暴走族と魔法少女   作:ヘッズ

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第20話 男の太陽

◆殺島飛露鬼

 

 殺島は店頭や店内に並ぶ商品を一通り見る。チョコレート、クッキー、キャンディー、駄菓子類、コンビニでよく見る定番商品や今まで見たことがない商品まで色々とある。そして安い。

 こちらとしてはお菓子代ぐらい出してもいいのだが、相手は生真面目で折半しようと言ってくるのは目に見えている。おこずかいをどれだけ貰っているかは知らないが出来るだけ安い商品を買うのがべきだ。

 とりあえずチョコでもと手を伸ばすがふと手が止まる。そういえばどんなお菓子が好きか知らない。女はスイーツ好きなので甘い物が好きかと思ったが該当しないかもしれない。

 どんな好みでも対応できるように色々な種類を手広くカバーしようと甘い物でだけではなくポテトチップスなどのしょっぱい系も買う。余れば自分で食べればいいだけだ。

 会計を済まし店を出て数分程歩いて目的地にたどり着く。カラオケ店の店先には待ち合わせをしているのか数人ほど立っており、その中に小雪もいた。ロングスカートに白のシャツと私服だ、そういえば放課後以外で会うのは初めてだ。

 

「よっ、もしかして待たせか?」

「ううん、さっき来たところ」

「それにしても(あち)いな、中で涼もうぜ」

「そうだね。もしかしてチョウナカ行った?」

 

 小雪は持っている袋に視線を向けながら尋ねたのでテキトーに買ってきたと袋を掲げる。すると小雪は少しだけバツが悪そうに遠慮がちに袋を見せる。

 

「実は私も」

 

 このカラオケ店は持ち込み自由なので菓子でもつまみながら歌おうかと買ってきたが小雪も同じ考えだったようだ。そうなると菓子は余るだろう、お互い気を利かせたつもりだが仇になってしまった。

 

「ごめん、こうなるんだったら前もって連絡しておけばよかった」

「いいや、それはこっちもだ、しかしこれだけあれば選ぶのには困らなそうだ」

「確かに」

 

 軽口に対して小雪はクスリと笑い、2人で階段を上がり室内の受付に向かう。自動扉を開けた瞬間に心地良い冷気が当る。

 

「いらっしゃいませ2名様ですか?それと会員証はお持ちですか?」

「おう」

「お時間はどうされますか?」

 

 カウンターに置いてある料金表を2人で見る。1時間380円でフリータイムが900円、3時間以上歌うのならばフリータイムのほうが安い。

 こちらはフリータイム終わりまで歌えるが小雪はどうか分からない。2人なら大体の曲が5分弱だとして休みなし歌えば1時間で1人約6曲ぐらいか。

 

「オレは歌おうと思えばフリータイムギリギリまで歌えるがどうだ?」

 

 小雪に問いかけると歌える曲を数えているのか指を折り曲げながら考えている。

 

「私も18曲ぐらいは歌えるからフリータイムで大丈夫」

了解(りょ)だ、フリータイムで」

「かしこまりました。機種の希望などございますか?」

「ドムで」

 

 この店では複数の機種を扱い機種ごとに歌える曲が違う。そしてドムはアニソンやキャラソンが豊富で今日の目的には一番適している。

 

「では、202号室になります」

 

 店員から伝票を受け取り202号室に向かう前にフリードリンクでドリンクを作る。

 

「まあ最初は単純(シンプル)に単品だよな、途中から混合(チャンポン)し始めるんだけどな」

「チャンポン?」

「ああ、ドリンクを混ぜるんだよ」

「そうそう、私も友達が途中からふざけて色々なソフトドリンク混ぜたのを渡したりしてきた」

 

 作ったコーラと姫川が作ったオレンジジュースをトレーに載せ部屋に向かう。カラオケに行くときはある程度多い人数で行くので2人用の部屋は狭く少しだけ圧迫感を感じる。

 殺島は右側手前のソファー、小雪は左奥のソファーに座りそれぞれ荷物を置く。

 

「とりあえず買ってきた菓子の選定(チョイス)でもするか」

「そうだね」

 

 殺島たちは買ってきた菓子を中央のテーブルに広げる。とりあえず被っているものを除外し、あとは個人で食べたいもの─こちらは特に好き嫌いはないので小雪の好みを優先─を置き袋を開くと、小雪が部屋から出てフォークを2つ持ってくる。

 

(ワリ)い、気が回らなかった」

 

 仲間連中はポテチだろうが素手で食べるタイプだったので気にしていなかった。手が汚れたり相手の手が自分の食べる菓子に触れるのが嫌う人間もいる。

 

「いや私はいいけど、殺島君が気にするかなって」

真実(マジ)か、オレってそんな神経質(せんさい)に見えるのか?」

「いや念のためにって」

 

 小雪は少しだけ声が小さくなる。こちらとしては軽口のつもりで言ったのだが責めていると捉えられたのか、花奈だったら「見えるわけねえだろ」と返すところだが、小雪との会話ではパターンを変えた方がいいかもしれない。

 

「さてと、今日はあの時歌えなかった魔法少女ソングを歌いきるとするか!」

 

 場の空気を変えるように明るめの声を出しながらリモコンを手に取り曲を打ち込む。

 

♢姫河小雪

 

 一昨日の夜、お風呂から上がり部屋に戻るとマジカルホンで魔法少女からの依頼や相談や悪事の報告がないかを確認し、自分のスマホを手に取ると待ち受けに殺島君からのメッセージが表示されていた。

 何かキューティーヒーラー関係の話だろうかとメッセージを開く。その予想は当らずとも遠からずだった。

 

 明後日あたりオレとカラオケ行かねえか?最近連れとカラオケ行ってキューティーヒーラーメドレーをしたんだが、まだ途中だから完走したいがけれど1人で行くのもよ。それに小雪も魔法少女ソング歌いたいだろ。

 

 小雪も中学3年生で友達とカラオケに何度か行っている。その時に歌うのは流行のアイドルか女性シンガーの曲で、たまにオリコン上位になっているアニメソングぐらいだ。魔法少女アニメソングは歌わない。

 もし歌うとしたらウケ狙いかネタ枠だろう。小雪は仲間内ではウケを狙うタイプではないので歌わない。そもそも魔法少女アニメの歌をウケ狙いやネタ枠で歌うつもりはない。歌うとしたら真剣に真摯に歌う。そしてその考えでは歌う機会はない。

 キューティーヒーラーシリーズのOPやEDにしかり魔法少女アニメの曲は心に残る名曲が多く、大概の魔法少女アニメ愛好家は歌いたいと思っているはずで、小雪も同様だが1人でカラオケに行って歌いたいと思う程では無かった。

 そんな中で殺島の誘いは渡りに舟だ、むしろ魔法少女アニメと自分の性格を見越しての提案かもしれない。チャラくて軽薄そうだが存外に気が利く。

 今は夏休みで特に予定もなく悪い魔法少女の悪事に対する情報提供も今のところない。姫河小雪としても魔法少女スノーホワイトとしても暇だ。そして魔法少女ソング歌いたい。スマホを手に取るとカラオケに行くと返事して日時を決めた。

 

「別にオレが歌ったから遠慮しなくていいし、同じ曲を歌ってもかまわねえ、むしろ二重唱(ニケツ)してもいいぜ」

「ニケツ?」

「ああ、デュエットのことだ」

 

 そう言っているうちにイントロが流れる。これは前々シリーズのヒーラーオメガのOPだ、殺島は足でステップを踏みながらリズムを取る。

 

「~~♪~~~♪」

 

 男の声だ。特に音程を低くしていないので原曲のまま男声で歌われている。歌唱については素人なので詳しくは分からないが下手ではないのは分かる。

 しかし魔法少女アニメソングが男性の声で歌われているという初めての経験で上手く評価できない。そして元の歌に寄せるのではなく気持ちを込めるタイプだ、男性だから似せようがないので仕方がない。

 殺島の歌を聞きながら画面を見る。有名なアニメの曲だと一般のカラオケ映像ではなくアニメの映像が流れる。ネットでアニソンじゃないと思ったらアニソンでアニメの映像が流れて気まずくなったという話を見た覚えがある。

 そして今はヒーラーオメガの映像が流れている。1番はOP映像が流れているが2番はアニメの場面を編集した映像で、シリーズの名シーンを良い感じに編集してアニメの元のシーンが鮮明に思い出せる。

 

理解(わかる)ぜ。出来が良いからついつい魅入っちまう。歌っているこっちも映像に夢中だ」

 

 気が付けば殺島君は歌い終わり、微笑ましいものを見るような笑みを浮かべていた。

 

「この様子だと次の曲入れてねえな」

「うん……」

「もう一曲歌ってるからその間に入れてくれ、交互(かわりばんこ)で歌おうぜ」

「うん」

 

 恥ずかしさを紛らわすようにオレンジジュースを飲みながらリモコンに視線を落とし曲を入れる。キューティーヒーラーで検索すると大量にヒットする。シリーズも多くキャラソンも入れれば100は超え、知らない曲がたくさんある。とりあえず初代キューティーヒーラーのOPを入れる。

 

 曲を入れている間に殺島はオメガのEDを歌っている。OPはアップテンポな曲調だがこれはスローテンポで各ヒーラーの声優が歌う。それに合わせるように各パートで声色を変えている。気持ちが入ったことによるものだろうが、やはり男性の声でやると違和感が凄く笑いそうになるのを堪える。

 本人は気分良く歌っているのに笑って気分を害すのは失礼だ、それにしてもいくら魔法少女アニメ好き同士だからといってもここまで振り切って歌うとは思わなかった。

 羞恥心が無いのか自分をさらけ出してもいいと思ってくれているのか。そうしている間に歌が終わる。このカラオケ映像もなかなか良かった。

 そして初代キューティーヒーラーOPのイントロが流れる。殺島もすぐに気づき歌ったテンションそのままにリズムに合わせて体を揺する。

 歌詞に込められたメッセージとアニメのシーンを思い出しながら歌う。普通のカラオケはオリジナルに似せるようにミスなく無難に歌う。だが魔法少女アニメソングでは多少音程が外れようが感情をこめて歌う。

 この歌はキューティーオニキスとキューティーパールが交互に歌うのでもちろん声を変え、オニキスとパールの心情になりきって歌う。サビの部分は2人のデュエットなのでここは地声で歌う。

 モニターにはOP映像が流れているがやはり良い、自分の拙い歌でも素晴らしいOPに見える。2番ではアニメのダイジェスト映像が流れ視聴していた当時の気持ちを思い返し感情をこめて歌いきる。

 

「いや~、情熱(ねつ)が入った歌だったぜ、沁みるわ」

 

 殺島は拍手をしながら賞賛の言葉を投げる。体に不思議な爽快感が駆け抜ける。気持ち良かった。友達とワイワイ騒ぐカラオケも楽しい。そして他人の目を気にせず好きな歌を好きに歌うのも同等に楽しい。今日初めてカラオケの別の楽しみに気づいた気がする。

 それからは自然と魔法少女アニメソング縛りで歌った。キューティーヒーラーを始め、マジカルデイジーのOP「ハロー★デイジー」激熱魔天使リッカーベルOP、ひよこちゃんシリーズ各OPも歌う。

 2人とも他人の目線を気にせず歌う。多少音程が外れようが構わない、カラオケの採点機能は音程が合っているかで点数を決める。だがこの場で採点機能があるとしたら基準は感情だろう。歌詞に込められた意味を理解し登場人物に気持ちをシンクロさせて、どれだけこのアニメが、魔法少女が好きかという感情を込める。

 場はとても盛り上がった。お互いが歌う曲は知っていて好きな曲なので自然とテンションが上がる。

 

「ちょっと休むか」

「うん、封を開けちゃったし、お菓子も食べないと」

 

 殺島の提案に頷く、お互いの歌を真面目に聞いていたので菓子には手を付けていない。それに全力で感情を込めて歌ったので疲れた。今までにない疲労感だが心地良い。

 

「何か飲み物取ってくるけど何がいい」

「リアルゴールドで頼む」

「分かった」

 

 殺島君のオーダーを聞いてソフトドリンクコーナーに行く。リアルゴールドをコップに注ぎ、自分用のジュースを作り部屋に戻り休憩時間となる。

 

「魔法少女アニメソングを知っている友達(ダチ)と歌うカラオケでの魔法少女アニメソングは良いな。反応(リアクション)が違うし気分(テンション)超差異(ダンチ)だ」

 

 殺島はしみじみと呟いた後に封が空いたチョコ菓子をフォークですくい口に運ぶ。その気持ちは分かる。自分だけが盛り上がっているのと周りも喜んでいるのでは気持ちの盛り上がりが相当に違う。

 

「それに他の奴らの時に歌ったら場が氷河期(ヒエッヒエ)だしな」

「うん。その様子が目に浮かぶ」

 

 友人の芳子はどんな反応をすればいいかと困惑し、スミレは初代キューティーヒーラーぐらいなら知っているかもしれないのでデュエットしてくるかもしれないが、ネタ歌的な捉え方で歌う。どっちみち場の空気は微妙になる。

 

「今日は誘ってくれてありがとう。魔法少女アニメソングを全力で歌う機会が無くて、こんなに楽しいとは思わなかった」

「だろ、オレも偶然会った連れが魔法少女アニメソング歌って、そういう場の空気にならなきゃ全力で歌う機会(チャンス)はなかった。米田には感謝だな」

 

 殺島はカラカラと笑う。やはり自分の心境を想像し誘ってくれた。小雪の周りで魔法少女アニメソングを歌っても問題ない知人友人は居ない。ラ・ピュセル、颯太ならこぞって参加しそうだが、今はもういない。

 それからは各魔法少女アニメのカラオケ映像の話になり、このシーンが良かったあのシーンが良かったと曲を流しながら語る。

 

「ねえ殺島君、正しいと思ったことが間違っているかもしれないって思うことある?」

 

 小雪は思わずポツリと語る。魔法少女アニメソングを歌うにあたり感情移入し各魔法少女に思いを馳せたことで自分のありかたにふと疑問が宿る。

 アリスやラ・ピュセルに誇れるように、自分が理想とする清く正しい魔法少女に少しでも近づけるように魔法少女狩りと恐れられる生き方を選んだ。

 アニメの魔法少女にはモデルが居て本人がそうとは限らない。それでも理想はアニメの魔法少女であり自分との違いを見せつけられる。

 ひよこちゃんのような古き良き魔法少女はそもそも暴力を振るわない、バトルヒロインと分類されるキューティー達は戦うが敵を改心させるし改心せずとも心を救う。

 一方自分はどうだ。悪党魔法少女を捕まえるために戦うことがある。そして捕まえても改心するどころか恨み言をぶつけ、心は救えない。

 所詮はテレビの魔法少女はフィクション、現実は圧倒的に不条理で無慈悲なのは分かっている。だからこそ今の道を歩んだ、それで彼女達のように清く正しいやり方があったのではないかと悩むことがある。

 

「まあ……あるな、現在進行形だ。小雪は悩んでるのか?」

「いや、忘れて」

「その正しいと思っている事を思い浮かべながらこっちを見てみろ」

 

 殺島はこちらと正対するように座りなおす。随分と真剣な眼差しでこちらを見てくるので言う通りにする。

 魔法少女試験で自分を守ってくれたラ・ピュセル、魔法少女はこの街にいないと絶望しているなか、魔法少女であると言って信じてくれたハードゴアアリス。2人のように、2人に胸が張れるような清く正しい魔法少女になる。それは魔法の国から推奨されていなくても自分で選択し悪党魔法少女を止めて、人間界のもめ事を介入し悲劇を止める。それが自分のなれる精一杯の清く正しい魔法少女。

 

「良い眼だ、真っすぐ強い意志を持ち(ギラ)ついてる。そして辛いことがあったけど歯を食いしばって前を向いていて何より澄んでいる。こういう目をしているのは正しい道を歩いている者の目だ。何に悩んでいるかは訊かねえが大丈夫だ。それは正しい事だ」

 

 殺島は真剣みを帯びた表情からいつもの人懐っこい笑みを見せる。この悩みは打ち明けない限り殺島は理解できないだろう。それでも正しいと肯定してくれた。だったら少しだけ信じてみてもいいかもしれない。

 

「ありがとう、信じてみる」

「信じろ、こう見ても人生の玄人(ベテラン)だからな。多分魔法少女はみんな小雪みたいな眼をしてるんだろうぜ」

「皆もっと清く澄んでると思うよ。でもそうなれるように頑張ってみる」

「おう頑張れ、そろそろ歌うとするか、小雪はどうする?」

「そうだな……あっもうこんな時間なんだ」

 

 小雪はスマホを見て呟く。時間は18時を回っていた。確か昼過ぎに入ったので約4時間以上ここに居たのか。

 

「18時か、あっという間だな。流石に夏休みでも普通の中学生(チューボー)がカラオケに居るのはマズいかもな」

「門限はもう少し先だけど、カラオケで遊んでるって伝えれば怒られるかも」

「じゃあ、お開き……もし良かったら嘆願(おねだり)していいか」

「何?」

「1曲二重唱(ニケツ)しようぜ、2人で遊んだ記念に」

「ニケツ?……ああ、一緒に歌うってことか、いいよ何する?」

「じゃあ初代キューティーヒーラーOPだな」

 

 それから小雪がキューティーパールのパート、殺島がキューティーオニキスのパートを担当して熱唱した。

 

◆殺島飛露鬼

 

「あっ、ああっ、明日はかすれ声だな」

 

 殺島はバイクに乗りながら喉に手を当てて声の調子を確認しのど飴を口に入れる。もしかして長時間歌うパターンを想定してのど飴を買って正解だった。小雪の熱に当てられて前回以上に熱唱してしまった。当初は余計なおせっかいかと思いながら誘ったが、誘いに応じてくれカラオケでも熱唱してくれた。

 魔法少女アニメソング歌いたい欲を溜め込んでいると思ったが予想以上だった。あれだけ外面を外して素を出すとは思わなかった。それは自分に対して打ち解けている証のようで嬉しくもある。その証拠にプライベートな悩みを打ち明けてくれた。

 小雪の目は生前戦った忍者の目とダブっていた。あの太陽のようにギラついて強い意志を持った目、極道が言うのは癪だが忍者の目をしていれば小雪は大丈夫だ。

 

「現在進行形か……」

 

 小雪と話した際に話した言葉を再び呟く。花奈が幸せになれると思ったから一緒に覇威燕無礼棲(ハイエンプレス)を一緒に作った。贔屓目無に今の方が楽しんでいて幸せだと思う。だがその結果花奈は人から暴走族という種族になった。

 人様を踏みにじる手段でしか幸福を感じられないはた迷惑で哀れな種族、それが暴走族だ。そして暴走族になったことで困難に耐えきれず暴走という夢に逃げてしまう弱い存在になってしまう。

 暴走族は花奈だけではない、デルタもガンマも覇威燕無礼棲(ハイエンプレス)のメンバーも暴走族になっている。今では聖華天の常套手段である放火からの暴走決行を実施している。

 そもそも3か月休止後の復帰暴走の際に極道技巧狂弾舞踏会(ピストルディスコ)でパトカーを爆破して警官をぶっ殺した時にドン引きするどころか暴走族女神(ゾクメガミ)コールをしている時点で人間から逸脱している。

 花奈は大切な友達で家族だ、花奈だけじゃないガンマもデルタもメンバーも家族だと思っている。家族だからこそ社会の困難に立ち向かえるように強くあってほしい。暴走族では弱者でありいずれ社会の困難に心折れる。

 暴走族を止めて欲しいという気持ちはある。単純に警察に捕まって刑務所に収監されるというケースもあるが、忍者のような存在によって無惨に殺されるケースもあるかもしれない。

 それでも暴走族を止めろと言うつもりはない。暴走族になってしまってはまともな人間に戻れない。そして暴走でしか幸福を得られないという(さが)は暴走族である自分が痛い程分かっている。皆から幸せを奪うなんてとてもできない。

 暴走をやり尽くして満足してもらう。これしか被害が無く脚抜けする方法はない。その為には力が必要だ、全盛期の聖華天のように警官や機動隊の屍を積み上げるような力だ。

 今は規模を広げているのはそうだが全国的に暴走族が増えているので、このままいけば全盛期の聖華天に迫る戦力を獲得できるかもしれない。

 人様に迷惑をかけるどうしようもない悪であるのは分かっている。それでも幸せになって欲しい。少しでも幸せな人生を歩んで欲しい。殺島は祈るように夜空を眺めた。

 

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