暴走族と魔法少女   作:ヘッズ

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第24話 カルチャー・ギャップ

♢姫川小雪

 

 改札を抜けて外に出た瞬間に夏の熱気と日差しが容赦なく降り注ぎ、その暑さに思わず顔を顰める。N県の冬は寒いが夏は比較的涼しいと言われている。しかし今日はまるで嘘のように暑い。念のためにと駅前広場の地図で行先を確認する。行先は駅から徒歩10分にあるショッピングビル、ここはN県でも屈指の広さと商品のバラエティさを誇る。

 目的地に向かって歩き始めて数分、既に額や二の腕に汗が浮かびハンカチでふき取る。外に出た時に今日は暑いと予感したが予想以上だ。こんなに暑いのは過去の記憶にもない、幼い頃はもう少し涼しかった気がするがこれも地球温暖化の影響だろうか。

 日差しと暑さで体力が奪われているのか足取りも重い。夏休みのグランドで活動している運動部なら慣れているかもしれないが、体育の授業以外では運動せず真夏で体を動かさないので夏の日差しへの耐性も耐える体力もない。

 こんな事なら家に帰ってクーラーでもつけてのんびりしていれば良かった。己の判断ミスと不運を呪った。

 

 1学期の終業式後の帰り道、話題は自然と夏休みについてになる。中学3年の夏休みは高校受験に向けて学力アップを図る貴重な時間だ。大半の3年は自主的に勉強したり、夏期講習に行ったりする。中には朝から夜までビッチリ勉強する者もいる。

 小雪もそこまでではないが、進学の為にそれなりに勉強するつもりだ。以前に魔法少女としての指導を受けたピティ・フレデリカは魔法少女として生きるには勉強している暇はなく、進学したいなら名前を書けば合格できる高校に行けと言われた。

 彼女が真っ当な魔法少女なら言う通りにしていたかもしれないが、あれは様々な悪事を犯した悪党魔法少女だ。そんな者の言うことなど何一つ聞かない。真っ当な人間生活を送りながら理想の魔法少女として行動する。

 

 どんなに追い込もうとしても休みを作ろうと思えば作れる。小雪を始め芳子とスミレも志望校はそこまで高望みしていないので勉強漬けの夏休みではなく、それなりに余裕はある。

 中学最後の夏休みだから色々と思い出を作りたいと何回か一緒に遊ぼうと計画を立てていた。その1つが今日のショッピングビルの散策だった。

 現地集合という流れになり電車に乗り次いで現地に向かう。そんな時に芳子からメッセージが届き、『母方の祖母が今朝方亡くなったのでK県まで行くことになったから、今日は行けなくなった。本当にごめん』という内容だった。

 さらに数分後スミレから『弟が食中毒で倒れて付き添いで病院に行くから、今日は行けない』というメッセージが届いた。

 小雪は即座に『気にしないで、また今度にしようと』とメッセージを送る。身内の不幸に家族が急病、これは仕方がない。逆に今日の散策を優先するようだったら今すぐにでも帰って葬式や病院に行けと言うだろう。

 小雪は思わずため息をつきそうになるのを我慢しながら考える。このまま帰るか1人で散策するか?このまま帰っても無駄骨だが、1人で散策するのも味気ない。

 数秒ほど考え込み散策することにした。もう現地までの切符を買ってしまったので帰るのは勿体ないというケチな理由だった。

 

 汗を浮かばせながら歩いて10分後、ショッピングビルに着く。流石に県屈指の施設に加え夏休みという季節もあって人が多い。

 どこの施設を回るかと入り口付近の案内掲示板を見る。中には飲食店やアパレルショップや書店がある。アパレルショップは愛用しているブランドからグレードが高い事で知られる店や全く知らないブランドなど様々で、飲食店も同じような感じだ。他にも映画館があり近場の映画館より規模も大きく、上映している本数も種類も多そうだ。

 とりあえずアパレルショップでウインドウショッピングでも楽しむか、今日は友人とのノリで衝動買いしてしまうかもしれないと多めに所持金を用意している。

 

「小雪か?」

 

 すると後ろから男性の声が聞こえてくる。男性に声をかけられる知り合いなんていたかと疑問に思いながら振り向き納得する。殺島だ。

 金のネックレスに派手目な柄シャツに短パン、そのセンスやチョイスは友人やクラスメイトにはないタイプだ。

 

「やっぱり小雪だ。偶然だな、1人(ソロ)か?」

「そう。本当はよっちゃんとスミちゃんと一緒のはずだったんだけど、急用で来られなくなって」

「それは残念だ」

「殺島君は1人?買い物しにきたの?」

「オレは1人(ソロ)だ。それで今日はキューティーオールスターFを見に来た。ここら辺だとここでしか上映してねえから」

 

 キューティーオールスターは歴代のキューティーが勢ぞろいするキューティーシリーズのお祭り映画で夏の恒例になっている。

 

「今までのオールスターは視聴(よしゅう)したけど、(リアルタイム)でのオールスターを見るのは初めてだからよ。高揚(ワクワク)が止まらねえ」

 

 殺島は嬉しそうに語り思わず笑みをこぼす。そういえば初めてオールスターシリーズを見た時に初代のキューティーオニキスとパールが出た時は興奮した。初めてリアルタイムで見たキューティーなので思い入れが深いだけに当時と同じように喋り動く姿を見て感動すら覚えていた。

 

「小雪は予定というか今日の計画(プラン)は決まってんのか?」

「ううん、とりあえずアパレルでもプラプラ見て、気が済んだら帰ろっかなって」

「だったら一緒に見ねえか?あと30分ぐらいで上映するし、見た後の語りもしてえし」

 

 殺島の予想外の提案に考え込む。今日は恐らくテキトーに店を回って昼前には家に帰るという何の印象に残らない一日になるという予感がある。折角の夏休みで出かけたのだから印象に残り楽しい一日にしたい。

 最近は殺島の影響もありキューティーシリーズ熱が戻ってきている。見たい見たくないの2択なら見たいに寄り、あてもなく店を回るより楽しそうだ。

 だが少女や親が占める映画館に中学3年の女の子が混ざるのには抵抗があり、もしクラスメイトに目撃されれば色々とマズい。

 

「ちょっとだけ待ってくれねえか、最速(ソッコー)で戻るから」

 

 殺島はそう告げると足早にショッピングビルに入っていく。一体何をしようというのか?もし予定が有れば待たずに出かけたかもしれないが、今日は特に予定が無いので待つことにする。10分後に息を切らしながら殺島が戻ってくる。手には手ごろな値段で中学生達が愛用しているブランドの袋を持っていた。

 

「これ着ければ露見(バレ)ねえだろ。やっぱり見た後は語りてえし、一緒に見ねえか?」

 

 袋から出てきたのはキャップとサングラスだった。クラスメイトに見つかったら恥ずかしいという心情を察し買ってきたのか。

 

「変に気を遣う必要はねえ、それは返してもらって友達(ダチ)にでも贈呈(プレゼント)するさ」

 

 戸惑う姿を見て先回りするように告げる。タダで貰うのに負い目を感じていたが心情を完全に見抜かれていた。

 

「いいよ。一緒に見よう」

 

 思わず口元が綻び誘いに応じる。一緒に見るためにここまでやる殺島の情熱にある意味根負けだ。殺島は余程一緒に見られるのが嬉しいのか、小さくガッツポーズしていた。

 

 映画館に着き前売り券を引き換えるついでに買ってくると言うので、お言葉に甘えてチケット代を渡す。アプリも無く係員とやり取りしてチケットを買わなければいけないので少し恥ずかしい。すると殺島が思い出したかのように尋ねる。

 

「ところで視力いくつ?」

「1,5ぐらいだけど」

「じゃあ一番後ろで大丈夫だな。姫川はともかくオレみたいな高身長(でけえ)のが居たら後ろの子供(キッズ)が見らねえかもしれねえし」

 

 小雪は思わず頷く。暫く映画館で小学生と混じって映画を見る機会がなかったので全く気にしていなかった。中三の平均身長より少し小さく小柄だが、キューティーを見る子供よりは大きく、特に幼稚園や保育園に通う子供にとっては大人と変わらない。

 殺島は発券所に行きチケットを買う。すると殺島のような男子がキューティーを見るのが珍しいのか『大きいのに見るなんて変なの~』と声をかけられていた。だが『オモシレエもんに大人も子供関係ない』と返し親御さんに止められるまでキューティートークをしていた。

 友人の岸部颯太はまるで隠れキリシタンのようだと言いながら魔法少女モノを視聴していた。だが殺島はそういった面を一切気にしない。

 顔も美形でコミュニケーション力も高い。恐らく学校でもクラスの中心で女性にもモテるはずだ。そんな人気者が女児アニメを見ても軽蔑されない。

 そういった持つ者の余裕か、それとも仮に心象が悪くなっても気にしない図太さがあるのか。恐らく後者であり、とても真似できないがある意味見習いたいメンタリティーだ。

 殺島からチケットを受け取った後はエントランスで雑談しながら時間を潰し、映画の予告が終わり、館内が暗くなった直後ぐらいに席について視聴する。

 

 内容は凄く良かった。

 

◆殺島飛露鬼

 

 映画が終わると時刻は正午を回っていた。丁度昼時なので昼食でも食べようという流れになり、エスカレーターで飲食ゾーンに移動し店を探す。しかし昼過ぎでしかも夏休みというだけあってどこも満員だった。

 早く腰を据えて語りたい。内から溢れる欲求を抑え込みながら店を探す。とりあえず食事をしながら座れる場所ならラーメン屋だろうがスタ丼屋でもどこでもいい。女性と食事するという前提を完全に忘れていた。

 すると最後に訪れたファミレスが幸運にも2席空いているらしく、小雪の了承を得て入店し碌にメニューを見ず目についた商品を注文した。

 

「いや~絶頂(たまんねえ)わ」

「うん」

 

 小雪も噛みしめているのかしみじみと呟く。予想を裏切り期待を裏切らないのが最高の娯楽と聞いたことがあるがまさにそれだ。

 基本は王道だが要所要所に変化球を交え驚かせてくれる。熱中のあまり子供達も「頑張れキューティー」と映画館の規則を無視し声援を送っていた。その気持ちはよく分かり映画館で独りだけだったら思わず声援を送ってしまったかもしれない。

 

「見る前はあの子とあの子は気が合いそうとか予想して、予想通りの絡みがあれば、全く意外な絡みもあって、それがまた至高(いい)

「私はオニキスとキャットの会話が印象的だった」

「ああ、それも至高(いい)

 

 その後も料理を食べながら映画について語り続けた。2時間ぐらいの映画だったが語るべきポイントは幾らでもあり話題は尽きない。

 店に着いてから暫く経ってお互い話すのを止める沈黙時間が訪れる。その時ふと思ったことをそのまま話す。

 

「なあ、光落ちで敵側からキューティー側につくキャラが居るよな」

「うん、パッショーネキューティーとかそうだね」

「けれど闇落ちはないよな」

「そうだね。一時的に辛いことがあって絶望して自棄になって世界を滅ぼそうと敵側についても最後は味方側に戻ったり、敵の攻撃からキューティーを庇って死んじゃったりするけど」

「なんでだ?」

「それはダークキューティーみたいに最初から敵側だったらともかく。清い心を持っても中学生や高校生ぐらいのキューティー達が一時の気の迷いで悪になるのは仕方がないかもしれないけど、最後まで悪には染まらないよ」

「それは分かるしオレだってそう思う。もしそうなったらキューティーはそんなんじゃねえってテレビ局に襲撃(カチコミ)する。オレが言いたいのは本人は闇落ちしてないが、周りから見れば闇落ちしてる状況(パターン)だ」

「どういう意味?」

 

 小雪は言葉の意味が分からないのか僅かに首をひねる。

 

「キューティーは皆優しくて優等生(いいこ)だ。だからこそ悪側の苦しさや辛さを理解して寄り添い癒そうとするキューティーが居てもいいだろ」

「でも、敵は世界を滅ぼしたり多くの人に害を与える。それは悪い事だよ。愛する人の為とかなら分からなくないけど、悪の気持ちに共感すれば清く正しくなくなる。キューティーは、魔法少女は清く正しくないと」

 

 小雪の声色が僅かに強くなる。何回かの語りで気づいたがキューティーに対して誰よりも清廉潔癖で正しくあって欲しいと願っている。普段はここで話を切り上げるが今日は何となくそんな気分でなかった。

 

「小雪、悪は悪いか?」

「それはそう。悪い事をして誰かの大切な人や物を奪っていい権利なんてない」

「オレは思うんだよ。正しくいるのは疲れるし強さが必要だ、誰もができるわけではない」

 

 悪は弱さの一種である。前世を含めた今までの人生で気づいた事柄だ。弱いから楽して稼ごうと詐欺や強盗をする。弱いから現実に耐えきれず、例え悪事であっても現実逃避を選ぶ。

 前世の聖華天(せいかてん)のメンバーや覇威燕無礼棲(ハイエンプレス)のメンバーは世間から見れば善か悪かと訊かれればぶっちぎりの悪だ。道交法を無視し暴走の為に民家を燃やし邪魔する警察をぶちのめす。これを悪と言わず何が悪だ。

 だがそうせずにいられないのだ。首都高で集まった聖華天5万人は大人の辛さに耐えきれず、現実逃避として悪事である暴走に逃げた。

 普通の人は辛くても他人に迷惑をかけず耐える。もしくは耐えられなくても社会に迷惑はかけられないと自ら命を絶つ。それはある意味強さであり聖華天は誰一人強さを持っていなかった弱者だ。

 ハイエンプレスのメンバーも同じだ。辛い現実を忘れるために、暴走以上に楽しい事がなく他では我慢できない、だから悪事である暴走に逃げる。

 

「悪い奴は弱者だ。弱いからそういう生き方しかできないかもしれねえ、そんな弱者を肯定するキューティーも居てもいいんじゃねえかなって」

 

 言いたい事を言いきった達成感からか思わず深く息を吐く。こんな意見は世間や社会が容認しないのは分かっている。

 キューティーは清く正しくあるべきだ、その善性があるからこそキューティーを見て楽しんでいる。それでも悪に寄りそうキューティーも居て欲しいという矛盾した想いがあった。

 小雪は俯き沈黙している。かなり本音が混じった話であり友人とする話としては重すぎる。だが今までの語りで小雪なら大丈夫だという信頼感があったから話した。すると顔を上げ重々しく話しかける。

 

「その悪に寄りそう魔法少女は例えば戦うのが楽しくて人を殺すのが楽しい悪役や、自分の理想の魔法少女が見たいからって多くの人を犠牲にする人でも肯定するの?」

「ああ」

 

 小雪は突如立ち上がり財布から千円札を2枚机に置いて出口に向かう。その顔は驚くほど無表情であるが、今まで最も感情を表しているようでもあった。

 

誤判定(みあやま)った」

 

 思わずため息をついてしまう。やはりこの話はするべきではなかった。普通にあれが良かったこれが良かったといつも通り話していればよかった。

 先ほど語った考えは完全に極道の思考だ。そんな思想は社会や常識は認めない、ましてキューティー好きなら猶更だ。

 しかし小雪の反応は予想外だった。それは違うとやんわりと否定すると思ったが露骨に否定した。もしかして何かしらの地雷のようなものを踏んだかもしれない。これでもコミュニケーション能力は高く、人に嫌われないようにする話術を会得しているつもりだったが耄碌したか。

 暫く時間を置いてから謝るか、追加でコーヒーを注文しながらどう謝るか考える。

 

 

♢リップル

 

 リップルは民家の屋根や電柱を飛び石代わりにしながら並走するスノーホワイトをチラリと見る。今日のスノーホワイトはいつもと違う。

 今日もN市をパトロールしながら酔っ払いを介抱し公園で騒いでいる学生を近所迷惑だとやんわりと注意したりと一般的な魔法少女としての活動をした。言動はいつも通りやんわりと腰が低い。

 だが学生たちが言う事を聞かず騒ごうとした時などつま先で地面を軽く抉ったりと小さいながら苛立ちを見せていた。それはいつもなら決してしない仕草だった。

 他にも空き缶をゴミ箱に入れる動作が荒かったりと何気ない仕草から僅かに苛立ちが滲み出ていた。

 

「何か有った?」

 

 いつものN市で一番高い鉄塔の屋上で三日月を眺めながらスノーホワイトに問いかける。すると一瞬ハッとした表情を見せ、どうするか逡巡している仕草を見せたのち意を決したように話し始める。

 

「ちょっとね、友達と喧嘩、いや一方的に怒っちゃって」

「なにに怒ったの?」

「もしクラムベリーやカラミティメアリを悪くないって言う人がいたらどうする?」

 

 スノーホワイトの言葉を聞いた瞬間に思わず舌打ちをする。クラムベリー、N市で魔法少女選抜試験を開催した張本人、試験を殺し合いに変貌させ戦いを楽しみたいと試験管でありながら参加魔法少女として魔法少女を殺した外道、アイツが居なければ少なくともトップスピードは死ななかった。

 カラミティメアリ、魔法少女でありながら反社会勢力とつるみ、リップルがムカつくからというおびき寄せる為だけに高速道路を通る車両を狙撃し罪のない人々を何人も殺したカス。

 

「悪い事をする人は弱くてそういう生き方しかできないって」

「それ友達が言ったの?」

 

 苛立たしく吐き捨てる。それで犠牲になった人はたまったものではない、少なくともトップスピードやメアリに殺された人々に罪はなかった。

 こんな意見を言うのは逆張り野郎か、人権派気取りか、頭がお花畑な平和主義者か、スノーホワイトには悪いが今すぐにでも縁を切ったほうがいい。

 

「その友達は最近キューティーシリーズにハマってね、フィクションの魔法少女達の善性とか優しさとかに惹かれたって言ってたんだけど」

 

 スノーホワイトは残念そうに呟く。スノーホワイトは人助けをして、殺し合いと化した魔法少女選抜試験でも最後まで暴力に流されなかった。まさにフィクションの主人公のような清く正しい魔法少女だ。そしてクラムベリー達はその反対である悪い魔法少女、その友人は悪い魔法少女の肩を持った。

 スノーホワイトはクラムベリーによって多くを奪われた。そこでパートナーだったラ・ピュセル、ラ・ピュセルの次のパートナーだったハードゴアアリスを失った。特にラ・ピュセルとは仲が良く、リップルにとってトップスピード、もしくはそれ以上の存在なのかもしれない。

 であればなおさらショックだろう。自分だったら封印している暴力が出ていた。友人の言動はある意味スノーホワイトの心を最も傷つけた。

 

「明日早いし帰るね。お休みリップル」

「おやすみ」

 

 スノーホワイトは悲しそうな表情を一瞬浮かべるが、それを隠すように僅かに微笑みながら鉄塔を降りていく。別れの挨拶に応えるだけで何か気の利いた言葉をかけられず、その後ろ姿を見送るしか出来なかった。

 

♢スノーホワイト

 

──悪い奴は弱者だ。弱いからそういう生き方しかできないかもしれねえ、そんな弱者を肯定するキューティーも居てもいいんじゃねえかなって──

 

 帰路につきながら頭の中で殺島の言葉が反響する。

 

 犯罪者や悪党の中には悲劇的な出来事が起こり心に傷を負い悪事をしなければ生きていけなくなった者もいるかもしれない。

 悪事によって誰かを傷つけるのは赦されるわけではないが、同情しもしかして擁護するかもしれない。だが魔法少女には該当しない。

 魔法少女は清く正しくなくてはならない。例え誰かを傷つけなくては生きていけないとしても相手を思いやり傷ついた人やその周りの人の心情を考え堪える強さを持っているはずだ。

 クラムベリー、ピティ・フレデリカ、それ以外にも何人もの悪党魔法少女を捕まえた。

 彼女達は自分の欲望のままに他者を傷つけた。それは魔法少女ではない。だからこそ越権行為で身勝手でありながらも自分の欲望で他者を傷つける魔法少女を捕まえている。魔法少女は悪党を肯定してはならない。

 そして殺島の意見はリップルの言う通り外野の意見だ、弱さによって大切な人を傷つけ奪わられていいはずがない。当事者になれば口が裂けても言えない。

 

 スノーホワイトは家に着き変身を解く前に机に置いていたスマホを手に取る。すると殺島からメッセージが届いていた。メッセージを見ずに寝ようとしたが数秒ほど考えた後にメッセージを確認する。

 

 昼間は悪かった。言い訳に聞こえるかもしねえが、極論を言う事で小雪がどう反応して、どんな意見が出てそこから話を広げて今までと違う話をしたかっただけだった。その極論が傷つけるかもしれないと配慮できなかった。マジで悪い。

 キューティー達は皆が思いやりが有って優しい。それはオレには持ってないものを持ってるキューティー達が眩しくて惹かれてんだ。例えキューティー達が優しくても多くの人を傷つける選択をとるわけがねえって分かってるつもりだ。

 

 スノーホワイトの口角がほんの僅かに上がる。悪党の肩を持ったのは本心ではなく極論の一部だった。確か討論であえて逆張りすることで議論を活性化させる手法があると聞いたことがある。

 それをやろうとしたのだ。なのに極論に怒り勝手に帰ってしまった。己の幼稚さに思わず赤面しそうだ。

 スノーホワイトは謝罪とまたお詫びとしてどこかで話の続きをしようと返信のメッセージを送った

 

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