グラ・カバルの来訪より数日前 リュウセイ基地 会議室
「FOBへの同時攻撃、ですか?」
「えぇ。現在彼らは、ドーソン空軍基地とそこに隣接するアルーを取り返されて浮き足立っております。更に戦略的な面でも、おそらく相手の主力級である機甲部隊をキールセキ防衛時に撃退しています。
この機を逃さず、我々が主体となってこれを撃破。取り敢えず、当面のムーへの被害を抑えます」
この日、神谷はリュウセイ基地司令のパーマー少将と今後の作戦について話していた。先に言っておくが、別にカバルが居るから攻撃した訳ではない。カバルが来たのは偶々であり、後からカバルが居た事を知る事になるのだが、少なくともこの段階ではカケラも知らないのだ。
「具体的な作戦は?」
「FOB2のウィザスター基地には鉄道が敷設されており、例のアイアンレックスを用いれば、恐らく簡単に解放できるでしょう。
FOB3のメーバックス空軍基地はFOB1のバルクルス基地より更に後方ですのでメタルギアを投入して殲滅し、FOB1には空挺強襲を持って落とします」
「空挺降下ではなく空挺強襲ですか?」
「そちらにも、空挺部隊はいるでしょう?」
「えぇ。第212特別機動空挺大隊ですね?」
第212特別機動空挺大隊とは、ムー統括軍における精鋭部隊である。本来であれば陸軍、海軍、空軍、海兵隊のいずれかに所属する。だが彼らはその特性上、陸軍の部隊でありながら管轄が統合参謀本部直下となり、広域上は統括軍の管轄となる特殊部隊である。『空挺』の名の通り、現実における第一空挺団やSASの様に、空からパラシュートを持って敵陣に降下する部隊である。
「空挺強襲は更に上を行く特殊作戦です。相手の防空設備や高脅威の地上目標、例えば戦車や歩兵戦闘車を先に攻撃し、間髪入れずに空挺降下とヘリボーンを行って敵陣を強襲。そのまま乱戦に持ち込む、私の編み出した神谷戦闘団の常套戦法です」
「その、勝てるのですか?」
「でなきゃ、こんな無謀な作戦は提示しませんよ。奴らの防空火器の場所は把握済み。ここを誘導爆弾で破壊してやるだけですから、何も難しいことありません」
「.......良いでしょう。貴方が言うのであれば、すぐに本部に問い合わせてみましょう。こちらも空挺隊を出した方が?」
「その方が、そちらもポーズが付けられるでしょう?」
欲を言えば、出張ってきて欲しくない。だがムーにはムーなりに、ポーズを付けさせてやる場面が必要だ。何よりこうやって恩を売っておけば、今後何かの形で返ってくるかもしれない。
結果として、今回のバルクルス基地への空挺強襲作戦は第212特別機動空挺大隊、そして、もう一つの精鋭部隊である第501軍団が投入される事になった。
翌日 リュウセイ基地 格納庫
「貴方が、皇国の神谷元帥殿ですかな?」
「ん?あぁ、そうだが?」
「初めまして。私は第212特別機動空挺大隊の指揮官、アレック・マクレガー。今回はよろしくお願いします」
そう言いながら、マクレガーは手を差し出してくる。因みに何故か腰にレイピアを吊り下げており、服も軍服ではなく西洋の軽鎧の様な見た目の服を着ている。
「こちらこそ初めまして、マクレガー将軍。お互い、生き残りましょう」
そう言いながら、神谷も手を差し出す。2人が硬い握手を交わす中、神谷の脳内ではマクレガーの事を思い出していた。
(アレック・マクレガー大将。第七兵団の指揮官であり、第212特別機動空挺突撃はここの精鋭から構成されている。俺と同じ、指揮官最前線型とでも言うべき方式を採用しており、レイピアの腕も立つが基本的に魔法を使って戦うんだったな)
「そうだ、もう1人の将軍もご紹介致します。第501軍団の指揮官、ジェイデン・スカイウォーカー。そして副官のアシェリー・ドーソン」
「スカイウォーカーです」
「アシェリーです。よろしくお願いします」
「あ、あぁ。こちらこそ」
まるでこの編成、何処ぞのスターウォーズである。因みにスカイウォーカーは男で、アシェリーは女である。
暫く雑談していると、ブリーフィングの時間となったので、すぐに立体投影装置を使って作戦を説明する事になった。
「今回の作戦は至ってシンプル。いつもの空挺強襲だ。とは言え、今回はお客さんがいるからな。丁寧に説明しよう。
手始めに航空隊が精密爆撃等を用いて、対空砲と戦闘機を破壊。対空目標の消失が確認され次第、神谷戦闘団はヘリボーン。白亜衆は空挺降下を敢行し、バルクルス基地に降下。降下後は各個に基地を制圧する。以上だ。
今回は第212特別機動空挺大隊は白亜衆と共に空挺降下、第501軍団は神谷戦闘団と共にヘリボーンで降下。降下後はそちらの好きに暴れてもらいたい。我々が合わせる」
「いいのですか?」
「問題ない。マクレガー将軍とスカイウォーカー将軍の戦績も、部隊の戦績も確認させてもらっている。それから、共に横で戦うと言うなら俺に敬語は不要だ。戦場に立つのに敬語使われるのは、何だかむず痒くていけない」
この発言に3人は驚いた。敬語は不要で良いというのは、軍人としてはかなり異質な命令であった。本来軍隊とは、上下の差がハッキリと出る。階級一つで全て変わる世界であり、上位階級者に敬語で話さないのは言語道断ですらある。にも関わらず、それを要らないと言うのはかなり珍しい。
「何か質問は?」
「なら、神谷将軍。敵の戦力はどのくらいなの?」
「歩兵が恐らく一個師団、残りは職員だろうな。別に戦車とかもないだろうし、銃撃ちまくれば倒せる筈だ」
「装甲車はどうなんだ?」
「居ないだろうが、居ても破壊するだけだ」
偵察では警備の歩兵こそ確認されたが、装甲車は確認されていない。居ても精々、輸送トラックに機関銃乗せたくらいの代物だろう。例え普通の歩兵戦闘車や戦車が居たとしても問題はない。この後も簡単に質問に答えつつ、二時間ほどでブリーフィングは終了。
翌日には作戦が始まり、前回の最後の部分に繋がるのだ。では、まずは他戦区の戦闘を見てみよう。まずはFOB2のウィザスター基地の戦いから。
「それにしても、まだ発足して間も無いってのに引っ張り凧だな」
「あぁ。上も人使いが荒いよな」
「あら、それだけ私達が期待されてるってだけじゃない?」
装甲列車『アイアンレックス』の乗員達が、作戦中だが和気藹々と喋っている。大体話し終えたのを見計らって、隊長が背後から「私語は慎め」とハスキーな低いダンディボイスで咎める。
「隊長、偵察機からの情報です。敵は線路付近に野戦砲を配置し、こちらに射撃を加えようとしていると」
「.......優木、ここから狙えるか?」
「大丈夫です!」
「よし。主砲砲撃戦、主砲回頭!敵、野戦砲陣地に固定!!」
後部車両の砲塔車I型が起動し、上部砲塔は仰角を上げ、側面砲塔は砲塔が上方へ回転して照準をセットする。
「照準良し!」
「撃てぇ!!」
9発の250mm弾が飛び出し、陣地目掛けて飛翔する。野戦砲や対戦車砲の様な牽引式砲は、一定の威力を叩き出す代わりに陣地転換が極端に遅いという欠点がある。これが自走砲なら話は別だが、陣地転換を行うにはトラクターに牽引してもらう必要がある。
それにそもそも移動できたとしても、一式機動四十七粍速射砲モドキ程度の性能しかない野戦砲ではアイアンレックスは止まらない。
「野戦砲に命中!」
「続けて砲撃!!」
更に第二射、第三射と続く。第五射まで撃つと、隊長が新たな命令を飛ばす。
「緑川!アイアンレックス、突撃!!」
「了解!」
ブオォォォォォォォォン!!!!
出発時になる獣が唸る様な低い汽笛とは違い、今度は少し高めの「機関車の汽笛」と聞いて思い付くであろう音の汽笛を鳴らしながら増速。ウィザスター基地へと突っ込む。
「優木!歩兵への対処準備!!」
「了解!対空機関砲、スタンバイ!対地上目標へ!!」
本来なら対空兵装だが、砲塔車や対空車の機関砲を持ってすれば戦車でも倒せる。圧倒的な弾幕を前に、歩兵は為す術なく防衛戦を突破されてしまう。
「隊長!進路上に機関車です!!」
「優木!!」
「はい!!460mm砲、射撃準備!!」
列車の最後尾3両に搭載された460mm砲が展開し、合体して大砲となる。最後尾には弾倉と装薬、真ん中には機関部、先頭には砲身がそれぞれ格納されており、射撃時は機関部に他の2つが合体して、460mm砲となるのだ。
「射撃コンピューター起動、照準よし!!」
「発射!!」
「発射ぁ!!!!」
車体を揺らす衝撃と轟音と共に、直径46cmの巨大砲弾が飛び出す。単なる普通の列車では、この巨大質量物体を防ぐことはできない。
砲弾は正確に命中し、機関車は爆発。進路が開いた。
「このままホームに突っ込め!!」
そのまま無理矢理ホームへと突入して停車。アルー侵攻時と同様に、周囲に弾幕を張って牽制する。
「退避!!退避ぃ!!」
「クソッ!あの機関車、客車にマシンガン搭載してやがる!!」
「これじゃ近付けねぇよ!!」
「対戦車ライフルだ!!対戦車ライフル持ってこい!!!!」
後方から巨大なライフルを担いだ歩兵が走ってきて、脚を立ててコンクリート製の大きめのブロックに固定し構える。だがしかし、その姿は車両のセンサーが探知していた。
アイアンレックスの車両にはセンサーが搭載されており、高脅威目標を瞬時に探知し、それを中央のAIがシルエットを判断。全自動で攻撃を加える事ができる。取り敢えず第一次世界大戦から第二次世界大戦までの兵器は全てインプットしてあるので、その中でも対戦車兵器等は自動的に攻撃する様になっている。例え未知の兵器だったとしても、何かしらの兵器と類似したシルエットになるので、それを探知すればすぐに人間の判断が加わる様になっている。
「神よ。私を御守りくだ」
祈りの言葉の途中で、60mm機関砲の攻撃を受けてライフルマンが吹き飛んだ。勿論ライフルは銃身が曲がってはいけない方向にひん曲がってしまい、もう撃つ事はできないだろう。
「あ...........が.............」
吹き飛ばされたライフルマンも、下半身と上半身が千切れてしまい、腹の辺りから腸らしき内臓が飛び出していて、間も無くして絶命した。応戦しようにも1発撃てば10発返ってくる様な状況では身動きが取れず、それどころか機関砲弾の爆発も相まって下がるしかない状況である。この機を逃さず、乗せてきた第五師団、第309突撃連隊が飛び出して基地の占領に移る。程なくしてウィザスター基地は、そこにあった大量の物資と共にムーの手に落ちたのであった。
同時刻 FOB3メーバックス基地
「司令、レーダーに大型の反応です」
「何?爆撃機か?」
「いえ。それにしては反応が巨大でして」
「エコーじゃないのか?整備兵をレーダーに向かわせる」
基地司令含め、その場にいた全員はその余りに大き過ぎる反応にてっきりレーダーの故障だと思っていた。だが、レーダーの反応は正しかった。接近していたのはメタルギアを積んだメタルギア応龍だったのだ。
『降下まで240秒。スタンバイ』
今回はメタルギア応龍3機とメタルギア零、メタルギア龍王、メタルギア狼を各1機ずつ投入している。
「さぁーて、暴れるか!」
パイロット達は自身のメタルギアの電源を入れ、操作レバーを握る。自分の第二の手足となるメタルギアを操作するレバーは、もう訓練で何度も乗っている。お陰でまるで神経を直に接続しているかの様に、完璧な操作ができる。
「て、敵襲!!!!なんだアレは!!」
『監視所!なんだどうした!?敵の数は!?!?』
「数は3機!ですが、あ、アレはなんだ?そ、その何かを吊り下げている巨大機です!!爆撃機なんか子供みたいに思えるくらい、超巨大な航空機です!!」
この報告を受けた司令官は、何が何だか分からないが取り敢えずマニュアル通りに攻撃を命じた。爆撃機はその図体故、動きは鈍重。従って良い的ではある。
「方位1-9-0!!高角68°!」
「用意良し!!」
「撃てぇ!!」
だがこの応龍に、そんな砲弾が当たるものか。応龍には特別な推進機構が搭載されており、空中を滑る様に飛ぶ事が出来る。従ってミサイルだろうが砲弾だろうが、予想外の動きで回避する事が出来るのだ。
「な、なんだ今の動きは!?!?」
「機体が横滑りしたぞ!!!!」
「だ、第二射!装填急げ!!」
グラ・バルカス帝国兵も大慌てで高角砲に砲弾を装填し、もう一度狙いを定める。だがその装填時間の十数秒が、応龍に対しては致命的な隙となる。
「機関砲、掃射開始」
コックピット下の57式40mm連装機関砲が起動し、高レートの機関砲弾を砲台に叩き込む。他の機体も対戦車ミサイル等の火器を用いて対空砲陣地を無力化していき、数分もすれば地上は片付く。
「地上はクリア。後は俺たちの番だな」
『そんじゃ頼むぜ、メタルギアさん!』
「お前もメタルギアのパイロットだろ。まあ、二足歩行じゃなくて飛行タイプだけど」
『言うなよ!ちょっと気にしてんだぞ、そのネーミングと違う件」
パイロット達はそんな軽口を叩き合っているが、どちらも顔付きは真剣であるし、自身の手と足で的確にメタルギアを操っている。
「さーて、じゃあ、暴れますかね!!」
零、龍王、狼のパイロット達はコマンドを入力し、応龍との接続を解除。地面へと降り立つ。その姿たるや、陸の王者の名が相応しい。
「狼の初実戦だ。記念すべき最初の獲物は、何かな?」
まさか敵機が横にスライドして砲弾を回避した挙句、落としたのは爆弾ではなく巨大なロボットだったとくれば、混乱するには充分すぎるだろう。しかもよりにもよって龍王が基地唯一の滑走路の上に降り立った為、この基地最大の戦力である航空機を発進できずにいた。
「なんでロボットがいるんだよ!!!!」
「クソッ!!ここにバズーカがありゃ!」
「ここは航空機こそあるが、戦車も無いからな。チクショウ!!」
混乱と絶望が兵士達を支配する中、ある1人の兵士が考え付いた戦法に希望が見出せた。
「そ、そうだ。脚だ。脚に攻撃を集中させれば、奴を文字通り倒せるかもしれねぇぞ!!」
このアイデアは、メタルギアに対する極めて効果的な反撃である。メタルギアは名前にもある通り、二足歩行兵器。知っての通り二足歩行は、全体重が2本の脚部に集中するし、何よりバランスも絶妙かつ繊細な物で、その均衡が崩れれば脆い。これは皇国とて同じ事だし、狼も4本脚であるが同じ様に脚部への攻撃は脅威なのだ。
「重機関銃と爆薬と対戦車ライフルをありったけもってこい!!」
「まずは飛行場のを倒すぞ!!」
「攻撃準備良し!!」
「一斉撃ち方!!撃ちまくれ!!!!」
尤も、この戦法は脚部を破壊
兎に角普通のMBTの装甲を、歩兵火器で貫通できるだろうか?否。無謀にも歩兵火器で戦車を破壊しようと試みた時点で、撃った弾が巨大かつ何十倍にもなって返ってくるだろう。
「奴ら、銃でコイツを倒そうとしてるな?無駄無駄」
『ならこっちで教えてきてやるよ。俺、親切だから』
狼のパイロットがそう言うと、足元のペダルを踏み込んだ。すると狼は一気に20m位の高さまで跳び上がり、歩兵部隊の前方50mの位置に着地させる。
「突っ込め!!!!」
そのままレバーを前に叩き込むと、狼は前傾姿勢を取ってそのまま敵陣目掛けて猪の様に突っ込む。
「逃げ」
ガッシャーーーーーーーン!!!!!!
そのまま遮蔽物にしていたコンテナごと轢き潰されて、悲鳴すら上げる事なく全員が戦死した。地面には夥しい血と肉片が撒き散っており、狼の前脚の裏にもべっとりとくっ付いていた。
「狼が暴れてるな」
『なら、こっちも暴れるとしよう』
零と龍王は腕部のレールガンをチャージし始め、同時に照準を合わせ始める。零は管制塔、龍王はその下の恐らく指令所と思われる施設が目標だ。
「照準よーし」
『発射!!』
バシュン!!!!
放たれた砲弾はしっかり命中し、管制塔は根元が破壊された事で崩落し、指令部庁舎も大穴が空いた挙句、管制塔の管制室の部分が降ってきて勝手に大破した。アレではもう、指令を伝達することも出来ないだろう。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「このまま黙ってやられる物か!!!!!」
「クソ!巨人に報いを!!!!!」
施設を破壊したのも束の間、今度は零と龍王目掛けてトラックやジープと思われる車が突っ込んできた。彼等はこの基地の警備を担当する、基地警備隊、第38分隊の面々である。彼等は狼に轢き潰された仲間達を見て、通常火器ではメタルギアを破壊できないと悟った。
通常火器では攻撃が効かず、戦車も野戦砲もなく、唯一対抗できたかもしれない高角砲も全部破壊されて今や単なる鉄の塊。となれば残るは爆薬をセットすれば良いという発想に行き着いたのだが、流石に生身で行ってはまた踏み潰されるかもしれない。そもそもちょっとやそっとの爆薬では、あれだけの巨体を倒せない。となれば車に爆薬をありったけ積め込んで、戦死覚悟で刺違えてでも脚部に激突するしか無い。
「特攻か」
『敵だとは言え、殺し辛いな』
「だが、倒さないとこっちがやられる。残酷だが、それが戦争なんだ」
流石にこんな事をされては、彼等もキツい。こちらの世界での旧大日本帝國陸海軍では、国を挙げての特攻作戦は無かった。しかし前線などの一部部隊では実際に、特別攻撃として志願者による特攻が行われていたのだ。
勿論、菊水作戦の様な大規模な物ではなく、初期の頃の小規模な特攻ではあるが、現在でも過去の過ちとして歴史の時間で『戦略、戦術的には愚策ではあるが、その搭乗員達は尊敬すべき』と習う。それに軍学校に於いても、この特攻については深掘りされる。その戦法がどれだけ愚かで無意味であるか。一方でその作戦に参加した搭乗員達は、どんなに素晴らしい精神を持っていたか。これらの学びを通して、最終的に『決して帰還を諦めずに、生きて1人でも多くの敵を倒せ。国の為に死ぬ事は軍人の誉れであり、皇国臣民最大の栄誉であるが、犬死は単なる無意味な死でしかない』と教わるのだ。
「そうだ、そうだったな。これは戦争なんだ.......。Sマイン発射」
零の脚部から、無数のSマインが発射される。飛び出した擲弾はトラックの上空で起爆し、周囲に無数の子弾をばら撒きトラックを破壊。ガソリンと爆薬に引火し、大爆発を起こす。
「エルジャァァァァァァ!!!!」
「エルジャとジャラマがやられたぞ!!!!」
「怯むな!!!!続けぇぇぇぇ!!!!!!」
ボォボォボオォォォン!!!!
トラックは尚も爆進する。怯むどころか、クラクションを鳴らして煽ってくる始末だ。だが、それだけ接近してくれれば、こっちだってやり用はある。
「撤退しないか。恨んでくれるなよ?」
竜王にも零にも、30mm機関砲が装備されている。これだけ接近していれば、簡単に排除できる。30mm弾の弾幕を展開し、車両群を一掃。だがその弾幕を潜り抜け、龍王に襲い掛かる1台のトラックが居た。隊の中で最も若い、ナーバラ上等兵である。
「隊長、みんな!!俺に力を貸してくれ!!!!!!」
「1台漏らしたか」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!帝国に栄光あれぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
だが、それでは倒せない。龍王のパイロットはジャンプペダルを踏み込み、跳び上がってトラックを回避した。そして今度は、自由電子レーザー砲というTLSのプロトタイプに当たる兵器のトリガーを引いた。
ビーーーーーーーーー!
自由電子レーザーにより、トラックは溶解し撃破。程なくしてメーバックス基地は皇国軍に占領されたのであった。
同時刻 バルクルス基地 上空
「降下地点に到着しました」
「野郎共、いつもの様に行くぞ!!!!」
バルクルス基地の上空3500mから、白亜衆の面々とマクレガー率いる第212特別機動空挺大隊が降下。更に神谷戦闘団と、スカイウォーカーとアシェリー率いる第501軍団がヘリボーンで展開する。
「敵が降りてきたぞ!!!!」
「ここを死守しろ!!殿下を守るんだ!!!!!!!」
「死んでも守り通すのだ!!!!」
グラ・バルカス帝国兵は素早く防御陣地を構築し、連合軍を迎え撃つ。神谷戦闘団の面々が装備している甲冑の前には無意味であったが、501軍団はそうではない。彼等の装備には防弾チョッキが無く、降下直後の無防備のタイミングに弾幕を貰っては対処しようがない。
「よし続、ぎゃぁ!!」
「行くぞ!!あそこまで進むんだ!!」
取り敢えず、兵士達は航空機の残骸のあるポイントまで前進する。距離は大体50m程度なのだが、そこに辿り着くまでに弾幕を幾つも掻い潜らなくてはならず、中々に前に進めない。そこで頼りになるのが、コイツらだ。
「お前達!!俺達の後ろに隠れてろ!!!!!!」
「装甲歩兵はこういう時の為にいるんだ!!!!!!」
キュィィィン、ブオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
神谷戦闘団の装甲歩兵である。装甲歩兵の装備する装甲甲冑には20mm弾の直撃にも耐えうる、人が装備するには余りに強靭な装甲が施されている。たかだか歩兵火器程度に撃たれる程度では、全くビクともしない。
「す、スゲェ」
「マジかよ」
「ここは俺達が牽制する!!先に行け!!!!」
「助かる!!」
機動甲冑を装備した歩兵も合流し、まずは501軍団の安全を確保する。そう考えていたのだが、部隊長となるスカイウォーカーと副官のアシェリーの活躍で案外早く確保できた。というのもこの2人、魔法使いなのだ。
「プラズマウォール!!」
「グラビティ!!」
スカイウォーカーは主に重力を操作する魔法、アシェリーには雷系統の魔法が使える。因みにマクレガーは精神操作が得意。
「ま、まるでジェダイの騎士だな」
「ってかスカイウォーカーって、そのまんまアナキンだしな」
「異世界スゲー」
これには神谷戦闘団の面々も驚きであった。そうこうしていると神谷とマクレガーも着地し、全員が揃った。
「将軍!敵部隊は地下指令室に続く道に、何重もの防御陣を敷いております」
「どうしますか、マスター?」
「こちらの兵力で正面突破は無理だな.......」
「であれば、俺に任せろ」
ここで神谷、秘策とまではいかないが、ここで切り札の1つを切る事にした。群で無理なら、個でやってみても良いだろう。という訳で、最強の存在、投入である。
「久しぶりに我の出番か我が友よ!!」
「そうだとも。目の前に防御陣地あるだろ?アレ、焼き払っちゃって」
「心得た!!」
そう、竜神皇帝『極帝』である。コイツを投入すれば、考えうる凡ゆる兵器、陣地を焼き払える。いや、もう「消し炭にする」というのが適切な表現かもしれない。
ゴオォォォォォ!!!!!!
安定の魔力ビームで眼前に広がる敵防御陣地を消し去る事に成功した。だがまだ、安心はできない。
「エリス、頼んだ」
「分かったわ。それじゃ、いくわよ!!!!」
エリスが自身の大剣『アイギス』を地面に叩き付け、地面を割りながら溶岩を発生させる。この攻撃で、完全に陣地を破壊し尽くした。
因みに何だかんだで、ワルキューレの使う武器の名前が決まった。ヘルミーナのブロードソードは右手のが『スターバースト』、左手のが『イクリプス』、盾は『イージス』、アナスタシアのレイピアは『ヨルムンガンド 』、ミーシャの杖は『スタッフ・オブ・ワルキューレ』、レイチェルの弓は『アヌビア』である。
「この機を逃すな!!突撃!!!!」
「野郎共続け!!」
「GO!GO!GO!」
神谷戦闘団、空挺大隊、501軍団が列を成して司令部へと突撃していく。その攻撃はしっかり、AVC1『突空』が支援してくれる。
「敵が突っ込んでくるぞ!!」
「撃ち返せ!!!!」
パン!パン!パパン!パン!
一部には分隊支援火器の軽機関銃があると言っても、大半の兵士が持っているのはボルトアクション式のライフル。だが相手の方は、神谷戦闘団の面々は全員がフルオート射撃可能なアサルトライフルや軽機関銃、装甲歩兵の持つミニガンやオートライフル砲もある。しかも空挺大隊と501軍団にはカラシ突撃小銃が装備されてるので、発射レートでは遥かに上をいく。
「クソッ!!奴ら、全員マシンガンを持ってるぞ!!!!」
「お前達!!栄光あるグラ・バルカス帝国兵らしく、最後の最後まで戦え!!!!撃ち返せ!!!!」
「そうだ!!俺達の後ろには殿下が居られるんだ!!!!」
「俺達は無敵だ!!撃て撃て!!!!!!」
だが彼等は、それを意に返さない。寧ろ追い詰められて背水の陣になった結果、より強固に粘り強く抗う始末。これではどうしようもない。
「スカイウォーカー!!」
「なんだ神谷将軍!!」
「アンタの魔法で、刀は操作できるか?」
「なに?」
「俺が投げて、お前がそれを操作する。奴らをブーメランよろしく、両断してやろうって言ってんだ!!」
「任せろ!」
この答えを聞くや否や、神谷は獄焔鬼皇をぶん投げる。その刀に向かって手を広げるスカイウォーカー。刀はブーメランの様に回転しながら、右方向から侵入して左に飛びながら行く先々のグラ・バルカス帝国兵を切り刻んでいく。
刀は全員を斬り終えると、そのまま神谷の手元に戻ってきた。
「ここまでしてくれるのか。ありがとよ」
「どうも。にしても、凄い切れ味だな」
「コイツは割と真面目に、神話の時代からある様な由緒正しい刀だ。この位できるさ」
獄焔鬼皇を鞘に戻し、彼等の守っていた場所へと行く。どうやら地下司令部の扉らしく、多分内側から強固にロックされている。
「弱ったな。僕の魔法でもどうしようもできない」
「爆弾でも仕掛けてみるか?」
「これ、爆弾で破壊できますかね。マスター・マクレガー」
「.......」
「テルミット持ってこーい」
魔法で無理なら、科学で開ければ良い。と言う訳で柿田が、部下にテルミットと呼ばれるシートを持ってきてもらう。
「これは?」
「金属酸化物と金属粉。それに燃料を適切に調合すれば、2000℃で燃える。その熱は考え得る、ほぼ全ての防壁を溶かせる」
作動と同時に、縁の部分が真っ赤に燃え出して固い扉を溶かしていく。右と左から半周して下で2つが合わさると燃焼が終わり、今度はC5が起爆する。
「C5との併用が、最強の組み合わせだ」
起爆すると扉は完全に消し飛び、煙が晴れると扉の代わりに大きな穴が広がっていた。
「進め!!」
神谷の号令の下、腕に火炎放射器を装備した装甲歩兵が飛び降りて、廊下を焼き払う。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
「あちぃ!!あちぃよぉ!!!!」
「あぁ!!あぁぁぁぁぁ!!!!!」
廊下はもう、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。グラ・バルカス帝国兵は狭い廊下を転げ回り、どうにか炎から逃れようと踠く。だがそんな事に意味はなく、寧ろ他の兵士に火が燃え移ったりして二次災害を生む始末。例え部屋に隠れていようと、後続の兵士達が殺してまわる。逃げ場はない。
「何なのだ、何が起こっているのだ!!!!」
扉を爆破する時の爆発音と兵士達の悲鳴は、指令室にまで響き渡りカバルは明らかに動揺していた。
「殿下、よくお聞きください。もうこの基地はダメです。脱出を」
「な、何故だ!!帝国は強い!!!!私は帝国兵を信じ」
パシン!!
ガオグゲルはカバルの頬をビンタした。こんな行為、普通に不敬罪で極刑である。カバルもそうだが、いきなりビンタされては誰でも思考が止まって何も言えなくなるだろう。ガオグゲルはその一瞬の隙に、カバルの胸ぐらを掴み上げる。
「いいか若造、よく聞けよ?俺達、帝国軍は負けたんだよ!!だが戦争に負けた訳じゃない。アンタを逃し、本国にこの恐怖が少しでも伝われば、多数の命が救われる。アンタがここで死のうが死ななかろうが俺には関係ないが、皇太子殿下に死なれちゃ困るんだよ!!
そもそも前線に来なけりゃ、こんな目に合わずにすんだのに。アンタバカだな。だが、バカだろうが何だろうが責務を果たせ!!グラ・バルカス帝国の皇太子として。次代の皇帝を受け継ぐ者として。その責務を果たしてみせろ!!!!」
「.......貴様はどうするのだ?」
「俺は俺の責務を果たす。さぁ、お行きなさい殿下。御無礼、平に御容赦を」
カバルはガオグゲルの指示に従い、護衛の兵士を伴って非常用の脱出口から脱出した。彼らを見送った直後、指令室の扉が爆破され中に白亜衆と赤衣鉄砲隊が流れ込んできた。
「やぁ諸君。初めまして。神谷浩三・修羅だ。取り敢えず、降伏しようか?」
「それで降伏すると思っているのか!!!!」
そう言いながらガオグゲルは腰の護身用拳銃を引き抜くが、それよりも先に神谷が左手に持っていた50口径仕様の26式拳銃で顔面を弾き飛ばす。
「皆殺しだ!!」
左手に拳銃、右手に刀というスタイルで指令室の人員を殺して回る。刀で切り付けたり、刺したり、刀の間合いの外の奴には50口径弾をプレゼントする。
「相変わらず、団長は恐ろしいな」
「50口径を片手で扱いながら、片手で刀振り回すって何処のバーサーカー?」
「何処って、皇国のバーサーカーだろ?」
「南無阿弥陀仏」
たった1人で部屋にいた30名全員を抹殺し、本人は涼しい顔で血の海の中に立っている。軽くホラー映像だ。
「団長。どうやら、誰かが逃げたみたいですぜ?」
「何?」
「ほらあれ。如何にもな脱出路が、しっかり開いてやがる」
部下の1人が指差す方向には、確かにザ・非常脱出路という感じの通路があった。しかも多分、構造からして普段は隠されている感じなので、それが開いてるとなると誰かが使った可能性が高い。
「向上、ワルキューレ。それから白亜衆と赤衣から2人位ついてこい。ハンティングを始めよう」
ここの指揮をマクレガーに任せて、神谷は逃げ出した誰かを追い掛ける。一方その頃、カバルと護衛の兵士5名は脱出路のトンネルを抜け、トンネルの先に繋がっている洞窟も抜けて、基地の北西6kmに位置する森林の中を走っていた。
「はあっ!!はあっ!!何故だ!!何故精鋭帝国兵が負ける!!!」
一応鍛えてはいるが、流石に息苦しい。息も絶え絶えで、口内が乾燥し、喉が痛くなる。だがそれでも、捕まればどんな仕打ちが待ってるか想像したくもないので、やはり走るしかない。
「これからどうするのだ!?」
「このまま後方のメーバックス空軍基地まで向かいます」
「他の基地が近いだろう!?」
「確かに近いです。しかし今の状況ですと、森林の方が安全です。森林は空からは見えづらく、例え大量の航空機を投入しようと早々見つかる事はありません。ここから先、殿下の人生の中で間違いなく1番の苦痛を伴う日々が続きます。しかし、我々が命に変えても本土に御帰還させますので、どうか我々を信じてください」
この帝国兵が考えた作戦は、とても理にかなっている。だが生憎と皇国にはサーモグラフィーという、熱源探知機能を持った偵察機がいるのだ。灼熱の砂漠ならまだしも、森林であれば人影はすぐに探知できる。それにそもそも、頼みのメーバックス基地はメタルギアによって攻略されてしまっている。
彼らは少しでもバルクルス基地から離れようと走るが、そうは問屋が卸さない。既に捕捉され、なんか先回りで待ち伏せしているのだ。
パシュゥン
「止まって!!」
進路上に弾丸が命中し、咄嗟に1人の兵士がカバルの肩を引っ掴み無理矢理止める。カバルも驚き固まっていると、茂みの奥から神谷が刀と拳銃を手に現れた。
「おやおや。部下を引き連れて敵前逃亡とはねぇ。アンタら、軍学校で「敵前逃亡は銃殺刑」と習っていないのか?」
即座に一団は別方向に逃げようとするが、それを許してくれる程、神谷達は甘くない。
「おっと、別方向に逃げようたって意味ないぜ?お前達を包囲した。武器を捨て、降伏するのなら命までは奪わない」
兵士達は顔を見合わせ、どうするかをアイコンタクトで相談する。だがどうやら、答えは決まっていたらしい。
「(殿下。このまま、走って逃げて。我々が武器を構え、奴等を殺します。貴方は振り返る事なく、とにかく真っ直ぐ走り抜けて)」
次の瞬間、カバルの返答を待つ事なく兵士達を手に持っていた100式機関短銃の様な銃を乱射する。だが、たかが8mm弾程度では機動甲冑は貫通できない。手に持つライフルによって、逆に殺されてしまう。
だがカバルは、兵士達の作った一瞬の隙を付いて神谷目掛けて走り出す。しかも腰に下げていた儀礼用の真剣を抜いて、神谷に切り掛かりながら。
「そこどけぇぇぇぇぇ!!!!!」
本来なら銃で殺すべきだが、何か間に合わなそうなので、獄焔鬼皇でガードする。だがカバル、なんと剣が交差した瞬間に力を掛ける向きを変えてスルリと獄焔鬼皇を抜けて、神谷の顔面へと突き立てようとする。
「うおっ!?」
だが、それで突き立てられるのなら『皇国剣聖』なんて呼ばれはしない。そのまま後ろに転がって、回避する。
「はぁー、危なかった。だが、見事だった。お前達、手を出すな。コイツは俺が1人の戦士として、仕留める!」
神谷は26式をホルスターに入れ、代わりに天夜叉神断丸を抜く。カバルも剣を構え直し、両者睨み合う。
「グラ・カバル」
「神谷浩三」
お互い名乗り合うと、カバルが先に仕掛けた。素早く間合いを詰める。そしてさっきと同じ攻撃を仕掛けようとするが、神谷は敢えて剣を通過させて顔面に剣が突き立てられるコースを取らせる。
「同じ手は効かねぇよ!」
さっきの攻撃、便宜上、滑り突きとでも言おうか。この滑り突きの時、カバルは前のめりの姿勢になり重心が前へと傾いている。故に別方向からの衝撃に弱いのだ。最初の攻撃でそれを見切った神谷は、顔に剣先が触れる寸前で蹴りを腹に加える。
「ぐっ!!」
カバルがバランスを崩した瞬間、剣を真上へと切り上げて更にバランスを崩させる。普通なら2回も連続してバランスを崩されては、立て直すのにも時間がかかる。だが、カバルは違った。上手く受身を取りながら横に転がり、続く第3撃を回避する。
「や、やるな.......」
「2度も同じ攻撃を、何の変化もなく出したのはアホとしか言えないが、その回避は見事な物だ。賞賛に値する」
カバルと神谷はまた、睨み合いながら相手の動きを観察する。特にカバルはこれまで感じた事がない、身体が熱く昂っているのに思考がクリアで冷静に相手を見据えられる何とも言えない不思議な感覚に陥っていた。
(相手の武器は二刀流。我の攻撃を初見で避け、更には2回目でカウンターを合わせてきた。この男、場慣れしている。このまま連撃や試合でやる様な正々堂々ではなく、あくまで泥臭く勝つのみ。であれば…)
(恐らくコイツは剣の腕こそ、そこそこある。だが圧倒的に実戦経験が足りてない。大方、訓練でしか振るった事のない教本通りの剣。教本が通じてないとなりゃ、精密攻撃を捨ててパワーで押し切ってくるな)
カバルはこれまで、実際の戦場で剣を振るった事はない。あくまで訓練や試合でしか振ったことが無い為、圧倒的に実戦経験が足りてない。無論、試合では強かった。軍でもトップクラスの実力者達を、忖度無しの真剣勝負で負かしてきている。更に自身の恵まれた体格と、その巨体から繰り出されるパワー攻撃は強い。
一方の神谷は、何度も実戦を潜り抜けて来た戦場の剣。しかも相手が対人よりも、対弾丸という特異な環境下で刀を振るっていた。故に動体視力と反射神経が化け物クラスで仕上がっており、初めての相手や剣筋でも容易く見極めてくる。しかも神谷の操る剣術は、神谷家独自の物。かつて傭兵だった頃に、日本全国に伝わる凡ゆる流派を取り込み作り上げた汎用性が高すぎる剣術。オマケに神谷家の総本山が元々福岡にあった事から、薩摩示現流なんかも実戦で戦った事がある上に対処法も分かっている。パワータイプにはこの上なく不利な状況なのだ。
「我が剣、受けてみよ!!!!!!」
何も知らないカバルは、上段から神谷に斬りかかる。しかもこれ多分後先考えずにドッカンパワーで、そのまんま上段斬りするタイプの振り下ろし方である。であれば、対処は簡単だ。
「とう!!!!!」
掠る前に真上に跳び上がって、剣撃を回避。パワー全乗せの一撃は当たれば大惨事だが、避けられてはそのパワー故、ベクトルを変えて照準変更とか寸止めとかが幾ら頑張っても無理だ。
カバルの剣は地面に突き刺さり、大きな隙が生まれてしまう。その瞬間を見逃さず、頭上から上半身をX字に切り裂く。地面に突き刺さった状態からのガードは、まず不可能だ。
「カハッ.......」
カバルはそのまま力無く前のめりに倒れ、二度と動くことはなかった。
グラ・カバル。彼はバルクルス基地より北西6.3km地点の、バール大森林の自然の中で息を引き取った。享年27歳。彼の死が、今後のグラ・バルカス帝国の命運と、大日本皇国の進路を変える大きな分岐路になる事はまだ誰も知らない。