最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第七十四話Loser jackpot

先遣艦隊壊滅より数十分後 戦艦『グレードアトラスター』 無線室

『逝きやがりましたか、トレマイナーは』

 

「あぁ.......。こうなってしまった以上、私は私のやり方で兵達に筋を通す」

 

『オヤジ、無茶だけはしないでくださいよ?』

 

「心配するな。上に噛み付くだけよ。もうこの歳だ。守る者も、家族位しかない。それにこの地位もあれば、上も早々変な手は打てん。この権力と地位は、最大限利用させてもらうとするさ」

 

幾ら敵が強くても、先遣艦隊程の大艦隊が数時間足らずで完全に殲滅されてる辺り、明らかに異常だ。まだ帝国に航空機動艦隊と、グレードアトラスター級3隻を含む本隊がいるとはいえ、恐らく勝利するには奇跡を数回起こさなければ、まず不可能と言って良い。

イタズラに兵と艦艇を消耗する位なら、将として上に作戦中止を具申すべきなのだ。それも直属ではなく、真の意味でのトップに。

 

「通信兵、専任士官を呼んできてくれるか?」

 

「ハッ!しばしお待ちください!!」

 

まずは船務科の専任士官である中佐を呼び出す。大艦隊の旗艦を務める事の多い戦艦と正規空母には、必ず各科に機密事項を扱える専任士官がいるのだ。今回はそれを利用させてもらう。

 

「カイザル司令、お呼びですか?」

 

「休んでいる所を悪いな。悪いが、この周波数帯に無線をつなげてくれるか?」

 

「了解であります」

 

「あぁ、それから通信中は全員外に出て貰いたい」

 

「はぁ、分かりました」

 

カイザルが連絡した先は、帝都ラグナ。その中心部に聳え立つ、ニブルス城である。言わずもがな皇帝グラ・ルークスの住う城であり、政治、行政の中心。言うなればグラ・バルカス帝国という国家の、心臓そのものである。

では何故、ここにカイザルが連絡できたのか。それは三十数年前まで遡る。当時、カイザルは軽巡の艦長をしていた。その頃に皇太子であり、軍を自ら指揮していたルークスと知り合い、何度も共闘してきたのだ。特に冬戦争中はルークスの部隊を輸送する事も何度かあったし、一度、ルークスの部隊の救援に駆け付けた事もある。それ以来、カイザルとルークスは年に一回程度ではあるが今でも食事を共にしたりしている。その縁で緊急連絡先を教えて貰っていたのだ。

 

『この時間に誰だ?』

 

「カイザルであります、皇帝陛下」

 

『カイザルか。私は父上ではない。私はバイツだ」

 

「こ、これは殿下。とんだ失礼を。お声が皇帝陛下と似ておりました故」

 

『良い。して、何用か?』

 

正直、バイツが出て来たのは予想外だ。バイツは神谷に切り捨てられたカバルよりかは、一応話が分かる人間ではある。沈着冷静の優等生タイプではあるのだが、その実は周りを見下す傲慢な性格も隠されている。エリート思想が強いのだ。そんな相手に、この話が通じるかは五分五分である。

カバルは脳筋タイプなので「いやー、負けそうなんすよ」と言えば「貴様らの根性が足りん!」的な答えが返ってくるだろうが、バイツは仮にも優等生タイプ。流石に話が少しは通じる筈だが、鬼が出るか蛇が出るかハラハラ物である。

 

「殿下、できれば皇帝陛下にお替わり頂きたく」

 

『父上は公務により外出中である。帰ってくるのは3日後だ。私では不服か?』

 

「.......恐れながら、今からのお話は幾ら皇太子殿下とは言えど手に余る案件であります。どうしても全軍の統帥権を持っておられる、皇帝陛下に直接お話する必要がありまして」

 

『ふむ、では私を通すが良い』

 

こう言われては、流石に「いえ結構です」とは言えない。ならばもう、一縷の望みを賭けて話す他ない。カイザルはこれまでの事態を全て話す。先遣艦隊が壊滅し、その壊滅の仕方があり得ない物であること。敵が強大であり、今の艦隊では勝つ事は不可能であること。その為、作戦を中止したいという事。

だがバイツから返ってきた答えは、耳を疑う物であった。

 

『そうであるか。貴様、我が国に反逆するのだな』

 

「は?」

 

『なにが「は?」だ。貴様は栄えある帝国艦隊を預かる将でありながら、まだたかが(・・・)先遣艦隊が壊滅した程度で、尻尾巻いておめおめ逃げ帰ると?ふざけるのも大概にせよ!!!!!!!!貴様それでも、誇り高き帝国軍人か!!!!!!撤退は許可せぬし、例え勝利したとしても帰還は許さぬ!!!!!!戦って死ね!!!!!!!!!!!!』

 

そう言ってバイツは無線を切った。すぐに無線を掛け直すが、全く繋がらない。恐らく回線が切られたのだろう。これでは皇帝に申し開く事は出来ない。

 

「バイツのクソガキめが..............」

 

本来なら声を大にして叫んでやりたいが、幾らなんでもそんな事を言うのは不味い。何処ぞのダラスみたいな連中が騒ぎ出し、瞬く間に艦内の空気が悪くなるのは必然である。

 

「しかし、どうしたものか.......」

 

今の手段は、最終奥義であり禁じ手中の禁じ手。何度も使える物でもない。その手段が通用しなくなった今、希望は潰えたと言って良い。かと言って勝手に逃げ帰れば、それはもう敵前逃亡に他ならない。自分のみならず他の者の首も飛ぶ。それも社会的のみならず、一部は物理的にも。オマケにその罰は、下の現場の経験豊富な叩き上げや今後10年20年先の海軍を担う若手士官が被る。恐らく自分の様な高級将校は左遷程度で済み、お咎めというお咎めもなく終わるだろう。だからこそ、この手段は使えない。

かと言って、敵に降伏する訳にもいかない。降伏すれば自分達は助かるだろう。だが逆に今度は家族が裏切り者の汚名を着る羽目となり、恐らく高級将校クラスの妻ともなれば「私の死を持って謝罪を」とか何とか言って自殺する者すら出てくるだろう。それでは本末転倒である。

 

「やるしか無い、か.......」

 

カイザルの腹は決まった。もうこうなってしまった以上、戦う他ない。恐らく殆ど全員が死ぬだろう。だがそれでも、やるしか無いのだ。もしかしたら那由多の彼方分の一の確率を引き当て、勝利とまで行かずとも引き分けに持ち込めるかもしれない。敵が何かの拍子に撤退してくれるかもしれない。その可能性に賭け、進むしか無いのだ。

いつの日かこの無意味で悲惨な運命しか待たぬ進撃に、この艦隊に後に続く者達が意味を付けてくれる。その時に、この進撃の意味は初めて生まれるだろう。そうであって欲しいと願って、カイザルは通信室を出た。

 

「提督、次の作戦はどうなさいますか?」

 

「ネーロン指揮下の艦隊を動かす」

 

「では航空攻撃ですな?」

 

「あぁ。我が艦隊は前進し、然る後、敵艦隊との決戦を行う。忙しくなるぞ!!」

 

「何の為の参謀ですか。提督の為なら幾らでも!」

 

カイザルはすぐに参謀と共に作戦を練り直す。練り直された作戦は即座にネーロンにも伝えられ、夜明け前、第二艦隊から1609機もの大編隊を皇国艦隊へと送り出した。

 

 

 

数時間後 総旗艦『日ノ本』 司令長官室

「ふぁい、もしもし?」

 

『長官。敵が動き出しましたよ』

 

艦内電話のコール音で起こされた神谷の耳に入ってきたのは、最も嬉しい知らせであった。すぐに着替えて、中央作戦室へと走る。

中央作戦室には既に幕僚達が揃っており、中央の球形立体映像には敵の位置や進路が投影されている。

 

「諸君、状況は?」

 

「ハッ。0500より敵機動部隊より、艦載機発艦を確認。0600には編隊を完成させ、現在、我が艦隊に向けて飛行中です。機数は概算で1600機程度かと」

 

「機体の構成から見まして、恐らく我が艦隊の撃滅が目標でしょう。会敵予測は恐らく、昼前ですな」

 

加藤と牛嶋からの報告が上がる。敵が攻撃、それも航空機で攻撃してくれたというのなら好都合だ。最高の状況と言っていい。

 

「現在はE2辺りが追いかけてる感じか?」

 

「はい。本艦の所属機が追跡中です。勿論、高高度かつギリギリまで離れておりますし、護衛機もついております。安心を」

 

「そのまま追跡を続けさせろ。もし燃料切れとかで交代するとしても、くれぐれも慎重に。それから、そうだな。0930より本艦の航空隊を上げろ。制空装備だ」

 

「つまり、アレを試すと?」

 

「流石にレシプロ相手には贅沢な品だが、そろそろ奴らも暴れたいだろうよ。チュートリアルって事で、思う存分暴れて貰おうじゃないか」

 

そういうと、神谷は「それじゃ俺は飯行ってくる」と言って食堂へと向かった。本来なら士官室で食べるのが慣例だが、神谷の場合は朝食とカレーの日だけは兵員食堂で取る。こっちの方が自由におかわりできるし、兵や下士官と話すのが楽しいのだ。

 

「おっ!今日のメニューは……」

 

「今日のメニューは米、ネギと大根の味噌汁、だし巻き玉子、赤ウィンナー、海苔、タラコ、沢庵、デザートにみかんゼリーですよ」

 

先に並んでいた顔馴染みの水兵から今日のメニューを教えて貰う。因みに本来なら全員萎縮して食事も喉に通らないだろうが、ふつうに見慣れた光景となっている『日ノ本』では、さも当然の様に全員振る舞っている。食堂で会った兵や下士官達から「あれ、今日はこちらですか?」とか「長官。だし巻き、マジうめーっス」とか言われ、逆に神谷も気さくに返す。ある意味、異質な光景と言えるだろう。

 

「いただきまーす!!」

 

適当な席に着いて、食事を始める。やはり美味い。知っての通り軍隊は基本的に欲を抑えられる環境にあるので、三大欲求で一番満たしやすい食事は特に気を配られる。そして海軍は食事に関しては天下一品。しかもこの『日ノ本』は、軍の最高指揮官たる神谷が乗る事を想定した艦。乗り込む給養員も一流シェフ並みの大ベテランが配属され、最新鋭艦なので調理設備も最高クラスの物を装備している。不味い訳がない。

 

「ははっ。長官、そんなに急いでは喉に詰まらせますよ?」

 

「うるせー兵曹長!飯が美味いのが悪い!!」

 

「そうすっよ兵曹長。こんな美味い飯、掻き込んで食わねぇと失礼ってもんです。ねぇ長官!」

 

「そうだ!よく言った一等兵!!」

 

幾ら皇国側のトップと言えど、まだ普通に若い。ぎりぎりがギリギリ頑張ればお兄さんで通る。対して幹部達は基本年上だ。周りの側近クラスは若い者もいるが、それでも全体で見れば基本おじいちゃんクラスの年上ばかり。プライベートの話になれば、一気にジェネレーションギャップが顔を見せる。

まだ「最近孫がなー」とか「ウチの娘がなー」系統の話題なら良いのだが、昔のゲーム、アニメ、漫画の話とか野球とかの話になると、もう訳が分からない。特に好きだったアイドルとか音楽ユニットの話ともなれば、何が何だか。曰く「アレもう暗号。JUMPがどうだ、スマップだかスリップが何だ、ポリコレだのぴろゆきだの、なんとかタケシ弁護士だの。マジで分からん」らしい。

朝食を終えて、そのまま執務室で執務をすること数時間。遂に作戦開始時刻間近となり、格納庫内は慌ただしくなる。

 

『発艦準備ー。発艦準備ー。発艦準備ー』

 

「発艦準備だ!!戦闘機降ろすぞ!!!!」

 

「制空装備だ!!準備急げー!!!!」

 

熱田型では発艦口は後部甲板の1箇所のみであったが、この『日ノ本』では中央部に2箇所、後部に一箇所の計3箇所に増えている。更に格納庫も改良され、3層の甲板を有している。1層目は航空機、2層目にはAVC1突空、3層目にはヘリコプターを装備している。

更に1層目と2層目には左右にも3段の格納スペースがあり、1段に付き戦闘機を4機、輸送機なら2機を駐機できるスペースがある。この区画が1層目には左右合計30箇所、戦闘機360機を格納でき、2層目には左右合計20箇所、輸送機120機を格納できる。入庫、出庫時には床ごと大型クレーンで釣り上げて行う。

しかも各層には武装を円滑に装備できる様、甲板自体に武装を運ぶコンベアが地下に走っている。これにより弾薬庫からスムーズに運送でき、所定区画に配置すれば自動で装備までしてくれる。特に一部ミサイルは機体上部に装備する場合があるので、この装備があって初めてF8CZ震電IIタイプ・極の長所を活かせるのだ。

 

「発艦口解放!!」

 

「アイ・サー。戦闘機発艦口解放、カタパルトに電力伝達開始。信号灯展開」

 

格納庫内にある発令所も慌ただしくなってくる。クレーンやコンベアの操作に追われ、同時に艦艇自体の発艦準備も行っている。パイロット達も自身の愛機に乗り込み、エンジンに火を灯して暖機運転を開始。機体のチェックに取り掛かる。

一方、艦中央部のUAV格納庫でも発艦準備が行われていた。こちらはリボルバー発艦方式を採用しており、格納庫中央部にリボルバー型のエレベーターを配置。下段で弾丸をこめる様に無人機を配置していき、頂上に到達すると発艦する。下段に到達すれば機体をまた配置し、上についたら発艦口へ送る。このシステムにより素早い発艦が可能になっている。

 

「発艦準備完了!!」

 

「戦闘機隊、発艦せよ!!」

 

これより数時間後、震電IIタイプ・極とMQ5飛燕が大空へと羽ばたいた。飛燕は防空に残り、震電IIタイプ・極は攻撃隊の迎撃に当たる。各震電IIタイプ・極は、一度高度を取り、本部艦隊直上に布陣する空中戦艦『パル・キマイラ』の後方にて編隊を構成。構成完了後『パル・キマイラ』の真上を掠めて、敵編隊に向かう手筈になっている。

 

 

 

発艦開始直後 空中戦艦『パル・キマイラ2号機』 艦橋

「艦長」

 

「なんだね副長。漸く彼らに動きでもあったのかね?」

 

「そうです。どうやら、戦艦から戦闘機を発艦させている様です」

 

「戦艦から?それはそれは。かなり興味深いねぇ。すぐに魔導映像送信機で撮影したまえ」

 

「もうやってますよ」

 

映像を確認すると、真下にいる『日ノ本』の艦尾と艦中央部から戦闘機が発艦しているのが見える。機体の形状は何処か先導してくれた戦闘機を思わせるが、明らかに違う。恐らく強化された機体だというのは、科学技術を用いた兵器に疎いメテオスでも分かった。

 

「にしても、何だか巨大な機体だねぇ。あんなずんぐりむっくりでは、かなり遅いんじゃないのかねぇ?」

 

「エンジンは巨大ですからスピードは出るかもしれませんが、恐らく機動性は劣悪でしょうね。もしくはスピードも遅い代わりに、ペイロードを大きくとっているのかも」

 

副長の予測は普通に考えるのなら、全然正しい物である。大きさだけで言えば、F15イーグルやMiG25フォックバットよりもデカい。伊達にエンジン4基も載せている訳ではない。この辺りの機体よりもデカいとなると、本来なら機動性は劣悪である。それも速度極振りの機体ともなれば特に。

実際、MiG25は2023年時点に於ける最速の戦闘機であり、マッハ3を叩き出していた。だが完全な直線番長であり、速度が乗ればそのデカさも相まって中々曲がらない。機動性は他の戦闘機に劣っていた。逆にお隣の北朝鮮でも使われているMiG21は高い機動性を誇っており、本来なら機動性と速度はどちらか一方にしか振れないのだ。

だがそれを打ち崩す変態機が現れた。それが震電IIタイプ・極なのである。この機体、速度はマッハ6とか出すにも関わらず、本気を出せばレシプロ機よりもグリグリ曲がる。その機動性はこの後の戦闘でも明らかになるので、そちらに見送ろう。

 

「あの白い機体。アレは確か、カルトアルパスの戦いに来た機体ではないのかね?」

 

「しばしお待ちを。写真と確認してみます」

 

士官の1人が報告書を棚から引っ張り出し、そこに貼られている飛燕と写真を見比べる。特徴的な流線型の形に、ブーメランの様なL字型っぽい翼。間違いなくMQ5飛燕である。

 

「恐らく同タイプの機体と思われます。少なくとも側面は同じかと」

 

「あの機体は海上でも使えるのだねぇ。報告書にも書いておきたまえ」

 

「それにしてもあの機体、何処に人が乗るんですかね?」

 

「寝そべっているか、或いは高い知能を持つ小型動物でも乗せているのかもしれない。もしくは遠隔操作かもしれないねぇ」

 

まだミリシアルには『AI』や『無人機』という発想はない。砲塔の無人化は行われているが、これはあくまでコンピューターの次元の話。プロセス自体はレーダーが敵を捉え、それに合わせた武装が火器管制レーダーを照射し、ロックオンして発射という物である。

対してUAVはそこに機体を飛ばすプロセスが加わり、飛燕の場合は完全自律型の歴とした戦闘機。そんな単純な単一思考では不可能だ。1つ1つの思考は単純でも、それを同時かつ瞬間的に行う必要が出てくる。普通のコンピューターの処理ルーチンでは到底不可能だ。まだ原始的なコンピューターしか知らないミリシアルでは、AIの発想は余程の天才か変人でなければ思い付きもしないだろう。

 

「ん?なんだこれ」

 

「どうした?」

 

「魔導電磁レーダーの調子が悪いのか、飛び立った皇国の機体の反応が小さくなっていき、遂には消えてしまっていて…」

 

「堕ちたのか?」

 

「いえ。堕ちたのなら、全機もれなく墜落した事になります。わざわざ戦闘機が海に突っ込みますか?」

 

先輩士官がレーダー画面を覗き込む。確かにレーダー手の言う通り、機体が飛び立ってから海に突っ込んでいるかの様に機体の反応が消えていっている。しかも探知距離的には、普通に通常出力でも探知できる距離である。

 

「機械室!レーダーに異常はあるか?」

 

『いえ。各部正常、異常は見受けられません』

 

「どうしたのかね?」

 

メテオスもレーダー手達がワタワタしているのに気付き、話を聞きに来た。話を聞いたメテオスは、一番やってはいけない手段で探知しようとしてきた。

 

「それなら、射撃指揮魔導電磁レーダーを照射してみたらどうかね?」

 

「成る程。確かに射撃指揮魔導電磁レーダーは、通常の魔導電磁レーダーと違い指向性を持っている分、広範囲はカバーできませんが出力も大きいですからね」

 

「戦術員、直ちに射撃指揮魔導電磁レーダーを照射したまえ。目標は皇国の戦闘機。一番遠い奴にだ。ただし、間違っても撃ってはくれないでくれたまえ?」

 

「分かりました」

 

この射撃指揮魔導電磁レーダーとは、要は火器管制レーダー、所謂『FCS』と呼ばれる物ある。このFCSは火器管制、つまり攻撃を行う時に使用するレーダーなのだ。よく「ロックオン!」というセリフがある。このロックオンするのに使うのだが、これをされると攻撃ボタン押すだけで敵を倒せてしまう。その為、訓練では「FCSを照射される=被弾する」という風に扱われる。言ってしまえば「俺はいつでも、お前を殺せるぞ」という宣言に等しい。

いつぞやに起こった、韓国海軍の駆逐艦による自衛隊機へのレーダー照射事件。そのレーダーがFCSだったと言えば、どの位不味いか分かるであろう。よりにもよって、メテオスはこれを照射しやがったのである。

そのお陰で、最初の方で飛び立った機体のコックピットには警報が鳴り響いた。

 

ブーブーブーブー

 

「ロックオンされた!?」

 

すぐにコックピットのレーダー画面上では、ロックオンしてきた『パル・キマイラ』を敵として表示される。これは演習ではなく実戦。友軍でも許される行為ではない。

しかもこの情報は、第一艦隊各艦にもデータリンクを通して即座に共有されており、各艦にも緊張が走る。

 

「対空戦闘用意!!!!」

 

「対空戦闘よーい!!」

 

「ミリシアルの野郎、一体何のつもりだ!!もういい!!!!全艦、全武装で奴を狙ってやれ!!!!驚かしてやるんだ!!!!!」

 

「アイ・サー!!主砲、副砲、砲撃用意!!弾種、時雨弾!!!!」

 

「UAV及び上空待機中の各機は『パル・キマイラ』をロックし、警告射撃を実行せよ」

 

流石にこれには神谷もキレた。本当に迎撃するつもりは無いが、少しは驚かす、いや。脅しをかけなければ気が済まない。というかこれ、普通に外交問題である。要は友軍が自軍に銃突き付けた様な物なのだ。後で川山経由で厳重に抗議を入れなければならない。

 

ビーー!ビーー!ビーー!

 

「何の警報だ!?!?」

 

「か、艦隊の各艦から射撃指揮魔導電磁レーダーが照射されています!!!!それだけじゃない。戦闘機からもです!!!!うひゃぁっ!?!?」

 

『パル・キマイラ』の真上を、無数のオレンジ色の線が通過した。撃たれたのである。勿論これは警告射撃なので、威嚇に過ぎない。当ててはいないが『パル・キマイラ』の乗組員は兵士ではなく、どちらかと言えば研究者。目の前に迫る死の恐怖に、緊張と動揺が走る。

 

「艦長!皇国艦隊から通信です!!」

 

「すぐに繋げたまえ!!」

 

メテオスは通信員からマイクをひったくる様に受け取ると、すぐに文句を神谷へと喋り始めた。

 

「いきなり友軍を攻撃してくるとは、野蛮なのだね君達は!!」

 

『テメェ、そんなふざけた事抜かすなら撃墜するぞ。そもそもそっちが先にFCS、火器管制レーダーを我が方の戦闘機に照射した。それが意味する事は攻撃な訳だが、其方は我々と一戦交えたいという物でいいのか?』

 

「.......つまり君達は射撃指揮魔導電磁レーダーの照射が分かると?」

 

『わからなきゃ攻撃避けられないだろうがッ!!!!テメェら、本気で俺達と戦争するつもりか?いいぜ、相手になってやるよ。ほら、撃ってみろや。あぁ?撃ってみろやッ!!!!!』

 

メテオス含め、全員が冷や汗を滝の様に流す。彼らは軍人ではなく研究者、もしくは技術者。軍人としての訓練は受けておらず、間近で『死』を経験したことがない。一方の神谷は、何度も死線を潜り抜けた歴戦の猛者。兎が龍に睨まれている様な物だ。例え刀や銃を突き付けていなくとも、まるでそうであるかの様にメテオス達には感じられるのだ。

とはいえ、メテオスも今回ばかりは同情の余地がある。メテオス含めミリシアルの人間にとって、射撃指揮魔導電磁レーダーはオーパーツそのもの。それを運用しているのは自国を除けば、ラヴァナール帝国のみという考えだったのだ。幾ら皇国が強い国という認識が生まれてきていたとしても、まさかそんなオーパーツを保有していて、それを探知する機能が戦闘機にまで搭載されているとは思ってなかったのだ。

 

「それはすまなかったねぇ。まさか、君達が射撃指揮魔導電磁レーダーを運用し、しかも戦闘機にまで探知装置を搭載しているとは思わなかったのだよ。そもそも我々は、君達の戦闘機が魔導電磁レーダーから消えたから捜索のために使ったのだ。許してくれたまえ」

 

『だったらそれを先に言えよ。はぁーぁ、どうせ敵が来る。総員、そのまま戦闘配置にて待機。FCSは解除しろ』

 

そういう理由ならFCSを解除するしかない。流石に旧世界なら、その理由はまず通らない。だがこの世界に於いて、現状FCSやそれに準ずる兵器を運用しているのは皇国以外ならミリシアルのみ。それも秘密兵器級の兵器にしか搭載されてないのだから、そういった了解を知らないのも無理はない。

 

『ついでだ。ウチの戦闘機が消えた理由も教えてやる。我が国の戦闘機には、ステルス塗装が施されているんだ』

 

「ステルスとは?」

 

『そっちの魔導電磁レーダーの仕組みは知らんから、こっちのレーダーの仕組みで説明するが、レーダーってのは平たくいえば電波飛ばして、その跳ねっ返りで目標の位置を測定する。

皇国の機体はそもそもこの電波の反射断面積、つまりレーダー波を反射する面積を小さく抑えているし、他方向にレーダー波を逃す形状にもなっている。更に塗料にも電波吸収塗料を採用しているから、レーダー上では自機を小さく表示させたり、距離によっては完全に消す事もできる訳だ』

 

「参考までに、何故そのような機能が搭載されるかに至った理由を聞けるかな?」

 

『そんなの簡単だ。旧世界に於いてレーダー技術ってのは、ありふれた物だった。軍事は勿論、気象観測、民間航空や船舶の管制、果ては天体観測にもこの技術が応用されている。故にレーダーありきの戦闘がスタンダードになり、だったらレーダーに捕まりにくい技術を作ろうっていう方向に世界中がなっていただけだ』

 

この話にメテオスはただただ驚かされた。この世界にも魔力探知レーダーという物はある。だがこれは魔力を探知する装置であって、レーダーの名を冠していても、我々の知るレーダーや魔導電磁レーダーとは全くの別物なのだ。技術体系的にも、この2つに繋がりはほぼ無いと言っていい。この世界ではそれがスタンダード、常識だったのだ。

だが皇国が元いた世界では、魔導電磁レーダーが民間にまで普及しており、恐らく軍事の世界では当たり前の装備なのだろう。そんな世界は非常識すぎる世界であり、言ってしまえば「一家に一台宇宙船があるよ」と言われている様なレベルなのだ。普通に考えて、我々の世界ではあり得ない。だがそれが普通だと言われれば、物凄い衝撃だろう。その衝撃をメテオスは味わっているのだ。

 

『それから、そっちに警告しておく。現在、グラ・バルカス帝国の大編隊がこちらに接近中だ。我々は敢えてこれを航空隊で殲滅せず、艦隊まで誘き出す。その為、其方にも自艦防衛の為、最低限の火器使用を許可する。気兼ねなく撃ってくれ』

 

「何故そこまで無意味な事をするのだね?」

 

『簡単だ。その方が、アンタらの研究資料が増えるだろ?』

 

とは言っているが、実際は違う。本当の真意はミリシアルに皇国と敵対する事が、どんなに恐ろしいことかを刻み込む為の物なのだ。今後、世界情勢は目まぐるしく変わる。よく「あの国はヤバい。滅ぼしてしまおう」という各国の思惑で滅ぼされる国が小説なんかであるが、もしその国が各国連合の多国籍軍だったとしても勝てない様な相手だったら、そんな考えには至らない。そのための抑止力兼デモンストレーションの為に、彼らには生贄になってもらうのだ。

 

 

 

 

 

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