最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第七十二話1000万人救済計画

第三先遣艦隊壊滅より数時間後 第一先遣艦隊旗艦『ラス・アルゲティ』 艦橋

「司令、第三先遣艦隊からの連絡が途絶えました」

 

「なに?どういう事だ」

 

第一先遣艦隊の司令にして、4つの先遣艦隊全体を取り纏める軍神カイザルの右腕、トレマイナー中将に信じ難い報告が入った。第三先遣艦隊の連絡が途絶したのだ。まあ前回を見て頂ければ分かるのだが、もう海の底で新たなるお魚さん達の住処と餌になっている。

 

「定時連絡が無く、こちらから呼びかけ続けているのですが何も返信がなく.......」

 

「やられたな」

 

「はい?」

 

「いや、何でもない。取り敢えず第三先遣艦隊には呼びかけ続け、3回連続で応えなければ壊滅したと考えよ。それよりカイザル司令に連絡を取りたい。すぐに準備してくれ」

 

「は、はぁ。了解であります」

 

報告に来た士官は何とも言えない指示に困惑しながらも、命令通りにカイザル座乗の戦艦『グレードアトラスター』に無線を入れる様に指示を出す。

一方、トレマイナーの脳裏には出撃前にカイザルから言われた事を思い出していた。

 

 

「トレマイナー、ネーロン。お前達にだけ、知っていて貰いたい事がある」

 

「カイザル司令、なんです改まって?」

 

カイザルの後輩にしてトレマイナーの同期。グラ・バルカス帝国において、機動艦隊の概念を飛躍させた空母運用の鬼才、ネーロンがカイザルに尋ねる。

 

「今回の戦闘、我々は勝てない。生き残る事すら難しい」

 

「軍神カイザルともあろう方が、その様なことを言いますか.......」

 

「不味いですよ!誰かに聞かれでもすれば…」

 

「なーに。私は世間じゃ『軍神』と呼ばれているのだ。そう簡単に首を切られる事はないし、帝国とてそんな余裕はない。

それよりも、これを見てくれ」

 

カイザルが鞄から出したのは、帝国の言語で『廃棄』と掘られたスタンプを押された書類だった。表題には『大日本皇国の兵器についての報告と性能考察』と書かれている。だがここで、2人とも可笑しな点に気付いた。

 

「これ、何で廃棄処分を受けているんだ?」

 

「ネーロン、この手の書類はこっちに回ってきているか?俺は覚えがないぞ」

 

「この書類は握り潰されたんだよ。恐らく私に反感を抱いている、ジーノ海軍大臣かガナノ軍令部総長辺りの差金だろう。まあ、この感じを見るにジーノだろうが。

揉み消されたのも問題だが、そこは取り敢えず置いておいて、まず今は中を見て欲しい」

 

中を確認するとそこに書かれていたのは、大日本皇国海軍の兵器の参考値とは言えど詳細なスペックが書かれていた。そのスペックは全て、コチラの艦艇を凌駕している。

 

「.......私の言う意味がわかるだろう?」

 

「えぇ。駆逐艦からしてまるで違う。砲塔1基で装甲は我が方の駆逐艦の主砲でも容易に貫通せしめるでしょうが、このミサイルという噴進弾。水平線の遥彼方から撃たれては、空母を用いなければ同等の射程は出せません。

それに威力も一撃で空母を葬り去るとなれば、コストも段違いです。何せ航空機なら機体と燃料弾薬という物的資源と、パイロットと搭乗員という人的資源を必要とします。もし撃墜されれば基本全部パァだ。しかしこのミサイル、撃った後は勝手に目標まで飛んでいくんでしょう?なら撃墜されても物的資源だけで済みます。優秀な搭乗員は時間と金が掛かる上、こと時間に関してはいくら金をつぎ込んでも克服できる物でもないですからな。飛行機より安価で、強力なのは戦略的にも大きいでしょうや」

 

「大和型とかいうグレードアトラスター級が64隻.......。しかもそのミサイルを装備している上に、主砲は51cmにパワーアップしている.......」

 

「51cm!?」

 

「君達も帝国が新たなる、グレードアトラスター級を超える戦艦を建造している噂は聞いた事があるだろう?その戦艦、A級には51cm三連装砲が搭載予定だ。だがそれでも、5隻しか建造されていない。量産にも向かない決戦兵器という位置付けである以上、二桁まで艦数は増やせないだろう」

 

このA級が何を示すのかはまだ敢えて語らないが、グレードアトラスター級を超える戦艦である事は間違いない。そのA級は現在、艤装作業が行われており、実戦投入される日も近いのだ。

カイザルの話を聞きながらもトレマイナーは、さらにページを捲っていく。大和型の次に出てきたのは、熱田型である。これを見た瞬間、トレマイナーは壊れた。

 

「あー帝国終わったー。祖国終わったー」

 

「トレマイナー!?おぉい、どした!?!?」

 

トレマイナーの脳内には教会の鎮魂の鐘が、カンコンカンコン鳴っている。取り敢えず持っていた報告書をひったくり、そのショックを受けたであろうページを見た。そこには熱田型のスペックが載っており、明らかに勝てる要素のない戦艦である事が一目で分かった。

 

「オヤジ、こりゃかなりヤバイんじゃないですか?」

 

「あぁ。ヤバイなんて範疇はとっくに通り過ぎて、どう足掻いても勝てない戦だ」

 

「なら、すぐにでも出撃を取りやめるべきです!!!!」

 

現実に戻ったトレマイナーが机を叩き、カイザルに詰め寄る。カイザルは申し訳なさそうな顔をしながら、2人の目を見つめながら話し出す。

 

「トレマイナーの言う通り、本来ならこんな戦い、止めるべきだ。これが軍令部の立案であったり、海軍省の強硬派だったならだったなら、私もどうにか出来ただろう。だが今回は皇帝陛下が望んでおられる。いつもの形式的な『皇帝の御裁可』ではなく、今回ばかりは故カバル前皇太子殿下の一件で、皇帝陛下ご自身が命令を出しているそうだ。

しかもバイツ現皇太子殿下もこれに賛同していて、さしもの私でも覆しようがない。一度、陛下に直談判もしたが、陛下からは「貴様はいつからその様な臆病者になったのだ?」と一蹴されて、取り付く島も無かったよ」

 

「であれば、我々は無駄死にか.......」

 

「兵達に顔向けできんな.......」

 

「いや。意味はある。勝てずとも、死のうと、この戦いに意味はある」

 

カイザル自身、こんな自殺作戦したくない。別に自分1人だけなら覚悟はできているが、インフェルノ艦隊には万単位の兵士がいる。この兵士達を無駄死にさせるというのなら、話は変わってくる。指揮官として、止めなければならない。

 

「一体どんな意味があると言うのですか!!」

 

「オヤジ、こんなの自殺しろって言っている様なものでしょ!?こんな作戦、兵達に面目が立たない!!!!」

 

「気持ちは痛いほど分かる。私だって本音で言えば、同じ気持ちなのだ。だが例え負けると分かっていても、死ぬと分かっていても、意味はある。このインフェルノ艦隊は帝国にある4つの方面艦隊の内、2つを投入して、ついでに新鋭艦や他の地方艦隊も動員した一大艦隊。もしこれが全滅に近い被害を受ければ、必ず世論も軍や政府内の空気も変わる。この無意味な戦いが1日でも早く終わり、国民が1人でも多く助かれば、それは我々にとって勝利と言える。我々の命はそこに還元する。我々は無駄死にする訳でも、自殺の為の悲しい航海をする訳でもはない。我々は死を持って帝国の民を護り、我々の航路は未来を切り拓く航路なのだ」

 

2人も分かっている。カイザルの言う事は所詮、綺麗事に過ぎない事であると。グラ・カバルという聖像の1つが失われた今、軍部と世論の空気は『憎き皇国を滅ぼし、亡きカバル殿下への手向けとせよ』の一色。世論が変わろうと、軍部の空気は変わらない。例えインフェルノ艦隊が全滅しようと、第二文明圏の占領地を奪還されようと、そして敵の艦隊や軍勢が眼前に迫って尚、変わる事はないだろう。世論が変わらない様にし、世論を変えようとする正常な者があれば弾圧し無かったことにするだろう。

軍部にいる高級将校や官僚は国を守る事なんて考えず、自分のプライドと利益と地位と名誉しか考えない。これら4つを守る為ならば恐らく彼らは平気で国を売るし、国民が何千何万死のうと国が滅びようと、お構いなしなのは目に見えている。だがそうだとしても、自分達が無駄死にでないと思わなければ、こんな自殺任務に参加なんてできない。乗るしか、なかったのだ。

 

 

(カイザル提督の言う通りだ。恐らく、第三先遣艦隊は既にやられているだろうな)

 

「トレマイナー司令!『グレードアトラスター』につながりました!!」

 

「うむ、ありがとう。済まないが、1人にしてくれないか?司令と話すんでな、悪いが君達には席を外して貰いたい」

 

「了解であります!!」

 

通信員達を外に出し、一応通信室にも鍵をかけて、マイクを手に持つ。意外かもしれないがグラ・バルカス帝国海軍ではモールス信号以外に、こういう音声会話式の無線も装備されている。と言っても装備されているのは主力艦隊の旗艦クラス、つまり戦艦か空母であり、無線自体も他の駆逐艦なんかを経由させて繋げる方式である。

その為、仮に途中の艦艇が沈んだり、無線電波の範囲外に出られると、その時点で無線は使えなくなる。電話線が切れたのと同じ、と考えて貰えれば分かるだろう。

 

「カイザル司令、聞こえますか?」

 

『トレマイナー。君から連絡が来たということは、何か不味いことが起きたんだな?』

 

「第三先遣艦隊が消息を絶ちました。恐らく…」

 

『.......そうか。敵艦隊発見の報は?」

 

「いえ、その様な報告は何も」

 

そのまま「上がってない」と続けようとした時、扉をノックされた。副官である。

 

「何事か」

 

「お話中失礼します。敵艦隊発見との報告が潜水艦『アクアリッシュ』より上がりました。読み上げます。「我、敵主力艦隊を発見す。超々大型戦艦1、超大型戦艦8、戦艦34、空母24、軽巡ないし駆逐80〜100」以上です」

 

「聞こえましたか?」

 

『あぁ。すぐにネーロンに連絡を取る!そっちは引き続き、敵艦隊の捜索と余裕があれば攻撃を頼む』

 

「了解!」

 

 

 

同時刻 第二先遣艦隊より南東250kmの海域 『伊2000』発令

「19:30。艦長、時間です」

 

「副長、この攻撃を成功させる秘訣は何だと思う?」

 

「いえ、分かりませんが」

 

「イメージだ!!敵を倒す、明確なイメージ!!!!ふはははは!!!!!」

 

「はいはい、救済おじさんの真似はいいから。艦長、指示を」

「マティアス・トーレスと呼べ!!!!」

 

「艦長」

「マティアス・トーレス!!」

 

(あーこれ、面倒なスイッチ入ったな)

「トーレス艦長、指示を」

 

この救済おじさんの真似をしている痛い艦長こそ、伊2000型のネームシップ。『伊2000』の艦長、安m「マティアス・トーレスだ!!!!」安「マティアス・トーレス!!!!」y「マティアス・トーレス!!!!!!!」はい、マティアス・トーレス艦長*1です。

勿論このマティアス・トーレスはあくまでキャラであり、本来は優秀かつカリスマ性のある艦長なのだが、イベントでガチのトーレス艦長のモノマネをした事があり、それ以来ずっと自身をマティアス・トーレスだと思ってしまっている。悪い奴ではないのだが、いかんせん面倒くさい。

 

「攻撃隊、対艦装備で発艦!!!!そういえばルイス・バルビエーリ中尉、貴官は遺書を書いていないと聞いたが?」

 

「家族は皆、戦争で死にました」

 

「いいぞ~貴官も救済の一部だ!死んで来い!発艦を許可する!」

 

「了解!!」

 

勿論ルイス・バルビエーリ中尉なんていない。本名は大鷹沢葛と言い、何なら階級も中尉では無く大尉である。大鷹自体、全然こういうノリはウェルカムなタイプなので問題ならないが、普通にパワハラモラハラに該当するヤバい発言である。それでも許されているのは、トーレスの人徳か、はたまた単純に恐ろしいのか。

こんなカオスな状態であるが、浮上した『伊2000』『伊2001』『伊2002』『伊2003』からF8C震電IIが対艦装備で発艦していく。前回は何百機と上がったが、今回は80機と少な目である。

 

「艦載機発艦完了!」

 

「鎮魂だ。鎮魂の為、我々は我々のポイントに赴くとしよう。急速潜航!!!!」

 

「メイィンタァンブロゥ!!!深度150!!!!」

 

今回の攻撃では、まず震電IIの攻撃が行われた後に、伊2000型によるロングレンジレールガン攻撃が行われる。使用するのは勿論、船体中央に格納されている大口径レールガンだ。さらにそれに加えて、後方の伊2500型によるミサイル攻撃が行われ、最後に伊3000型による雷撃が行われる段取りになっている。

攻撃隊はミサイルの代わりに爆弾を抱えて、月下の空を進む。機体の色も相まって、まるで空の忍者の様。しかも震電IIはステルス機であり、今回は翼下パイロンにも爆弾を懸架しているので普段よりもステルス性能は落ちているが、それでも機体自体は電波吸収率98.56%を誇る特殊塗料でコーティングしていて、機体形状もステルス性を考慮したデザインとなっている。それ故、グラ・バルカス帝国の保有する電探設備ではまず捉えられないのだ。実は既にレーダーピケット艦の真上を通過しているが、当のピケット艦には気付かれてない。

 

『隊長。凪いだ海ですね』

 

「あぁ。こんな警戒監視任務じゃなきゃ、酒でも飲みたいがな」

 

『お!なら陸に帰ったら、飲み行きましょうよ!!ほら、なんか最近、基地の近くに美味い店が出来たって三飛の連中が騒いでたんですよ』

 

『あー、アレですか。なんか可愛い子がいるとか何とか』

 

『そうそれ!なぁ、お前も行きたいだろ!?』

 

『勿論!!』

 

直掩のパイロット達も、まさか既に死神が列を成して艦に迫っているなんて思いもよらなかった。本来彼らの任務とは、レーダーピケット艦が探知した敵の通報を受けてから、本隊到着までの遅滞戦闘を展開する事。もしくはピケット艦がやられた時に、その場に本隊に先んじて急行し情報収集や威力偵察に当たる事である。

その為、連絡の無線が入らなければ彼らは平和そのもの。こんな風に夜景を見ながら話す位の事も出来る。レーダーピケット艦が艦隊の周囲をグルリと囲んでいるし、仮に撃沈されても全レーダーピケット艦はしっかりこちらの電探で捉えているので反応が消えれば連絡が必ず入る。だから、今この瞬間に敵が現れる事はない。そう、彼らは考えていたのだ。

 

『あれ?隊長、右上方、なんですかね?』

 

「右上方?」

 

一番若手の三番機から言われた方向を見てみると、無数の光の尾が見えた。流れ星にしては光の尾が赤く太い。というかそもそも流れ星は落ちていくものだが、この流れ星は平行に真っ直ぐ艦隊の方を目指して飛んでいる。

 

『敵か?』

 

『ピケットがやられたなら、無線が入るはずですよね?でもそんな連絡は.......』

 

「取り敢えず接近し、確認する。続け」

 

3機のアンタレスが、右下方から接近してくる。本来なら死角になる位置だが、震電IIの他、皇国の戦闘機には全て360°の視界が確保できる様になっている。機体各所のセンサーアレイと高解像、高倍率カメラがレーダーと連携してパイロットに情報を即座にフィードバックできるのだ。

今回ならレーダーで捉えたアンタレスを、カメラで実際に映し出し、その映像をパイロットのHUDに投影している。しかもデータリンクしているので、例えば左翼の最外縁部にいる機体みたいに位置的にアンタレスを捉えられない機体にも、しっかり映像は送られている。

 

『隊長、指示を』

 

「護衛1機を対処にあたらせる。ガルガリオ3、対処しろ」

 

『ウィルコ』

 

1機の震電IIが編隊から離れ、3機のアンタレスとヘッドオンができる位置どりをして接近していく。この辺りで、漸く直掩の3機も相手が流れ星ではなく敵であると気が付いた。

 

『敵機!!』

 

「こちら北東直掩隊!!敵戦闘機、約80が艦隊に向かっている!!!!」

 

『何だって!?了解した、すぐに戦闘機隊を発艦させる!!!!どうにか時間を稼いでくれ!!!!!』

 

「任せろ!!」

 

3機とも増槽を投下し、戦闘体制に入る。向こうがヘッドオンに仕掛けてくるのなら、こっちもそれに乗っかって相手してやるしかない。ここで散解しようものなら、すぐに後ろを取られて各個に撃破されてしまうだろう。そうされないためにも、乗るしかないのだ。

 

「奴ら、3機纏めてかかって来るのか。面白い」

 

ガルガリオ3は多機能ディスプレイより兵装パネルから、こんな事もあろうかと積んできたお誂え向きのご機嫌な兵器を選択する。HUDの表示も標準のミサイル系統の物から、専用の照準モードに変更され準備は万端。

 

「さぁ、堕ちろ!!」

 

ガルガリオ3が発射トリガーを引く。次の瞬間、機体中央部が一瞬光った。

その光を見たコンマ数秒後、1番機の右側が赤く光った。2番機が火だるまになり、落ちていくのが見える。

 

『2番機!!応答してください!!!!先輩ッ!!!!!!』

 

3番機の叫びが無線から聞こえて来る。1番機はすぐに仇を撃つべく機関砲のトリガーを引こうとするが、既に相手の機体が目前まで迫っており、やむを得ず機体を傾けて回避した。

震電IIは1番機の傾けてできた空間に突っ込み、そのまま相手の後ろを取るべく動く。

 

「3番機、嘆くのは後だ。奴を堕としてからにしろ」

 

『.......了解』

 

アンタレス2機も直ちに戦闘に入り、震電IIを追い掛ける。とは言えアンタレスの性能は零戦52型相当。単純な運動性能はレシプロ機の特性上、ジェット機を遥かに上回るが最高時速は564kmに過ぎない。かたや震電IIはジェットエンジンを搭載した、第五世代ジェット戦闘機に分類されるマルチロールファイター。マルチロールファイターとは言えど、純粋なファイターであるF9心神を相手取っても勝るとも劣らない傑作機で、最高時速もマッハ2.2を叩き出す。零戦如きにやられはしない。

 

「追い付けない!」

 

『なんて速いんだ!!』

 

いくら運動性能がよかろうと、スピード勝負になってはどうしようも出来ない。だがこのガルガリオ3、かなり性格が悪い男で態々3番機に背中を取らせてやった。え?良い奴じゃないかだって?まあ、見れば分かる。

 

『隊長!背中を取りました!!』

 

「!?絶対に堕とせ!!!!!」

 

『了解!!!!』

 

3番機にのる若き少尉は、今までで1番の怒りを覚えていながら、同時に今までにないほど冷静でいた。

 

「よくも先輩を.......」

 

撃墜された2番機は世話になった先輩であった。大酒飲み、女好き、賭博大好き、ベビースモーカーのダメ男ではあったが、兄貴みたいな人でいつも気に掛けてくれた。賭博のやり方を教えてもらい、美味い酒も教えてくれた。少尉自身長男で、兄というのはいなかった。故に本当の兄の様に慕っていたのだ。

 

「堕ちろッ!!!!!」

 

少尉はトリガーを引く。20mm機関砲と7.7mm機銃、合計4つの機関銃による同時発射。照準も完璧。必ず当たる。そして当たれば、確実に堕ちる。そう思っていたし、実際そうなのだ。だがガルガリオ3を筆頭とした全ての皇国軍パイロットは、化け物なのだ。

皇国軍はアメリカ程、実戦を経験をしていない。アメリカは第二次世界大戦後も朝鮮、ベトナム、中東等々、世界各地で戦闘を行っている。だが皇国は基本的に本物の戦争は、殆ど経験していない。その代わりに実戦以上の訓練を積んでいるのだ。リアル、VR、ARを用いた訓練により、パイロットの戦闘スキルはアメリカのトップガンをも凌駕し、世界最強のパイロット集団なのだ。その1人であるガルガリオ3が、まさか撃墜されるわけない。

ガルガリオ3はストール寸前まで機体を減速させ、その状態で機体の機首を上げた。機体はそのまま宙返り、所謂クルビット機動を行う。270°回転し次に機種が下を向いた時、正面にはアンタレスが入っていた。

 

「ぁぁ.......」

 

少尉は初めて見るクルビットの挙動を、まるでスロモーション映像を見ているかの様にしっかり見えていた。その挙動は今まで見たどんな戦闘機の動きよりも洗練されていて、美しかった。先輩を堕とされた恨みも消え、単純に凄いと、美しいと、そう思った。美しいと感じた刹那、30mm機関砲弾のシャワーがアンタレスに降り注ぐ。機体は爆散し、バルチスタの海に沈んだ。

 

「クソッ!2番機もやられたか!!!!」

 

残るは1番機のみ。この1番機だって相当の手練れ。流石に数十機や数百機を堕としたウルトラエースではないが、歴としたエースパイロットの1人。そのプライドと、何より可愛い部下達を堕とした奴を逃す道理はない。

 

「行くぞ!!」

 

1番機はガルガリオ3に真上から襲い掛かる。だがレーダーで接敵から今の今までしっかり捉えられていたのだから、攻撃が当たる訳がない。ガルガリオ3は機体を右に傾けて回避する。そしてそのまま、1番機の予測進路上に2番機を墜とした兵器で狙撃した。

 

「まだま…」

 

ガルガリオ3の放った特殊兵装EML、レールガンは1番機にきっちり命中し機体は爆散。1番機は最早、撃墜された事を認識する事なく戦死した。

ガルガリオ3と直掩隊の戦闘が展開されている中、攻撃隊本隊は艦隊へと接近し、いよいよ目視圏内にまで迫って来た。

 

「来た!敵編隊、方位30、高度約1000、機数80!!真っ直ぐ突っ込んでくる!!!!」

 

「対空戦闘よーい!!!!」

 

「主砲三式弾、砲撃始め!!!!」

 

「撃ちー方ー始め!!!!」

 

まずはオリオン級による三式弾の斉射から始まった。この三式弾、正式名称『三式焼夷榴散弾』はVT信管を搭載した代物である。まあ見た目及び用途は、帝国海軍の三式弾と変わりない。もしこれがムーとかに使われたなら、甚大な被害を航空隊に齎すだろう。だが相手は皇国軍。しかもジェット機。最高の回避方法がある。

 

「アリコーン1より全機、フルスロットルだ。そしてブレイク!」

 

マッハ2.2という高速を持って、敵艦隊に肉薄すれば良い。ついでに散開してしまえば、三式弾の効果は一気に半減する。

 

「1機も近づけさせるな!!」

 

「右20°、高角30°!!」

 

「撃て!!!」

 

第二先遣艦隊各艦は搭載された対空火器、25mmの単装、連装、三連装の各機関砲や12.7cm高角砲、或いは長10cm砲を用いて対空戦闘を開始する。だが所詮、対レシプロ戦闘機を想定した対空火器にジェット機がやれる訳がない。頼みのVT信管も震電IIが速すぎて、通り過ぎてから起爆してしまっている。

 

「そーら、喰らってみやがれ!!!!!!!」

 

主に駆逐艦に爆弾の雨が降り注ぐ。今回の震電IIは低コストで艦艇を倒せるかの評価の為、試験的に爆弾やロケット弾を装備している。本来なら発見される遥か前に空対艦ミサイルで攻撃するのが現代の戦争だが、流石にコストが掛かる。バカスカ撃っても問題ないくらいの潤沢な予算はあるが、削れる物なら削っておきたい、というのもある。

流石に戦艦ともなれば爆弾よりミサイルだが、駆逐艦相手なら問題ないだろう。という訳で、実験台となった駆逐艦達の末路は酷い物であった。何せ爆弾の雨が容赦なく降り注ぐので、主砲や魚雷発射管は勿論、艦橋なんかにも当たって、艦上の構造物は軒並み吹っ飛んでいる。お陰でマトモに行動できなくなり、駆逐艦同士で衝突している所もあった。

 

「アリコーン1より全機、撤退しろ。仕事は終わった」

 

震電IIは撤退していく。その姿を見た生き残った兵士達は安堵するが、あくまで今のは前菜。次はオードブルだ。

 

「610mm電磁投射砲、砲撃準備!!」

 

「アイ・サー。航空機発艦用回路、切断。電磁投射砲への回路、接続」

「バイパスをカタパルトから、電磁投射砲に変更します。電圧安定」

「照準装置、観測機に接続。以降、照準はレーダーからリアルタイム目視照準にて行う」

 

「イメージだ、敵を殺す明確なイメージを持て!!救済、執行!!!!!!」

 

「撃ちー方ー始めー」

 

『伊2000』『伊2001』『伊2002』『伊2003』の610mm電磁投射砲一斉射は、とにかく圧巻の一言に限る。時を同じくして、伊2500型4隻によるミサイル攻撃も始まった。

その成果がどうなったかは、グラ・バルカス帝国視点でお送りしよう。

 

 

 

同時刻 空母『サダルバリ』 艦橋

「し、司令!!ドラファラガー司令!!!!」

 

「被害は!?!?」

 

「ハッ!第38、41、42、54水雷戦隊全滅!第238〜241駆逐隊、全艦沈没!!重巡『アリオン』『アルカス』共に中破!!」

 

「各艦、溺者救助開始!!それから直ちに直掩隊を呼び戻し、艦隊防空に当たらせろ!!」

 

「ハッ!!」

 

ドラファラガーの指示は的確で早かった。だが、全てが遅すぎたのだ。まずは610mm砲弾がオリオン級2隻に命中、火柱が上がった。

 

「な、なんだぁ!?!?」

 

「戦艦『ハサチ』『タビト』炎上中!!」

 

「そんな事は分かってる!!!!何故いきなり燃えてるかだ!!!!攻撃されたのか!?!?!?」

 

「司令!『ハサチ』より続報です!読み上げます。「本艦、及び『タビト』の中央部に巨大な破口2つあり。竜骨が切断されており、遺憾ながら総員退艦を発令す」です!」

 

ドラファラガーは被っていた帽子を床に投げ捨て、癇癪を起こした。本来ならこういう時こそ起こすべきではないだろうが、こうも立て続けに攻撃されて被害も甚大では、流石に狂ってしまうだろう。

そして、まだおかわりがあるのだから最悪だ。今度は伊2500型から放たれた艦対艦ミサイル桜島が迫る。しかもこっちは、探知すらされてないので何の障害もなく艦隊に迫る。残る空母と重巡にも突き刺さり、真っ暗なはずの夜の海を真っ赤に染め上げていく。

 

「なんたる事だ。クソッ!クソッ!クソォォォォォォォォ!!!!!!」

 

ドラファラガーの慟哭が艦橋を揺らす。そんな事は知る由もない伊3000型が、さらに追い討ちというか、もうオーバーキルでしかない攻撃を仕掛ける。

 

「魚雷全弾発射」

 

「アイ・サー。撃てぇ!!」

 

皇国海軍が保有する魚雷は、主に潜水艦用の魚雷と対潜魚雷の2つ。後者は雷跡が見えた方が色々便利だったりするので普通の魚雷だが、潜水艦用の魚雷は化け物である。一撃で大戦中の重巡を破壊できるだけの炸薬を有し、放出されるのが水素、誘導方式はアンチデコイホーミング、最大で85ノットを叩き出すチートである。酸素魚雷、普通に超えやがったのだ。

そんな魚雷が第二先遣艦隊に襲い掛かる。放出されるのが水素で雷跡が殆ど見えないって言うのに、夜の暗闇もあって雷跡は一切見えない。そのまま魚雷は生き残っている各艦に突き刺さり、爆発。殆どの艦が轟沈したのであった。

 

 

 

数十分後 第一先遣艦隊旗艦『ラス・アルゲティ』 艦橋

「トレマイナー司令、第二先遣艦隊がやられました!!」

 

「被害は?」

 

「そ、それが、全艦轟沈だそうで.......」

 

「.......そうか。通信士、直ちに第四先遣艦隊に連絡を取り本艦隊と合流させよ」

 

「ハッ!」

 

既に先遣艦隊の半数がやられ、艦隊は壊滅状態。とは言え母数が多いので、まだやれる。それに恐らく夜明けにはネーロンの機動艦隊が攻撃を仕掛けるだろう。となれば、まだ可能性はある。

 

「司令。先程、偵察機より敵機動艦隊を発見したとの報告が」

 

副官からの報告に、トレマイナーの目の色が変わった。第四先遣艦隊は水雷戦隊が殆どを占める。夜戦を、仕掛けられるかもしれないのだ。

 

「ありがとう。直ちに第四先遣艦隊を交えた夜戦、水雷戦隊を主軸にした作戦を策定してくれ」

 

「仰せのままに」

 

(まだだ。まだ我々の戦争は終わっていない。せめて一矢、せめて一矢報いてから死んでやる)

 

時刻は間も無く21:00となる。夜はまだ、これからだ。

 

 

 

*1
本名は安元博樹とい「マティアス・トーレスだ!!!!!!」

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