最強国家 大日本皇国召喚   作:鬼武者

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第七十九話穢らわしい真実と綺麗な嘘

パッケージ3名と『夜彪』部隊を回収した『河童』は、そのまま河川を遡上。1時間のクルージングの後、特殊航空輸送隊『夜鷹』のCH63大鳥に回収されて一行はリュウセイ基地へと向かった。

本来なら少し休みたい所だろうが『ヒノマワリ王国の王女としての責務を果たす』という固い意志で、休む間も無く皇国とムーとの3カ国会議に望んだ。

 

「リュウセイ基地司令、マックス・パーマー少将です。よろしくお願いします」

 

「小官はリュウセイ基地司令補佐、ゴンバイ・トリスターレ中佐であります。王女殿下にお会いでき、光栄であります」

 

「大日本皇国統合軍総司令長官、神谷浩三元帥だ」

 

「大日本皇国統合軍総司令長官秘書官、向上六郎大佐です」

 

「ヒノマワリ王国第3王女、フレイアといいます。このような場を設けて頂き、誠に感謝申し上げます」

 

列強国序列第二位であるムー、そして列強に並ぶかそれ以上の強さを持つとされる大日本皇国の関係者を前に、フレイアは少し緊張気味に話し始めた。

深く礼をした後、彼女は現在のヒノマワリ王国の現状の説明、そしてヒノマワリ王国がグラ・バルカス帝国に降った経緯が説明される。

まず自国の立ち位置として、グラ・バルカス帝国による外圧が生じた際、圧倒的な軍事技術と規模の差がある国という事は容易に理解出来た。そして降る事を拒否し、戦った国家の民の行く末も十分に調査された。帝国と戦えば、ヒノマワリ王国の民が奴隷となる可能性が高く、王政を捨ててでも、民の命を最優先とする決断がされる。この結果を持って、ヒノマワリ王国はグラ・バルカス帝国の支配下へと入ったのであった。その為、侵略とは言っても戦争自体は回避していたのだ。

支配下に入る際、ヒノマワリ王国側は王族の存続と食料だけは絶対に取り上げない、民を餓えさせないという条件を課した。これは文章による調印だけでは無く、外交の場でも再三にわたって確認され、了承されたのだ。やがて制統府が王城の近くに設置され、職員と軍隊が派遣されてきたのだが、帝国の統治は過酷そのものだった。

現地民と馬鹿にされ、土地や資産はすべて帝国のものとされる。町ですれ違う民に対するグラ・バルカス帝国軍人の屈辱的な仕打ちも多々目撃された。帝国軍人は土足で家に上がり込んで金目の物は奪い、本能のままに様々な事が行われた。ストレスのはけ口、植民地という悲惨さがそこにあった。逆らう者はすぐに殺される。尊厳も何も無い、奴隷と変わらない生活。それでもヒノマワリ王国の民は耐えた。耐えて耐えて耐え抜いていたが、ついに帝国は食料に手を着ける。ついには餓えが蔓延し、餓死者が続出したのだ。

そして後はご承知の通り、たまりかねたフレイア王女が陳情に行ったところ、暗殺されかけ、逃亡したところを皇国軍に救出されたのだ。

 

「毎度毎度のことながら、帝国の連中のやり口は酷いものだ.......」

 

「他国も同じなのですか?」

 

「.......殿下はアルーという街はご存知ですか?」

 

基地司令たるパーマー少将がそう問いかけた。フレイアはかつて、幼い頃であったがアルーには訪れたことがある。移動の中間地点に過ぎない街だったが、活気のある街だったことを覚えている。

 

「えぇ。かつて訪れたこともありますわ」

 

「アルーはムーにおいては、最初に攻められた街です。しかし皇国軍との共同作戦で、アルーは2週間もしない内に奪還することができました。しかしそこに住む民は、金目の物やめぼしい物は全て奪い去られ、女は慰み者にされ、男は銃剣や射撃の練習台、つまりは的にされていました。彼らは1週間と少しで、地獄を作り出してしまうのですよ」

 

こんな話をしていると、窓の外からバサバサと音が聞こえる。見ればそこには、謎の紋章が刻まれたハトが居た。

 

「姫様、胸に王家の紋章が入っています!!!」

 

どうやら、所謂『伝書鳩』というヤツらしい。今や廃れた通信手段だが、かつては基地を移動してもその移動先に伝書鳩が来る方法があった位には、重要な情報伝達手段だったのだ。とは言え、随分前に廃れて以来、伝書鳩を見る事はなくなり、神谷と向上も初めてその姿を見た。

フレイアは慣れた手つきで足の紙を外し、手紙を広げた。だが読み進めていく内に、涙が頬を伝い、無言で震え出した。

 

「フレイア王女、大丈夫ですか?」

 

「王と王子が幽閉され、お姉様、王女達は殺されてしまったようです.......」

 

「なっ!!」

 

「私が.......、グラ・バルカス帝国に食料を融通するよう、交渉に行った事は先ほどお話ししたとおりですが.......帝国の実働部隊は私の顔は知っていますが、姉妹の見分けが出来ません。

帝国外交部門から私への暗殺指示を受けた部隊は私だけでは無く.......おっ、お姉様達まで........」

 

外交の場で、泣き出してしまうなどあってはならない事だと心では理解している。しかし、優しかった姉が殺された。もうあの笑顔、楽しい日々は決して戻ってこない。自分が行かなければ死なずに済んだかもしれない。つまり、自分が原因なのだ。

 

「うわああぁぁっ!!」

 

あのフレイアの抗議後、ダラスから暗殺指示を受けた制統府は王女暗殺をシーン暗殺部隊へ指示する。しかし確実に暗殺せよとの指令を受けた部隊は、肝心の姉妹の見分けがつかない。なにせ写真等の情報がなかったのだ。名前と簡単な身体的特徴はわかってはいたが、名前は個人を知らなければ意味を為さないし、身体的特徴だって姉妹である以上は何処となく似てしまう物だ。

だが、被害の規模は問わないと言われていた。逃げられてはならないと判断し、ヒノマワリ王家が所有する全ての邸宅を同時に襲撃。フレイアを襲った夜、別の王女達はグラ・バルカス帝国によって暗殺されていたのだ。そして制統府は王女暗殺が王家に伝わり、反旗を翻されては面倒なので、王家とヒノマワリ王国軍の連絡を遮断するため、すぐに王と王子達を幽閉したのだ。

 

「.......皆様、お見苦しい物をお見せ致しました。ヒノマワリ王国の王家は幽閉され、実質的に国内の権限を失いました」

 

フレイアは誓った。何が何でも姉の仇を取ると。地獄の業火に身を焼いて、復讐の怨嗟をグラ・バルカス帝国へ送ってやると。

 

「私はヒノマワリ王国第3王女フレイア・タカツカサ・ヒノマワリです。現在国内の王家の機能は停止しているため、非常時国家保護法により現時点をもってヒノマワリ王国の実質的権限は、すべてこのフレイアに移行いたしました。非常時国家保護法により、ヒノマワリ王国内法はすべて、一時的にこのフレイアの意思により決定されます」

 

本来なら役立つ事がない方がいい、非常時を想定した国家保護法。全ての国内法を乗り越え、権限を集中させた1人によりすべてが決定可能となる。

 

「ヒノマワリ王国として、対グラ・バルカス第二文明圏連合国家及び大日本皇国へ、正式に要請いたします。王国内において、国民を苦しめ続けているグラ・バルカス帝国を国外へ排除したい。協力を……要請致します!!どうか速やかなる王国の解放を!!!!」

 

「.......お話は分かりました。しかし結論から申しますと、今すぐに攻める事は不可能です」

 

パーマーの言葉に、フレイアは愕然とした。背後に控える護衛の2人も同様に、ショックを隠せないでいる。

 

「いくらグラ・バルカス帝国への脅威に対抗する共通意識があろうと、我々の一存で第二文明圏連合軍は動かせません。しかも戦闘となると、確実に王国民への被害も相当数出る事になるでしょう。というより、帝国の拠点が市街地に存在する為、攻撃しようにも出来ないのです。それこそ王国民への被害を顧みない、無差別攻撃を前提とすれば作戦上の問題はありませんが、我々としてもそれは避けたい」

 

「皇国軍としても同じだ。そもそも我々は本来、矢面に立つのではなく第二文明圏の皆様を支援する事こそが主任務。実際、現在の我が軍の状況は来る反攻作戦に向けての戦力の再編成や、燃料武器弾薬等の戦略物資の備蓄及び輸送ラインの構築中だ。それをいきなり防衛ならともかく、攻勢へと転換するのは難しい」

 

そもそも皇国自身、あくまでこの戦争は恩売りが基本である。無論、先の海戦の様に本格介入することもあるが、当面は一歩引いた場所からの支援が全体の方針だ。これは軍どころか一色と川山の考えから来ているし、神谷としても別に異論はない。いくら統合軍総司令長官でも、他国が絡んでくる状況では全軍を好き勝手には出来ない。

 

「そんな.......」

 

「だが!!」

 

とは言えだ。物事には常に『例外』という物が存在する。軍全体の方針が『第二文明圏各国等への軍事的支援』だとしても、それが軍の上位組織たる国家というシステムが決定した事であっても、それを覆したり無効とする事はできる。

 

「それはあくまでも、大日本皇国統合軍としての解答だ。今までの言葉も大日本皇国統合軍総司令長官、神谷浩三元帥としての言葉だ」

 

「......まさか閣下!」

 

「向上!!」

 

「はっ!!!!」

 

「神谷戦闘団全部隊に伝達!1900時より即時待機!想定、作戦217、ケース58及び作戦199、ケース5。復唱しろ!!」

 

「1900時より即時待機。想定、敵支配地域への夜間奇襲電撃飛行強襲戦。以後は同・支配地域の解放及び要人のスナッチミッション」

 

神谷戦闘団。世界最強の最精鋭戦闘集団であり、神谷が構想するありとあらゆる作戦を完璧に実行に移す最強にして最狂の軍団。国家のしがらみに囚われず、常に自由な裁量で世界中ありとあらゆる地域へも赴く戦人だ。これが例外というヤツである。

 

「我々が何故『国境なき軍団』と言われ、部隊章に世界地図を背にしたアリコーンが描かれているのかを帝国の雑兵共に見せてやるぞ!!!!」

 

「ハッ!!!!」

 

「.......まさか、あの方が彼の修羅だったとは..............」

 

「どういう事ですかアキナ?」

 

「先進11ヵ国会議のすぐ後、帝国の支配域に1部隊で飛び込み、処刑寸前の捕虜を救出した『修羅の宣戦』を覚えていますか?」

 

因みにあの神谷が行ったレイフォルでの捕虜奪還作戦は、後に『修羅の宣戦』の名で世界中に轟いた。当初は神谷戦闘団を『修羅の軍』と呼称されていたそうだが、現在はしっかり神谷戦闘団か国境なき軍団で統一されている。

 

「まさか、あのお方が!?」

 

「どうやらヒノマワリ王国にもその武勇は轟いていた様ですね」

 

この会議中、ずっと黙っていたトリスターレが口を開いた。この男、実は神谷戦闘団の大ファンなのである。というのもトリスターレの妻と子が、あのオターハ百貨店立て籠もり事件の被害者であり、トリスターレ自身も本土防衛隊の士官として奪還作戦に参加していたのだ。

妻と子を助けてもらい、自らも神谷戦闘団の戦いを見た事で軍人として目指すべき高みを垣間見させてくれた存在として、尊敬の念を抱いている。

 

「トリスターレ中佐。あの、修羅という方はどの様なお方なのですか?」

 

「私自身、神谷戦闘団にいる訳ではないので詳しくは分かりません。しかしこれまでの戦いを見てきた限りでは、元帥という階級でありながら最前線の更に前に単身で飛び込む事も厭わず、現場と上を繋げるパイプとなり、的確な指示で戦場を自在に操る男、という所です。

しかし普段の方は、一般兵に紛れてあれこれ遊んだりもしていますよ。トランプをやったり、バレーやバスケに興じ、負けて部下に何かを奢ったりする場面もチラホラありましたし」

 

ヒノマワリ王国の先祖は、ムーと共にこの世界にやってきたヤムートの民。つまりは皇国と同じ大和民族である。それ故に結構な数の日本語が王国にも残っており、修羅もしっかり残っている。しかし王国での修羅の意味は、日本よりもより元の意味に近い意味で残っており、戦争や戦闘等を意味するのは同じだが、基本的に恐怖とイコールになる。日本では喧嘩程度でも修羅場扱いだが、こちらでは絶死の戦場や地獄の様な戦場でしか修羅という言葉は使われない。つまり修羅の名を冠する以上、かなり恐ろしい男だと考えていたのだ。

 

「さーて。そんじゃま、大暴れの準備と行きますかね」

 

そう独り言を言いながら部屋を出ようとした時、軍から支給されるスマホが鳴った。メールだった。その文面は今この状況では、かなりの良いニュースである。

 

「.......我が国のことながら、マジで抜け目ないなぁ。あー、王女殿下!」

 

「は、はい!」

 

「今から、そうだなぁ。3時間後。3時間後に俺の部屋に来てくれ。良いニュースが提供できる」

 

「は、はぁ」

 

何が何やら分からず生返事を返すフレイアを尻目に、神谷は部屋をさっさと出て行く。残されたフレイアら5名はポカーンとしたまま、部屋を出て行く神谷を見送った。

 

「あっ、コウくん!」

 

「おーエリス。どしたの、そんな慌てて」

 

「さっき、ロングキャスターとフーシェンがスイーツ作ってたのよ!それを今から試食するの!!」

 

「で、姉妹を呼びに行くと。お前ら見事にスイーツの虜だもんなぁ」

 

ナゴ村にいた頃は武闘派のアナスタシアと元々辛党のレイチェルはスイーツには興味なかったらしく、エリスは普通、ヘルミーナとミーシャがスイーツというか甘味好きだったらしい。所が皇国に移住し、ついでに神谷家に住まう様になった結果、神谷家お抱えパティシエだったり一流菓子職人のスイーツを食べる機会が爆増。で、見事にハマったのである。それも5人全員綺麗に。特にヘルミーナとミーシャに至っては、お菓子作りが趣味と化している。スイーツの魔法、恐るべし。

 

「それじゃアタシ急ぐから!」

 

「エリス!他の姉妹にも伝えろ。今夜は暴れるぞ」

 

「.......!へぇ、久しぶりに戦闘なのね。分かったわ。でも今は、スイーツの方が大事!!」

 

「ですよねー」

 

まあ当然と言えば当然で、武闘派のアナスタシアならともかく、どっちかと言うと普通に女の子してる方が好きなエリスは戦闘よりもスイーツに飛び付いた。別に本番はしっかりやってくれるのでノープロブレムではあるが、何故だか神谷は心に何とも言えないモヤモヤが残った。

 

 

 

3時間後 神谷執務室

「失礼します」

 

「おぉ、よく参られた。本来なら茶なりコーヒーなり出すべきだろうが、今はそんな暇がない。来てもらって早々悪いが、着いてきてほしい」

 

「は、はぁ」

 

護衛として控えるアキナとフィームも顔を見合わせ、何とも言えない困惑した表情を見せる。因みに本来なら不敬だ何だと言うべきだろうが、一応曲がりなりにも自分達と主人たる王女を助けて貰った組織のトップである以上、流石にこの程度の無礼は目を瞑る。

 

「ところで神谷様、はんがー?というのは何でしょうか」

 

「格納庫のことだ。今回は、正確にはハンガー前の駐機スペースに行くんだがね」

 

建物を出て格納庫区画を少し歩き、皇国が間借りしているスペースまで来た。暫くすると、ヒノマワリ王国のある方角の空から爆音が鳴り響く。自分達が乗ってきた飛行機械(CH67大鳥)よりは小さいが、同じ様な機体である。その飛行機械は爆音と爆風を起こしながら、フレイア達の前に降り立った。

 

「さぁ王女殿下!良いニュースだ!!」

 

「これの何処がです!?」

 

「まあ見てな!!」

 

目の前の飛行機械、UH73天神のスライドドアが開き、中から民兵のような格好をした数人の男と2人の女性が降りて来た。女性の方はフレイアと同じく、ヒノマワリ王国の伝統的な民族衣装を纏っている。

 

「.......ぁ.......あぁ!!」

 

「まさか、そんな.......」

 

「お亡くなりになられたのでは無かったのか!?」

 

天神から降りて来たのはフレイアの2人の姉、長女のサクラ・タカツカサ・ヒノマワリと次女のアジーサ・タカツカサ・ヒノマワリであった。

 

「フレイア、無事で良かったわ」

 

「よく逃げ切ったわね」

 

「.......お姉様!!!!」

 

フレイアは一眼も憚らず、2人の姉に抱きついて声を大にして泣いた。死んだはずの2人の姉が生きていた。これほど、嬉しいことはない。

 

「神谷殿、よろしいか?」

 

「なんで死んだ筈の王女2人が生きてるか、だろ?フィーム殿」

 

「あ、あぁ」

 

「あそこにいる男達がいるだろ?彼らはヒノマワリ王国に潜入していた、ウチの準軍事工作担当官。パラミリタリーオペレーションオフィサー、所謂『パラミリ』だ」

 

準軍事工作担当官、通称『パラミリ』とは簡単に言えば、諜報組織における軍事行動を担当する工作員である。敵地に潜入し標的の暗殺、爆破、拉致・監禁、拷問尋問、現地武装組織への軍事訓練等々、諜報機関に於ける軍事行動のほぼ全般を担う工作員である。

 

「ぱっ、ぱら、みり?」

 

「JMIB、皇国軍隷下にある諜報組織の軍事行動を行う兵士みたいな存在って事だ」

 

「でもなんで、そのぱーみり?がお二人と?」

 

「あー、それは…」

 

遡る事、フレイアの邸宅脱出より数時間後のこと。前回にもあったように、ヒノマワリ王国にはICIBのスパイが秘密裏に潜入していた。これを護衛、サポートする為にJMIBからもパラミリチームが潜入していたのだ。作業玉は各所の帝国占領機関に潜り込ませていたが、スパイたる自身は統制府の職員として潜入し、作業玉からの情報を得た後、このフレイア襲撃の杜撰な計画を入手した。先述の「どれがフレイアか分かんねーから、姉妹全部ぶっ殺すべ」というアレである。

本命であるフレイアは幸か不幸か、シーン暗殺部隊の本隊が動く本命扱いであり、運良く『夜彪』部隊が対応したのだが、残る2人の姉は協力要請を受けたパラミリチームが救出。適当な死体で死亡を偽装し、本人らはそのままここに逃したという訳だ。

 

「.......ねぇ、神谷殿。てことはさ、私達の国の実情は知ってたって訳?」

 

「あぁ。だが、動かなかった。動けなかった、と言った方がいいか」

 

「嘘つかないでよ.......。アンタら大国が早く動いてくれたらママも助かったのに!!!!」

 

「アキナ!!」

 

護衛たるアキナの母は、帝国の食糧買い占めによる飢餓の影響で亡くなった。父は無実の罪で帝国に捕まり処刑され、残る母は元々身体が弱く飢餓の影響で遂に衰弱死したのだ。

 

「神谷殿、どうかお許し頂きたい。アキナの母親は飢餓の影響で.......」

 

「いや、その怨みを俺は受ける義務がある。だがな、アキナさん。よく覚えておけ。大国ってのは、かなり理不尽のクソッタレな腐った連中の吹き溜まりだ」

 

「.......どういう意味よそれ」

 

「皇国は世界最強だ。ミリシアルだろうがムーだろうが帝国だろうが、現状で確認された兵器群は全て我が国の兵器が本気を出さずとも殲滅する事ができる。だがそれをしてしまうと、外交的に色々と不味い。世界最強の武力と他の追随を許さない経済力を持っていても、転移前の世界でトップクラスの影響力を持っていようと、こっちでは所詮はぽっと出の新参者。それがいきなり大暴れしすぎたら、こっちの権力に殺される。

この戦争、序盤とか前回の海戦で皇国は暴れた。本当ならここいらで休憩しないとならない位だ。とは言え現実問題としてヒノマワリ王国は地獄で、普通ならすぐにでも解放するのが道理だろうよ。だが世界をそれは許してくれない。それではいざという時に、俺達が自由に動けなくなる」

 

こうは言っているが、嘘である。全部詭弁だ。パフォーマンスにすぎない。別に皇国はヒノマワリ王国の民が何億人死のうが何兆人殺されようが、どうだっていいのだ。先祖が一緒だとしても、ヒノマワリ王国はヒノマワリ王国であって大日本皇国ではない。元が古代の皇国にいたのだとしても、証拠も何もない。であれば、彼らは単なる他国民。その生き死にに皇国は興味はない。

例え王国民が飢餓に苦しもうと、それはグラ・バルカス帝国ヒノマワリ王国統制府がやった事。であればそれは『帝国という悪を皇国という正義が討ち倒し、ヒノマワリ王国民に慈愛の救いの手を差し伸ばした』という美談になる。無論これが本当に正義だとか、人道的に正しいとは思っていない。ここでいう『正義』や『正しい』というのは、あくまで皇国が介入する口実として(・・・・・)正しいかどうかである。冷たいと思うかもしれないが、別に冷たかろうが温かろうが、臭かろうが汚れていようが、そんな事は問題にならない。あくまで重要となるのは『皇国がヒノマワリ王国を助けた』という事実のみ。その動機云々は、輝かしい栄光の裏にある影が更なる闇の中へと隠してくれる。

 

「神谷殿。であれば何故、貴殿は我々を助けようとしてくれるのだ?」

 

「言った筈だ。あくまで今回は皇国軍ではなく、神谷戦闘団が動くと。我が国において戦闘団とは本来、こういう戦時下で一時的に組織される部隊。だが我が神谷戦闘団は、常時編成されている特別な部隊。俺達だけは、あくまで俺達の判断で即座に行動できる。

今回で言えば、俺が王国を助けたいと思ったから動くってだけだ。ここには皇国は関係がないし、俺が俺の部隊で好き勝手やってるにすぎない。結論、何の問題にもならない」

 

「それは詭弁なのでは?」

 

「詭弁。嘘。政治とか外交なんてのは、基本全部そうだ。常に裏がある。俺が助けるのだって、名声を得られるチャンスだからだ。例え俺の部隊だとしても、曲がりなりにも皇国軍。燃料弾薬なんかの費用は全て、皇国臣民の血税によって賄われている。1円たりとも無駄にしてはならない」

 

これぞ川山直伝、誤魔化し術である。裏の理由に敢えて表向きの理由を作っておき、本当の狙いはさらに奥へと隠す。しかも表向きの理由に本当の情報を入れ込むことにより、真実味を引き立たせる。こんな事もあろうかと、習っておいたのだ。お陰で2人は既に、これが真実だと信じて疑わない。これが外交官や政治家相手なら付け焼き刃故にバレるだろうが、今回の相手は政治には関係のない単なる護衛剣士。騙せられる。

 

「でもそれって、独断専行とかにならないの?」

 

「ならんならん。どうせ王国の解放は基幹戦略に入ってた訳だし、それが早くなっただけだ。どうにでもなるさ」

 

この後、もう少し2人から質問攻めにされたりしたが、問題はこの後だった。この後、一行は格納庫の方へと歩いて行ったのだが、そこでフレイアから爆弾発言が飛び出した。

 

「.......あの、神谷様。神谷様は、その、意中の方とかいらっしゃるのですか////?」

 

「.......あー、意中の相手、はいないな。うん」

 

この時、ヒノマワリ王国側の人間はフレイアを温かい目で見てみたり、顔を赤くする者がいたりと和やかだったが、神谷以外の皇国側は凍りついた。神谷の中での『意中の人』の解釈は恋人までであるのに対し、フレイアは恋人は勿論、婚約者や結婚相手も含まれた。

ここにラノベとかのお約束、男女の勘違いが発生したのである。

 

「浩三!ここにおったのか!!」

 

「あれアーシャ。どしたの?」

 

「ロングキャスターとフーシェンの2人が菓子を作っていてな、ミーナ姉とミーシャがそれを見て2人も作り始めてスイーツパーティーだ。お前も来ないか?」

 

「いやー、今一応仕事中。でも、あー!すぐ行くから俺の分確保しとけ!!」

 

「了解だ団長殿!」

 

本来ならこのまま修羅場コース突入するか、アナスタシア達嫁側が勘違いするコースに突入するものだが、今回はアナスタシアがさっさと消えてしまったので特に問題はなかった。だが明らかに親しそうな間柄に、フレイアは取り敢えず聞いてみた。未来の夫になるかもしれない男に悪い虫がついていたら、ソウジしなくてはならない。

 

「ところで神谷様。先程の方は?」

 

「アナスタシア・ナゴ・神谷。俺の奥さんにして、神谷戦闘団特殊戦闘隊『白亜の戦乙女』の隊員だ」

 

「お、奥さん?奥さん!?」

 

「.......なにその、まるで俺が結婚しちゃいけない的なリアクションは」

 

フレイアの恋、僅か15秒で終了である。まあどちらかというと政略的な打算による物だったので、軽く一目惚れはしたのだろうがダメージは小さい。うん。小さい筈。

そう思いたかったが、フレイアの顔はなんか姉様死んだ報告を得た時よりも絶望感というか悲壮感があった。

 

「ふ、フレイア?大丈夫?」

 

「大丈夫よ、元気出して。まだ可能性はあるわ」

 

「そ、そうだ神谷殿!」

 

「お、おう、どうしたいきなり食い気味に聞いてきて」

 

「私はそろそろ身を固めようと思っておるのだがな、参考までに皇国での婚姻制度はどうなっておるのか知りたいのだ!」

 

フレイアの姉2人がフレイアのフォローに入り、フィームはフィームで情報を得る為に神谷に質問しつつフレイアの事を誤魔化す連携プレイを見せる。側から見れば、何だか面白い光景だ。

 

「婚姻制度って.......。男女共に18歳以上からで、基本は一夫一妻だけど?」

 

「ね、ねぇ!基本ってさ、貴族とか金持ちなら第二婦人とかいるんじゃない?私さー、いつかどっかの金持ちとくっ付いて玉の輿狙いたいんだよねぇ!!皇国の人なら良い人多そう!」

 

「いやまあ、探せば愛人とか事実婚とかで事実上の第二婦人がいる場合もあるけど、それ本当に極少数だぞ?ってかバレた時に、世間の目が冷ややかになるから普通はやらないぞ。何度その手の話で文春砲とか文春砲とか文春砲とかで著名人が吹っ飛ばされた事か。

とは言えこの世界に来てからは、郷に入っては郷に従え法で、例えば向こうの何かしらの掟なんかで複数の相手との婚姻関係を結ばないといけないとか、そういう特例があれば多夫多妻や一夫多妻なんかもできる。というか俺がそれ」

 

「えーと、それってつまり?」

 

「それが休暇中にアーシャの姉であるヘルミーナって娘を助けたら、なんか村の掟で姉妹全員と婚姻することになって、俺、5人の妻がいるんだよねー。あ、写真見る?」

 

神谷が懐からプライベート用のスマホを取り出し、写真アプリで適当な集合写真を探し出す。個別個別では撮っているが、5人まとめてのが中々無く適当に漁っているとディズニーへ行った時の物があったので、それを見せてみる。

 

「か、かわいい!」

 

「ホント!」

 

「美人さんですねー」

 

「いい人そうだな」

 

王女2人と護衛2人がそう言っている中、フレイアだけは違った。映っている5人は当然ではあるが、ディズニーランドなので普通に私服である。にも関わらず、服の上からでもその爆乳が分かる位に膨らんでいるのだ。しかもアーシャとヘルミーナはスキニージーンズを履いているので腰やお尻の周りのラインもよく見えているし、ミーシャはロングスカートなので足回りは分かりづらいが、エリスはミニスカ、レイチェルはショートパンツにハイソックスを履いていたので絶対領域が完成し、肉付きのいい太ももが眩しい。

さあ、一方のフレイアはどんな見た目かというと、まず髪型は黒髪ロング。顔もアジアン美人であり、全然女優としても活躍できる顔である。背も165cm位と普通位で、特段見た目に欠点はない。だが1箇所、自らも認める弱点がある。それが胸である。おっぱいである。フレイアの胸は、貧を超えて無なのだ。因みに姉2人はC位はあるし、護衛の2人もD〜Eはある。だがフレイアはAなのだ。彼女の名誉のため、BよりのAと言っておこう。

 

「妹王女さん、自分の胸を揉み始めたぞ」

 

「閣下の奥さん、全員ボインボインだもんな」

 

「貧乳はステータスだという名言を彼女に送ってあげたいよ」

 

「胸囲の格差社会と、まな板にしようぜも追加しといて」

 

もはや空気扱いだったパラミリの4人は、スマホと自分の胸を見比べて1人胸を揉むフレイアを遠い目をしながら見ていた。というか最後の奴、お前絶対貧乳敵に回すぞ。

そして戦後、フレイアは皇国からバストアップのサプリとか下着とかを購入したり、バストアップマッサージを試したりしては溜め息を吐くことになるのはまた別の話。

 

 

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