これからは週一を目途に投稿したいと思います。
あと忍者と極道がコミックDAYSにて、2024年9月9日の正午まで先読み有料話を除く全てが無料で読めます。魔法少女育成計画は知っているが忍者と極道は知らないという方はこれを機に読んでみてはどうでしょうか
◆殺島飛露鬼
12月31日大晦日の夜、1年の最後となるこの日は大半の人々は家でゆっくり過ごし、友人達と神社や寺にお参りにいったりする。
暴走族であれば初日の出暴走に向けて準備しているだろう。聖華天時代にはゴール地点の富士五湖周辺を目指し暴走をしたものだ。そして
『ちまちまやるのがめんどくせえから決着つけるぞ。12月31日23時関ケ原跡地に総員引き連れてこい。こっちも総員で迎え撃つ』
普段は観光地になっている関ケ原跡地、夜間は施設が締まり静かで閑散としているがこの日の夜は
「こいや!」
目の前にいるスキンヘッド男は気合いを漲らせて叫ぶ。鼻血を垂らし片目が腫れているが闘志はまるで衰えていない。
ここで倒せばこちら側の士気は一気に向上する。本来であればリボルバーで手足を打ち抜き速攻で戦闘不能にしているのだが、あの羊のお面を被った黒髪ロングの推定魔法少女から使用を禁止されている。
いくらなんでも常に監視しているとは思わないが相手は人外の推定魔法少女だ、それこそ魔法でも使って監視しているかもしれない。もしバレれば怒りを買って再起不能なまでにボコボコにされる。己の手足で倒さなければならない。
男は手を広げて仁王立ちしている。顔面を中心に人体の急所はがら空き、肝臓に向けて蹴りを叩き込む。普通の蹴りではなくトウキック、普通の蹴りの数倍の威力がある強力な蹴りだ。
男は一瞬苦悶の表情を浮かべるが即座にこちらの肝臓を蹴り返す。腕で防御するが勢いを殺せず、体が数メートル程度後退し腕全体に痺れが襲う。
「みたか殺島!これが本多さんの
織豊連合のメンバーがその雄姿に思わず叫ぶ。攻撃を防御せず受けると同時に同じ箇所に攻撃する。攻撃を受け即座に反撃するというタフネスに次第に恐怖し最終的に攻撃を受けてしまうといったところか。
「良い蹴りだ、流石
「お前もな。だがそろそろ
殺島は息を吸い込み一気に踏み込み間合いを詰める。本多は先程と同じように両手を広げ防御しない。がら空きの頭部こめかみに右のハイキックを繰り出す。それは先程と同じ普通の蹴りではくトウキックだった。バキバキという嫌な音が殺島の耳に届くと同時に本多は前のめりに倒れた。
本多が倒されたという事実を受け止められず呆然としていた織豊連合のメンバーは呆然とし、
かつて聖華天の仲間アルファ、そのパンチを頭部に受ければ頭蓋骨複雑骨折になるほど凄まじい威力だった。その拳は極道技巧
「拳に全てを込めるんだよ。そうりゃできる」
殺島が繰り出した蹴りはアルファの極道技巧仏破砕拳を真似たものだった。蹴りに全てを込める。この蹴りの後にぶっ倒れても構わないつもりで力を振り絞った。それがアルファの言う全てを込めると解釈した。
「アルファには
殺島は脂汗を垂らしながら呟く。右足に伝わる激痛、これは右足の指がグシャグシャになっているだろう。アルファは極道技巧を使い続けるうちに拳の耐久力も増したので何発撃とうが拳は砕けないが、こちらは蹴りの威力に指が耐えられなかった。
殺島は右足を引きずりながら他の仲間達の場所に向かった。
◆生島花奈
「うおお!」
織豊連合リーダー織田、恐ろしい男だ。愛車のフルスロットル突撃を避けずに受け止めやがった。バイクを捕獲されれば極道技巧
そう考えた瞬間にシートから立ち上がり前方に跳んだ。目の前には織田がいる。しかもバイクを捕まえているので両手が塞がれている。そのがら空きの顎に向かって飛び膝蹴りをかます。さらに右ひじを頭頂部に向かって振り下ろす。
極道技巧
織田は鼻血を吹き出し白目を向きながら大の字になって倒れ、周りで様子を見守っていた織豊連合のメンバーから悲鳴があがる。この瞬間抗争が決着した。
「アタシ達
花奈の勝ち鬨にハイエンプレスのメンバーは呼応するように大声をあげる。この瞬間抗争が決着した。
「流石だね
「お疲れ
するとガンマとデルタが声をかけてくる。特攻服は血で汚れ所々が破れてたり切り裂かれ、顔や体に殴られた跡がある。
「随分と
「これ右わき腹
「たぶん鼻
デルタとガンマはそれぞれダメージを受けた箇所を指さす。だが思ったより痛がっていない。喧嘩後でアドレナリンとかいうのが出ているせいだろう。
「暴走族女神も中々だな」
「流石関西最大チームのリーダーだ、
「
「それ跡残るんじゃない?」
デルタが目を丸くしガンマは心配そうにしながらハンカチを貸す。ガンマは女だから顔に傷が残るのを心配してるのだろう。だがこの傷は勲章のようなもので箔がつく。
「よう、
するとヤジがいつもの笑みを浮かべながらやってくる。だが足を引きずっている。脚でも怪我したようだ。
「皆ダメージをそれなりに受けたが大丈夫だ。
「ああ、右足の指が全部
「誰と
「本多」
「やる」
「あの本多?よく勝ったね」
「どうせ素手で戦ったんだろう?
ガンマとデルタが褒めるが思わず文句を言ってしまう。それに対してヤジは軽い感じで謝る。
黒髪ロングの化け物と出会ってからヤジはピストルを使わなくなった。ヤジの強さはピストルを使ってこそだ。全国制覇の為に使えと言ったが頑なに拒否した。何か事情が有るのは分かるが打ち明けてくれないのは信頼してくれないようでムカつく。
それからヤジは素手で戦うようになった。流石にピストルを使う時よりかは弱いがそこらへんの奴らは瞬殺できるぐらいには強く。こうして織豊連合の武闘派幹部の本多を倒した。結果を出しているなら文句はない。
「さてと、前座は終わった!メインを楽しむとするか」
「待ってました。あれをやると思えば痛みが吹き飛ぶ」
「どんだけ気持ち良いんだろう?」
「それは
皆楽しみが抑えられないと笑みをこぼす。今日の抗争は暴走族全国統一にむけて最大の戦いだった。この戦いに勝ったことで関西圏も手中に収めた。あとは九州と四国のチームだが、戦力差を考えれば勝利はほぼ確定している。
夢の1つである全国統一は達成したと言っていい。確かに嬉しいがこの後のイベントの楽しさに比べたら霞んでしまう。正直に言えば抗争をしたのもこのイベントのついでだ。
花奈は限界まで息を吸い込み大声を出す。喧嘩後でアドレナリンが出ているにもかかわらず左右の肋骨が痛むがかまわない。
「この瞬間をもって織豊連合は
その言葉にハイエンプレスは勿論織豊連合のメンバーも歓声をあげる。かつて暴走族が流行った時代において、暴走族業界で最も大きいイベントは何かと訊かれたら誰もがこう答える。
富士五湖への初日の出暴走。
かつての暴走族は各地で大晦日から元日の日の出まで暴走する。その中で富士五湖周辺は特別な意味を持ち日本で最も凄い暴走族だけがその一帯を暴走し、富士山と初日の出を見られる権利を持つ。
元日に富士五湖周辺を暴走するのは暴走族にとって最大の名誉であり、その名誉を得る為に日本一になろうと抗争を繰り広げていたといっても過言ではなかった。
だが現代では暴走族が減少するとともにこの伝統は廃れていく。しかし花奈はこの伝統を復活させようと密かに考えていた。
そのためには日本一のチームにならなければならない。全国統一すれば文句は無いが今年の大晦日までには無理だった。
それでも数々の抗争に勝ち抜き東の
織豊連合は最終決戦を大晦日にしたが、勝った後は富士五湖への初日の出暴走しようと考えていたかもしれない。
「骨折程度で
花奈の煽りに場の空気はさらに熱を帯びる。聖地で暴走できるのだ、暴走族なら誰でもそうなるに決まってる。
「よっしゃー!!!!
周りを見ると
S市までたどり着くと前方で何かが待ち構えている。あれは警察だ、普通の警官から交通機動隊っぽいのも居る。そしてバリケードが設置されている。もしかして伝統を復活させようとしているのを察したのか?
「そんなもん関係ねえ!」
アクセルを回しさらにスピードを出し突っ込む。バリケードがみるみるうちに迫るが全く怖くない。バリケードとバイクが激突しバリケードを吹き飛ばす。
今度は警官が立ちふさがるが構わず撥ね飛ばす。そして後続も同じようにバリケードを吹き飛ばし、警官たちは恐れをなして立ち尽くす。
警察達は仕事で暴走を止めようとしている。こっちは楽しくて好きだから暴走している。仕方がなくやってる奴と好きでやってる奴なら、好きでやってる奴が強いに決まってんだろう!警察に暴走族は止められない、熱量が違う。仮に暴走族が警察の立場だったら身を挺して止めている。
すると後方から爆発音が聞こえ思わず振り返ると、燃え盛るパトカーが見え吹き飛んだ生首が宙に舞う。
「
「ピストル使わねんじゃねのかよ?」
「
「なんだそりゃ!」
ヤジの言葉に思わず大笑いする。
警察を蹂躙しF市に辿り着くと国道138と139号を通り富士山周辺を周回する。S市にいた警官が戦力の大半だったようで、応援に来た警官は少なく問題なく蹴散らしながら暴走を続ける。
そして時刻は4時を過ぎ日の出を迎え、皆は一斉に富士山がある方向を見る。気が付けば涙を流していた。
朝日に照らされる富士山は確かにキレイだ。それは認める。しかし泣く程のものではないはずなのに泣いていた。周囲はその反応に戸惑い気味だった。その時ヤジが心配そうにしながらバイクを寄せる
「どうした?」
「わかんねえよ!富士山みたら急に涙が出てきた」
「それはあれだ、嬉し泣きだ。日本一の暴走族になって富士山周辺を初日の出暴走している達成感とか喜びとか、色々なもんが混ざったんだろう」
ヤジの言葉がストンと心に落ちる。約1年前はほぼ1人だった。1人で走り嬉しさや楽しさを共有できず孤独だった。
だがヤジと出会ってハイエンプレスを作りそこからガンマとデルタが仲間に加わり徐々にメンバーが増えた。暫くして警察に負けたが我慢して力を蓄えリベンジし、各地に行って喧嘩して暴走して仲間を増やした。そして今では8万5千人の仲間と暴走している。まるで夢のようだ。
「この日の出と富士山は生涯忘れない」
花奈はぽつりと呟く。これからもハイエンプレスで沢山の楽しい思い出を作るだろう。その幾つもの思い出の中にも埋もれることはない。きっと走馬灯でも真っ先に思い出すはずだ。
初日の出を見て目的を達成したので自然と流れ解散になる。皆の表情は晴れやかだった。
♢姫河小雪
「あけましておめでとうございます」
2階の自室からリビングに降りて新年の挨拶をする。両親に対してしっかりした言葉遣いをするのは少し恥ずかしいが、1年の始まりなのでちゃんとやっておく。
「あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます。さあ食べましょう小雪ちゃん」
母に促されて席に着き食卓にはおせち料理とお雑煮を見つめる。全て作っているわけではないが半分ぐらいが自作だ。かまぼこを口にしてお雑煮の汁をすする。これを食べると新年を無事に迎えたんだなと実感する。
魔法少女になる前は当たり前のように新年を迎えられると思っていた。だが魔法少女になり選抜試験を生き残ってからは違う。悪党魔法少女を捕まえる為に危ない目にあったり、いつの間に懸賞金が懸けられ襲われたこともあった。
テレビのマラソン中継を見ている両親に目を向ける。去年はふらっと遠出して無断外泊したりと色々と心配をかけた。
そして今年も心配をかけるだろう。最近は中東の情勢がいよいよとキナ臭くなっている。情勢の変化で多くの人が悲しむ事態になるならば介入するつもりでいる。そうなると二三日では帰られない。
それからマラソン中継を見ながらおせちとお雑煮を食べ部屋に戻ろうとすると、母親が席を立ちあがり何かを手に取りこちらに渡す
「はい小雪ちゃんお年玉、おかあさんとおとうさんとおばあちゃんとおじいちゃんの分」
「ありがとうお母さんお父さん」
迷惑かけたから受け取らない方がいいのかと思ったが、断ってもどうせ管理されている銀行の口座に入れるので同じかとありがたく受け取る。
「今日は予定有るの?」
「昼頃に友達とお参りしてくる」
集合時間までまだあるので年賀状を確認したり勉強したりして時間を潰そう、自室に上がろうとするとマラソンがCMに入り父がザッピングするとニュースが流れる。
内容は今日の未明にS県で暴走族の暴走行為により警察官を含めて近年稀に見るほどの死傷者が出たというニュースだ。母は怖いわと呟き父は昔より凶暴だなと身震いしている。
そんな両親に対して全く響かないし何の感慨もわかない、ニュースは即座に頭から消え去り何を勉強するという思考に移っていた。
◆
「あけましておめでとう、スミちゃん、よっちゃん」
「あけましておめでとう小雪」
「あけおめ、ことよろ小雪」
正午を回りN市のとある神社の鳥居前でスミレと芳子合流し新年の挨拶をする。一応メッセージアプリで年明け直後に挨拶したが直接会って挨拶するのは初めてだ。
「大晦日何してた?」
「TV見て年越しそば食べて12時回って年を越した瞬間に寝た」
「普通」
「じゃあ、よっちゃんは何してたの?」
「TV見て年越しそば食べた」
「アタシと変わんないじゃん。小雪は?」
「私も同じかな」
「うら若き乙女3人集まってそれか、ちなみにTVは何見た」
「私は歌番組かな」
「私はお笑い番組」
新年最初の会話はいつも通りの雑談から始まる。新年だからといって無理に特別な話をする必要もない。
「しかし初めて来たけど人が多いな」
芳子が興味深そうに辺りを眺める。この神社はN県でも有数の初詣スポットなので多くの参拝客が訪れる。
「見て見て振袖だ。これ見ると正月って感じだよね」
一方スミレは振袖を着た参拝客を見てはしゃいでいる。3人とも特に気合い入れておめかしするという訳でもなく、普通のコートを羽織るだという駅前のスーパーに行くような格好である。
女子としては振袖で着飾りたいという気持ちは少しばかりあるが、用意する手間と着替える手間のほうが遥かに勝っていた。
「さてと気合い入れてお参りしますか」
「初詣ってそういうもんだっけ?」
「神様だってテキトーにお参りする人より気合い入れてお参りする人のほうの願いを叶えたくなるでしょ。合格判定ギリギリだから真剣にお参りしないと」
「そういうのは先に勉強して人事を尽くすべきでしょ。そもそも神様なんていない」
「幽霊や魔法少女とかに加えて神様すら否定するか。じゃあ何できたの?」
「友達付き合い。感謝してよ」
「本当は神様信じてるくせに~スミのツンデレ~」
芳子はスミレを指でツンツンと叩きながら揶揄う。去年は特にお参りに行かなかったが、今年は受験生なので合格を祈願してお参りに来ていた。
3人は鳥居を抜けて参道を歩き御神門を通過し御神殿に向かう。途中に国語の授業で出たような文豪の石碑があり多くの人が足を運ぶが、特に興味がないとスルーし真っすぐ進む。
御神殿前の賽銭箱から十数メートルで足を止める。参拝客が多くて人で渋滞していた。これは予想してなく、こんなに集まるんだと3人で驚いていた。そして少しずつ進み賽銭箱の前までに近づき賽銭を投げて手を合わせる。
受験生であるが合格に対しては祈らない。願ったのは少しでも不幸な人が減りますようと願う。
魔法少女として人々を不幸にする悪党魔法少女を捕まえて、人々を苦しめる争いごとに介入して問題を解決するつもりだ。
魔法少女は強いが全知全能ではない。どんなに頑張っても零れ落ちる命や不幸になる人が出てくる。そういった人たちは神様に救ってもらってもバチは当らないはずである。
「よし、後はお守り買っておみくじを引いて帰ろ」
「だね、並んだせいで正直疲れた」
「新年早々こんなに疲れるとは思わなかった」
3人でため息を吐き愚痴を溢しながら来た道を戻ろうとすると参拝者の列から声をかけられる。
「小雪じゃねえか、奇遇だな。あけおめことよろ」
殺島は手をあげて声をかけてくる。服装は上下のだぼついたスウェットで自分達がスーパーに行くときの格好なら、殺島は自宅から徒歩1分ぐらいのコンビニに行くぐらいのラフな格好で、信心深い方ではないが流石に神様に失礼なのではと思わせるほどだ。
そして右足を若干引きずっている。脚でも怪我したのだろうか?
「あけましておめでとうございます。殺島君もお参り?」
「そんな感じだ、それにスミレと芳子か直接会うのは久しぶりだな。あけおめことよろ」
「あけおめことよろ」
「折角だから駄弁ろうぜ、ちょっと待っててくれねえか?お参りしてくるから」
そう言うと殺島は列の流れに従うように徐々に賽銭箱の方に移動する。このままおみくじを引いてさっさと帰るつもりだったが、殺島と出会いお喋りしようと提案された。
何も言わず断るわけにはいかないと殺島のお参りが終わるまで3人で待つ。数分後お参りを終えた殺島がこちらに近づいてくる。
「よう待たせた。しかしスゲエ人だな、N県でもこんなに人集まるんだな」
「それ私達も思った。あとおみくじとお守り買いたいからちょっと寄っていい?」
「
御神門から右に曲がった社務所に向かう。そこでお守りを買ったりおみくじを引け、本殿ほどではないが多くの人が足を運んでいる。
「とりあえず学業系のお守りと」
「ああ3人とも
殺島は販売所の前で陳列されているお守りを眺めている。芳子とスミレとどの合格祈願のお守りを買うか話しながら殺島の様子をチラリと見る。
家内安全のお守りを手に取り購入している。個人的には殺島と家族という単語の繋がりが弱く、縁結びや無病息災などのお守りを買うと思っていた。
お守りを買った後は4人でおみくじを引く。芳子は中吉で幸先良いと喜び、スミレは凶を引いて、別に神様なんて信じてないしと言いながら結構ショックだったようで、学業の項目で『一層の努力』と書かれていたのは気にしているようだ。
小雪が引いたくじは吉だった。おおよそ真ん中で可もなく不可もなくという感じだ。願い事:自分から努力すべし。待ち人:来なくとも慌てること無かれなど当たり障りが無いことが書いてあった。
ただ縁の項目で思わぬ別れが訪れるとここだけ明確に悪いことが起こると書いてあったのが気になるぐらいだった。
「殺島君はなんだった」
「大凶」
殺島は苦笑いを浮かべながらおみくじをピラピラと揺らし、芳子とスミレは思わずおみくじを覗き込み、小雪も思わず覗き込む。おみくじというのは引く人を傷つけないように凶が最悪だと勝手に思っていたが大凶が存在したのか。
2人は見ながら『うわ、メタメタに書かれてる』『大凶のほうが大吉より少ないらしいよ。逆にラッキーだって』と懸命に慰める。
願望:叶えられず、思わぬ厄災により瓦解する。
失せ物:見つからず、さらに増える。
商い:大半を失う。損切を心がけるべし
争事:勝てぬ。可能性があるとすれば死中に活を求めるべし
本当に何一つ良い事が書いていない。信心深いほうではないがこれを引いてしまったら気にしてしまうだろう。
そして縁の項目では思わぬ別れが訪れると同じ事が書いてあり。吉と大凶でも同じことが書いてある場合があるのだなと感心していた。
「所詮はおみくじだし、気にしない方がいいよ」
「
それからスミレと殺島はおみくじを境内の木に結び、その後は暫く雑談してから別れた。殺島と別れた後も話題はくじの大凶についてで、スミレも嫌な考えだけど下には下がいるから気がまぎれると苦笑しながら語っていた。
♢細波華乃
元日は華乃にとって特別な日ではない。別に特段朝早く起きるわけではなく昼過ぎに起きてむしろ惰眠を貪ったぐらいだ。
食事もおせちを食べたわけではなく昨日の残り物を食べた。正月らしいことをしたとすれば、知り合いの魔法少女達に年賀状メールを送ったぐらいだろう。年賀状を送るのがベストなのだろう個人でも住所を教えることは滅多になく、魔法の国の各部門に住所があるわけがなく送れない。
サークル活動で一緒に参加した魔法少女などの友達に近い関係には『あけましてあめでとう、今年もどっか行こうよ』というような文面を送り。
魔法の国の部署に努めている魔法少女には『明けましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりました。今年もよろしくお願い致します。』というようなビジネスメールのような堅苦しい文面の書きかたをネットで調べながら送った。
そんな事をしていたら時刻は18時を回っていた。正月に年賀状メールを送ったせいかリアルでも正月らしいことでもしたほうがいいのかなとよく分からない義務感にかられる。
餅でも買って食べるか?書初めでもするか?凧揚げでもするか?そんな柄でもない考えが次々と浮かびあがるが却下していく。餅は保留でいいが書初めも凧揚げも道具がない。
するとふと思いついたのでスマホを取り出し連絡する。これで連絡が取れなかったらやめようぐらいの軽い気持ちだった。
すると1分もしないうちに返信が返ってくる。
──行くけど、どこ?
これで行くことが決定した。あとは場所だが両者が住んでいる場所から行きやすい処はどこかとネットで調べ決めて行先を送るとすぐに返信してくる。
華乃は返信を確認すると部屋着から私服に着替えコートを羽織り家から出た。
「おっす」
「あけましておめでとう」
自宅から徒歩数分のコンビニで花奈と合流する。こっちは一応新年の挨拶をしたが相手は関係ないとばかりいつも通りの挨拶をする。格好もツーリングに行く時よりラフな格好だ。
「新年早々喧嘩した?」
頬に切り傷が有りしかも新しい。その言葉に花奈は自分の頬を摩る。
「新年じゃなくて大晦日だ、避けきれなかった」
「言っても聞かないけど程々にしておきなよ」
「ああ聞かねえ。それより行くぞ」
花奈はシートからヘルメットを取り出し投げる。それをキャッチして装着すると花奈の後ろに座りいつも通り腹に腕を回すと花奈が小さく苦悶の声をあげる。
「悪い、少しだけ
「腹も怪我したの?」
「左右の脇腹に良いの
花奈は恥ずかしそうに呟く。これも喧嘩での怪我だろう、こんな状態なら休んでればいいと言ったが、『友達付き合いは大切にするタイプなんだよ』と返す。そんな状態で突き合わせた申し訳なさとそんな状態でも来てくれた嬉しさが込み上がる。
それからバイクで15分ほど飛ばし目的地に着く。目的地の神社はN県でも有数の初詣スポットなので多くの参拝客が訪れる。しかし18時を過ぎると人が減るらしくぱっと見た限り人が疎らだ。
鳥居を抜けて参道を歩き御神門を通過し御神殿に向かい賽銭箱にお金を入れてお参りする。色々頼みたい事はるが色々頼むと叶えてくれない気がするので健康面に絞る。自分の健康とスノーホワイトの健康、いや安全を祈っておく。
華乃がお参りする隣で花奈は仁王立ちしていた。その姿に周りにいた参拝客も何しに来たのだと訝しんでいる空気を出している。それが少し恥ずかしいので即座にお参りを終了し離れる。
「来たのにお参りしないの?」
「あのな、アタシが仲間からなんて言われてるか知っているか?
花奈は当然の事を聞くなと云わんばかりのトーンで答える。あまりにキッパリと言うのでそうかもしれないと納得しかけてしまう。だが花奈は神どころか魔法少女でもない普通の人間である。しかしあだ名で神と言わているから神であると思うとは自分では絶対にできない。
それから社務所に向かいお守りコーナーに向かう。今日は乗っけてもらったのでお礼としここは新年らしくお守りを買う。買ったのは交通安全のお守り、それを渡そうとするが花奈は嫌そうな顔をしていた。
「話聞いてたか?アタシは神だから別の神の力が籠ったお守りなんて意味ねえんだよ。それに交通安全ってアタシの
「そのお守りは私からのプレゼントだし神じゃなくて私の念が籠ってる。それに運転中に隕石が落ちてきたら事故るでしょ」
「それだったら運が上がるやつをくれよ」
花奈はぶつくさと言いながらお守りを受け取る。神が神の物を受け取れないが、神が人からの供え物は受け取れる。そういった感じの屁理屈を並べたが受け取ってくれた。神うんぬんより友達の贈り物だから受け取ったのだろう。
「よし、おみくじ引こうぜ。悪かった方がファミレスで奢りな」
「神なのにおみくじは引くの?」
「ただの運試しだ。書いてあることは一切信じないし聞かないから問題ねえ」
それから2人でくじを引き、結果は花奈が小吉で華乃が吉だった。その後は花奈の奢りでファミレスに行き夕食をすます。新年早々食事代が浮いてラッキーだ。