最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第七十七話対応に追われる世界

海戦終結より1週間後 究極超戦艦『日ノ本』 医務室

「こ、ここは.......。何処だ.......?地獄、か.......?」

 

「ここは地獄ではないよ」

 

「では、天国か?」

 

「まさか。生憎と、ここはまだ現世。だが、そう。強いて言えばここは『天国の外側(アウターヘブン)』だ!!!!」

 

いきなり謎の男から謎の単語を言われ、見事に混乱するカイザル。そもそもここは何処かも分からないが、微かに潮の香りがする。恐らく、船の中なのは分かった。

 

「おーい先生、いきなりメタルギアネタを突っ込むんじゃないよ!異世界人にそれは分からんだろ!!」

 

「えぇー。なんか異世界人が昏睡状態から目覚めたら、そういう風にやれって先輩に言われたんですけど.......」

 

「誰だそれ言ったの」

 

「そりゃ勿論、『天之御影』の軍医ですよ」

 

「.......そういや、いつかのロウリアの将軍が目覚めた時にもやってたなアイツ。道理でデジャブった訳だ」

 

ベッドの横に、さっき謎の単語を言ってきた医者らしき白衣の男と、その横に紫色で幅広の袖を持つ服を着た男がいた。背中にはカンジとか言う、皇国の文字が書かれている。

 

「貴殿らは一体.......」

 

「あー、おいこら軍医!お前さんに突っ込んでたら、挨拶遅れたじゃねーか!」

 

「反省はしている。が、後悔はしてない!!!」

 

「いや後悔せんかい!!ほら、仕事が終わったら出てけー」

 

「ウィース」

 

明らかに上官と部下の会話ではない。カンジの書かれた服を着た男がゆっくりと振り返る。

 

「部下が済まなかったな。安心しろ、アンタは生きてる」

 

「私は生きているべき人間ではないよ.......。あの作戦を止める事もできず、部下をむざむざと死なせ、自分はのうのうと生き延びた.......。なんたる事だ..............」

 

「止めるも何も、アレは上が断ったんだろ?」

 

「ッ!?何故.......その事を」

 

「皇国の電波探知能力と暗号解析能力をみくびってもらっちゃ困る。幾らそっちが通信電波を暗号化していようと、その技術はとっくの昔に俺達が通った後。実質平文で打ってるのと変わらない」

 

カイザルに衝撃が走った。という事は、元より全て作戦はお見通しだったという事になる。これでは勝つ事はできない。

 

「貴殿は.......一体.......」

 

「そういやまだ名乗っていなかったな。大日本皇国統合軍司令長官、神谷浩三・修羅だ。神谷戦闘団と白亜衆の長、と言えば分かるか?」

 

「なるほど、何処かで見たと思えば思えば.......。こんな状態で失礼する。グラ・バルカス帝国海軍、インフェルノ艦隊司令、カイザル・ローランドだ」

 

カイザルは座った状態、神谷は直立不動で互いに敬礼した。敵として相対していたとはいえど、今や怨みも敵意も殺意もない。

 

「さーてカイザル司令、早速だが本題に入ろう。俺は交渉、というかアンタらの要望聞き及び質問の受け付けに来た。其方は我々に何を望む?」

 

「まずは状況を教えて頂きたい。私がそちらの医務室で治療を受けているのも、ここが船であることも、そして私が捕虜なのも分かっている。だがそれ以外が分からない」

 

「取り敢えず今日はあの夜から1週間が経っていて、今この艦は皇国を目指して航行している。とは言っても明日の昼には着くがな。でもってアンタらの状況だが、インフェルノ艦隊は壊滅。生き残って離脱できたのは空母3隻、戦艦1隻、重巡2隻、軽巡6隻、駆逐艦23隻。こちらは拿捕したグレードアトラスター級2隻、という状態だ。

捕虜はアンタを筆頭に、全体を通して大体3万6,000人って所らしい。中には重傷、瀕死、救助後に亡くなった者もいるそうだ。あ、救助後に戦死した将兵に関しては、そちらのやり方で水葬にさせてもらっている。伝えるべきはこんな所か?」

 

カイザルは驚いた。まさか敵にここまでの敬意を払ってくれているとは、全く考えてもみなかったのだ。特に死亡後に水葬するのは普通だが、態々その様式を帝国式にして見送らせて貰えたのは嬉しかった。単純に海に死体を流して終わりでも文句は言えないし、帝国では基本そうする。にも関わらず、皇国はそれをしなかった。これだけでも、信頼に足る国家だ。

だからこそカイザルは、最早艦隊司令でも提督でもなく、軍神ですら無くなった身ではあるが、この海戦を指揮した指揮官として最後の責務を果たすべく神谷の方に向き直った。

 

「.......まずは敵である我々にも救助の手を差し伸べて頂き、更には帝国式の水葬を持って手厚く葬って頂いた事、感謝する。ありがとう。

そして不躾は承知の上で、1つお願いしたい」

 

「どうぞ?」

 

「どうか、私の部下達には慈悲を頂きたい。捕虜となり、我が国が貴国の捕虜を虐殺しようとしていたのは承知の上、虫が良すぎるというのも分かった上で、どうか伏してお願いしたい。私はどうなっても構わない。だがどうか、私の部下達には温情を.......」

 

「無論、そのつもりだ。とは言え数が数だ。全部を皇国で面倒は見ないだろうが、それでも捕虜は人道的に扱う。3食の食事、温かい寝床、最低限の衛生と医療の補償、拷問、虐待、処刑といった事はしないと確約しよう。無論、引き渡す事になる国家に関しても正式に要請する。

我々は戦争をしているし、戦闘中であれば敵は容赦なく排除する。だが捕虜や戦えぬ者を痛ぶる趣味は、ウチの国にはないよ。というか軍規にその手の事は禁止と明記されているし、旧世界ではそれが当たり前ではあった。心配しなくていい」

 

「そうか.......」

 

これでカイザル・ローランド海軍大将としての、最後の職務は終わった。今後どうなるのかは分からないが、今は取り敢えず眠りたかった。

翌日、聨合艦隊は皇国に帰還した。一部の艦艇は軽傷者や無傷だった捕虜をムーを筆頭とする第二文明圏国家に引き渡すべく離れてはいるが、それでも殆どの艦艇は祖国たる大日本皇国の各母港へと帰還したのだ。だが神谷はそのまま、首相官邸へと赴く。無論、三英傑で集まるためだ。

 

「おー、お帰り」

 

「かなり大暴れだったそうじゃないか」

 

「あぁ、ただいま」

 

「そんじゃ、恒例の会議を始めますかね」

 

いつもの様に一色の音頭で会議が始まる。会議と名をうっちゃいるし中身こそ真面目だが、会議ほど緊張感のあるピリピリとした物ではない。良くてチームミーティング、下手をすれば学生の雑談である。

 

「まあ聞くまでも無いんだろうけど、無傷で勝ったんだよな?」

 

「あぁ。こちらの被害はない上に、新兵器の実戦データも取れた。ウハウハだ。一方、グラ・バルカス帝国海軍、インフェルノ艦隊というそうだが、そっちは壊滅的被害を受けている。いや、もう全滅と言って差し支え無い」

 

「どの程度やったんだ?」

 

「あー、慎太郎は知らなかったな。大体の概算で行くと戦艦50、空母60、航空戦艦20、重巡110、軽巡360、駆逐1000隻超えっていう大艦隊だった。だが最終的に生き残ったのは空母3、戦艦1、重巡2、軽巡6、駆逐艦23。軍隊では半数がやられると全滅表記な訳だが、今回では90%以上が撃沈されている。しかも生き残ってるのも、しっかりダメージが入ってる。仮に生き残っても長いこと修理する羽目になるし、場合によっちゃ廃艦の可能性も出てくる。ついでにグレードアトラスター級2隻も拿捕してきた」

 

思ってたよりも容赦ない事態に、川山ドン引きである。というかそもそも、普通にグラ・バルカス帝国が物量チートすぎる。皇国も大概だが、単純な国力で言えば当時の大日本帝国をも上回るだろう。そして何より、ちゃっかりとグレードアトラスター級を拿捕してきている。ん?グレードアトラスター級を拿捕?

 

「おいちょっと待て。え、なに。何を拿捕したって?」

 

「グレードアトラスター級戦艦2隻」

 

「.......え、マジ?それ、どうすんの?」

 

「そっちで有効活用できない?」

 

川山も外交官である以上、安全保障やパワーバランス云々の軍事の知識も持っている。流石に神谷には負けるが、それでもある程度はわかる。故にこのグレードアトラスター級というカードは、かなりのギャンブルであることが分かった。

まずグレードアトラスター級自体は、皇国内での利用価値は無い。スクラップにして鉄屑にするのが関の山だ。だが、対外的にはかなり重要となる。未だこの世界は大艦巨砲主義であり、グレードアトラスター級はその中では破格の性能を持つ。チート兵器であり、ゲームチェンジャーなのだ。特に『グレードアトラスター』自体がその悪名を世界中に轟かせており、もしそれが手に入るとなれば喉から手が出るほど欲しいだろう。皇国にとっては屑鉄でも、交渉次第で莫大な恩恵を齎す金のガチョウなのだ。

一方で、これはパンドラの箱ともなり得る。グレードアトラスター級1隻で、この世界のパワーバランスが崩壊するのだ。皇国がトップなのは変わらずとも、例えばムーが2隻とも持てばミリシアルを上回り、ミリシアルならミリシアル一強状態になる。他の国なら、ムーと同率かムーの上あたりになるだろう。今後の戦後国際社会がどうなるか、割と重要な岐路なのだ。

 

「.......難しいな。少し考える時間が欲しい」

 

「心配すんな。流石に無傷とはいってないから、どの道修復しないといけないし、何より念の為に解析はするつもりだ。一応、当時の大和型との比較とか性能テストとかをやっておきたい」

 

「分かった。それまでには答えを出しておこう」

 

「次は俺だな」

 

今度は一色が話し出す。内容は先の本土空襲に於ける、皇国内の被害についてだ。

 

「まあ言わなくても分かるだろうが、実害は無しだ。だが経済的にはちょっとばかし痛いな。あの時出したJアラートで、軽く株価が落ちた。今は回復方向だがな。後物流がストップした影響で、色々なところに皺寄せが少しばかし行ってる。こっちはそこまで気にする事ないが」

 

「やっぱり実害なくとも、微妙に面倒な被害は出るか」

 

「こればかりは軍でどうこうって訳にはいかないからな。流石に国民保護の観点から、あの規模で避難指示を出さない訳にもいかん」

 

地味にあの空襲で被害はあったのだ。ホント微々たる物だが。とは言えこの経済的損失の何百、もしかすれば何千倍もの損失をグラ・バルカス帝国は支払っている。

 

「次は俺なんだが、外交ルートとしては特に今の所はないな。第二文明圏への捕虜受け入れに関する話も纏まっているし、国ごとに差はあれど人道的に扱う様に強く要請した。虐殺とか拷問云々は無い筈だ。

あ、そうだ。浩三から連絡があったFCS照射と天皇陛下及び皇国への侮辱etcといったミリシアルのやらかしに関しても、しっかり文句言って来たから心配すんな」

 

因みにこれ、態々政府専用機で神聖ミリシアル帝国本土の外務省まで行っている。頑張って圧を出しまくったらしい。因みに言ってきた事を意訳すると「天皇陛下を侮辱することとはつまり、我が国への宣戦布告。そして火器管制レーダーを照射する事も、同じく宣戦布告である。貴国はウチと戦争がしたいのか?お望みとあらば、直ちに艦隊を差し向けて艦砲射撃を食らわせてやろう」である。

割とマジで事実上の宣戦布告と、皇国にとっての宣戦布告というダブルやらかしをしているので、これ位したってバチは当たらないだろう。まあ担当者は冷や汗物で、最終的には外務省統括官のリアージュと外務大臣ぺクラスが謝罪までした。

 

「そんじゃ、俺から質問。浩三、ぶっちゃけこの戦争はどうなるんだ?」

 

一色が神谷にそう聞いてきた。だが、余りにアバウトすぎる。どうなると言われても、戦争はなる様にしかならない。とは言え、言わんとしている事は分かる。この戦争のエンディングが、その見通しが知りたいのだ。

 

「帝国は負け続けた。皇国が介入するまで全戦連勝だった訳だが、俺達が介入した結果、全戦連敗だ。しかも海ではもう、恐らく同規模の戦闘は出来ない。というかできる訳ない。確実にあの艦隊は、帝国の保有する主力艦隊級を束ねた一大艦隊。その艦隊、それも4桁単位の艦艇が一気に纏めて消えた。無論、本土防衛用の艦隊とかはあるだろうが海軍どこらか、国家としての基本戦略をも崩壊させたと言っていい。今後の海軍の戦略は、確実に攻撃から防御に周るだろう。というかこれでも攻勢に転じてきたら、いよいよ持って救い様がない。いっそ核で真っさらにした方が良いくらいだ。

でまあ次は陸なんだが、陸も陸でやられてる。既に第二文明圏に於ける戦況は、拮抗状態と言っていい。少なくともムーに突き立てられていた刃は、既に根本から折れてしまっている。すぐにまた攻撃する事はないだろう。逆に今度はムーとかミリシアル辺りが、反撃に転じるやもしれん。そして第二文明圏が解放された時、恐らくもう一度世界連合軍を組んで本土に攻め込むだろうな」

 

「浩三も同じ意見か.......」

 

「あぁ。俺は軍しか見てないが、会議とかで見えてくる根本の考え方的に多分やる」

 

「実は俺と健太郎も、同じ様に考えていた。各国要人と会った事は殆どないが、会わずとも大体は演説とか本とか記事とかで分かる。そしてこの世界はそもそも覇権主義が多すぎるからな」

 

この世界に来て、皇国はこれまで様々な国家と交流を持ってきた。だがその国家のほぼ全ての根底には、覇権主義や拡大主義というものが存在していた。それは列強国であっても変わらない。特に列強国の場合はそのプライドも加わるので、こういう戦争を仕掛けられた時というのは止まるところを知らない。パーパルディアが良い例だ。あそこは驕りがいつしか妄想に変わり、最終的に国家が滅んだ。パーパルディアは極端でもあるのだが、この世界の本質の代弁者とも言える。

故に三英傑は個人個人で、いつの間にか1つの結論に辿り着いた。それは「この戦争、どちらかが滅ぶまで終わらない」という物である。一色は両勢力の国家システムや思想から。川山は実際に外交官として見聞きしてきた全てから。神谷は各勢力のドクトリンと将兵達の観察から。3人とも全く別の視点ではあるが、それでも答えは同じだった。

 

「ならば戦後、軍事のバランスはどうなる?」

 

「無論、今のままで行けば確実に皇国一強だろうよ。ミリシアルには魔法帝国の遺産があるらしいから未知数だが、少なくとも通常戦力級での勝負なら皇国は遥か上だ。寧ろ俺としては、是非、大日本皇国の国家としてのお考えをお聞きしたいね、総理大臣閣下」

 

「俺としてはいつか話した、皇国を世界一の国家にするべくこの戦争を使うつもりだ。俺には浩三という軍事の申し子、慎太郎という敏腕外交官がいる。更にこれに加えて俺自身も、政治能力としてはトップクラスだと思っている。このカードがあれば無敵だ。

まずそうだな、帝国含め世界各国の復興事業に皇国が全面的に支援する。更にそこに皇国の企業を送り込めば、財界にも恩が売れる。そしてここで形成した影響力を元に、新たに国連に準ずる世界機関を作るつもりだ。

そして皇国を、名実共に最強国家(・・・・) 大日本皇国(・・・・・)とする。おもしろそうだろ?」

 

この言葉に2人は不適な笑みを浮かべた。言うなれば、この世界を平和的に支配しようと言うのだ。言い方を変えればそれは世界征服というヤツである。そんな話、男なら誰もが喜んで協力する。

 

「すべては皇国の繁栄と未来のために。皇国がこの世界にやってきたのも、きっと何か意味がある。世界が皇国中心に回り出す時、何かが分かる気がするんだよ、俺は」

 

「面白そうじゃねーか。なぁ、慎太郎」

 

「あぁ。そういうことなら、俺達はお前の野望に手を貸す」

 

彼らはまた、皇国のために動き出す。世界を股に掛けて大立ち回りするのも、案外楽しいのだ。

さてさて皇国では三英傑の何か黒い話が出ていた訳だが、世界各国の取り分けミリシアルとグラ・バルカス帝国の方は地獄であった。というかミリシアルに至っては、あの海戦が発生した直後からである。という訳で、ちょっと時間を巻き戻して……

 

 

 

海戦終結直後 神聖ミリシアル帝国 アルビオン城

「な、なんだったのだアレは.......」

 

議場は見事なまでにお通夜ムードであった。何せ映像越しとは言えど、たった今、目の前であり得ない事が立て続けに起き続けたのだ。こうもなる。

 

「ペラクス、アルネウス、ヒルカネ、シュミールパオ、アグラ以外はゆっくり休め。悪いが今読み上げた者は、この場に残るのだ」

 

閣僚達はいそいそ部屋から出ていく。その顔に浮かぶは、やつれきった表情だ。動きも相まって、まるでゾンビである。

 

「.......さて、お前達を残したのは他でもない。お前達の意見が聞きたいからだ。まずは最初の光、アレは何なのだ」

 

「情報局としては、あの様な兵器の情報は把握できておりませんでした。恐らくは最新鋭の兵器か秘匿兵器、或いはその両方といったところでしょう」

 

実は大日本皇国にも、ミリシアルの諜報員がいる。勿論敵対的な諜報活動ではなく、あくまで力の一端を知る為である。だが皇国の場合、生活にインターネットが普通に入り込んでいる。この手の技術は、ミリシアルには概念から存在しない。言うなれば第二次世界大戦位の人間が、いきなり近未来で生活をさせられるのだ。普通に考えて、無理である。お陰で情報は殆ど集まってない。大半が雑誌などの紙媒体、それからテレビやラジオからの情報なのだ。

 

「あの攻撃、恐らくは艦隊級極大閃光魔法の様な物でしょう。しかし艦隊級極大閃光魔法は、どんなに威力を高めてもあの様な威力は出せない筈です。それにそもそも、アレは対空攻撃に主眼を置いています。あんな風に使うとは.......」

 

「では、あのシールド。あのシールドはなんだ?」

 

「では、私の方からお答えしましょう。恐らくあのシールドは、我が軍のシールドとは別物でしょう。我が軍のシールドは魔法で船体を覆う物ですが、アレは船体中央部から輪が広がり、最終的に艦全体を覆っていました。

それに防御魔法は中に攻撃を通さないか、耐えられずに割れるかの二択。対してあのシールドは防ぐ、というよりは砲弾を溶かしていた様に見えました」

 

これはシュミールパオの言う通りである。防御魔法の場合、攻撃は通さない。魔法で出来た装甲板を展開すると考えて貰えれば分かりやすいのだが、防ぐ時は弾いたり爆発を受け止める感じだ。強度以上の攻撃ならば、単純に割れたり砕けたりする。

対して皇国のAPSは正確には、防ぐのではなく電磁場で破壊すると言うのが正しい。ミサイルとかなら普通に表面で即破壊されるので溶ける様に消えるが、例えば超高速の物体や表面積が大きい物になると破壊するのに時間がかかる。その為、一応戦闘機で球体の中に入り込む事も出来る。それでも1〜2秒程度で破壊されるので、殆ど意味はない。

 

「他にも色々と兵器が出てきたが、この際だ。はっきり申せ。あの兵器群について説明できる者、或いはそれができる者を知る者はおるか?」

 

誰もが黙った。もう何が何だか分からないし、例え同じ映像を繰り返し見ても分かる気がしない。皇国の軍事力、少なくとも海軍に関しては分からなすぎて底が知れない。

 

「おらぬ、か。ではアグラよ、あの艦隊に勝てるか?」

 

「誤解を恐れず申し上げますれば、例え帝国軍の全戦力を投入したとしても勝率は2〜3割でしょう。可能性があるとすれば古代兵器か、或いはオリハルコン級戦艦の対艦誘導魔光弾ウルティマ位です」

 

「これは皇国に対しての外交戦略について大幅な見直しが必要だな。まずはそうだな、今後外交官を派遣する際は一等外交官、若しくは課長クラスの者を。国内で対応する場合は部長クラス、もしくは統括官クラスで対応せよ。状況に応じ、局長クラスや外務大臣を呼び出す事も許す。よいな!」

 

「ハッ!!」

 

因みにこの命令が川山来訪時に適用され、リアージュとペラクスが出張ってきたのである。

さて、では今度はお茶の間の反応を見てみよう。海戦が終結した2週間後、大日本皇国統合軍は先の海戦に関する発表を行い、各国メディアに広報用に撮影しておいた映像を送り付けているのだ。

 

「「「「かんぱーーーい!!!!!」」」」

 

「戦時下だろうと平和だろうと、うまい酒に肴は最高だ!!!!」

 

「これだけで世界は平和になる!!!!」

 

ムーのとある大衆酒場。常にうまい酒とそれに合う料理を提供する店であり、この辺りの呑兵衛共ご用達の場所である。だがそれと同時に、この店は最新の皇国製テレビを置いている数少ない店でもある。地元の気心知れてる呑兵衛の他、外交官や商人の様な国際情勢が鍵となる人種もここを利用している。

 

「にしても、今日なんか人が多いな」

 

「なぁなぁ外交官の兄ちゃんよ。なんか今日、大事な事でもあんのかい?」

 

「え?えぇ。何でも、大日本皇国が何かやったらしくて。その発表に関する報道があるそうなので、多分それで我々の人種が多いのかと」

 

「へぇー、そうかい。お、噂をすれば何とやらだぜ!」

 

テレビに映ったのは、ムーではお馴染みのニュース番組『ニュース12』のオープニング映像である。知っての通り、かつて神谷がゲストとして出演した番組だ。

 

『ニュース12のお時間です。本日は予定を変更致しまして、大日本皇国統合軍の発表について報道して参ります。

2週間前の中央歴1644年4月6日から8日に掛けて、バルチスタ沖にて戦闘が勃発致しました。グラ・バルカス帝国は昨年の世界連合軍との海戦時よりも遥かに莫大な艦艇を投入しましたが、これに対し大日本皇国海軍は聨合艦隊を結成。グラ・バルカス帝国軍との交戦の末、勝利を収めたとの事です』

 

『ヴィクトリアムさん、聨合艦隊というのは何でしょう?』

 

『皇国海軍の公式ホームページからの記述によりますと、聨合艦隊とは旧大日本帝國海軍時代の制度であり、現在では皇国海軍の八個ある主力艦隊を1人の司令官が指揮する艦隊、との事です。

今回の司令官は以前この番組にも出演頂いた、大日本皇国統合軍総司令長官、神谷浩三・修羅元帥であり、出演時に解説して頂いた究極超戦艦『日ノ本』が総旗艦として参加したそうです。こちらはVTRがありますのでご覧ください』

 

映像が切り替わり、ダークブルーの背景に菊の御門と旭日旗が映る。その下にImperial Japanese Navy(大日本皇国海軍)の頭文字たる『IJN』が下に映る。

更に映像は切り替わり、オーケストラの演奏による壮大で厳かな雰囲気のBGMと共に聨合艦隊の上空映像が映った。先の第一次バルチスタ沖海戦時に参加した世界連合艦隊総艦艇数の、およそ3.4倍もの艦艇が広大な海を進む姿は見る者の目を釘付けにした。しかもこれ、実は広報用にやってた艦隊陣形なので観艦式ばりに気合が入った操艦をしている。お陰で全艦、寸分違わず綺麗に並んでいるのだ。

更に映像は進み、今度は艦隊陣容に関する記述が画面右側に表示される。詳しくは『第七十話新たなる守護神』にて記載しているので、そちらをご覧頂きたい。

 

「す、すげぇ!!!!」

 

「こんな大艦隊、見た事ないぞ!!!!」

 

「世界中の軍艦を集めても、ここまでの大艦隊になるか!?!?」

 

「そんな大艦隊をたった一国で.......」

 

ここまでの大艦隊、流石の異世界人とて見たことが無かった。この映像には酔っ払い共もしっかり画面に齧り付くかの如く見ている上に、いつもなら息をする様に消えていく酒も今回ばかりは止まっている。

 

『まさに空前絶後の大艦隊ですね!!』

 

『しかしフェアチルドさん!!それに画面の前の皆様!!驚くにはまだ早いですよ!なんと今回は、第二次バルチスタ沖海戦の最終決戦の映像が一部ですが入手できました!!こちらもご覧ください!!!!」

 

今度は最後の海戦の映像に切り替わる。まず最初に行われた波動砲の一斉発射に始まり、旭日弾の斉射、ミサイルと砲弾の雨と言ったあの海戦の一部始終が映し出された。最後にはあの戦艦『ワームホール』の土手っ腹を突き破るシーンまであり、スタジオもお茶の間も騒然であった。

 

『これが大日本皇国の戦争なのですね.......』

 

『全てが異次元すぎて、もう何とも言えません。しかし一つだけ言えるのは、大日本皇国がいる限り、このグラ・バルカス帝国との戦争は勝てるという事です。CMの後は先程の映像をより詳しく掘り下げていきますよ!!チャンネルはそのまま!!!!』

 

一瞬の間を置いて、酒場は一気に大歓声に包まれた。呑兵衛共はグラスを掲げ、商人とか外交官組も酒を頼んでグラスを掲げる。そのまま日本談義が始まりながら、酒とツマミが飛ぶ様に売れた。

同じ頃、グラ・バルカス帝国帝都ラグナでは、緊急の帝前会議が行われていた。議題は勿論、第二次バルチスタ沖海戦に於ける被害の話などである。参加者もグラ・ルークスを筆頭に、軍や政府の幹部達ばかりである。

 

「やられたようだな、サンド・パスタルよ。今後、貴様はどの様な手段を取るつもりなのだ?」

 

「は、はっ。恐れながら、海軍の主力艦隊級は完全に消え去ったと申し上げて差し支えありません。ですので、まずはこの艦隊の再建が急務であり、艦隊の再編成と各主要企業に艦艇を発注しております」

 

「で?」

 

「あっ.......えっと.......」

 

統合参謀本部議長のサンド・パスタルは、既に軽く過呼吸になりかけていた。負けた以上報告しなくてはならないのだが、こんな大敗北の報告なんてしたくない。言葉は詰まるわ、噛み噛みになるわで大忙しであった。だがここで、帝都防衛隊隊長たるジークスが話し始めた。

 

「今回帝国艦隊は皇国と交戦し、カイザル提督の戦死を筆頭に甚大な被害を受けました。しかも皇国に対しては全くと言って良いほどダメージを与えていない。強いて言うなら弾代と燃料代、それからちょっとした凹みの修理費程度の経済的ダメージしか与えていないといっても過言ではありません。。我々は過去の経験則から導きだした皇国はそこそこ強いと判断していました。

しかし、現実は規格外に強かった。荒唐無稽な前線での報告はほぼすべて本当の事だった。かなり強力な国と想定していましたが、それでも甘く見すぎていたとしか言い様がありません。

 

ジークスが話を続けようとしたとき、帝王府長官カーツが吼えた。

 

「馬鹿者っ!!甘く見すぎていたでは収まらんぞっ!!我が国は世界に宣戦布告をしているのだっ!!敵が思ったより強かったから、ごめんなさいで済むかあっ!!!!!!

グラ・カバル皇太子殿下の件と言い、軍部は弛んどるのかっ!!」

 

「軍部は決して弛んではいません。

カバル皇太子殿下の件は、軍部は反対意見を出しましたが、帝王府からの強い要請があったと聞いています」

 

「ぐっ!!今後はどうするのか言ってみろ!!」

 

「今後の基本戦略も積極的攻勢から、防衛に変更いたします。船団護衛や支配地域に配備する艦艇を増やし、当面の間は防御に徹します」

 

「なんだとっ!!栄えあるグラ・バルカス帝国が守りに徹するだとぉ!!」

 

「出来ぬことは出来ぬ。であれば今はその様な精神論よりも、現実的に物事を見るべきです」

 

このカーツという男、未だにカバル皇太子の事で軍を恨んでいた。あれは軍が何度もやめておけと言っておいたのに強行したから起きた事件であり、流石にこのことの責任を全部押し付けられては溜まったものじゃない。だが帝王府も責任は取りたくない。お陰で軍部と帝王府で、勝手に喧嘩が始まる始末であった。

だがそれをルークスが止め、ジークスに話を聞く。

 

「それほどまでか、大日本皇国?」

 

「……はい」

 

「解った。ジークス、本土防衛はお前に任せる。今後どうなると考える?」

 

「皇国の兵器の性能は想定を遙かに超えます。今回の海戦ではそもそも兵器自体に、説明がつかぬ兵装がいくつもあり、レーダーすらも使用不能にされます。

よって基本的にレーダーに頼りすぎる事無く、哨戒機を多数出して消息を絶った所に大量の航空機を投入、圧倒的物量でたたきつぶす方向性で行きたいと思っています。無線も使用不能にされることもある事から、有視界飛行と発光信号の面制圧哨戒を物量で行うしかありません。現在同戦法を行うための研究にとりかかっています」

 

ルークスは正直この場で頭を抱えたいが、帝王としてそんなみっともない真似はできない。そんな苦労も知らず、ジークスは続ける。

 

「敵はおそらくレイフォルに攻撃を仕掛けてきます。敵陸軍兵力の大規模上陸は行われていない事から、ムーが主力、皇国がサブとなって攻めてくるでしょう。

皇国のこれまでの戦法ならば、レイフォル沖に展開する海軍を無力化した後。兵糧攻めをしつつ空爆で重要施設を破壊し弱体化。最後にムーが攻め込んという戦法を取ると考えられます。

しかしムー国の最寄りの基地でさえレイフォル沖から800kmは離れている。皇国の戦闘機の戦闘行動半径は現在調査中ですが、800km以上あるなら脅威と言って良いでしょう。

ただ、我が軍の兵糧攻めを使用とした場合、主力は海軍になります。北回りの海域に、機雷を大量に設置して完全封鎖します」

 

「北回りの海域を封鎖したら、今後の神聖ミリシアル帝国戦で苦労するのではないか?」

 

「現在はそのような状況ではありません。帝都防衛隊長として、帝国本土だけは敵の侵略から守る必要があります。

本土防衛のため、レイフォルの陥落だけは避けたい。レイフォルさえ陥落しなければ帝都は安全であると断言できるでしょう」

 

帝都防衛隊長の口から帝都が危機に瀕していると聞き、皆戦慄する。軍に疎い大臣達の征服欲も、今回の海戦結果は沈黙せざるを得ない内容だった。

世界征服や、さらなる領土拡大だけでも危うい事を、会議の面々は文字通り身を持って知ったのだ。因みに帝国の本土は普通に大陸間弾道ミサイルの射程圏内だし、富嶽爆撃隊も空中給油を用いれば堂々と爆撃できたりするが、それは言っちゃいけないお約束である。

 

 

 

 

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