最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第七十八話特殊部隊VS特殊部隊

1ヶ月後後 ヒノマワリ王国 首都ハルナガ京 グラ・バルカス帝国制統府

「話しが違います!!国民を餓えさせないとお約束したではありませんか!!あなた方の上位組織である外務省にも約束しているはずです!!

現在国民の多くが餓えに苦しみ、栄養失調による死者さえ出ているっ!!!

貴国軍が多くの食料を蓄えるため、我が国の食料流通さえも押さえているからですっ!!!すぐにでも貴国軍の倉庫から国民に食料を与えなさいっ!!!」

 

ヒノマワリ王国、第3王女フレイアは王室の制止を振り切り、単身でグラ・バルカス帝国正統府へ乗り込んできていた。帝国へ意見することは命に関わる事は承知の上であったが、国民の餓えの惨状を見るに見かねて飛び出してきたのだった。

そもそもヒノマワリ王国とは何処にあって、飢えってどういう事やねんという読者諸氏が大半であろう。これを語るためには、約1年前まで時を遡る必要がある。1年前、グラ・バルカス帝国軍は第二文明圏に侵攻を開始した。全然連勝による快進撃で、一時はムーの領土すらも占領した事もある。ヒノマワリ王国はその侵攻時に占領された国家であり、現在はお決まりのグラ・バルカス帝国の植民地となっているのだ。

だが先述の快進撃は大日本皇国の本格介入以降、止まるどころか逆に快進撃されて占領した地域を奪還されるに至った。ムー国内の占領地域を奪還された上に、皇太子たるグラ・カバルの戦死以降は下手に帝国軍も動けなくなり防備を固める様になった。占領地の民を人質にする形になるので、ムーも中々攻撃できなくなった上に皇国は皇国でムーの顔を立てる為にも陸での本格攻勢はするつもりはない上に、来る決戦に備え本土の部隊の派遣や弾薬の輸送等を行っていたのもあって動かなかった。だが1ヶ月前、帝国海軍は第二次バルチスタ沖海戦にて敗北。次は恐らく陸から攻められると踏んだ参謀本部は、植民地への大規模派兵や現地での食料の買い占め等を指示。その結果が現地民の餓死なのだ。

 

「うるさいな、何があった?」

 

そんな中、仕事で制統府を訪れていたのがグラ・バルカス帝国外務省のダラスである。この男の発言が、まさか結果的に大惨事を引き起こすことになるとは知る由もない。

 

「いえ、ちょっとヒノマワリ王国の関係者が来ておりまして、食料を国民にも流通させよとうるさいのです」

 

「ほう?よし、俺が対応しよう」

 

「え?いや、ダラス殿のお手を煩わす訳には.......」

 

統制府職員は慌てて断ろうとする。別業務で訪れた上級官庁の職員に仕事をさせるなど、失礼極まりい上に後で上司に何て言われるか解ったものではない。

 

「いや、これは決定権を持つ私が行った方が早く事が済むだろう。任せておけ」

 

「いやあの、そうじゃなくて!ってもう行っちゃてるし!!」

 

これまた大慌てでダラスの後を追い掛ける。もうこれ、多分ヤバいことになるのは確定だ。統制府職員は溜め息を吐きながら、この後の結末を思い浮かべては落ち込んでいた。

 

「グラ・バルカス帝国外交官のダラスだ。話しがあるなら私が聞こう」

 

ダラスが入ってくると、フレイアすぐに一礼した。ダラスは無能であるが曲がりなりにも外交官であり、外交官はスーツの襟にバッチを付ける。このバッチが外交官の証である為、内部は勿論、こういう植民地でも一定の敬意を払われるのだ。特に今回の場合は、ダラスの方が立場がかなり上となる。非礼は地獄への片道切符だ。

 

「ヒノマワリ王国第3王女フレイアです。今回は、食料に関してご相談するために参りました」

 

「食料?」

 

「はい、ヒノマワリ王国がグラ・バルカス帝国の配下に入る際、国民を餓えさせないというのが絶対条件でした。

しかし今、帝国軍が食料流通を押さえて備蓄しているため、国民まで食料が回っていません。 すでに餓死にする者が多数発生しています。帝国は誇り高いと聞いています。約束を違える事無く、すぐにでもため込んでいる食料を我が国民に行き渡るようお願いしたい!!」

 

「ほう」

 

黒髪で長髪、少女の面影を残す美しい女、フレイアは凜とした対応を見せる。今まで接して来た異国の外交官に無い堂々とした姿だった。だがダラスは、その姿とよく似た男を知っている。大日本皇国外務省、川山慎太郎特別外交官である。

 

「そうなのか?」

 

「いっ、いえ。現在の状況下では補給が途絶える可能性もありますので、それに備えて食料備蓄を大幅に増やしている最中でございます。尚、これは本国からの指示でもあります」

 

「聞いてのとおりだ。なら仕方ないな」

 

「なっ!!!民が、多くの国民が死んでいるのですよ!!軍の備蓄を放出しないのはおかしい、すぐに放出して頂きたい!!」

 

「おかしい?帝国の決定に意見すると言うのかっ!!!立場をわきまえない無礼者があっ!!!」

 

ダラスの態度は豹変し、部屋中に大声が響き渡った。特に憎っくき川山によく似た姿をしていたのもあって、余計にダラスは怒るというか不機嫌である。

 

「貴様ら蛮族は勘違いをしていないか?皇帝陛下は、異国の蛮族であってもいたずらに命を奪ってはならないとおっしゃった。海よりも深い慈悲ゆえに出たお言葉だっ!!

しかし、根本的な事だが、貴様ら蛮族の命と帝国臣民の命は当然釣り合わない。今、必要性があって食料備蓄をしているのだ。我らが宗主国のために命を投げ出して協力するのが植民地というものだっ!!貴様らは我らの高度文明に触れ、遙かなる高みの生活が出来る可能性を与えてもらったにも関わらず、自分たちは何も帝国に与えずに要求だけするつもりか?貴様らは皇帝陛下の言動に甘え、たかるウジ虫同様だっ!!」

 

「なにを言う!!武力で脅して国を乗っ取り、多くの富を奪い、食料さえも奪い、何もかも奪い去っていったくせにっ!!食料、生きるために必要なこの食料だけでも開放してほしいと頼みに来たっ!!

民が死んでいるのだっ!!!帝国は奪い去るだけなのか?食料が不足しているならともかく、国民が餓えないだけの食料があるにも関わらずだ!!ただ1点のみ、国民を餓えさせないという約束すら守れないのかっ!!我らを騙したのかっ!!!」

 

「帝国を嘘つき呼ばわりするなど、万死に値するぞっ!!バカな小娘が、お前は根本的な事が解っていない。食料は説明したとおりだ。自然界を見ても解るだろう?世の中は弱肉強食だ。くやしければ、ヒノマワリ王国が帝国以上の技術と力を持てば良いこと。

今まで弱小国に甘んじ、技術を研鑽する事も無く、国としての努力を怠った貴様らにはふさわしい現状だ。そんな基本的な事も知らずによくぞ外交の場に来られたな。しかも宗主国の上級職の者を前に無礼を働くとは.......。感情だけで国は動かん。今までお前が基礎も何も教えてこられず、身分のみにアグラをかいていたのが良く解る」

 

「身分にアグラ?私は常に民に寄り添ってきたっ!!」

 

「民に寄り添ってきただと?笑わせる。国の上に立つ者の義務は民に寄り添う事では無い。国家をより強くすることだ。国が強くなることにより、富が集まり、栄え、国民の生活水準が上がる。そして何より他国から国家を守れるのだ。

民に寄り添った貴様らは国を導く者として無能だ。今のお前たちの現状は、お前たちの歩んだ歴史の結果生み出された事実だ。解ったか?蛮族の無能の王に育てられた無能の姫さんよ」

 

もう無茶苦茶である。だがここまで凄まれては、いくら王女でも反論する程の思考は残らない。悔しさとか怒りとかの感情で塗りつぶされて、反論する方向に思考が回らないのだ。できることといえば、睨み付ける位しかない。

 

「もう良い、お前の顔は見たくない。さっさと去れ!!」

 

フレイアは動かない。いや、国民のために引くわけにはいかなかった。王女として、何が何でも食料を貰う必要がある。

 

「早く去れと言っている!!!」

 

「…………」

 

「出て行け貴様ぁ!!」

 

フレイアが平手打ちされる音が室内に響く。フレイアはなおも残ろうとするが、他の職員に拘束されて退出した。

 

「おい」

 

「はっ!!」

 

「先程の蛮族は、我がグラ・バルカス帝国に意見し、愚弄した。これは皇帝陛下を愚弄したも同然であり、不敬にも程がある。暗殺でもでっち上げた罪でも何でも良い。屋敷にいる者全員、始末しておけ」

 

「は?……はい!」

 

「手段は問わない、多少人が巻き込まれようが構わん」

 

制統府は他国を統治するため、実力行使を行う部隊が存在する。外交官ダラスはあの真っ直ぐな瞳を持つフレイアに何かしらの危険性を感じ、命令を降すのだった。

だがダラスは1つ、盛大なやらかしをしてしまった。この命令を伝えた統制府職員は、ただの職員ではなかった。皇国中央情報局『ICIB』のケースオフィサーに雇われた作業玉(エージェント)だったのだ。彼は即座にケースオフィサーに渡りをつけ、情報はそのまま神谷の耳にも入る事になる。

 

「一族郎党皆殺しとは、かなり過激だな」

 

「どうしますか長官?」

 

「どうしようか。あ、そうだ。確か後方のエマーソン基地に『夜彪』が居たな。アイツらを使うか」

 

『夜彪』部隊。皇国最強の特殊部隊、特殊作戦群の中でも夜戦に特化したエリート集団である。特殊作戦群隷下の部隊というのもあって、その練度はトップクラスであり夜に彼らと遭遇すれば最期、逃げ切る事は不可能である。

 

「戦力はどうするので?」

 

「流石に敵地からの要人救出に加え、最悪の場合は正面切って戦闘だからな.......。二個分隊、8名を派遣しよう。これに加えて、バックアップを厚くする。周辺の地図を見せてくれ!」

 

神谷は作戦地域となる、第3王女とやらが住む邸宅付近の地図と格闘を始める。正門のある南側は街に面しており、北側から西側は森林と山、東側は森林と大きめの川がある。地形としては、この上なくこちらに有利なフィールドである。

 

「まず『夜鷹』のヘリコプターは絶対だ。天神2機と、空軍から彩雲を出す。それから念の為、川に『河童』を配備しよう」

 

「了解しました。直ちに伝達いたします」

 

さて、地味に初登場となる『河童』に付いて解説しよう。無論、あの妖怪の河童ではない。正式名称、特殊水上輸送隊『河童』。河川、もしくは海上で特殊部隊員の任務を支援する部隊である。

神谷からの指示を受けた各部隊は出撃準備を開始し、20:00にはエマーソン基地より夜彪達を乗せたUH73天神が離陸。21:45には、邸宅付近の森林に着陸し部隊を展開した。

 

 

 

22:00 フレイア邸宅 自室

「フレイア様!!フレイア様っ!!」

 

「何事ですか?」

 

「帝国の制統府に働きに出ている料理人が、偶然にもトイレで聞いた情報です。フレイア様を暗殺しようと帝国が動いています。

ここは危険です。一刻でも早くお逃げ下さい!!!」

 

「え?暗殺???」

 

自分に向けられた殺意に背筋が凍る。どうやら帝国は、陳情に行っただけの者を消し去るらしい。

 

「手練れの女剣士を2名護衛につけます。時間が無い事と、少人数の方が見つかりにくいので、これで我慢してください。この2名は日輪級の剣聖です」

 

ヒノマワリ王国の中でも最上位である日輪級剣士を護衛につける辺り、本当に緊急事態らしい。

 

「しかし、いったい何処に行けば.......。それに国民が.......」

 

王国から自分の意思だけで外に出たことは一度も無い。それどころかフレイアはアグレッシブなタイプではなく、いつも部屋で本を読むタイプだった。よくある王宮脱走して城下を気ままに歩くとか、そういったこともした事がない。

それに王女としての責務がある為、命を守ってくれる事はありがたいが、どうしてもフレイアは1歩踏み出せない。

 

「私の願いとしては、バルクルスへ!!バルクルスへ行って、ムーの連合軍に接触してほしい!!そして、グラ・バルカス帝国を海戦で打ち負かしたとされる大日本皇国に、国の代表として助けを求めてほしい。

このまま食料が絞られれば、国民の多くが飢え死にしてしまいます!!ムーによれば皇国は、我々と同族である可能性があるそうです。きっと力になってくれるはず。

早く!!早くご用意くださいっ!!地下通路の先に馬と剣士が待っています」

 

万が一の時、脱出のための通用口があり、地下通路で森林までつながっている。すでに手が回っている可能性を考慮し、従者はそこを行けとフレイアに伝える。

 

「でも..............」

 

突如として正面の門に閃光が走り、猛烈な爆発音と共に門が四散した。爆発音と振動が腹に響く。

 

「まずいっ!!こんなにも早いとは.......。フレイア姫様、私は心優しき姫様の従者で幸せでした。これからも、ヒノマワリ王国の民をよろしくお願いします」

 

従者はフレイアにそう微笑むと、壁にかかっていた剣を引き抜き廊下へと飛び出していった。

 

「私の最後のお勤めです。姫様を必ず逃がします!!!」

 

玄関ドアが破壊される音が響く。すぐに女性の悲鳴が聞こえた。いつも明るく料理を運んできてくれるメイドの声。

 

「えっ?えっ?」

 

フレイアは動かない。というか、動けない。今まで経験したことの無い無慈悲な暴力を前に、彼女の身体は全く言う事を聞かなかったのだ。

 

「早くっ!!手遅れになる前にっ!!!!!」

 

「行けっ!!!我らの為に行ってくれっ!!!!」

 

他の従者達がフレイアの背中を押した。はじかれたように彼女は地下通用口に向かって走り出した。足音のする方向とは逆側の階段を駆け下りる。

 

「ここは通さんぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」

 

従者の怒号が響き渡る。その直後、連続した銃声が響いた。その後の直後、金属が落ちる音と何かが倒れる音を最後に、従者の声は二度と聞こえなかった。

すぐに地下通路に入り、真っ暗な通用口を走る。途中僅かな突起に躓いて転び、土だらけとなった。

 

「ううっ.......。ううううっ」

 

おそらく従者は、いや、お手伝いさんも、護衛の剣士も戦っているのだろう。明るく挨拶してくる若い剣士の顔が頭に浮かぶ。

 

「王女殿下!今日は天気がいいですよ。街で子供達が遊んでまして、私も誘われましたよ」

 

満面の笑みで料理を運んできたメイドの顔が頭に浮かぶ。

 

「今日のお食事は殿下の大好物、鶏肉のシチューですよ。ささっ、冷めないうちに」

 

すてきな人たち、家族の一員のように思っていた。そんな人たちは、今、死んでいっている。足は悲鳴を上げ、心臓はもう動くのは限界だと苦しさを伝えてくる。しかし、止まる訳にはいかなかった。泥だらけになり、汗にまみれて走った。

 

「ハアッハアっハアッ!」

 

裏山の出口から外に飛び出す。森林の中でも、少し小高い丘のような場所に作られた出口から、町が一望出来た。すぐに屋敷の方を向く。

 

「そんな.......」

 

先ほどまで住んでいた屋敷が炎に包まれていた。あれでは、中に居る者は誰も助からないだろう。

 

「そんな.......そんなぁ..............。う……うあぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!うあぁぁっぁあぁぁぁ!!!!!!!」

 

自分の行動が招いた結果、自分がグラ・バルカス帝国に交渉に行かなければ。担当者の怒りを買わなければ、死なずに済んだ命がある。

自分の行動の結果死んだ人たちがいるという事実に、彼女の心は壊れそうになった。

 

「フレイア様、すぐにこちらへっ!!」

 

「うあぁぁぁ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

「姫様、失礼」

 

護衛の1人が王女の頬を強く叩く。それでようやく、我に返った。

 

「処分は後ほど受けます。犠牲になった命のため、そしてヒノマワリ王国のためにも、すぐに馬に乗って下さい。

グラ・バルカス帝国の鉄車は速く、そして戦士は強い。守り切れるか保証はありません。時は一刻を争うのです!!」

 

王家の姫という立場が、フレイアの精神崩壊を止めた。彼女は泣きながら馬に乗り明るい月明かりの元、バルクルスへ向かって走る。だがその道の先には、帝国軍の別働隊が待ち構えていた。

 

「隊長、馬車が来ますよ!」

 

「例の屋敷からの逃亡者だろうな。馬を射殺し止めよ」

 

「了解!!」

 

兵士2人が馬車を引っ張る2頭の頭を撃ち抜き、馬車を停車というかクラッシュさせて止める。馬車は前に一回転して地面に突き刺さり、身動きが取れなくなった。次の瞬間には、帝国兵が群がりドアを破壊してフレイアを引っ張り出した。

 

「この身なり、確定だな」

 

「フレイア様!!!!」

 

「しかも護衛付きか。隊長、どうします?」

 

「そっちのフレイアとかいう王女様には用があるが、こっちの護衛の女2人はどうでも良い。という訳だ、輪姦するか野郎共」

 

グラ・バルカス帝国というより、ダラスの怒りを買ったのはフレイアのみ。護衛2人は言うなれば、単なるオマケに過ぎない。であれば、別に殺そうが犯そうが問題はない。しかも護衛の2人、王女の護衛というだけあって結構スタイルもいい上に顔も良い。不良兵士の選択肢なんざ、犯す一択だろう。

 

「や、やめろ!!近寄るな!!!!」

 

「穢らわしい!!!!!」

 

「おーおー、吠える女ほど犯し甲斐があるってもんよ」

 

隊長が護衛の服を剥ぎ取ろうとした時、どういうわけか横に倒れた。そのままピクリとも動かず、まるで糸が切れた人形の様である。次の瞬間、周りにいた帝国兵が次々と倒れていった。だが悲鳴も何も聞こえず、ドサッドサッという何かが倒れる音しか聞こえなかった。

 

「い、一体何が.......」

 

「アキナ、フィーム、無事なのですか!?!?」

 

「無事です!!」

 

「でも縄で縛られて動けないです!!!!」

 

「こっちも縄で縛られ.......て.......」

 

今の今まで、フレイアの手は縄で縛られていた。縄抜けなんてやり方知らないにも関わらず、縄が1人手に解けてしまったのだ。

 

「き、切れた。なんで?ッ!?」

 

何の気なしに後ろを振り返ると、全身緑の人間がナイフを持って立っていたのだ。帝国の兵士でも、ヒノマワリ王国の者でもない。見た事がない人間がそこにいたのだ。しかも周りを見れば、他にも何人かいる。

 

「ヒノマワリ王国王女、フレイア・タカツカサ・ヒノマワリだな?」

 

「は、はい.......」

 

「安心しろ、我々は味方だ。大日本皇国統合軍特殊作戦統括局、特殊作戦群『夜彪』部隊。フレイア王女殿下のエスコートに参上した」

 

「貴様ら、本当は帝国兵ではなかろうな.......」

 

護衛のフィームとかいう剣士からそう言われたので、取り敢えず肩の日の丸を見せた。だがこれでは信用してくれないらしい。

 

「なら、これでどうだろう?」

 

隊長がヘルメットを外す。メットを外した下は、ヒノマワリ王国の民に近しい顔立ちの壮年の男だった。グラ・バルカス帝国の人間とは、全く似ても似つかない。

 

「わかりました、信じましょう。それで、私達はどうすれば?」

 

「このまま森林内を移動しつつ、ランデブーポイントを目指す。後はヘリでヒノマワリ王国を脱出する手筈になっている」

 

「しかし周囲には帝国軍が!」

 

「ご心配なく。我々の戦争は帝国の遥か未来を行く。既に上空にて無人航空機が、我々の支援を開始している。空からであれば、ある程度は敵を避けて行動できる。

そんなに心配だと言うのなら、これを耳に付けるといい」

 

隊長は護衛のアキナとフィーム、そしてフレイアにインカムを渡し、耳につけて貰った。話す事は出来ないが、無線の中身を聞く事はできる。

 

「HQ、こちらグルーム01。パッケージクイーンを確保、パッケージの他、護衛の剣士2名も確保した」

 

『HQ了解。以降、両名をパッケージジャンヌ、パッケージダルクと呼称する』

 

「グルーム01了解。これよりポイントE(エコー)まで撤収する」

 

『HQ了解。現在周囲に捜索隊が展開中。接敵に注意し、速やかに撤収せよ』

 

初めて聞く無線の中身は、3人にとっては異国の言葉だった。「えいちきゅー」だの「ぱっけーじ」だの「くいーん、じゃんぬ、だるく」だのと、まるで意味がわからない。

 

「撤収する。行くぞ」

 

そんな3人はお構いなしに、夜彪達は夜の森の中を突き進む。森の中を進んでいる最中に天気が崩れ、結構な大雨が降り出し月明かりも無ければ、虫の声や捜索部隊の音も聞こえない。聞こえるのは雨音と足音くらいだ。

 

「順調ですね」

 

「このまま何もなく終わってくれれば良いんだが」

 

一方、この作戦を統括するべく指令室にいた神谷と向上は、正面の巨大モニターに投影されている敵の反応を眺めながらボーっとしていた。何せ今回は作戦地域の上空を彩雲が飛んでいる。彩雲のカメラアイに搭載された赤外線スコープで、雨の中だろうと敵の動きは全て丸分かり。相手の位置が見えるかくれんぼは、探す側でも隠れる側でも簡単である。しかも情報は戦術データリンクによって共有され、常にヘルメット内部のHUDに投影される。いちいち口頭で指示する必要もない。

 

「長官、妙な部隊が動いています。こちらを」

 

メインモニターに表示された地上の映像には、味方を示す緑枠の後方から所属不明人員(アンノウン)を示す紫枠の集団が接近している。その数、概算で60名。一個小隊規模だろう。

 

「敵、ですね。これは」

 

後に判明する事だが、この謎の敵部隊の正体はシーン暗殺部隊というグラ・バルカス帝国軍側の精鋭特殊部隊であった。名前の通り暗殺は勿論、重火器を用いての拠点防衛・攻撃まで何でもやる部隊である。

また装備面も一般部隊とは一線を画しており、StG44によく似たメテオ自動小銃と、サイドアームとしてM1911に良く似たコスモ自動拳銃を全員が装備しており、分隊支援火器としてFG42をベルト給弾式にしたような見た目のアポロ軽機関銃を装備している。

 

「やはり、VIPを連れての山中は無理があったか。近いぞ、戦闘準備。グラ・バルカス帝国軍、ヒノマワリ王国統治部隊の捜索隊が散在している。距離間に注意。パッケージは生かせ。邪魔者は全部殺せ。『夜彪』部隊、戦闘開始」

 

ここに偶然ではあるが、世界初となる特殊部隊同士の全面対決の火蓋が切って落とされた。それではここで、色々皇国兵と帝国兵を比べてみよう。まずは兵力。皇国は43式自動小銃の5.56mm仕様が5名、7.62mmのマークスマンライフル仕様、42式軽機関銃、48式狙撃銃7.62mm仕様が1名ずつの計8名。対する帝国はメテオ自動小銃が50名、アポロ軽機関銃13名である。

次に銃以外の装備面であるが、帝国の場合は通常の破片手榴弾とスモークグレネード、後はライフルグレネード位で、無線機を持っている通信兵は数名である。対する皇国はグレネードは勿論、マイクロドローンを全員が装備し、ドローンの蝶と蜘蛛もある。無線も各々が装備しており、上空の通信衛星を用いれば星の裏側でも連絡できる。

そして支援部隊の数だが皇国はUAVによるエアカバー、戦闘艇とヘリコプターによる火力支援が可能となる。対する帝国は周囲の部隊は周囲に散らばる捜索隊を投入できるが、既にその手は使えない。何故なら…

 

「ECM戦開始。ジャミングしろ」

 

「了解。全周波数帯にて、ジャミングをかけます」

 

無線機にジャミングをかけられたからである。皇国は例えジャミングされよう無線に自動的にジャミングが解除される特定の信号を混ぜてあるので、ジャミング環境下であっても味方のジャミングで妨害はされない。

 

「来た!!」

 

『お出ましだ。散れ。囲まれるな!!』

 

先手を仕掛けたのは帝国であった。弾丸がフレイア達の頭上を通過し、フレイアは悲鳴を上げてパニックになる。だが夜彪達は臆する事なく、訓練通りに動く。茂みや草むらという遮蔽物を利用するべく、高速で走りながらの射撃。普通なら精度が著しく低下するが、夜彪達なら問題ない。

 

(1人1人は弱いが、装備が良すぎる上に数が多い。奴ら何者だ?)

 

「キャァァァァ!!!!!!イヤッ!!!!イヤッ!!!!!!死にたくない!!!!!!死にたくない!!!!!!!!!!!!」

 

「お静かに王女殿下」

 

シーン暗殺部隊も決して弱くはない。彼らは間違いなく、レベルとしては特殊部隊を名乗れる。だが相手が悪すぎた。皇国というより旧世界では既に特殊部隊は世界中の軍隊が保有する部隊であり、様々な作戦に投入されノウハウもある。更に皇国自身も独自のノウハウを持っていて、尚且つ装備も遥かに上の物を装備していては、シーン暗殺部隊に勝ち目はない。

 

「パイロットコピー、上空を旋回」

 

「サーチ、コピー。目標を探知」

 

「しぶといな。この少し離れた2人、恐らく機関銃組だ。一番北のユニット、分断して止めろ」

 

的確な指示で敵を撹乱し、今回の最重要目標たるフレイアを逃がす道のりを形成していく。対するシーン暗殺部隊は深夜の森林というのもあって、敵の正確な位置や数は分からぬまま戦闘を続けていた。

 

「クソッ!奴ら何者だ!!」

 

「弾が当たらない!!!!」

 

「完全に地形を利用してやがる!!オマケに素早い!!!!」

 

既に夜彪達は地形を利用し、遮蔽物から遮蔽物へ素早く移動しながら銃撃してくる。その上、各々が同時に動くので言うなればシャッフルされ続けられている状態だ。

 

「ウオォォォォォォ!!!!!!ッ」

 

「ダーキンズ!!!!」

 

「どうしたぁ!!!」

 

「ダーキンズがやられた!!!!」

 

「クソッ!!!!」

 

しかもスナイパーとマークスマンの2人は余り動かずに、浮き足だった奴から順に殺していっている。幾ら百戦錬磨の精鋭だろうと、人間である以上は死に恐怖を覚える。その恐怖は結果的に相手に隙を見せることになるのだ。

 

「何人やられた!!」

 

「分かりません!!!20人近くは既に!!!!」

 

「くっ、3割近くか。.......致し方ない、一度態勢を立て直す。退け!!」

 

ジーン暗殺部隊の隊長、シーン少佐は冷静だった。ここで泥沼化して全滅するのを避け、一度態勢を立て直す事を選んだのだ。

 

「敵影、後退していきます」

 

「パッケージの回収を急がせろ」

 

「了解」

 

これ幸いと夜彪達も動きだす。このまま森林を抜けて、その奥にある平原で迎えのUH60天神の特殊部隊仕様と合流する手筈になっている。そこまではまだ15分は掛かる。しかも王女というお荷物がある以上、そう簡単にすんなり脱出できるとは限らない。またさっきの部隊、或いは別の部隊に追い付かれる可能性もある。接敵はしないだろうが身動きが取れなくなれば万事休すである以上、早いところ脱出したいのが本音だ。

 

「あの、敵は?」

 

「撤退していった。とは言え、安心はできない。今のうちにとっとと撤収する。もう少し頑張ってくれよ王女サマ」

 

このまま順調に撤退できるかと思った矢先、問題は続く物でまたしてもアクシデント発生である。目標地点近くに、戦車部隊が展開してきたのだ。偶然ではあるだろうが、流石に戦車を破壊して進む事はできない。

 

『HQより各員。目標地域周辺にて、一個機甲大隊相当の戦車が確認された。これによりヘリによる回収を放棄、一時待機せよ』

 

「フェンサー1、了解。待機する」

 

「何か問題発生か?」

 

護衛の剣士、アキナがフェンサー1こと隊長に尋ねた。一瞬伝えるべきか迷ったが、誤解をまねかねないように慎重に伝える事を選択した。

 

「作戦が変更になった。さっき機甲大隊と言っていただろう?アレはまあ、鋼鉄の地竜が大量にいるって事だ」

 

「センシャとかいう兵器か!?」

 

「あぁ」

 

「だが確か、皇国の兵士は単独でも戦車を破壊できるだろう?」

 

「携帯式対戦車ミサイルを使えばできるが、生憎と今回は装備していない。上空にいるUAVにもスマート爆弾は装備しているが、大隊規模は流石に無理だ。という訳で我々は、一旦ここで隠れる。脱出手段は他にも用意してあるから、そこは心配しなくていい。今、本部でコースの策定を行っているからな」

 

数分後、本部より再び無線が入り作戦が伝えられた。ついでにHUDの表示も更新され、地図のピンの位置なんかが変更されている。

 

『夜彪達、神谷だ。これより作戦を説明する。当初ヘリで脱出する予定が、戦車に固められて身動き取れなくなったのは知っての通りだ。そこでプランBで行く。『河童』が回収する作戦だ。場所はマップの表示通りだが、見て分かる通りかなり距離がある。

そこで君達には、車両窃盗を行ってもらう。現在地から程近い街道を、君達の方に向けて帝国軍のトラックが接近している。護衛はいない。これを襲え。トラックパクって、後はそのまま脱出地点まで全開走行のドライブだ』

 

「了解しました。直ちに作戦にかかります」

 

夜彪達は即座に動き出し、指定されたトラックを襲うべく行動を開始する。丁度ルート上にまあまあ長い直線がある。ここで襲う事にした。その為に各員が準備を始め、すぐに配置に付いた。15分ほどすると、件のトラックが何も知らずにやってくる。

 

「センターに目標を捉えた」

 

「こっちもだ。敵は2人、どちらも運転席だ」

 

「俺は右、お前は左だ」

 

『ターザンの準備は完了している。頼むぞ』

 

次の瞬間、スナイパーとマークスマンの2人が狙撃を敢行。運転席にいた2人をヘッドショットで仕留め、トラックは停止…………する事なくドライバーが死んだ影響で、逆にその体重でアクセルベタ踏み状態になってしまい加速してしまった。

だがそれを見越して木の上に待機していた隊員が、トラックに飛び移って運転席から死体を引っ張り出して滑り込み、そのままトラックを普通に停車させたのだ。

 

「全員乗ったぞ!!出せ出せ!!!!!」

 

そう言いながら屋根をバンバン叩く。これを合図にアクセル全開に踏んで、『河童』との合流地点を目指す。だが途中で敵の集団とすれ違ってしまい、カーチェイスになってしまった。

 

「こんなの聞いてねぇよ!!!!」

 

「あそこに敵が居たのが悪いんすよ!!!!」

 

『あー、こちらHQ。すまない、我々のミスだ。彼らの位置は位置的に死角で、対処が遅れてしまった。既に彩雲の準備は整っている。支援攻撃が可能だ』

 

すぐに隊長は部下に彩雲を使うように指示を出す。今回作戦に参加しているMQ3彩雲には、SGB1暗鬼が搭載されている。これは所謂『スマート爆弾』であり、投下後に翼が展開されて誘導ができるのだ。これを用いればカーチェイスの様な激しい動きの相手でも、爆弾を直撃させることができる。

 

「投下された!到達まで18秒!!!!」

 

「それまでは牽制するぞ!!!」

 

ドカカカカカ!!ドカカカカカ!!ドカカカカカ!!

 

荷台に乗る隊員達が銃を撃ちまくって牽制していると、すぐに18秒経ち爆弾が命中。敵集団の排除に成功した。

 

『こちらHQ。目標地点に敵部隊がバリケードを構築中。注意せよ』

 

「どうします隊長!?」

 

「このまま川に突っ込め!!そのまま河童の皆さんに回収してもらう!!!!」

 

「わっかりました!!捕まっててくださいよ!!!!!」

 

ギアをもう一個上の物に入れて、アクセルを更に踏み込む。トラックは加速して、目標地点まで一直線だ。

 

「見えた!!目標ポイント視認!!!!」

 

「バリケードは!?!?」

 

「ありません!!このまま突っ込みます!!!!」

 

実はバリケードは正確にはカーブの先にあったので、その手前で川にトラックごと突っ込めたのだ。まあ仮に進路上にあっても、無理矢理突破するが。

 

「王女様!このまま川に突っ込むぞ!!!!」

 

「この鉄車ごとですか!?」

 

「そうだ!!!!」

 

まさかの脱出方法にフレイア、アキナ、フィアームの3人は唖然としているが、今はそんなリアクションをしている暇すらない。驚いている間に、トラックは川に突っ込んで巨大な水飛沫を上げた。バリケードに配備されていた帝国兵達は、目の前で起きた事態に理解が追いつかずオロオロしている。

 

「ぶはっ!」

 

「パッケージは!!!!」

 

「無事です!!!!」

 

パッケージたる3人の首に腕を回して、水面に浮かぶ。だがこの頃には帝国兵達が武器をこちらに向けて、すでに岸は兵士だらけ。絶体絶命というヤツである。

 

「ここまでですか.......!」

 

「いーや、俺達は逃げ切れる。

 

次の瞬間、高速艇が木々の影から飛び出してきた。『河童』がやってきたのだ。それも0式12.7mm機銃2挺、42式軽機関銃連装型6挺、58式六銃身7.62mmバルカン砲3挺で武装した高速戦闘艇2隻を引き連れて。

 

ドオォォォォォォォォ!!!!!!!!

 

銃声が重なりすぎてどれがどれだか分からなくなる程の弾幕を浴びせられ、バリケード陣地を構築していた帝国兵は逃げも隠れも出来ずに弾丸の雨にその身をさらす羽目になった。

 

「夜彪ってのは泳げるのか!?」

 

「あぁ!!」

 

「オーライ。川向こうのムーへの脱出便の終電だ!!乗って行くか!?!?」

 

「おうよ!!!」

 

その間に夜彪達とパッケージを回収し『河童』は、ものの1分程度で現場から離脱。昼頃にはフレイアをリュウセイ基地まで送り届けたのである。

 

 

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