暴走族と魔法少女   作:ヘッズ

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第21話 オーガスト・パンク・レディーズ

♢細波華乃

 

 華乃は額に薄っすらと汗をかきシャツが背中にくっつく不快感に顔を顰めながらペダルを漕ぐ。夕方になって日中より気温が下がっても少し体を動かしただけで汗をかく。改めて夏なのだと認識する。

 スーパーの近くにある駐輪場に自転車を止め店に入る。冷房の冷気に心地よさを覚えながら買い物かごを手に取り、入り口付近にある野菜コーナーに足を運び、ニンジンが入った袋を手に取り値札を見る。店先に置いてあったチラシにはセールと書かれていたので安いのだろうが、少しだけ安いのか物凄く安いのか分からない。

 まあ安いだろうと買い物かごに入れて、野菜コーナーからタケノコとレンコンとゴボウを見つけ買い物かごに入れていく。これらはセール品ではない。

 普通の主婦ならその場で安い品を買ってから献立を組み立てられるのだろうが、こちらは自炊歴1年もない初心者で最初から献立を決めてから買い物をするタイプだ。

 今日の献立は筑前煮におかずは焼肉とキャベツのみじん切りでいいだろう。肉を焼いて市販の焼肉のタレをかければある程度の水準の料理になる。筑前煮には手間暇をかけるのでおかずは労力を減らす。

 最後にキャベツを手に取った後に精肉コーナーに向かいそこからスマホを片手に筑前煮用の鶏肉とブタ肉を買う。これも普通より高いのか安いのか正直分からない。

 一人暮らしをしてから暫くは総菜品で食事を済ましていたが最近は自炊するようになった。

 これもトップスピードの影響だろう。魔法少女活動をしていた時は顔を合わせる度に何かしらの料理を作りわけてもらったがそれは本当に美味しかった。

 今日作る筑前煮も何回か作っている。目指すはトップスピードが作ったもので、以前食べた味を思い出しながら醤油を多めに入れたり砂糖を入れたりと試行錯誤している。今日と作り置き用の食材を買い物かごに入れてレジに向かう。

 

「合計で2850円になります。今ですと3000円以上でくじ引きが1回できますが」

 

 店員が親切心か仕事の一環か分からないが声をかけてくる。レジ横にはあのドラマに出てくるガラガラ回す機材のイラストが描かれているチラシがあり、1等賞はペアの宿泊券で他には米10キロやプラズマテレビなどそれなりに豪華だ。レジ横にあるペットポトルジュースを2本手に取り会計に追加した。

 会計を終え出口を出るとすぐそばにテーブルの上にガラガラが置かれ店員らしき人が立っている。視線を向けると店員が会計3000円以上のお持ちですかと尋ねてきたので頷きレシートを渡しガラガラを回す。すると金色の玉が出てきました。

 

「おめでとうございます!一等賞です!」

 

 店員がハンドベルを鳴らすと自分のことのように嬉しそうに大きな声をだし。その声とベルのせいで通りを行きかう人々は足を止め、中年の主婦はすごい~と感嘆の声を挙げ、親子づれの子供はこちらを指差すなどして注目が一気に集まる。

 何か無性に恥ずかしくなったので店員が渡したチケットみたいなものをふんだくるように手に取りスーパー近くの駐輪場に向かった。

 駐輪場に着くと自転車の籠に荷物を入れながら受け取ったチケットを確認する。中身はペアの宿泊チケットだった。確か1等賞は宿泊チケットと書かれていた。そして宿泊場所はS県のA市にあるホテルだった。

 どうしたものか、別に旅行は好きではなくA市に行きたいとも思わない。それにペアチケットというのもやっかいだ。誘える知り合いなんて数える程しかいない、それに普段の付き合いと旅行で一緒に過ごすのは別問題だ。誘われた相手も長時間一緒に居たくないと遠慮するかもしれず、こちらも緊張する。

 折角もらったのだから使いたいという気持ちも有るが、同じぐらい面倒だという気持ちも有る。いっそのこと金券所か通販サイトで売るか。

 

「お、華乃じゃん」

 

 声をかけられた方向を向くと駐輪場にあるバイク置きにバイクを止めようとしていた花奈がいた。服装はキャミソールにショートパンツとプライベートのようだ。

 

「どうしたの?家こっちじゃないでしょ」

友達(ダチ)と一緒にゲーム遊戯()ってその帰り、ここのスーパーはコーラが激安(セール)って聞いたから買いに来た。そっちは?」

「夕飯の買い出し、それにしてもゲームとかやるんだ。夏休みだしずっとバイクで走ってると思った」

「それも悪くねえが、友達(ダチ)と一緒に色んな事をするのも楽しんだよな」

 

 花奈は嬉しそうに語る。夏休みに入って暇を持て余していないかと少し心配していたがそれなりに充実した日々を送っているようだ、表情を見れば分かる。

 

「そういえば買い物したらくじが引けて、それでペアの宿泊券が当たったんだけどいる?」

 

 華乃はおもむろに宿泊券を花奈に差し出す。通販サイトか金券所で売ろうと思ったが通販サイトはアプリをダウンロードしておらず手続きがめんどくさそうで、金券所もどこにあるのか分からず、あったとしても意外と遠いかもしれない。それだったら花奈にあげて有効活用してもらうほうがいいと考えていた。

 

贈呈(くれ)るのか?ていうより自分で使わねえの?」

「別に是が非でもホテルに泊まりたいってわけでもないし、S県のA市も興味ない。旅費もかかるし」

「S県のA市ってそこのホテルA市にあるのか?」

「そうだけど」

「5日って暇か?」

 

 スマホのカレンダーで予定を調べる。確かバイト先もお盆休みの前に帰省するとかで1週間ぐらい店を休業するので今のところ予定はない。

 

「まあ暇だけど」

「だったらアタシと一緒にそこのホテルで泊まろうぜ!6日に覇威燕無礼棲(ハイエンプレス)でA市に遠征するから下見ついでに泊まるんだよ。アタシがバイクで連れて行ってやる」

「遠征って皆で行かなくていいの?前にも皆で走るのが楽しいって言っていたような」

「出発は夕方ぐらいだから、5日は泊って6日の朝にA市を出発すれば出発前にN市に帰れる」

 

 思わぬ提案に少し考え込む。花奈のバイクに乗れるのなら交通費は無料で、現地で何をするかは分からないが食事代とか施設の入場料ぐらいの出費で済む。経済的余裕が無い身としてはありがたい。

 旅行というのは少なくとも半日は他人と一緒に過ごすという特殊な環境だ、いつもなら楽しく過ごせた知人や友人でも、自分の欠点が浮き彫りになったり話題が途切れたりとして気まずい空気が流れるかもしれない。日常なら用事があるからと強引に抜け出せるが旅行だとそうはいかない。それに旅行だと相手を楽しませなければならないと肩肘を張ってしまい疲れる。

 仮にスノーホワイトと一緒に旅行に行くなら間違いなく気を張ってしまう。だが花奈は良い意味で雑に扱っていいというカテゴリーで、もてなさなくてもよく気が楽だ。

 それでも旅行に行って絶対に楽しめると断言できない、疲れて詰まらなくて家でダラダラ過ごせば良かったとなる可能性がある。

 それに花奈にはチームの仲間がいる。過ごしてきた時間は自分より多いのでチームのメンバーと旅行したほうが楽しめるだろう。

 

「それだったらチームの誰かと一緒に行きなよ」

「メンバー達とは家に泊まったり夜通し遊んだりしたけど華乃とはそういうのした事ねえから、そういう事やりてえんだよ。それに高校最後の夏休みだろ。このままじゃバイトして家でゴロゴロするだけの日々だぜ。そんなの嫌だろ」

 

 花奈は恩着せがましい態度を見せる。確かにそうなる可能性が高いがこちらだってスノーホワイトとN市をパトロールしたりと少しは彩りがある生活をしている。

 だが恩着せがましい態度の裏に期待感のようなものが覗ける。花奈は本当に自分と一緒に旅行して泊まりたいと思っている。一緒に過ごして楽しい人間ではないのに、何をそんなに期待しているのだろうか。

 

「分かった。じゃあ行こう」

 

 華乃の返事に花奈は心底嬉しそうな顔を見せる。改めてそこまで期待を寄せているのに戸惑いながら少しだけ嬉しさも感じていた。

 頭で魔法少女の知り合いを思い出す。確かS県を拠点にしている魔法少女が居たような気がする。その魔法少女に顔を見せるついでに知り合いの魔法少女も紹介してもらおう。主目的ではなく、コネづくりでS県に行くついでだと思えばいい。

 

「よし、華乃の家で飯でも食おうぜ」

 

 花奈は意気揚々と止めていたバイクに跨る。コーラは買わなくていいのか、そして夕飯の買い出しと喋ったのを聞いてさりげなく食事をたかろうとしている。まあ数日分の食材は買っているのでおかずはともかく、筑前煮ぐらいは提供できる。

 

「私は自転車だから先に着いて入れないから、スーパーで何か買い物しながら暇潰して」

「へいへい」

 

 花奈は生返事しながらシートから立ち上がりスーパーに向かう。その後ろ姿を確認してから家に向かってペダルを漕ぎ始めた。

 

◆生島花奈

 

 床に持っていく荷物を広げる。バイク移動で華乃のリュックに荷物を入れてもらえるが出来るだけ少ないほうがいい。選別し必要最低限な荷物だけにする。

 夏休みに入ってからはほぼ毎日ダチと遊んでいる。暴走の回数も増えているがそれ以外はどこかで駄弁ったり皆でカツアゲの金額を競い合ったりダチの趣味に付き合ったりしている。

 花奈は今まで趣味といえば暴走しかなかったが皆は違う。暴走も好きだが他に好きな事もある、遊びを通して積極的に他人の趣味や好きな事をしている。

 デルタとは相撲100番勝負をしたり、ガンマとは一緒にパパ活をしたりした。他にはみんなでゲームをしたり、カラオケをしたり、中には昆虫採集など小学生みたいな遊びもしたりした。

 ここ最近は人生のなかでも最も楽しい、世の中には暴走には負けるがかなりオモシロい事がいっぱいあるとは思わなかった。

 だが1人でやっても楽しくはない。ダチと一緒にやっているから、正確に自分のダチと一緒にやっているから楽しいのだ。

 燕無礼棲(エンプレス)でつるんでいた時はメンバーとは親しかったといえるし一緒にバカしたりした。それでもあいつらはつばめのダチだ、自分のではない。それを無意識に感じ取っていたのか満たされなかった。

 つばめはどうだったのだろう?年が3学年は離れていたし世話が掛かるガキだと思ってもダチとは思っていないだろう。こっちはどうだ……?

 花奈はつばめについて考えるのをやめて華乃について考える。

 

 華乃との付き合いは去年の秋ぐらいで、華乃のバイト後に駄弁ったり遊んだりはするが夜通し遊んだり家に泊まったり泊めたりはしなかった。

 そんな矢先に華乃が宿泊券を渡してきたのでチャンスと思い誘った。華乃はハイエンプレス関係以外で唯一の友達だ、暴走族関係以外の人間とは気が合わないのだが華乃とは不思議と気が合う。

 メチャクチャ明るいわけでもなく、メチャクチャオモシロいわけでもない。趣味だって図書館で本を読むか、漫画を立ち読みするかで面白みもない、性格もどちらかといえば辛気臭い人間だ。それでも一緒に居て楽しいし色々と知りたいと思ってしまう。そしてこの旅行で長い時間一緒に居られて色々と知れる。どんな顔を見せてどんだけ楽しいか楽しみだ。

 花奈は荷物をまとめて集合場所である華乃の家近くにあるコンビニに向かった。

 

♢細波華乃

 

 風によって大分涼しく感じるが、夏真っ盛りで太陽が燦燦と輝いているせいか気温は高く薄っすら汗をかいている。

 道路の標識を見るとA市まで残り5キロと書かれていた。N市から出発して約3時間、あの日花奈と一緒に食事を摂りながら旅行について話していた時に調べたらN市からA市まで約5時間と書かれていた。大幅な時間短縮でありそれは花奈の運転によるものだ。

 法定速度を明らかにオーバーしたスピードで走り次々と前方に居る車やバイクを追い越していく。時には数センチよればぶつかってしまうという狭いスペースをすり抜けたりした。

 花奈とは時々2人乗りで峠を攻めたりしている。あのスピードと壁やガードレールが迫る恐怖感、今回も車両が左右数センチにある恐怖は似たような感じだ。

 恐怖は普通の人なら泣き叫ぶほどだ、しかしいざとなれば魔法少女になれば大丈夫という保険があるというのを差し引いても怖くはなかった。

 慣れもあるが花奈の運転技術に対する信頼だ、その運転技術は素人でも分かる程に卓越している。たとえ相手が操作ミスしても難なく対処してしまうという気持ちを抱かされてしまう。もし他の人間が運転していたら叫び声の1つでもあげているし、そもそも乗らない。

 花奈と2人乗りで走っているとトップスピードの箒に乗って空を飛んでいた時を思い出す。

 

「おい、海が見えたぞ!」

 

 花奈が叫ぶように声をかけてきたと同時に視界に海と砂浜が飛び込んでくる。夏休みだけあってから点のような人影チラホラ見える。

 

「なんか地元だと曇りが多くて夏の海っぽくねえんだよな!」

「確かに!」

 

 風音に負けないように大き目な声で返事する。地元は比較的に曇りが多く晴れない、一年中曇りではないので今みたいに雲一つない青空の時もあるが、テレビに映る海水浴特集でも大概曇っていた気がしたので、どうしても一般的な青空が広がる夏の海というイメージが浮かび上がらなかった。

 花奈は海を見てテンションが上がったのかさらにスピードを上げる。残り10キロだとしてこのスピードなら何分で着くだろうと何となく計算し始める。

 

「しっかり捕まってろ!!!」

 

 突如花奈が突然注意喚起すると十字路に差し掛かると同時にアスファルトにタイヤ痕を刻みながらターンして反対車線を走る。

 今の声の荒げ方からしてガチギレしている。いったい何にキレて急にどうしたと尋ねようとすると前方に特攻服を着た人物が羽交い絞めにされている姿が見えた。そして金髪や入れ墨を入れているガラの悪い男達がゾク車と呼ばれるバイクを蹴ったり角材や鉄パイプで殴打している。

 

 花奈は金髪の集団に突っ込んでいくがスピードを落とすどころか上げている。このまま轢くつもりか?それはマズいと制そうとするが声をかけようとすると体が後方に傾くと下半身から衝撃が伝わり金髪の1人がキリモミ回転で吹き飛んでいた。

 その様子から花奈がウイリーして金髪の顔面に前輪をぶつけ轢いたのだと理解する。そしてスタンドを立てて男達に向かっていく、男の1人が武器を振り上げるが振り下ろされる間に懐に入り左で急所を叩き、崩れ落ちる男の顎を蹴り上げる。

 男が落とした武器を手に取るとフルスイングで武器を振るい男達を倒していく。さらに花奈は倒れている男達に向かって容赦なく武器を振り下ろす。

 

「花奈!やめろ!」

 

 華乃はその様子を見て即座に駆け寄り羽交い絞めにして動きを止める。もう勝負はつきこれ以上の追撃は下手したら相手が死ぬ。羽交い絞めは解かれ再び追撃を加える。体格は同じぐらいだが何て力だ。

 

「そこの人、花奈を止めるのを手伝って!」

 

 これは一人では止めらないと羽交い絞めにされていた暴走族に声をかける。羽交い絞めをしていた男は仲間がやられたのを見て速攻で逃げていた。暴走族も一瞬間が空いた後にこちらに協力してくれて二人で花奈を抑え込み、花奈も徐々に興奮が治まったのか力が緩んでいく。

 すると騒ぎを聞きつけた野次馬が徐々に集まってくる。このままだと面倒な事になると花奈に逃げるように言い、暴走族に人がいない場所に連れて行くように頼んでその場を後にした。数分程走り商店街の裏路地のような場所に辿り着く。

 

「やりすぎ、刑務所に行くつもり」

 

 花奈は喧嘩するしある程度は許容している。しかし勝負がついた相手にあのダメ押しはダメだ、もはや喧嘩ではなく暴行だ、そもそも急に襲い掛かった。弱いものを助けるという魔法少女のような考えはもっていないなずだ。

 

「あいつらは暴走族(ゾク)のバイクを傷つけた!許せるわけねえだろ!」

 

 花奈はこちらの襟首を掴み声を荒らげる。バイクとはそこまで大切なものなのか?暴走族もうんうんと深く頷きながらバイクのダメージをチェックし、傷を見る度にひどく悲しくて悔しそうな顔をしていた。

 

「まずは礼を言う。心底有難(まじあざ)っす」

 

 男は深々と頭を下げる。それを見て花奈は手を放し暴走族に体を向ける。

 

「気にすんな。それであいつらは何だ?」

「BKっていう半グレ共だよ。ここら辺を拠点にして詐欺や強盗とかしている奴らでうちと抗争中だ」

「それで襲われたってわけか。それにしても苛烈(エグ)い事しやがる」

「ああ、BKのリーダーは元ウチのチームのメンバーだ、暴走族(ゾク)が嫌がることを分かってやがる」

 

 暴走族は忌々しく呟き花奈も最低のクズ野郎だと同意する。言っては悪いがたかがバイクだろう。何故そこまで怒り悲しむ。花奈達の価値観は全く理解できなかった。

 

「ところでそのバイクからして暴走族(ゾク)だがウチのメンバーじゃねえよな?」

「ああ、アタシはN県N市を拠点にしている覇威燕無礼棲(ハイエンプレス)のリーダー生島花奈だ」

覇威燕無礼棲(ハイエンプレス)、あのT都の百鬼夜行を潰したっていう」

 

 暴走族は生唾を飲み思わず後ずさる。どうやら百鬼夜行と呼ばれる集団は有名なようだ。それを潰したとしたら花奈達はそれなりに強いらしい。

 

「それで何しに来たんだ?まさかウチを潰しに来たんじゃ……」

早漏(はや)るな。今日は友達(ダチ)と観光だ。まあ明日にはこっちに遠征しにくるが最初から抗争するつもりはない。傘下に入れば自由に暴走してかまわねえ、まあ招集には応じてもらうがな。それが嫌だって言うなら抗争だな」

 

 花奈はごく自然かつ威圧感たっぷりに話す。この暴走族はチームの下っ端だろう、明らかに気圧されている。

 

(リーダー)に伝えておく。恐らく傘下には下らないぜ、助けてもらった礼はあるが抗争になったら容赦しねえ」

「ああ、そんときは正々堂々と抗争しようぜ。お前名前は?」

「石井だ」

「石井、ところで美味い飲食店(めしや)とかねえ?」

 

 花奈は組織のリーダーから一気に親しい友人のように語り掛ける。石井はその変化に戸惑いながら乾いた笑みを浮かべながら店を教える。ちなみそこは泊る予定のホテルの近くだった。

「ねえ、バイクって暴走族にとってそんなに大事?」

 

 華乃は花奈に問いかける。何故バイクを傷つけられただけであそこ迄怒るのか理解できなかった。言っては悪いが所詮バイクだ、友達がやられたなら分かるが物が破壊されただけだろう。

 花奈はこの質問に対して暫く間をおいて平静に答える。何で分かんねえだろバカと罵倒されると思っていたが意外だ。

 

「まあ暴走族(ゾク)じゃない華乃には理解(わから)ねえか、暴走族(ゾク)にとってバイクは大親友(マブダチ)で家族で娘や息子なんだよ。まあ、娘や息子が居ないけどな」

 

 花奈の言葉を聞いて不思議と納得する。自分に置き換えればスノーホワイトが魔法少女達にリンチされているようなものだろう。そして花奈にとってチームのメンバーがリンチされているようなものだ。駄弁りを通してどれだけチームのメンバーを大切に想っているかは分かる。ガチギレするのも当然だ。

 

「でも他の暴走族のバイクが壊されてたんであって、チームのメンバーのバイクじゃない、それにいずれ敵対する人なら放っておけばよくない」

「お前極悪非道(あくま)かよ、結果的に抗争するけど違うチームの暴走族は仲間なんだよ。仲間のバイクが破壊(スクラップ)にされそうになったら助けるのが当然だろ」

「仲間なのに喧嘩するの?」

「暴走族にとって喧嘩なんて交流(スキンシップ)だ、終われば仲間(ダチ)でアタシだって何度もボコボコにされたけど欠片(これっぽっち)も恨みはねえ。実際に百鬼夜行以外は友好的だ」

「ちなみに百鬼夜行ってのは何したの?」

「デルタの彼女(スケ)に手を出した。まあ手を出した奴以外に罪は無いからそいつは追放してチームは存続させて傘下に入った……あのホテルがあれじゃね?」

 

 花奈が指さす方向にホテルらしき建物が見える。確かにホームページで見た画像と似ている。調べて分かったが外装だけで高級なのが分かる。こんな旅館は余程のことがない限り宿泊しないだろうな。花奈も同じことを考えていたのかスゲエと感嘆の声を漏らしていた。

 

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