最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第七十五話煉獄と聯合

FCS関連のゴタゴタより数分後 本部艦隊より北東200km上空

「それにしても、物凄い数ですね隊長!」

 

「あぁ!何せ空母艦載機全力出撃だからな!!」

 

前回報告が上がっている様に、現在第二艦隊の航空母艦各艦からは延べ1,618機という、空前絶後の航空機が編隊を組んで究極超戦艦『日ノ本』率いる本部艦隊に攻撃を仕掛けようとしている。陣容は最新鋭戦闘機、アンタレス改の他、安定のシリウス型爆撃機、そして攻撃機も最新鋭機であるアルゲバル型雷撃機を有し、それぞれアンタレス改478機、シリウス509機、アルゲバル631機がこの攻撃に加わっている。

アンタレス改はアンタレスよりも武装、防弾装備、機体強度が向上し、その分重量も嵩んでいる。だが新型エンジンの装備によりエンジン出力が大幅に向上した上に自動空戦フラップの導入で、高い機動力を有する機体に仕上がっている。アルゲバルもリゲル以上の快速と防弾性能を有し、エアブレーキとフラップも装備している事から本職には負けるとは言え場合によっては戦闘機として運用できる優れた機体である。

この機体達であれば、例え全盛期の旧大日本帝国海軍とて危険だと言えよう。だがまあ安定の下りではあるが、相手は皇国海軍。それも『日ノ本』以下、熱田型8隻をも擁する最強の艦隊。どう足掻こうが勝てる訳ない。しかも今回は、世界最強の戦闘機が最初のおもてなしを担当する。どうなるかは、もうご想像通りである。

 

「それにしても、変な命令ですよね!何が何でも敵に辿り着けって!普通の命令なら沈めろとかなのに!」

 

「まあ兵隊は知らなくてもいいさ!言われた事に最善を尽くすのみだ!!」

 

実はこの攻撃隊、決死隊なのだ。本人達にその自覚はないが、ネーロンは彼らを捨て石にする腹積りなのである。というのもバイツから「戦え」と言われたとしても、現状で皇国に勝てない事はわかっている。ならば敢えて壮絶かつ悲惨な負け方をして、今後続く戦闘に一石を投じようという方向性になった。その為にはド派手な艦隊を組んで、ド派手にやられる必要がある。ともなれば艦隊を合流させるしかないのだが、その間に敵の注意を他に背けておきたい。だったら燻ってる攻撃隊を使い、艦隊決戦で恐らく役立たずとなる航空機を今のうちに使い、体裁的にも一応は攻撃するので、今後「機動部隊が無能だった」というレッテルを貼られずに済む。

無論、『無能』というのを回避するのは『無能だった=俺達は無能じゃないorこの艦隊は勇敢だから、絶対に問題ない』という思考に至らせない為である。シナリオとしては「艦隊の全てが攻撃するも、力及ばず多数が撃沈されました」という、考え得る最悪のバッドエンド方向に持っていかなければ意味がないのだ。そこでネーロンは約半数の攻撃を向かわせたのである。この命令も、辿り着くのが難しいと分かっているからこその命令なのだ。

 

『こちらベリオ1番!前方に何か見える。.......あれは..............敵だ!!全機、戦闘態勢に移れ!!!!』

 

本来なら探知前の圧倒的遠距離からミサイルを叩き込む、アウトレンジ戦法が皇国軍の基本戦略。最近は恐怖を煽るべく、ギリギリ目視できる位の距離からミサイルを撃ったりもするが、少なくともガチガチのドッグファイトをする事は少なかった。だがF8CZ震電IIタイプ・極の場合は、このドッグファイトでこそ真価を発揮するのだ。

 

「敵さん、ドロップタンクを落としたな」

 

『艦長からの命令では、攻撃隊にはちょっかい掛けずに戦闘機の相手をする、でしたよね?』

 

『あぁ。だがちょーっと端を食う位は良いとさ』

 

「間違えてもそれをメインにやるなよ?俺達は戦闘機共を。艦隊は攻撃隊を相手するんだ。さぁ、この機体が伊達に極なんて大層な名前背負ってないって所、グラ・バルカス帝国の皆々様に見せてやるぞ」

 

各機はミサイルではなく、まずはこの機体から新装備された固定兵装、連装レールガンを選択する。砲弾は幾つか種類があるが、今回の任務は制空戦闘なので拡散榴弾を装填。単一の重装甲目標には不向きだが、面制圧や単一高機動軽装甲目標には絶大な威力を発揮する。

 

「野郎、絶対に攻撃隊へは指一本触れさせねぇぞ!!」

 

『隊長!今何か、敵の下で光』

 

レールガンの弾速はマッハ7.5をマークする。そんな速さにプラス、相対速度も追加される。この速さを目で終える者がいれば、それはもう人間業ではない。超能力者の域だ。普通は何が起きたか分からず、何も出来ずに終わる。実際、レールガンの一斉射で一気に50機以上のアンタレス改が撃墜されている。

 

「全機突撃せよ。サーカスの開幕だ」

 

『奴ら目ん玉回さなきゃ良いがな』

 

『それはそれで面白そうで良いじゃないですか』

 

震電IIタイプ・極は普通の戦闘機ではない。レールガンやらTLSやら全方位多目的ランチャーやらは、この機体の強さをより盤石にする要素にすぎない。この機体が最強と呼ばれるのには、しっかりとした所以がある。

 

「奴ら、よくも仲間を.......。第一小隊、全機続け!!!!ヘッドオンで奴らを堕とす!!!!」

 

どうやら実験台は、この勇敢にして血気盛んな第一小隊の皆様らしい。何も知らない第一小隊のアンタレス改3機は、そのまま震電IIタイプ・極の編隊の中に突っ込んでいく。

 

『1機、ヘッドオンで来ますよ』

 

『どうします?』

 

「.......タイミング合わせて避けて、そのまま攻撃だ」

 

一方の震電IIタイプ・極の方も3機出し、それぞれアンタレス改の真正面に付ける。例え下手くそが撃とうと、射程にさえ入っていれば確実に当たるだろう。だがそんな事をされては、第一小隊の皆様的には皇国側が舐めてる様にしか思えない。

 

「ふざけやがって!!!!」

 

「仲間の仇!!!!」

 

「クソ皇国に報いを!!!!!!」

 

パイロット達は好き勝手に罵り、そして発射トリガーを撃った。先述の通り、どんな下手くそだろうが新米どころかパイロット候補生でも当てられる。しかも撃ったのは20mm機関砲と12.7mm機関銃を2門ずつの計4門。例え爆撃機だろうと、ほぼ確実に堕とせる。まして戦闘機なら間違いなく堕とせるだろう。

だが次の瞬間、あり得ない事が目の前で起きた。震電IIタイプ・極が、航空機のできる挙動じゃない挙動をしたのだ。真ん中の機体は機首を下にしてホバリング、左右の機体はそれぞれ機種を左と右に90°回転させ、横転させてホバリングしたのだ。アンタレス改は何も出来ずそのまま真っ直ぐ飛んでしまい、機首の前を通過した瞬間、機関砲で穴だらけにされてしまった。いくら装甲やら機体強度を上げていようと、30mmバルカン砲4門の前には無意味だ。

 

「One kill!」

 

震電IIタイプ・極の真の恐ろしさとは、このあり得ない挙動である。震電IIタイプ・極には各所にスラスターを標準搭載しており、これにより通常の航空機であれば即座に墜落する様な無茶苦茶な挙動を可能としている。これにより各種マニューバへ即座に移行でき、更にはその姿勢をキープすることも出来る。極端な話、コブラの機首を上に向けたままの姿勢で飛んだり、延々クルビットし続ける事だって出来るのだ。

まあ前者はともかく、後者は機体云々以前にパイロットが酔ってゲロをマスク内で撒き散らしながら大回転する羽目になるので、全くもってオススメはできないが。

 

『うわぁぁぁ!!!!やめろ!!!やめてくれ!!!!!』

 

『なんなんだよコイツら!!!!!』

 

『こんな動き、聞いてないぞ!?!?!?』

 

『チクショッ!!上がれよおい!!!!あが———』

 

『ケツに憑かれた!!!振り切れない!!!!!』

 

『誰か!!援護を!!!!!えん——ガッ!』

 

出鱈目な機体性能の前に、歴戦のパイロット達はまるで新兵の様に震え上がり、無線では断末魔の悲鳴が木霊する。中には乱戦の瞬間にたまたま近付いて来た震電IIタイプ・極の後ろを取った者もいたが、次の瞬間にはスラスターを用いた機動で逆に真上を取られてしまい、そのまま機関銃に穴だらけにされてしまった。

だが攻撃隊には幸か不幸か、迎撃に向かったアンタレス改424機が足止めした事で艦隊に向かう事ができた。お陰で攻撃隊には被害が出ていない。まあ実際の所は、そういう段取りになっていただけで意図的に逃がされているのだが、彼らにそれを知る由はない。ついでに言えば、普通に追いつこうと思えば追い付ける。何せマッハ6の超快速機。たかだか頑張っても、精々500km後半位しか出せないレシプロ機如きに遅れをとる事はまずあり得ない。

 

「敵機大編隊来ます!!!!機数、1,194!!」

 

「約1200って、マジか」

 

「向こうさん、物量だけは化け物ですからね」

 

「いやいやいやいや牛嶋?こっちも物量、かなーりお化けだからな?っていうか、なんなら向こうより多いからな?質はもっと上だからな?」

 

加藤がそう突っ込んだ。だってインフェルノ艦隊も空前絶後の物量と言えるが、こっちは八個主力艦隊と六個潜水艦隊がいる。艦艇数は約1.5倍、航空機数に至っては4倍以上の差がある。しかもそこに骨董品と最新鋭兵器という、マンパワーではどう足掻いても塞げない格差もあるのだ。正直、牛嶋の発言は単純な煽りとすら言える。

 

「敵、ミサイル射程圏内です!!」

 

「艦長、撃ちますか?」

 

「いや、ミサイルは撃たなくていい。今回は新兵装を試したい。主砲も使うな。相手はレシプロ機だ。両舷の機関砲、両用砲でも充分対応できる」

 

「アイ・サー」

 

とは言っているが、その実は節約である。ミサイルはこの後起こるだろう艦隊決戦まで取っておきたいし、なるべく使わずにしておけば経費削減にもなる。

 

「敵が見えた!!!!」

 

『隊長!!艦が多過ぎます!!!!目標を固めなくては!!!!』

 

「お前達、雑魚に構うな!!!!俺たちが狙うはただ一つ、先陣を切る超大型戦艦ただ一つだッ!!!!!同時攻撃で行くぞ!!!!!!」

 

本隊たる第一艦隊は『日ノ本』以下、総艦艇数626隻という大規模艦隊である。知っての通り熱田型も全艦ここに配属されており、単純な投射火力であれば全艦隊最強となる。とは言え勿論、周囲には草薙防空システム搭載駆逐艦に、対空番長の摩耶型も展開している。突破は容易ではない。

 

『隊長!!上を!!!!!』

 

「.......あれはミリシアルの円盤戦艦じゃないか?」

 

「報告にある機影と一致しています」

 

「直掩隊聞こえるか?上の円盤、任せてもいいか?」

 

『了解、隊長殿。よっしゃ野郎共、増槽を捨てろ!!!!行くぞ!!!!!!!』

 

アンタレス改の編隊が攻撃隊から離れ、『パル・キマイラ』へと向かうべく翼を翻す。攻撃隊も二手に別れ、右と左から挟み込むように布陣。更に爆撃隊は上へ、雷撃隊は下へと向かい、四方向からの攻撃が行われようとしていた。

 

「敵は本艦が狙いのようです。四方向からの同時攻撃ですね」

 

「敵さん練度高いな。そんじゃま、暴れようか。全艦対空戦闘!!!!」

 

「対空戦闘!!」

「各両用砲、スタンバイ。対空モードへ」

「機関砲スタンバイ」

「TLS、エネルギー充填開始。同時にコンデンサーへの回路解放」

「パルスレーザー、エネルギー電導終わる」

 

「対空戦闘用意良し!!」

 

相手がわざわざ相手をしてくれると言うのなら、こちらも答えるのが礼儀という物だろう。いい実験サンプル兼生贄が向こうから出向いてくれたのに、それに答えない馬鹿はいない。

 

「全機、攻撃準備完了!!アタックポイントまで10マイル!!!」

 

「なんてデカさだ。グレードアトラスター級を超えてやがる.......」

 

流石に『日ノ本』相手では「たかが1門の砲で、何ができる!!!!」なんて死亡フラグは建てられない。例え知識が無くとも、一目でこの海の覇者たる艦だと分かる。

 

「目標群アルファ(右翼雷撃隊)及びチャーリー(左翼雷撃隊)、射程圏内に突入!!!!」

 

「両舷多目的ランチャー解放!!撃ち方始め!!!!」

 

「サルボー!!!!」

 

船体中央部の装甲板が上下にスライドし、内部からミサイル発射口が勢いよくせり出してくる。次の瞬間、無数のマイクロミサイルが飛び出した。その数、実に1万発。もう途方もない数だが、これで驚かれては困る。本気を出せば90万発同時に撃てるのだから。

とは言え、これ1発1発があんまり威力がないし、射程も短い。ついでに誘導性能も(皇国基準で)高いわけではない。威力としては大体携行式対戦車ミサイル程度で、誘導性能は百発百中というより十発十中というなんとも言えない兵器なのだ。というのもこの兵装自体、所謂「下手な鉄砲でも数撃ちゃ当たる」と「腐っても鯛」という考えで生み出されている。例え誘導性能が悪くとも、当たれば航空機なら撃墜は必至。艦艇も何十発と当たれば無視はできない。何よりパッと見はある意味一番派手なので、脅しには丁度いい。ついでに大量に撃っちゃえば、誘導性能の悪さもカバーでき面制圧や大型目標への攻撃に使えるだろうという考えで開発されたのだ。

 

『白煙視認!!ロケット弾と思われる!!!!』

 

「全機、海面スレスレで避けろ!!上に上がったら対空砲の的だぞ!!!!」

 

この指示から数秒もしないうちに、右翼と左翼の先頭集団はミサイルの弾幕に飲まれた。

 

『クソッ、翼が折れ———』

 

『6番機!体制を立て直せ!!海に突っ込むぞ!!!!』

 

『ヤバいミスった!!!』

 

「指揮官機墜落!!以降は本機が指揮を執る!!全機、進路このまま!!!!」

 

既に両翼共に150機は堕ちたが、今回は元の母数が多い。問題はない。それにミサイルによって撃墜、或いは回避に失敗して海に突っ込んだ機体の水柱のお陰で、他の機体はミサイルを回避する事が出来た。

だがミサイルを回避したからといって、まだまだおもてなしは終わらない。コース料理で言えばマイクロミサイルは前菜のサラダ。まだオードブルに、外しちゃいけないメインディッシュがまだ残っている。

 

「目標群アルファ、153機撃墜!目標群ブラボー、149機撃墜!尚も近付く!!!!」

 

「近距離対空戦!!両用砲、機関砲、パルスレーザー砲、自由射撃開始!!!!」

 

「アイ・サー!!両用砲攻撃始め!!」

「機関砲、攻撃始め!!」

「パルスレーザー、照射開始!!」

 

船体各所に所狭しと設置された両用砲、機関砲、パルスレーザー砲が動き出す。その弾幕は歴戦のパイロット達とて、未だ未知の濃密な弾幕であった。しかも僚艦たる熱田型8隻からも同様に攻撃されているので、毎秒10機近くが堕とされていく。

 

「目標群チャーリー(右翼爆撃隊)及びデルタ(左翼爆撃隊)、急降下開始!!」

 

「TLS全方位照射!!フェンスを張ってやれ!!!!」

 

「TLS、照射!!!!」

 

次の瞬間、『日ノ本』は禍々しい赤い光に包まれた。船体各所のTLSは航空機に搭載されるTLSと物は殆ど一緒だが、航空機は電力が限られるのに対し艦艇は問題なく電力を賄える。その結果、威力も射程も桁違いだ。まるでウニの様に全周に赤いレーザーを撒き散らし、航空機を溶断(・・)していく。撃墜とか撃破とか、そんな可愛らしい物じゃない。そんな攻撃を高密度で加えてくるのだ。ありの子一匹通さない、そんな鉄壁の防御。フェンスとは言い得て妙である。

 

「全目標群喪失」

 

「対空戦闘用具収め」

「対空戦闘用具収めー」

 

「艦長、敵機動艦隊に張り付かせていた潜水艦より報告です。艦隊は、本隊との合流を目指し進路を変えたと」

 

「それは上々。どうやらこの海戦、俺の想像通りになりそうだ。牛嶋、全艦に伝達。『final phase発動に備え』だ」

 

この『final phase』そのままの意味であると同時に、それ自体暗号も暗号となっている。その意味とは「作戦は当初通り行う。全艦集結せよ」である。このfinal phaseとは勿論、艦隊決戦である。しかも今回使う戦術は、神谷考案の艦隊決戦。神谷自身、今すごくワクワクしている。

だがそんなワクワクしてる神谷とは対照的に、上空にいる『パル・キマイラ』の中で冷や汗を滝の様に流す男がいた。メテオスである。

 

「な、なんなんのだ今のは.......」

 

「あんな弾幕、見た事がない.......」

 

「艦隊級極大閃光魔法なのか?にしては威力も何もかもが違いすぎる.......」

 

全てが異次元であった。ミサイルも、展開された濃密な弾幕も、レーザーも、何もかもが「あり得ない」の一言だった。

 

「副長。たしか敵は約1200機、だったよねぇ?」

 

「はい。こちらにも約100機飛来していますので、皇国艦隊には1100機程度が向かっていました」

 

「単刀直入に聞くが、防げると思うかね?」

 

「.......例え全ての艦艇を集結させ、我が『パル・キマイラ』を持ち出したとしても不可能でしょう。可能性があるとすれば、海上要塞パルカオンでしょうか」

 

「君もそう思うか.......」

 

メテオス含め『パル・キマイラ』の乗員は理解した。この世界に於ける最強、少なくとも対空戦闘の最強は大日本皇国であると。とは言えこれを上にどう伝えたものかと頭を抱えていると、通信員から報告が上がった。

 

「皇国艦隊からだと?読み上げてくれたまえ」

 

「ハッ。『発、大日本皇国聨合艦隊司令長官、神谷浩三元帥。宛、空中戦艦『パル・キマイラ』、メテオス艦長。本海戦は先程、いよいよ最終局面に突入した。ついては今夜、初となる新生・聨合艦隊の艦隊決戦をご覧にいれる。我ら聨合艦隊の真髄、しかと見届けられよ』以上です」

 

「こんな文章を送りつけられたら、見たくなってしまうではないか。通信員、『ご招待痛み入る。謹んでお受けする』と返信しておけ」

 

「ハッ!」

 

聨合艦隊、インフェルノ艦隊、『パル・キマイラ』と全ての勢力の準備は整った。特に『パル・キマイラ』というか、メテオスの力の入れ具合は目を見張るものがあった。最初こそしっかり観戦していたミリシアルの首脳陣だったが、ここの所は殆ど見られてすらいなかった。だが艦隊決戦を行うと言われた以上、首脳陣に見てもらうしかない。というわけで態々、皇帝のミリシアル八世に連絡して玉座の間に魔導モニターを引っ張ってくる徹底っぷり。行動力の鬼である。

 

 

 

約12時間後 21:50 究極超戦艦『日ノ本』 CIC

「各員、最終チェック」

 

「艦隊陣形、形成完了」

「航空機、発艦完了。特務部隊も予定ポイントにて待機中です」

「全艦戦闘配置よし」

「全潜水艦、配置完了してます」

「回天出撃準備完了」

 

「よーし、作戦開始だ。通信!全周波数帯で音楽を流せ!!」

 

「アイ・サー!!」

 

実は神谷、余興代わりに1つ趣向を凝らしていた。どうせなら向こうの恐怖を煽ろうということで、とある音楽を流す事にしたのだ。船乗り、それも軍艦乗り的には1番聞きたくないであろう音楽である。

 

「流しますよー」

 

通信員がコンソールを操作し、プレイリストからその音楽を選択する。その音楽が流れた瞬間、まずはいきなり女性らしき聞き取れない声が流れると、おどろおどろしいミュージックがスタートする。暫くすると微かに女性の声で「堕チロ」「沈メ」「沈ンデ溶ケテ、シズメシズメ」と聞こえ出す。

もうなんの音楽か分かっただろう。某大人気ブラウザゲーム。艦隊これくしょんのMI作戦BGM、所謂『シズメ シズメ』である。歌詞と言っていいのか分からないが、先述のフレーズは船乗りが聞きたくない単語達だろう。これを全周波数帯て流しているのだ。

 

「提督!無線に奇妙な音楽が.......」

 

「奇妙な音楽だと?」

 

この事はカイザルにもすぐに報告が上がり、無線兵からヘッドホンを受け取って奇妙な音楽を聞いてみた。だがその歌詞は酷い物で「溶ケテ」とか「堕チテ」とか「壊レテ」とかと続き、終いには「シズメシズメ」とまで言っている。

 

「何なのだこれは.......」

 

カイザルも恐ろしいのか、顔が少し青くなっている。というのも敢えてこの音楽は少し音質を悪くしており、本当にこの海で無念の戦死を遂げた水兵の亡霊とかセイレーン的な悪魔が歌っている様に見せかけているのだ。

だが暫くすると今度はしっかりとした音楽が流れ出す。とは言えこの音楽は『燃え落ちる誇り』というもので、さっきまでの『シズメ シズメ』に歌詞をしっかり付けた物である。だがまあ歌詞は大体3割は『沈メ沈メ』と言っており、船乗り的には航海中に聞きたくない音楽だろう。因みにこれ、ミリシアル側にも流れている。

約10分間の音楽攻撃が終わると、もう一つの仕掛けが動き出す。それは22:00になると同時に発動した。

 

「て、提督!!アレを!!!!」

 

「今度は何なのだ!?!?」

 

音楽の次は光のシャワーが現れたのだ。本当に目の前の上空から無数の線上の黄色い光が、そのまま流れる様に海に向かって落ちていく。文字通り光のシャワーである。

 

「まさか敵の攻撃なのか?」

 

「いえ、被害は出ておりません。精神攻撃ですかね?」

 

カイザル含め、この光のシャワーを目撃している将兵達は何が起きているのか分からず混乱していた。「シズメシズメ」と言い続ける音楽に、光のシャワー。こんなのと戦場で相対する事は、これまでの軍人人生の中で無かった。

だがこれだけでは終わらない。次は光のシャワーをバックに、まるでスロットマシンの様に何かが高速で上から下へ流れてきた。やがてそれが止まると、何かの紋章が現れる。

 

「アレは何だ?」

 

「わかりません」

 

「.......絵と文字ですね。確か「カンジ」とか言う、皇国で使われている文字です」

 

現れたのは今回の作戦に参加した、各艦艇のロゴマークであった。皇国海軍の全ての艦艇には、戦闘機部隊のアイコンの様にマークがそれぞれ存在する。広報やイベントでも使われるし、制服にも腕の部分にロゴマークのワッペンを貼る。今回はこれを使って、演出を行ったのだ。駆逐艦から始まり、突撃駆逐艦、突撃巡洋艦、重巡、軽空母、空母、戦艦、要塞超空母、超戦艦と続いた。

 

「専任参謀、君はアレをどうみるか?」

 

「私としましても、全くわかりません。敵の意図も計りかねます」

 

「うーむ.......」

 

大困惑のカイザルらインフェルノ艦隊の将兵を尻目に、この演出も最後の艦となった。残るは『日ノ本』のみ。これまでは単純にロゴマークが現れて終わりだったが、『日ノ本』だけは違った。まず現れるは菊の御紋。言わずもがな、天皇家の御家紋である。その菊の御紋がくるりと回り、そのまま旭日旗へと変化する。そしてその旭日旗を背に、金色の日本列島が現れ、それと一緒に「日ノ本」の文字も共に現れる。

 

「さぁ、決戦を始めよう」

 

次の瞬間『日ノ本』は海中から勢いよく飛び出し、周囲に海水を撒き散らせながら豪快に登場した。それに合わせて光のシャワーも消え、その背後から戦艦、超空母、超戦艦が姿を現す。

 

「て、敵艦隊目視にて捕捉!!!!超々大型戦艦1、超大型戦艦8、グレードアトラスター級64、航空戦艦24、超大型空母16!!!!」

 

「あれは時間稼ぎだったのか.......。小癪な真似をしおって!全水雷戦隊は重巡を先頭に突入せよ!!!!各戦艦は援護射撃だ!!!!機動部隊も航空隊を発艦させ、敵艦隊に向かわせよ!!!!!」

 

カイザルは即座に命令を飛ばし、艦隊を動かす。とは言え数百隻単位なので、実行までには少し時間がかかってしまう。だがその時間こそが、皇国のチャンスなのだ。

 

「初手から派手にいくぞ。全艦、統制波動砲戦用意。波動砲への回路開けッ!!!!!」

 

「アイ・サー。プラズマ粒子波動砲への回路開きます。非常弁、全閉鎖。強制注入機作動」

 

「艦首解放、プラズマ粒子波動砲展開」

 

統制波動砲戦とは、波動砲を搭載する各艦艇が一斉射撃を行う砲撃方式である。小回りは効かないが、広い面積を一撃の下に消滅させられる利点は大きい。

 

「安全装置解除」

 

「セーフティーロック解除。強制注入機の作動を確認。最終セーフティー解除。トリガー、艦長に回します」

 

「艦長、受け取った」

 

「薬室内、プラズマ化粒子圧力、上昇中。86、97、100。エネルギー充填、120%!!」

 

「波動砲、発射用意。対ショック、対閃光防御」

 

艦橋のガラスに防護シャッターが展開され、外の様子はシャッターに搭載されてるディスプレイに表示される。

 

「電影クロスゲージ、明度20。照準固定!」

 

スコープ内に表示される各艦艇とのリンクも『接続』から『同期』という文字に変わり、全艦が同期し射撃準備完了の合図であるブザーも鳴り響く。

 

「プラズマ粒子波動砲、発射ァァァァ!!!!」

 

ギュゴォォォォォォ!!!!!!

 

プラズマ粒子波動砲は水色の眩い光を放ちながら、前衛にいる水雷戦隊へと突き進む。その数、実に99本。凡ゆる攻撃を防ぐ『日ノ本』のバイタルパートを5隻分は余裕でぶち抜く威力の前では、たかだか駆逐艦やら巡洋艦の装甲など卵の薄皮の如く防御の意味を為さない。この一撃で600隻近くの艦艇が、文字通り消滅したのだ。

 

「ぜ、前衛艦隊、轟ち、いえ!消滅しました!!!!!」

 

「な、何を言っとるか貴様ぁ!!!!」

 

「か、艦長、そんなこと言われてもアレは轟沈なんて生易しいもんじゃねぇ!!!!消滅したんだよッ!!!!!」

 

「艦長やめたまえ!」

 

古参の見張り員に掴み掛かる艦長をカイザルが止める。とは言え、正直今の攻撃でほぼ戦意喪失と言っていい。というかこんな攻撃、予想外すぎる。前衛艦隊が何もできずに一斉に轟沈。というか古参見張り員の言う通り、消滅と言った方が適切なまでの壊滅の仕方をした。こんなの予想しろと言う方が無理である。

 

「こうなったとしても、我々には戦う以外に道が残っておらん。全艦、攻撃を開始せよ」

 

カイザルはそう静かに命じた。こんな戦闘、どう足掻いても負けるだろう。だが仮におめおめ逃げ帰ったとしても、将兵達がどんな目に遭うか想像もできない。であれば前に、ただ前に逝く(・・)しか無いのだ。

 

「これでも撤退してくれないか。まあ予想通りだがな。全軍突撃、奴らを海の底に返してやれ!!!!!!」

 

一方の神谷は堂々と命じた。本音を言えば神谷としては、このまま回れ右して帰って欲しい。ここまでの戦闘とさっきの波動砲で、既に彼らに恐怖は刻み込んだ。今回の戦闘目的である『恐怖』はインフェルノ艦隊に、そして帰還すればグラ・バルカス帝国全体に伝わる。神聖ミリシアル帝国にも『パル・キマイラ』を通して、皇国を敵にまわす意味を教えられた筈だ。であればこれ以上、戦う理由はない。だが敵が向かってくるのなら、戦うのが軍人なのだ。

 

「アイ・サー!!機関出力一杯!!!!」

 

「全艦突撃砲撃戦用意。各砲、スタンバイ!!」

 

「全航空隊、突撃せよ!!!!」

 

まずは『日ノ本』を先頭に熱田型、大和型が突っ込む。後方には、突撃戦隊が続く。伊吹型と赤城型は援護砲撃の為、さらにその後方から攻撃を開始する。オマケに上空には今やはるか後方にいる空母も含めた、現状投入できる全戦闘機を投入した航空隊がインフェルノへと果敢に突っ込む。ウェポンベイには爆弾、ロケットランチャー、果ては型落ち品の対艦ミサイルからレールガンことEMLやTLSの様な最新鋭兵器まで。パイロットや各飛行隊思い思いの兵装を積んでいる。

因みに駆逐艦と重巡は全て後方から、空母の護衛とミサイル攻撃による援護を行なっている。火力では優っていても、流石に現代艦引き連れて突撃はしない。戦艦の砲撃とかを喰らえば轟沈するか、過貫通して生き残るかの二択だ。仕方がない。

 

「敵艦隊、本艦に向け突撃を開始!!」

 

「迎撃せよ!!」

 

「ダメです!艦隊は極度の混乱状態です!!情報が錯綜し、手が付けられません!!!!」

 

「て、提督!」

 

「専任参謀!!冬戦争のラスパート作戦を思い出せ!!あの時も情報が錯綜し、指示が二転三転した。だが我々の砲撃に、他の艦艇も合わせ始めた。今回もそれを行うぞ!!」

 

「イエッサー!!」

 

即座に命令が飛び『グレードアトラスター』の主砲、46cm三連装砲が『日ノ本』に向けられる。弾種は徹甲弾だ。

 

「砲撃準備完了!」

 

「撃ちー方ー始めぇ!!!!」

 

「撃ぇ!!」

 

放たれたのは46cm砲弾6発。かつて妹たる『ブラックホール』は、バルチスタ沖海戦で『パル・キマイラ』を一撃で落とした。その姉たる『グレードアトラスター』ならば、出来ない通りはない。

 

「敵主砲弾、本艦への直撃コースです」

 

「初弾で当ててくるとは、中々いい腕だな」

 

そして幸運なことに発射された主砲弾の内、2発は『日ノ本』への直撃コースに入っていた。皇国海軍であれば優れた火器管制システムに加え、砲身には砲身安定装置を標準搭載している為、初撃で命中させるのは造作もない。だが旧世代のマニュアルで撃つ方式というのは、とにかく命中率が低いのだ。命中確率はたった数%である。その為、基本的に初撃は大体で撃って、そこから調整していく方式が取られていた。

だが『グレードアトラスター』は、グラ・バルカス帝国海軍そのものと言っても過言ではない。言うなれば顔なのだ。であればそんな象徴的な艦の乗組員には、勿論精鋭やベテランが乗り込む。その為、いきなり命中弾を出すと言う離れ業をやってのけたのだ。だがそんな奇跡すら、『日ノ本』には通用しない。

 

「APS、作動」

 

「APS作動します」

 

艦橋の最上部から青白い光の輪が生み出され、その光の輪が艦首と艦尾まで広がると、同じ色の球体が形成される。これは空中母機『白鳳』にも搭載されているActive Protection System、所謂APSと呼ばれる電磁バリアである。この電磁バリアは一定方向の物理的接触を無効化する性質を持っており、今回であれば外から内に向かう物理的接触を無効化する様になっている。その為、逆に内側からの物理的接触は無効化できない訳で、こちらの攻撃は通用するのに相手の攻撃は通用しないのだ。

 

「ほ、砲弾、着弾前にバリアで防がれました.......」

 

「.......提督、ご指示を..............」

 

「悪いが私には、もうどうすれば良いのか分からん。誰か、分かるものが居れば教えてくれぬか!あんな敵を、どう倒せばいいのかを!!」

 

艦橋にいる誰もが答えられなかった。分からないのだ。カイザルとてこれまで幾度となく戦場に立ち続け、時に勝ち時に負けてきた。当然、色んな敵ともそれと同じくらいの戦略、戦術とも戦ってきた。

だが皇国はこれまでとは別格であり、一線を画す力を持っている。これまでの常套手段はおろか、旧世界の常識やスタンダードとなる部分すら通用しない。そんな敵への対処、分かるはずがない。

 

「提督、こうなった以上、我々の命はあなたに預けます。例えそれで死のうと構いません。最期の最期まで、あなたと共に逝かせてください」

 

「提督殿、俺達兵士だって、軍神様とならどこへでも逝きますぜ?何せ神様が付いてきてくれるんだ。怖いものなしだろ。だよなぁ、野郎共ッ!!!!!」

 

艦橋の者達はカイザルに「戦いましょう」と言った。自分達もどうすれば良いのか分からない。だが、もう砲を撃ち続ける他ない。そして死ぬのなら、軍神カイザルと共になのだ。

 

「分かった。ならば命じよう。総員、死力を尽くせ!!何が何でも、あの化け物どもを斃すのだ!!!!」

 

カイザルは力強く命じた。その瞬間、艦橋内の兵士達が慌ただしく動き出し、皇国艦隊への攻撃を開始した。『グレードアトラスター』だけではない。まずはかつてカイザルの指揮した八八艦隊がこれに続いて攻撃を開始し、さらにカイザルの教え子や後輩達の乗る艦、やがては生き残っている全艦艇が反撃を開始した。

 

「ようやく敵さん撃ってきましたよ」

 

「そうか。ならば、正面切って我々も闘おう。主砲砲撃戦、弾種旭日!」

「アイ・サー。主砲砲撃戦、弾種、旭日弾」

 

「目標、左右に展開する敵艦隊!撃ち方始め!!」

 

「撃ぇ!!!!」

 

エネルギー兵器たる旭日弾を持ってすれば、例え旧式の重装甲艦だとしても容易に貫通し、その後ろの艦艇にすら攻撃を届けられる。こういった密集戦闘では、頼れる砲弾だ。

 

「敵重巡戦隊、本艦左346に展開中。右32には水雷戦隊!!」

 

「両舷、近距離対艦ミサイル解放!!」

 

「サルボー!!!!」

 

『日ノ本』両舷に搭載された横列二段八連装近距離艦対艦ミサイル発射機のシャッターが開放され、内部から対艦ミサイル虎徹が飛び出す。一気に128発も飛び出すのだ。迎撃は不可能である。

 

「撃って撃って撃ちまくれ!!!!何が何でも化け物戦艦を生かして返すなッ!!」

 

「敵艦中央部より白煙を視認!!」

 

「おぉ、遂にやったか!!!!!!」

 

「.......いや違う!!ロケット弾だ!!!!」

 

「何だと!?迎撃いそ」

「ダメだ間に合わない!!直撃コースです!!!!!ぶつかる!!!!!!!」

 

1発でも当たれば致命傷のミサイルが、超音速という速度を持って至近距離から放たれる。例えイージス艦であろうと迎撃は不可能であるのだ、旧式艦では迎撃の砲火を上げることすら叶わない。

 

「左右に展開していた敵艦、殲滅しました。続いて前方より、戦艦3隻が進路を塞ぎにかかってます」

 

「ミサイル飛来!!後続駆逐艦による、援護攻撃です!!!!前方の左右の戦艦がターゲティングされています!!!!

 

「魚雷発射管開け。ならば我々の目標は、前方中央の戦艦だ」

 

「アイ・サー!!」

 

この『日ノ本』は、知っての通り一応潜水できる。その為、実は魚雷発射管も搭載しているのだ。その数、実に80門。まあ今回は前方のみなので80門全部指向するのは物理的に不可能だが、それでも数十門の超高威力誘導魚雷は水上艦には天敵とすら言える脅威だ。

 

「ッ!?敵機捕捉!!方位0、58、348!!!!機数、約1500!!!!!」

 

「全艦対空戦闘、対空ミサイルと月華弾で片付ける!!!!」

「アイ・サー。VLS開放、攻撃始め!!」

「全部砲塔旋回。電磁投射砲モードへ。弾種、月華弾。方位、0!!!!」

 

先程までは左右の敵艦に対して砲撃を行っていた、主砲と副砲が正面に回頭する。さらに各砲塔の砲身が4本に分割し、内部に稲妻が走る。

 

「砲撃用意よーし!」

 

「撃ちー方ー始め!!!!」

 

「撃ぇ!!!!」

 

放たれた砲弾は、通常の火薬式とは比べ物にならない程の速度で目標へと飛んでいく。しかも今回は月華弾。所謂、燃料気化弾の一種である。この砲弾は近接信管が作動すると、周囲に数千℃の熱風が包む。次いで衝撃波が襲い掛かり、巨大な火球を形成。航空機や構造物を揉みくちゃにし、全てを溶解してしまう。いつかのムーの『ラ・カサミ改』が戦艦に撃ち込んだ砲弾。アレである。

これを撃ち込まれた編隊は、最早自分が何にやられたのかを理解するどころか死ぬ事を察する事すらなく死んでいった。例えこの砲弾を逃れたとしても、今度はミサイルの洗礼が待っている。避ける事も叶わず、やはりこちらも殆ど何が起きたか分からぬまま撃墜されていった。

 

「長官、そろそろ航空隊を突っ込ませますか?」

 

「あぁ、そうだな。奴らを撹乱してやろう」

 

ここで神谷考案の更なる仕掛けが動き出す。なんとこの砲弾入り乱れる、鉄風雷火の中に航空隊を突っ込ませるのだ。先ほど、皇国艦隊が撃墜した帝国軍攻撃隊はあくまでも後詰めの意味合いが大きい。本来なら海域付近にて待機し、敵が逃げ出したら追撃したり、落伍した艦がいればトドメを刺す役割にすぎない。この戦場に飛び込む事はしない手筈なのだ。

だが皇国の場合、出力とステルス性に物を言わせて突っ込ませるのだ。これが神谷考案の戦法である。水上艦、潜水艦、航空機を同時に用いた艦隊決戦。各艦のデータリンクとその情報を中央で一元管理しつつ、データと戦況を分析し安全なルートの選定や効率的な攻撃を行う指揮システムがあって初めて完成する新たな艦隊決戦の形。東郷指揮システム様々である。因みに本編では登場していない潜水艦だが、しっかり後方から魚雷を撃ちまくっている。

 

「敵機来ます!!」

 

「正気か!?!?」

 

「何処までも型にハマらぬか。対空戦闘始め!!!!」

 

VT信管こそ採用しているが、それはあくまで対レシプロ機用。音速を超えて接近してくる、現代のジェット戦闘機は想定されていない。幾ら弾幕を貼ろうと全く当たらず、本来なら高角砲の穴を埋める対空機銃ですら照準が追いつかず濃密な弾幕は形成できなかった。

 

「ロケットの雨を食らいやがれ!!!!」

 

「今なら爆弾もセットだぜ!!!!」

 

普通の震電II相手なら、まだ航空機らしい攻撃だろう。だがこれが極であれば、その限りではない。

 

「ホバリングモード!連打で沈める!!」

 

超高速で接近し、お互いの顔が見える位の近さで急停止。ホバリングしながら30mmと60mmの機関砲で、艦上構造物を破壊していくのだ。

 

「クソッ舐めやがって!!!!アレを堕とせ!!!!」

 

「やりやがったなチクショー!!!!!」

 

勿論至近距離なので機銃を撃てば当たる。だがコイツの場合、スラスターを装備しているので普通に避けてくる。それも航空機がするべきではない、あまりに変態じみた挙動で。こんな動きを目の前でされてしまえば、闘志よりも恐怖の方が勝ってしまう。

 

「なんだよあの動き.......」

 

「あり得ないだろ.......」

 

「おい!こっちを向いたぞ!!!!」

 

「.......逃げろ!!!!」

 

誰かがそう叫んだ。その言葉がトリガーとなり、その場の全員がばね仕掛けの人形のように、何かに弾かれたように逃げ出した。だがそれを許す震電IIタイプ・極ではない。機銃掃射とマイクロミサイルで乗艦ごと吹き飛ばされた。

 

「第338駆逐隊壊滅!!第89戦隊及び105戦隊、全艦轟沈!!」

 

「軽巡『ゴーント』戦艦『コーデッドマスク』戦列を離れる!!」

 

「まただ!左翼駆逐隊がまとめて吹き飛びました!!!!詳細不明!!!!」

 

既にインフェルノ艦隊はボロボロである。熱田型と『日ノ本』の主砲は、当たらずとも至近弾ですら致命傷となる。余りの威力に水柱だけで攻撃になるのだ。お陰で駆逐艦は、周りの他の駆逐戦隊ごと吹き飛ばされる始末。被害報告しようにも、多過ぎてどれが沈んだのか分からない。

 

「敵旗艦、本艦正面より突っ込んで来る!!!!」

 

「何だとッ!?!?ならば、主砲で迎え撃つのみ!!!!」

 

「戦艦『ワームホール』本艦前方に出ます!!」

 

「何!?」

 

戦艦『ワームホール』。グレードアトラスター級四番艦であり、インフェルノ艦隊に於いては同型艦である『ホワイトホール』と共に、旗艦たる『グレードアトラスター』の直衛艦である。

 

「『ワームホール』より入電!『我らこれより、盾となりて軍神の逝く道を護らん』です!!」

 

「ドレストル.......」

 

『ワームホール』の艦長であるボウリエルは、かつて軍大学にて教鞭を取っていた時の教え子でもある。その教え子が今、自分達の前に立ちはだかって盾となろうとしている。それを思うと、涙を禁じ得ない。

 

「そーら、教官殿の道を切り拓くぞ!!!!」

 

「軍神様の為ならば、この命掛けられますわ!!!!!」

 

「そりゃそうだ!!!!なんたって、神の為に死ぬんだからな!!!!!」

 

ボウリエル以下、乗組員達の士気は高い。『ワームホール』は『グレードアトラスター』の前に出て、そのまま舵を切り『日ノ本』に腹を見せる。これは船にとっては弱点であるが、同時に最大火力を浴びせられる状態でもある。46cm三連装砲3基9門の力を『日ノ本』に見せようというのだ。

 

「敵大和級、本艦前方に展開。自艦を盾にし旗艦を護る様です」

 

「ならば突っ込むぞ。回天を切り離した後、出力一杯。あの戦艦に突っ込め!!!」

 

「アイ・サー!!!!」

 

艦底部から回天を出撃させると、『日ノ本』はウォータージェットを起動させる。一気に90ノットまで加速し、『ワームホール』へと向かう。

 

「敵艦撃ってきました!!!!」

 

「構うな!!!!こっちの装甲なら、例え46cm砲であろうと豆鉄砲に過ぎん!!!!!」

 

「アイ・サー!!!!!」

 

『日ノ本』は速力と装甲に任せて、さらに突っ込む。『ワームホール』も負けじと撃つが、全て弾かれてしまう。最早、凹んですらいないだろう。

 

「APS作動!!!!」

 

衝突する直前にAPSを作動させ、電磁バリアに包まれた状態で『ワームホール』に突っ込む。金属の悲鳴にすら聞こえる圧壊音と、金属の軋む音を響かせながら、艦中央部から『日ノ本』の船首が出てくる。まるで化け物の口の様にも見える。

 

「側面砲、撃ぇぇ!!!!」

 

突撃ついでに、側面に搭載されている60口径710mm四連装火薬、電磁投射両用砲も火を吹き、旭日弾のビームで船体をさらに溶断。4つに船体が分断され、轟沈していった。

 

「何なのだあれは.......」

 

カイザルもこの光景には目を疑った。目の前で帝国最強の戦艦が、突き破られている姿を見たのだ。そもそも戦艦が突き破られるなんて、聞いたことが無い。そんな非現実的すぎる光景を見せられたのだ。この反応は、むしろ冷静だと言えるだろう。普通ならパニックになりそうな所だ。

 

「敵艦更に近づく!!!!」

 

「衝撃に備えろ!!!!」

 

てっきり突っ込んで来るかと思っていた『日ノ本』は、そのまま『グレードアトラスター』と『ホワイトホール』の間を弾幕を貼りながら通り過ぎていった。

 

「被害報告を!!!!」

 

「本艦右舷、各砲塔大破。使用できません!」

 

「妙ですね。なぜトドメを刺さないのでしょう?」

 

普通なら主砲を撃ってきそうだが、『日ノ本』は『グレードアトラスター』の右舷と『ホワイトホール』の左舷にある対空砲を破壊しただけだったのだ。これは可笑しい。何故だと考えていると、上空から思いもしない物がやってきた。

 

「敵機!直上!!!!」

 

「何だとッ!?!?!?」

 

なんと上空から敵機がやってきたのだ。それも戦闘機ではなく、AVC1突空である。実は神谷、この戦艦2隻を拿捕して次いでに敵指揮官も捕虜にしようと考えたのだ。その為、予め上空に突空を配備しておき、対空砲を破壊して穴を作り、さらに回天を忍ばせて歩兵を乗り込ませる算段までつけていたのである。無論、乗り込んでいるのは赤衣、白亜、ワルキューレを含む、安定の神谷戦闘団である。

 

『こちら機関部!!現在敵歩兵の襲撃を受けている!!!!助けてくれッ!!!!』

 

「何がどうなっているのだッ!!!!!!」

 

カイザルもいよいよもって何が何だから分からなくなった。流石にこれだけ非現実を見せられれば、狂いもする。その時だった。カイザルの身体は宙に浮いた。被弾し制御を失った駆逐艦が『グレードアトラスター』に衝突し、その衝撃でカイザルは椅子から飛ばされたのだ。そしてそのまま壁に後頭部を強打し、意識を失った。

 

「提督!!カイザル提督!!!!」

 

「すぐに衛生兵を早く!!!!」

 

数分後、艦橋に赤衣鉄砲隊の面々が突入してきた。勿論、先頭を切っているのは向上である。

 

「この艦は我々が占拠させてもらう。諸君らに危害を加えるつもりはないが、抵抗した場合はその限りではない。それから、指揮官と話をさせてもらいたい」

 

「戦艦『グレードアトラスター』艦長、ドレストルだ。悪いが提督はたった今負傷した。どうか提督を医務室に運び入れさせて欲しい」

 

「無論許可する。すぐに移動させなさい」

 

カイザルは医務室に運ばれていき、そのしばらく後に『ホワイトホール』も占拠したと連絡が入った。とは言え、海戦はまだ続いている。だがカイザルの負傷を聞いたネーロンが、撤退の指示を出してくれた。既に殆どの艦艇がやられたのだ。これだけやられていれば、流石に「奮戦虚しく…」という言い訳が通じるだろうとの判断であった。

斯くして第二次バルチスタ沖海戦は、グラ・バルカス帝国海軍の大敗を持って終結したのである。

 

 

 

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