した戦車で、武装は17ポンド砲の代わりに66口径イーデン野戦高射砲を搭載している

*3
ドイツのSd.Kfz.シリーズを元に製造したハーフトラックであり、元ネタ同様大量の派生型がある。この内、装甲兵員輸送車は軽装甲のI型と重装甲のII型に分かれている。荷台を取っ払って迫撃砲や榴弾砲、クレーンを搭載した物もあったりと、その派生型は数知れず。

*4
88mmの高射砲だが、元ネタ同様にしっかり野戦砲としても使える。前述の通り戦車砲にまで流用されており、非公式に『アハト・アハト2世』とか呼ばれてる

*5
キャスターの車体に、イーデンの配備で余りに余りまくって倉庫を圧迫してる105mmイレール重カノン砲を搭載した兵器。自走砲と名を打っているが、一応駆逐戦車として使用できなくもない。

*6
ハリケーンを元にした戦闘機で、武装は20mm4門と強力。装甲や加速ではアンタレスを上回るが、やはり格闘性能ではアンタレスに軍配が上がる。

*7
最早、説明不要の急降下爆撃機。名前から分かる通りスツーカのG型を元にした機体であり、今後魔王が生まれるであろう機体である。

*8
P39Qエアラコブラを元に、武装を37mm機関砲1門、20mm機関砲2門、12.7mm機関砲4門に変更し、更にIL2並みの重装甲を獲得した変態機。この重装備でありながら、速度はエアラコブラに匹敵する。

*9
Bf110のG4を元にした機体で、前方の固定機銃と旋回機銃に12.7mmを採用しており、それぞれ4基と連装1基を搭載している。元ネタ同様、豊富なオプションで様々な任務に対応できる。

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