暴走族と魔法少女   作:ヘッズ

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第37話 暴かれた生態

 

◇田中

 

 駅前にあるチェーン喫茶店、その一席で老年の女性はコーヒーを啜りながらメモ帳を確認する。これは偶然だろうかはたまた必然か、所用でN県N市に向かい用事を済ませた後は特に予定が無く数日間の余暇となる。

 普段は仕事やら人付き合いで何かしらの予定が埋まり、仮に休みを作るとなると数か月前から調整しなければならないのだが、まるでエアポケットのように用事がない。

 急に出来た休みは何をすべきか、定年退職した後の高齢者は何をすべきか分からないというニュースを見たがこんな感覚か。

 

「今日は楽しみだな!」

「エンジン新しいのにしたからな、今日がお披露目だぜ」

「誰か襲撃しにこねえかな。オレの右フックでKOしてやるのに」

 

 騒がしい声が聞こえるとともに学ランを着た高校生が入店してくる。服装や髪の剃りこみからして不良と分類される高校生だ、不良だからこんな授業が始まっている午前の時間に来るのか。

 チェーン喫茶店ならこういう客も入ってくるか、しかし案内された席は真後ろで騒がしくなりそうなので店を出よう、飲みかけのコーヒーを置いたまま伝票を手に取りレジに向かおうとするがふと足が止まる。

 2代目ラズリーヌが魔法少女の才能がある人間が居ると言っていたが確か暴走族でここN県N市に住んでいると言っていた。休みでやることもないし調べてみるか。

 話を聞いた限りでは人間離れした身体能力や技術を持っている。優れた肉体や技術、異質な精神を持つ者は魔法少女の才能を有する者が多い。

 その人間達を調査し才能があるようなら魔法少女としてスカウトする。優秀な魔法少女は可能な限りこちら側で保持しておきたい。

 2代目ラズリーヌの忘れ形見かと感傷に浸りそうになるが一瞬で気持ちを切り替える。これは目的を達成する為に必要な行為だ。

 注文したコーヒーを少しだけ急いで飲みレジに向かった。

 

◆◆◆

 

 2代目ラズリーヌから聞いた情報は才能のある4人はヤジっち、デルタっちと呼んでいた男性と三つ編みとポニーテールの女性であること、そして其々の技や戦い方だ。

 これだけの情報で探すのは少し骨が折りそうだと思いながら聞き込みを始め、とりあえず不良風な若者に声をかける。大概の者は老婆に話しかけられるという状況に警戒心を抱くが、孫が暴走族に興味があるから調べているなど出まかせの理由を言って信じさせる。

 魔法少女にならなくともそこら辺の若者を騙して情報を引き出すなど容易い。

 

 聞き込みで4人の名前と顔と通っている高校を把握する。まずは生島花奈と完間翔子を調査しようと魔法少女に変身して、高校から数百メートル離れた雑居ビルの屋上に上がり様子を窺う。

 調査はその姿を見れば充分だ、普通の魔法少女なら直接会って様子を見るなり会話をするが魔法によって一目見ればその人物について大よそが分かる。

 とりあえず学校に通っている前提で動いているが不良なので今日は学校に通っていない可能性がある。そうなると今日の夜に暴走族が暴走行為をするそうなので、集合場所で待ち伏せする。だがその懸念は杞憂で校舎裏で輪になって雑談している完間翔子を見つける。そして2代目ラズリーヌの言葉の意味を理解する。確かに普通じゃない。

 三つ編みで魔法少女に匹敵する美貌、その体つきと雰囲気は妖艶さが漂い傾国の美女という形容詞が良く似合う。

 しかし注目すべきはそこではない。当人の体は一見他の人間と変わらないが体の作りが普通の人とは異なっている。まるで細胞そのものが違うかのようだ。

 そうなれば常人には出来ない技術や身体能力を発揮できるのも納得できる。感覚的には魔法少女に近いが残念ながら魔法少女の才能は無い。

 暫くすると昼休みになり調査対象だった生島が完間の元に向かってくる。完間も人間離れしているが生島はそれ以上だ。そして魔法少女の才能が有る。2代目の評価はある意味正しかった。

 魔法少女の才能が有る者は身体能力が優れている。存在感が薄すぎて全く人に気付かれないなど、長所でも短所でも人とは違う特徴がある。それでも人類の範疇に居るが生島と完間は人類を逸脱している。

 2人の観察はある意味仕事の一環だが今は個人的な興味が出てくる。そうなると残りの出田と殺島も同じように人間離れしている可能性が高い。それを確認すべく生島と完間の観察を中断し、ビルから降りた後は人間に戻りタクシーを拾って出田と殺島がいる高校に向かう。

 目的地に着いた後は適当な観察場所を探し魔法少女になって2人を探す。生島達は学校に居たが殺島達は学校に居ない可能性も有ったが、幸運にも2人は学校に通い授業を受けていた。

 

 出田武琉須(でだぶるす)も完間と同等に一般人と体の作りが異なっていた。190cmに100キロ以上という巨体にそれが備われば、2代目ラズリーヌが話していた冗談半分な逸話も満更ウソではなさそうだ。そして完間と同じように魔法少女の才能は無い。

 そして殺島だが4人の中で最も一般人と体の作りが異なっており、生島と同様に魔法少女の才能はあった。

 そのまま出田と殺島を観察するが幾つか気づいた点がある。この4人が突然変異なのかそれとも土地柄なのかと、出田と殺島以外も魔法を使って観察したのだが、4人の周りに近い人ほど人間離れしていなくとも体の作りが4人に近い。

 余暇を利用した調査なので魔法で一目見て才能が有ればスカウトするつもりだったが、予想以上の異常さに興味が湧く。これはもう少し調べておきたい。

 

◆◆◆

 

「すみません、ハイエンプレスの生島花奈さんですよね。私をハイエンプレスに入れてくれませんか」

 

 生島は此方に振り返り睨むように見つめる。魔法の精度は近くで見て会話を交わせばより増す。詳細に調べるためには直接話す必要があると判断し、殺島達が居る高校から離れ近くのデパートで若者用の服を購入し生島を待ち伏せる。

 バイクに乗って学校を出た生島の後をつけ、コンビニ入り暫くして出たところを偶然を装い声をかける。魔法と今までの経験によって性格や気質を把握し最適な言葉を選ぶ。彼女は無邪気な子供だ、自分の嗜好と同じものを好む者には好意的になる傾向がある。

 白髪に青みがかかるという奇抜な髪色で、そんな人間がいきなり声をかけてくれば警戒心を抱くが、こう言えば簡単に警戒心を解く。

 すると生島はいきなり拳を振るってきた。普通の攻撃より大分速い。この体型でこの速度、やはり普通の人間とは体の作りが違う。魔法少女の動きではなく人間の動きの範疇で大げさに無様に避ける。

 

「お前暴走好きじゃねえだろ。最近多いんだよ。チームに入って箔つけたいとか警察(イヌ)の息がかかった奴とか、消えろ。うちはジジイだろうがババアだろうが暴走したい奴は大歓迎だがそれ以外は不要(いら)ねえ」

 

 生島はゴミを見るような目でしっしと手を払い立ち去る。確かに暴走には欠片程興味も好意もない。相手の心を開かせるために好きだから入団したいという体をとったが見破られた。

 計画の協力者のような卓越した観察力や明晰な頭脳による判断ではない。動物的と分類されるような勘だ。

 魔法少女相手ではないので気を緩めていたが見破られるとは思っていなかった。いつ以来だろうか。

 

「待ってください、確かに暴走には興味が無いです。でも友達が凄く夢中になっていて、何がそんなに楽しいか気になるんです。今度の暴走に参加させてもらいませんか?」

 

 立ち去る背中に向かって声をかける。すると踵を返し戻ってくるとこちらの顔を数秒間じっくりと見つめる。今演じている人物像に合うように少しだけ視線を逸らす。

 

「今日の22時に第七倉庫に来い。お前を超熱中(ドはまり)させてやる」

 

 生島は拳をこちらの心臓に当てると不敵な笑みを浮かべながらバイクに乗り立ち去っていく。

 あの笑みは挑戦に対する高揚感だ、生島にとって暴走の楽しさを理解できない者は敵であり倒し甲斐がある障害だ。

 今まで暴走に興味がなかった何人もの人間に魅力を伝え暴走するようにさせたのだろう。無論行くつもりはないし一切の興味はない。

 これで生島の調査は終わった。次は殺島の調査だ。

 

◆◆◆

 

「殺島さんはバイクに興味ありますか?」

勿論(もち)、今度の休み2けつ(ツーリング)するか?」

 

 午前にきたチェーン喫茶店は多くの客で賑わい、その少し騒がしい空間で殺島と席を向かい合わせてお茶をしていた。

 最初は生島の時のように話しかけるつもりだった。だが気が付けばナンパされ喫茶店に足を運んでいた。

 通常なら断っていた。しかし今は暇で殺島とは少しだけ多く言葉を交わし調査するのもいいかもしれないと誘いに乗った。

 出会ってから数分だがいくつかの事が分かった。

 精神が高校生離れし会話の節々に成熟度を感じる。濃密な体験をし酸いも甘いも味わった者が出せる雰囲気だ、これは魔法少女歴何十年のベテランの魔法少女出す雰囲気と似ている。

 一見純粋に会話を楽しんでいるように見えるが警戒心を全く解いていない。自分に害を及ぼさないか、何かしらで利用して益を得られないかと常に値踏みしている。

 

「最近暴走族が多いですよね」

「そうだな」

「何が楽しんですかね。他人に迷惑かけて唯走るだけなんて」

 

 人を知るためには何に喜怒哀楽を感じるかを知るのが重要である。そして今は相手の怒について調べる。わざわざ質問しなくても大よそは分かるが実際に見た方が分かる。

 生島ならば殺す気で襲い掛かるだろうが殺島ならどうする?相手の反応を見逃さないように意識を向ける。

 殺島の眉が一瞬動くこれは怒りというより諦めの感情だろうか、愛想笑いを浮かべながら軽い口調で答える。

 

「さあな、でも本人たちにしか分からない楽しさがあるんじゃね、それかやらなきゃいけない理由(わけ)とか」

 

 それから機を見計らって殺島と別れた。

 

◆◆◆

 

 魔法少女に変身し暴走族の集合場所であるは海岸沿いにある倉庫地帯、その片隅にある倉庫の屋根で殺島達が来るのを待つ。

 辺りは利用者がいないようで波の音と消防車のサイレンの音が聞こえる。複数のサイレンが聞こえるからして複数で火災が起こっているようだ。

 流石に集合時間1時間前は早すぎたか、時間を無駄にするのは勿体ないと魔法の端末を取り出しながら、直接話した際に得た情報とその後に聞きこみで得た情報を元に殺島と生島について思考する。

 

 殺島飛露鬼、通称暴走族王(ゾクキング)、ハイエンプレス四天王─生島花奈、殺島飛露鬼、完間翔子、出田武琉須の人外達の総称──1人でチームの副リーダー。

 その美貌や性格により女性に好意を抱かれやすく。また本人も女性と交流するのが好きなせいか、下は10代から上は40代の女性と一緒に行動するところを度々目撃されるそうだ。確かに女性に好意を抱かれるというのは納得する。

 そうなると嫉妬で男性から嫌われると思ったがそうではなく、男性からも同等に好かれている。それは性格もそうだがそれ以外の部分もある。いわば人に好かれる才能を供えている。その才能は魔法少女の才能が有る者が持っているたぐいの才能だ。

 その才能のせいか好意というより信奉に近い感情を抱いている者もいた。弟子たちに同じような感情を抱いている者もいるが、それは魔法などを使用して狙ってやっている。

 しかし殺島は無意識で同じことをしている。こういう人物をカリスマと呼ぶのだろう。

 

 生島花奈、通称暴走族女神(ゾクメガミ)、ハイエンプレス四天王の1人でチームのリーダー。ポニーテールの黒髪で世間的には美人に分類されるぐらいに整っているが、顔たちはどこか幼い。

 正直生島のほうがリーダーとは意外だった。2人と話したが殺島のほうが思慮深くリーダーに相応しいという印象を持った。現に話を訊いた男性達も少し間が抜けていると言っている。

 だがその欠点は愛嬌のように捉えられ、暴走族のメンバーで嫌っている者は居ないと評しこの人の為ならどんなこともできると語っていた。

 その男たちの雰囲気は殺島以上に信奉しているように見えた。殺島以上のカリスマ、その一点が生島をリーダーに相応しいと判断したのだろう。

 

 暫くすると続々と暴走族たちが集まってくる。驚いたのは明らかに十代じゃないメンバーが居ることだ。大半は10代がやると思っていたが大人でもやるのか。生島と殺島のカリスマは若者だけではなく中年すら夢中にさせている。

 

「よし、皆集まったな」

 

 生島が声をかけると皆が整列する。近くにいないので何とも言えないが場の雰囲気が変わった。皆が酔いしれている。子供の頃に遊園地に行く前の前日の高揚感を何倍にしたような表情をしている。

 

「今日はT県方面に行くぞ。あっちのほうは燃やしておいたから警察(イヌ)共は火事の対応に追われてこっちにこないと思うが注意しろよ」

 

 生島が何気なく話した言葉を聞いてふと引っかかる。そういえば消防車のサイレンが聞こえた。そして燃やしたといった。では何の為に?そこからある答えが浮かび上がる。

 暴走という違法行為をする集団にとって警察は大きな障害だ、その警察に捕まらないためには注意を逸らせばいい、それには別の場所で騒ぎ、例えば火災事故が起きれば消防や救急隊はもちろん警察も向かう。

 

 確かに効率的な方法だ、もし同じ立場であれば同じ方法をとる。それだけに異様さが浮き彫りになる。

 魔法少女は精神が強くなる。それは殺傷行為への耐性になり、魔法少女のなかには暗殺を生業にするものや快楽殺人者などがおり、魔法少女が殺したり殺されたりの争いが起きる原因の一因であると考えていた。

 しかし生島は人間だが己の目的のために放火という手段を選んだ。一般的な思慮があれば放火によってどれだけの人間が不幸になるか想像できる。何より倫理観が躊躇させる。

 彼女の表情を見て分かる。放火行為に対する良心の呵責も罪悪感も一切抱いていない。倫理観が圧倒的に欠如している。もはや異常者でありその異常さは魔法少女になる為の才能と言える。

 そして殺島などの四天王と呼ばれる者から末端のメンバーにかけてまで、当然のように放火という行為を受け入れている。この暴走族達は異常者集団だ。

 

 それから暴走族達は出発し後を追跡する。その道中でも異常性を存分に発揮していた。

 暴走行為を止めようとした警察との衝突では多数の警官を死傷させ、道路を我が物顔で走り道を譲らない通行人は容赦なく轢いていき、ブレーキーを踏むどころか逆にアクセルを踏んでいた。

 動画配信者が暴走を止めてやると徒党を組んで邪魔するが瞬く間にやられ存分に痛めつけられ、その様子を動画スタッフに撮らせていた。

 邪魔する者は誰だろうがなぎ倒し破壊していく。よく暴動などで集団心理によって善悪のタガが外れて凶悪になり被害が大きくなるという事例があるが、そんなものではない。あれは一人一人の倫理観のタガが完全に外れている。

 そして警察との衝突の際に、2代目ラズリーヌが話していた四天王と呼ばれる者の人間離れしているという技を見る。

 

 出田は相撲のぶちかましで人を木の葉のように吹き飛ばし、バイクと正面衝突して逆に弾き飛ばした。魔法少女には対抗できないが人間では化け物と評していい。もし相撲をやれば生涯無敗の大横綱になるのは確実だ。

 完間は武器であるチェーンを加工したもので鞭のような扱い警官を攻撃する。注目すべきは武器捌きではなく、攻撃する過程だ。警官はその姿に見惚れたように防御せずに切り刻まれていく。恐らく目線や動きで男の目をひいているがそれだけではない。

 一般人と体の作りが違うというのは身体能力の向上ではない、その体でフェロモンのような物質を分泌している。それがこの技を可能にしている。

 生島はバイクを騎馬のように操作し人車一体で戦う。バイクを自由自在に操り攻撃し、シートやハンドルの上に乗りながら蹴りを繰り出し無理な体勢から武器を振るう。確かに超人的な操作技術とバランス感覚だ。魔法少女なら容易いが人間では実現不可能な芸当である。

 殺島は拳銃を使い、1人目の肩に銃弾を撃ち込み、突き抜けた弾丸が2人目の太腿に命中させ、宙に舞ったアスファルトに弾丸を当て反射させ敵を倒す。人体や破片を利用した跳弾、これも魔法少女なら出来るが人間では到底できない芸当である。

 

 暴走行為が終わり遠征先の空き地で騒ぐ殺島達を見る。昼間に殺島達を観察しある仮説が思い浮かび、今回の暴走行為を見て確信する。

 ハイエンプレスのメンバーには2つの特徴がある。倫理観の圧倒的な欠如と身体能力の強さだ、身体能力の強さは出田や生島が最たるものだが、末端のメンバーも常人より身体能力が上で僅かばかり常人とは体の作りが異なっていた。

 圧倒的な倫理観の欠如は生島達と末端のメンバーでも大して変わらず躊躇なく邪魔者を殺傷していた。

 気になったのは身体能力のばらつきだ、超人的な技を持つ者は四天王と呼ばれる者で他は使えない。そして4人はハイエンプレス創設メンバー、正確には殺島と生島が創設したハインプレスに初めて加入したメンバーでかなり親しいらしい。

 

 生島と殺島との関りの深さによって身体の力の増加具合は違うのではないか?

 

 その仮説を検証すべく、出発前の会話などで人間関係を把握し暴れていた暴走族の戦闘力を分類し当てはめる。すると関わり合いが深い者ほど戦闘能力が高かった。

 

 倫理観の欠如と身体能力の高さ、彼らは最早人ではなく暴走族と言う種族だ、そして殺島と生島は関わる人を暴走族と言う種族に変化させていく。これは魔法と言っても差支えが無いだろう。そして2人は病原菌のように暴走族を増やしていく。

 2人にはカリスマと呼べる魅力があり、皆が彼らに好意を抱き信奉すらしている。

 だがカリスマによって関わった全ての人間が殺島や生島に惹かれて種族暴走族になるわけではない。反抗的で暴力的で暴走族に僅かでも憧れる、所謂ヤンキー気質と呼ばれる精神性である程度似たような気質の持ち主が種族暴走族になると分かった。

 改めて考えると暴走族の数が異常に増えている。警察や著名人などの不祥事や鬱屈した世の中に対する不安やメディアの影響が有るにせよ多い。その主たる原因は殺島と生島の存在だ。

 殺島と生島はそのカリスマで魅了し一般人を暴走に参加させ種族暴走族にしていく。そして種族暴走族にさせられた者が別の一般人に接することで、一般人が感化されいずれ種族暴走族に変化する。まるで感染拡大したウイルスのように。

 他の魔法少女ならハナで嗤うだろうが鍛え抜かれた直感と魔法によって事実であると認識していた。

 超人的な技もカリスマも異常な精神も生島と殺島の本質ではない。彼らの真の才能は他人を種族暴走族にする感染力、これは魔法の領域に入っている。

 なんという逸材だ、この才能が他の陣営に渡すわけにいかない、どのように勧誘しようかと算段を考え始める。

 

「生島と殺島を魔法少女にするのはもう少し待ってもらっていいですか」

 

 突如背後から声をかけられる。鍛え抜かれた5感と直感は超高性能のレーダーだ、姿を透明にしようがどんな魔法を使われても近づけば分かる。だが声をかけられるまで全く接近に気付かなった。

 その魔法少女は茶髪でそばかすの魔法少女だった。容姿も一般レベルでは美人だが魔法少女の中では中の中、強さも強くもなければ弱くもない、意識しなければすぐに存在を忘れそうである。

 

「何故ですか?」

「今魔法少女にされてしまうとオモシロくなくなる」

 

 部下にしたいとか此方の陣営に入ってもらいたくないというなら分かる。だがオモシロくないというのは分からない。魔法を使って本質を見極めようとするが今ひとつ真意が見通せない。

 

「貴女はいつから彼らに目をつけていたのですか?」

「ずっとです。そうずっと」

「そうですか、ですがスカウトは早いもの勝ちが基本です。邪魔するなら」

 

 最後まで言わず言葉をきり戦闘態勢を取る。戦えば勝てるはずだ、直感と魔法を使っても相手を完全に推し量れず負けるかもしれないという可能性が過る。

 妙な感覚である。一方茶髪の魔法少女はこちらの雰囲気が変わっても表情をかえず迎撃態勢もとらない。

 

「邪魔するつもりはないです。むしろスカウトしてもらいたいぐらいですが時期が早い。待ってもらえるなら協力します。人造魔法少女計画についてとか」

 

 一瞬動揺が走るが何とか平静を装う。人造魔法少女計画は己の目的のために極秘裏に進めていた計画だ、これを知っているのは協力者など極々一部である。

 これは重大な問題だ、どこから漏れたかを調べるのは当然として目の前の魔法少女をどう扱うか、こちらの協力者として招き入れるかそれとも始末するか。

 だが相手も始末するという選択は当然考慮しているはず、対抗できる力があるか何か危害を加えたら暴露されるような手筈になっているか。様々な選択肢が浮かび上がり即座に検討していく。

 

「協力すると言いますが具体的には何をしてくれますか?」

「金銭援助とか物資や人材の調達とか、色々とコネがありますので」

「わかりました。今日はあの2名をスカウトせずにこのまま帰ります」

「ありがとうございます」

 

 茶髪の魔法少女の連絡先を教えてもらいその場を立ち去る。メリットとデメリットを吟味した結果茶髪の魔法少女の要望を受け入れる。

 生島と殺島は逸材だが今すぐに必要というわけではない。それに言葉を信じれば後にスカウトできる。

 それより要望を受け入れないことで生じる不利益のほうが問題である。相手は取り敢えず計画を暴露や邪魔するつもりはないと判断した。

 

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