暴走族と魔法少女   作:ヘッズ

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第31話 wonder fact

殺島飛露鬼(やじまひろき)

 

 超人、人間離れした戦闘力、

 S県、美人、超人。

 S県、黒髪ロング、美人、コウモリの羽、羊のお面

 

 殺島は最低限の気遣いとばかりに教科書でスマホを隠しながら思いついた単語を片っ端から検索エンジンに打ち込んでいく。これで欲しい情報が得られるとは思えないが万が一を期待する。しかし予想通り欲しい情報は全く得られなかった。

 S県で仏陀地獄と抗争した夜に出会った謎の美人、それは忍者と同じ、いやそれ以上かもしれない超常的存在だった。あの時を思い出すと今でも身の毛がよだつ。気分次第で一瞬で命を失う。この世界では強者だが久方ぶりに味わった圧倒的弱者としての感覚だった。

 あれが今後の障害になるかは分からないが、その脅威は核爆弾の威力を持つ地雷のようなものだ。どこに居るか分からずもし敵対すれば為す術もなく蹂躙される。その地雷は1つだけなのか、何をすれば踏んでしまうか、早急に調べなければならない。そして忍者よりかは調べやすい。

 忍者の存在は裏社会では有名だが表社会には全く知られておらず、隠ぺい工作など知られないように気を遣っているのだろう。

 一方あの美人は喧嘩で拳銃を使うなとクギを刺す為だけに姿を現した。そしてクギを刺した理由が喧嘩で使われるのがムカつくからという個人的な理由だ。

 そんな理由で動く者は今回と同じように気分で誰かと接触したり、気に入らないからヤクザを潰したなどの行動をする可能性がある。そして今のところ美人と会った記憶を消されるなど隠ぺい工作を受けていない。忍者よりかは隙があると踏んでいた。

 今度はSNSで同じように単語を打ち込み検索や都市伝説扱いされていないかと、それ系のアカウントを調べたが全くひっからなかった。

 

 殺島はSNSを閉じてメッセージアプリを立ち上げ文字を打ち込み、知り合いに向けて一斉送信する。内容はS県で会った美人の目撃情報、もしくは何か人間離れした身体能力をもつなど超常的存在の目撃情報についてである。

 大半の知り合いがメッセージを見て驚くだろう。皆の印象はこんなオカルト的にのめり込むキャラではなく、イタズラか何かと思い碌に取り扱わず無視される可能性が高い。だが不慣れなSNSやインターネットで探すより、知り合いを使った口コミで調べる方が可能性はあるような気がした。

 その後は授業が終わるまでは都市伝説を調べているサイトを見続けるが目ぼしい情報は無かった。

 

♢スミレ

 

 スミレは授業が終わり次の授業までの僅かな休憩時間、何気なくスマホを取り出しSNSをチェックしようとする。すると画面にメッセージアプリの着信表示が映っていた。送信者は殺島からだ。

 殺島とは初めて会ってからちょくちょくメッセージのやり取りをし、殺島経由で男子を紹介してもらったりしている。

 

「なにこれ?」

 

 メッセージを開いて思わず声を出してしまう。内容としては物凄い美人で黒髪ロングに背中にコウモリの羽をつけて白い羊のお面をつけた女性を知っているか見たことはないか?それか超人的な身体能力を持っているとかの超常的な存在を知らないかというものだった。

 随分とキャラと違うメッセージだ。謎のコスプレ美女を探しているのは分かる。殺島は女好きだし一目惚れをしたのだろう。だが二つ目はまるで分からない。

 超常的存在とは魔法だったり超能力だったり忍術だったり呪術を使う者だろうか、また宇宙人とか未来人とか地底人とか人狼とか吸血鬼などのUMA的な存在か?どっちかは分からないがそれらの存在を信じ探しているなんて本当に意外だ。

 スミレはオカルト肯定派だった。本気で信じてはいないがいたら面白いのでいては欲しい。芳子だったら居るわけないし子供っぽいと小バカにするだろう。小雪は1年前なら魔法少女はいると主張するが今は芳子と同じ意見を言う。最近の小雪は夢見がちな少女ではなくなった。成長したなと思う反面少し寂しい。

 

「居るかも」

 

 スミレは友達から超常的な存在について思い出す。確か去年ぐらいに地元のN市で一時期的に魔法少女が出現したちょっとした話題になり、まとめサイトも作られ一時期は出現情報などの記事などを見ていた。しかし最近はめっきり出現情報しなくなるにつれてサイトは過疎化し見なくなった。

 白い魔法少女、犬みたいな女の子、マスコットみたいな天使、魔女、くのいち等色々な魔法少女が居た。ふと懐かしくなり検索エンジンで調べるとまだサイトは生きていた。相変わらず過疎っており書き込みも少なく、最後の書き込みは目撃情報で一カ月前だ。魔法少女も超常的な存在だろう。気に入るか分からないが教えておくか、URLをコピーし殺島にメッセージを送った。

 

◆殺島飛露鬼

 

 スマホがバイブで震える。新着のメッセージが届き送り主はスミレからだった。質問に対する返信かと僅かばかり期待を抱きながら開く。メッセージには「魔法少女も超常的存在だったら居るかも」と書かれURLも貼られていた。

 そういえば魔法少女も超常的存在か、キューティーヒーラーなど魔法少女アニメを何作も視聴したが、フィクションであると決めつけていたので除外していた。そういえば作中でもキューティーヒーラーは忍者並の身体能力があった。

 さっそくURLをタップしサイトに飛ぶ。そこは魔法少女についての記事を編集しているまとめサイトと呼ばれるもので、多くの魔法少女らしき人物の目撃情報が書き込まれていた。

 目撃情報が多かったのは1年前の秋、丁度この世界に生を受けた直後だ。その後目撃情報はめっきり減り白い魔法少女と片腕片目の黒い魔法少女の2名だけになっていた。

 自演か作り話である可能性があるか置いてくとして真実だと仮定する。問題は白い魔法少女や隻腕隻眼の黒い魔法少女とS県であった謎の美女が同じ種族であるか、その2人が忍者のようにハイエンプレスの行動を邪魔しないかだ。

 存在は数年前から確認され現時点では一度も暴走の邪魔をされていない。心変わりする可能性はあるが低いだろう。あとは同程度の身体能力を持っているか調べるだけだが方法が思いつかない。とりあえず後回しでいいだろう。

 暫く魔法少女のまとめサイトを見ていると再びスマホが震える。メッセージが届き送り主は室田昇一、花奈とつるんでいた室田つばめの夫である。内容だが「超常的な存在について心当たりがあるという」というものだった。早速人海戦術の効果が表れた。

 

『そいつに教えてくれ』

『その話だか暴走族女神にも話したい。いいか?』

 

 花奈を連れてこいとはどういう意図だ?超常的な存在と花奈との繋がりがまるで読めない。

 

『今日は仕事あるのか?』

『ない』

『だったら花奈と一緒に家に行っていいか?スマホ越しより直のほうが話しやすいだろう』

『分かった。来るのは夕方か?』

『今から向かう』

 

 昇一にメッセージを送り即座に花奈に用件を伝える。この時間は学校だがふけているか授業中に寝ているか同じ学校の族仲間と駄弁っているかの3択だろう。数秒後に『仕方なねえな』と返信が帰ってきた。

 殺島は席から立ち上がり教室から出る。その様子に教師とクラスメイトは一瞬驚くか、いつもの事かとばかりに平然と見送った。

 

◆生島花奈

 

 花奈は周囲にブレーキ音を響かせ路面にタイヤの跡を刻みながら公園前にバイクを停車する。公園で遊んでいたガキ共が一斉に目を向け、母親たちは嫌そうな顔をする。見世物じゃないと手でしっしと手を振りながらスマホを取り出し時間を確認する。

 大分早く着いてしまった。これでは待たなければいけないではないか、花奈は思わず舌打ちをする。ここ最近は急に寒くなった。バイクで走るには寒さは心地良いが外でも待っている時の寒さは嫌いだ。

 ヤジからつばめの家近くの公園に集合と招集され、普通に行くのではつまらないとタイムアタックでもするかと法定速度を完全無視したスピードで走り、途中で警察に見つかり裏路地などに入り追っ手を撒いたりしたが、それでも時間が余った。仕方がないとシートに座りながらスマホをいじり暇をつぶす。

 今日の呼び出しは今朝方ヤジが送った超常的存在、恐らく超能力とかを使う存在についてらしい。ヤジからのメッセージを見た時は正気を疑った。そんな存在なんて居るわけない。そもそも今までその手を話題にしなかったのに急にどうしたというのか?

 暫くすると聞き覚えがあるエンジン音が聞こえてくる。これはヤジの単車の音だ、数秒後予想通り姿を現した。

 

「よう、待たせたか?」

「待ったよ、限界(ギリギリ)まで飛ばせよ。ぬるい走りしやがって」

「暴走以外は限界まで飛ばさないタイプなんだよ。これでも法定速度30キロオーバーできたんだぜ」

「そんなの平常運転だろ」

 

 ヤジはバイクに降りるとマンションに向かいあとをついていく。早く家の中に入って温まりたい。

 

「しかし何だあのメッセージは?いつから頭お花畑(パー)になったんだ。超常的な存在?ようするに超能力とか使う奴だろ、居るわけねえだろ。ガキか」

「そうか?オレは(メラ)を出す奴を知ってるぜ」

「いるかよそんなの。それで何で昇一の家なんだ?というより何で呼んだ?その超能力を使う奴の話ならヤジだけでいいだろ」

「花奈にも関係ある話らしいから呼べって頼まれた」

 

 昇一と自分との関係性といえばつばめだろ。まさかつばめが超能力者とかオチじゃないだろうな。そんなわけないか、自分の想像を鼻で笑いながらエレベーターで5階にある昇一の家まで移動する。

 

暴走族王(ゾクキング)暴走族女神(ゾクメガミ)、いらっしゃい」

 

 上がTシャツに下がジャージと室内着の昇一が出迎えリビングに案内される。以前着た時はそこらへんに服やゴミがぶっ散らかってたが今はない。つばめが愚痴っていた人物像からしてこれが元々であの時が正常では無かったのだろう。

 リビングに入ると暖気が肌を撫で冷えた身体を温める。もし暖房がついていなければつけさせるところだった。案内されるままに椅子に座り、上着を背もたれにかける。

 

「飲み物は何が良い?」

「酒」

「酒はもう必要ないから家にない。コーヒーでいいか?」

「おう、花奈もそれでいいよな?」

 

 花奈は無言で頷きそれも見て昇一はお湯を沸かし始める。昔はつばめを失った悲しみで酒に溺れていたが今では全く飲んでいないようだ。

 

「何ニヤニヤしてんだ。気味悪(キショ)いぞ」

「なんでもねえ」

 

 ヤジの指摘に軽く小突いて返答する。酒を飲まなくなったという事はつばめより暴走の楽しさが勝ったという事だ。つまり暴走の方がつばめより凄いという何より証拠だ。

 昇一がコーヒーを作るまで近くにあったバイク雑誌をヤジと読みながら時間を潰す。すると目の前にコーヒーが置かれる。流石にブラックは苦すぎるのでミルクと砂糖で味を調える。

 

超絶美味(めちゃウマ)いブールマウンテンだな」

「いや、普通のインスタント」

(テキトー)すぎだろ」

「ワリい、それで昇一が知ってる化け物とか超人とか超能力者って呼ばれるような超常的存在について教えてくれ」

 

 ヤジはコーヒーを一口飲みカップを置きながら話を切り出し、昇一は一瞬だけ悲しそうに唇を噛んだ後良い思い出を振り返るように表情を崩しながら話し始める。

 

「大体1年前ぐらいか、仕事場には自転車で通勤してたんだ。ロードバイクっていうスピードが出るやつ。家に出て10分ぐらいかな、確か信号に一回もひっからなくて最速記録を更新できると思った矢先に前方からつばめが現れた。さて問題、つばめはオレが家に出た時は家にいました。どうやって追いついたでしょうか?」

「そりゃ、バイクか車で先回りして待ち構えてたんだろ。速いっていっても所詮は自転車(チャリ)だ」

 

 花奈が質問に答える。普通に考えれば小学生でも分かる問題だ、すると昇一は予想通りといった表情を見せた後楽しかった思い出を振り返るかのような笑みを見せながら答える。

 

「正解は家から直線距離で飛んできた。つばめは空飛ぶ箒に乗る魔女だったんだ」

「は?んなわけねだろ」

 

 酒を止めた代わりにクスリでもキメてんのか、同意を求めるようにヤジに視線を向けるとまるで可能性にあったとある意味納得しているような表情を浮かべていた。

 

「正気かヤジ!?魔女だなんて非現実(ありえね)ぇだろ!」

 

 思わず声が大きくなる。ヤジがガキ向けのアニメにハマっているのは知っているがアニメと現実の区別がつかなくなってしまったのか?するとヤジはスマホを操作して画面が見えるように置いた。

 

「これは魔法少女っぽい奴の目撃情報が集まっているサイトだ。白い魔法少女、忍者、マスコットみたいな天使、犬みたいな女の子、後半は仮装(コスプレ)みてえだが、その中に魔女もいた」

 

 画面にはポイ捨てを注意されたとか道を案内してもらったとか魔女にされた事が書かれていた。

 

「奥さんが魔女に変身するようになったのはこれぐらいからか?」

「ああ、大体それぐらいだ」

 

 昇一はヤジが指さした日付を見て頷く。今までの印象とつばめから聞いた人物像からして昇一はこんな嘘を言うために呼びつける奴ではない。そしてネットの情報と昇一の話はある程度一致する。まさかつばめは魔女か魔法少女なのか、超常的存在など居ないと100%信じていなかった心に楔が撃ち込まれる。

 

「おいヤジ、そもそも何で調べ始めた?というより何で化け物みたいな力を持つ奴が居るって信じてるんだ?まさか出会ったのか?」

 

 ヤジがそんな存在を信じるとしたらこの目で見た場合だ。噂話や人からのまた聞きで信じるような頭お花畑ではない。

 

「S県で仏陀地獄との抗争の後で喧嘩のダメージが大きいから1人(ピン)で帰った時だ、覚えてるか?」

「ああ」

「その時に遭遇(エンカウント)した。一目で絶対(ゼッテエ)に勝てないって強制理解(わからされ)た。そして今思えば機嫌悪(オコ)なだけだったかもしねえが、激怒(ゲキオコ)と勘違いして殺されると思った。何しても死ぬが何もせずに死ぬのはどうかと思って狂弾舞踏会(ピストルディスコ)で攻撃したがあっさり躱された」

狂弾舞踏会(ピストルディスコ)が避けられただと!?」

「ああ、かすりもしなかった」

 

 その言葉に思わず立ち上がり声を叫ぶ。ヤジは極めた技術は極道技巧(ごくどうスキル)と呼び。使えるのはヤジと花奈とデルタとガンマ4人だけだ。

 花奈バイク操作技術、デルタの単車と体当たりしても当たり勝つ身体能力と頑丈さ、ガンマの相手の動きを止める技術、これらの技術は人間離れしているがヤジの極道技巧は一番人間な離れしていると評価していた。

 いつかの余興としてヤジは跳弾でぶつかった弾丸の火花でたばこの火をつけるという離れ技をやった。しかもこの芸当は初歩とすら言っていた。

 そして二人っきりの時に最上級の技を体験した。弾丸をアスファルトにぶちこみ、宙に舞った破片に弾丸をぶちこみ跳弾で予測不可能な軌道を描き敵を撃ち殺す。

 弾丸が見える動体視力もなければ身体能力もない、だが仮にそれが有っても避けられないと確信している。あれを避けられるのは人間ではない、人間を遥かに超えた怪物しか不可能だ。

 これはヤジの嘘か?だがヤジの僅かに震えた手を見て悟る。今でも思い出してしまうほどの圧倒的な力とそれに殺されると思った恐怖、それが頭に過っているのだ。それが現実に起こったという何よりの証拠だ。

 

 

 花奈は想像をはるかに超えた事実を知り力が抜けたように椅子に座る。世の中にこんな化け物が潜んでいるなんて夢にも思わなかった。

 それからヤジはつばめが変身した魔女について質問する。容姿や身体能力など細かく聞いていく。昇一が変身すると容姿が変わりかなりの美人だと言っていたが、それ以外は正直頭に入らなかった。するとヤジの質問は終わり数秒ほど考えこみ自信なさげに話し始める

 

「もしかしたら、昇一の奥さんとオレが遭遇(エンカウント)した奴は同じ人種というか区分(カテゴリー)かもしれねえ」

「どういうことだ?」

「昇一の奥さんとオレが会った奴はコスプレみたいな恰好をしていてかなりの美人だ。そして俺が会った奴は非現実(ありえねえ)身体能力、昇一の奥さんは箒に乗って空を飛んだ。両方とも非現実(ありえねえ)

「でも2人だけで決めつけるのは」

「そうだな、だから可能性として……」

「だったら何でつばめは死んだ!」

 

 花奈は目をこれ以上ない程見開き、机を破壊せんとばかりに拳を叩きつけ立ち上がり叫ぶ。その様子にヤジと昇一がビクりと体を震わせた。ヤジの同種かもしれないという言葉に感情が瞬間的に高まり爆発した。

 

「つばめは非現実(ありえねえ)ほど強いんだろ!だったら何で死んだ!そんなに強いなら襲い掛かった奴を殺せよ!それか空飛んで逃げろよ!」

 

 叫びながら何度も机を叩きつける。ヤジの狂弾舞踏会を避ける程の力がありながら何で死んだ?何で赤ちゃんがいるのに呆気なく死んだ?何で昇一を悲しませた?頭に浮かび上がる言葉に怒りを込めてそのまま口にし続ける。その独白は数分に及んだ。

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