暴走族と魔法少女   作:ヘッズ

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第39話 ボウソウ・ジャンキーズ

◆生島花奈

 

 花奈はレンチを手にバイクを整備する。より速くより危険な走りをするからこそバイクのメンテナンスはしっかりする。バイクのドラテクは日本のどの走り屋より上だという自負があり、どんな危険な運転をしても事故らない自信がある。

 しかしバイクが完全に操作できるという条件つきだ、ブレーキの利きや曲がりが甘いなど意志に反した挙動を見せれば、それを踏まえての運転でリカバーできるが限度がある。

 最初はバイク屋に任せていたがバイクは自分の息子のようなもので、息子の世話を他人に任せるのはどうかと思ったので、バイク屋にやりかたを教わりながら自分でやるようになった。

 花奈は調整しては軽く走って調整するなどして整備していく。本来ならばバイクの整備に集中しなければならないのだが、今ひとつ集中できていない。原因は分かっている。昨日の出来事だ。

 

 昨日の昼、つばめの墓参りに行ってそこで華乃と会って喧嘩した。華乃はつばめを初めての友達と言っていた。その友達の悪口を言った。

 華乃にとって大切な存在であると言うのは話を聞くだけで分かった。傷つける可能性があると内心で分かっていながらも言ってしまった。

 言った時は衝動が赴くままに言ったが、時間が経過するにつれて何で言ってしまったか分かった。あれは嫉妬だ。

 華乃は暴走族関係以外で唯一のダチで覇威燕無礼棲(ハイエンプレス)の仲間達と同じぐらい大切な存在だ。一緒に居て楽しいし居心地が良い。そして一番のダチであるという自負があった。

 華乃は知り合いは多いがダチは少ないと思っている。知り合いとの浅い付き合いの話は聞くが、ダチとどこで遊んだとかのエピソードは全然聞かない。それどころか花奈しか居ないのではと思わせる程だ。

 そして昨日話を聞いていて華乃の一番は自分でなくつばめだと分かってしまった。それはムカつくが仮に一番が一緒に居たショートカットの女ならああはならなかった。一番がつばめだったからこそ心が揺さぶられたのだ。

 つばめは好きだしそれは認める。それでも暴走を捨てたという一点が引っかかり続ける。花奈にとって暴走が最も大切なもので、つばめにとって夫の昇一やお腹の赤ちゃんだった。

 つばめにとって暴走が一番好きで大切なものだと思っていた。だがそれは昇一と結婚するまでだ。

 昇一が好きになって大切なものが昇一やお腹の赤ちゃんになったのか、高校卒業が迫り世間のしがらみに屈し、暴走が大切なものじゃなくなり価値が下がった繰り上がりで昇一が好きになったのか分からない。

 つばめとは同類だと思っていたが結局は似ていたが別だったのだ。その女がダチの華乃にとって一番だったのが許せなかったのだ。

 

幼稚園児(ガキ)か」

 

 思わず苦笑する。華乃の一番がつばめならしょうがない、一緒に居て楽しいし心地よいのは変わらないから問題ない。冷静になった今ならそう思えるのに、あの時は何で喚き散らしてしまったのだろう。

 

「アタシもああなっちまうのか」

 

 変化は悪い事ではない、ヤジと出会い覇威燕無礼棲での日々で考え方や好き嫌いが変わった。今では何人ものダチが居るがそれは自分が変わったからだ。だが根っこになる部分は変わってはいけないと思っている。その根っこは暴走が好きであるという気持ちだ。

 現時点では根っこが変わることは地球が滅亡してもあり得ないと断言できる。しかし数年後、数十年後は断言できない。つばめですら大切なものが変わったのだ。

 

「そんなわけねえ、アタシの根っこは暴走だ。それは永久不滅(ズット)だ。永久不滅(ズット)だ」

 

 花奈は言い聞かせるように何度も呟く。ガキの時に死んだらどうなってしまうかと考えて怖くなり泣き叫びオフクロに抱き着いた記憶が浮かび上がる。暴走が好きじゃなくなるというのはそれに近い恐怖だった。

 死は絶対だが、暴走への興味を失うのは絶対ではないと思っている。だが仲間達はそうとは限らない。仲間達が次々と離れていき、ガンマとデルタが去っていき、最後にヤジが去り独りぼっちになる。そんなイメージが鮮明に浮かび上がる。

 仲間達には無理やり暴走してもらいたくはなく、つまらなくなってしまったら自由に去って良いと思っていた。今はそうではない。皆にはつばめのようになって欲しくない。自分と同じであってほしい。

 

「なに意気消沈(しけてん)だ!」

 

 花奈は己の頬を両手で力一杯叩く、力加減を誤ったせいで口の中を切り鉄っぽい血独特の味がする。

 信じろ自分の根っこを、仲間達を、暴走の魅力を、暴走にハマってしまえば大切なものが暴走になり飽きることや変わることは無い。例え何が有っても暴走はやめない。

 何だか思考がどんどん湿っぽい方向に行ってしまった。楽しい事を考えようと思考を切り替える。

 あと数時間後の夜には10万人が集まりここら辺一帯を暴走する。考えるのは皆が楽しかったと思うように盛り上げる事だ。

 暴走するのは楽しいから、そして嫌な事を忘れ癒されたいから。今日は自分や皆が変わってしまって暴走がずっとじゃなくなるという不安を忘れる、そんな気持ちが多くなりそうだ。

 

 花奈はスマホを取り出し華乃にメッセージを打ち込む。とりあえず墓場での件について謝る。だがそれを餌にして暴走に参加させる。

 華乃はバイクに乗るようになったが覇威燕無礼棲に入るのを拒み続けた。無理強いはしたくないがやはり一緒に暴走したい。

 今日は最大規模の暴走だ。それは祭りのようなもので5万人のワクワクが出発地点に漂っている。それを感じれば華乃も暴走したくなるだろう。「謝りたいから指定した場所に来てくれ、頼む」と少し下手に出たメッセージを送る。

 来てくれればいいが、来なくても仕方がない。花奈は気持ちを切り替えてバイクの整備を再開し終わらせると出発する。

 目的地はN市隣の市にあるA川の河川敷、本当ならN市からスタートしたかったが、10万人が集まれるスペースが無いので仕方がなく2つに分けて1つはA川の河川敷に、もう1つはN市隣の市にあるS川の河川敷である。

 バイクで数十分ほど走らせて目的地のA川の河川敷に到達する。かなりのスペースがある場所で街灯も少ないが、バイクと特攻服を着た暴走族で埋まっているのがハッキリと見える。それぞれが雑談しエンジンを吹かし今や遅しと待っている。

 5万台のエンジン音と5万人の声が集まれば相当な音になる。暴走される前に通報され警察が来る可能性は無い。通報されたらどうなるかという事は入念に分からせ周知している。今ではそこらへんの小学生でも通報しない。それに入念に放火させているので、警察達も対応に追われこちらに人員を避けない。

 

「よっ、ガンマ、首尾はどうよ?」

「問題ない。参加するチームは続々と集結(あつま)ってる。あと遅刻や急遽欠席(ドタキャン)もない」

「そうか」

 

 花奈は嬉しそうにガンマの肩を叩く。ガンマには各チームの点呼や人員整理や各チーム同士の対処を任せていた。いくら覇威燕無礼棲の傘下同士でも何かあれば揉める。暴走族だから気に入らなければ揉めるのは分かるし、いちいち止めるつもりはない。

 だが大事になったり暴走に支障が有りそうな場合はガンマに止めてもらう。極道技巧を使えるガンマに勝てる奴はほぼ居ないので簡単に止められる。

 

半端()ないね」

 

 ガンマは額にかかった髪をかき分けながら目の前にいる多数の暴走族とバイクを見て感慨深げに呟く。

 何気ない動作だが夜の河川敷という普通の場所でも映える。女だが本当に綺麗だと思うしそういう趣味が有れば是非とも付き合いたいと思う。視線に気づいたのかガンマは一瞬訝しむが気にせず話を続ける。

 

「一応はハイエンプレスの初暴走は暴走族女神(ゾクメガミ)暴走族王(ゾクキング)とデルタと私の4人だよね」

「そうだな」

「そう思うと大きくなったよね。あれから少しずつメンバー増やして、警察(イヌ)に負けて、リベンジして、抗争に勝って全国統一」

「もっとだよ。これからは外国人が日本に来てハイエンプレスに入団して、世界巡業(ワールドツアー)するんだよ。もしくは米国(アメリカ)統一して、欧州(ヨーロッパ)を統一して世界統一して各地を暴走する」

 

 昨日ふと思いついた夢を語るとガンマがキョトンと目を丸くした後大笑いした。その笑い声は普段はクールなガンマのものとは思えず、近くのメンバーもどうしたと視線を向け、花奈も笑われた事を怒るより驚きが勝っていた。

 

「いいんじゃない、楽しそう」

「だろ?」

「だったらパスポート作らないと、もしかしたら私達監視(マーク)されて作れないかも」

真実(マジ)かよ」

「それだったら政治家(ブタ)上役(エライ)奴と寝て何とかしてあげる」

「頼むぜ」

 

 ガンマの胸を拳で叩くと任せてと耳元でささやく。その声を聞いて全身がゾワっとする。なんちゅうエロい声だ、男なら即落ちで女でも大半が落ちそうだ。

 

「暴走はお前にとって何番目だ?」

 

 花奈はシリアスなトーンで尋ねる。この質問をするのは初めてだった。今までは絶対に一番だと思って訊かなかった。だが数時間前に考えてしまった事が不安を駆り立て思わず尋ねてしまった。

 

「一番、こんな楽しい事なんてない、だぶんこれからも。これをしないなんて人生の10割は損してる」

 

 ガンマは即答で揶揄うように答える。この言葉は初めてガンマに会って覇威燕無礼棲に誘った時に言った言葉だ、覚えていてくれたのか。

 

「ちょっと他の奴らの様子を見てくる」

 

 花奈は逃げるようにその場から離れる。ガンマの答えは堪らなく嬉しくニヤケてしまう。それを見られるのはリーダーの威厳が無くなる。何よりダチに今の表情を見られるのは恥ずかしい。

 言った手前何もしないのはマズいので傘下のチームのメンバー達に声をかける。全員のテンションは高く待ちきれないといった表情を見せている。良い傾向だ、これなら最高の暴走ができそうだ。

 

「今日は流石に来たな。来なかったら職場に行って連行(つれだ)すところだったぞ」

「おいおい、連続残業(デスマーチ)して時間作ったのにヒデエな」

 

 昇一は苦笑いを浮かべながら拳を突き合わせ挨拶する。職場の役所は年度末とかで相当忙しいらしく、何度も今日は出られないかもと愚痴を溢していたが何とかなったようだ。

 だが相当無理をしたようで目はギラついているが目元の隈など疲労の色が見える。

 

「他の奴らも似たようなもんだ。年度末は大抵の職場は忙しい。だが全員参加だ」

 

 昇一は胸を張りながら周りのメンバーを自慢するように手を広げる。昇一は覇威燕無礼棲の大人組と呼ばれる社会人たちのメンバーの中心人物である。 

 大人組達は仕事をしているせいもあって全ての暴走に参加できないが、今日は最大のビッグイベントだけあって駆けつけたようだ。

 

「今日休業(バックレ)たら納期に間に合わないけど来ました。たぶん解雇(クビ)です」

「上司が休みくれなかったのでぶん殴って退職(やめ)てきました!無職(プー)です」

 

 メンバー達が各々声を挙げる。昇一はまだ大人としてはマシなようだ。この日の為に安定した未来を台無しにした。仕事をほっぽり出して自分から辞める。社会的に見ればどうしようもないバカでクズだ。だがそのクズさとバカさは尊敬するし愛おしい。

 

「どいつもこいつもバカばっかだな!だが今日は仕事を辞めても来て良かったと思うような暴走にしてやる!存分に楽しめ!」

 

 花奈の声にメンバーから暴走族女神(ゾクメガミ)コールが起きる。大人だからこそ仕事を頑張り時間を作りあるいは辞めてまで来た。高校生や中学生のメンバーとは覚悟が違う。だからこそこの暴走を楽しもうとする熱量は上だ。

 

「どいつもこいつもバカばっかだな。でもそのバカさ加減が羨ましいし憧れる」

「まあお前なりに頑張ったからいいだろ」

 

 少し前ならあれぐらい気合い入れろと言うだろう。だが今はそれぞれに合った頑張りがあり、暴走に対する比重が違うのも分かっている。

 この暴走の為に仕事を辞めないからクソだとは思わない。昇一も仕事を頑張って時間を作ったので充分だ。一方昇一は意外な言葉をかけられたことに目を丸くしていた

 

「しかし暴走族女神と暴走族王にチームに誘われて暴走し始めてよかった。新しい友人も出来たし今が一番楽しくて充実している。学生時代より今が青春してる。感謝(サンキュ)な」

「なあ、昇一にとって暴走は何番目だ?」

 

 昇一にガンマと同じ質問をする。今の言葉として暴走を楽しんでいるのは分かる。だが何番目だ?もし1番と言えばつばめより大切な物になり、つばめを超えたことになる。

 

「……2番だな。暴走でつばめの死を乗り越えられたが、それでもつばめとの思い出は何よりも大切なものだ」

 

 数秒の沈黙の後にはっきりと答える。つばめとの思い出が暴走より大切か、悔しさで奥歯を噛みしめるがすぐに力を抜く。暴走が一番でなくても楽しんでくれるならそれでいい。

 

「そういえばヤジはどうなってるんだ」

 

 花奈はスマホを取り出し昇一から離れるように距離を取る。そろそろ出発の時間だ、10万人のうち5万人はこちらに集まっているが、もう5万人はs川の河川敷に集まりヤジが率いる。

 そして警察の注意を引く放火班がまだ戻ってきていない。裏方仕事をしているメンバーを抜きにして楽しむわけにはいかない。ヤジに先に暴走してくれと伝えようとするが、その前にスマホを確認する。

 華乃に送ったメッセージに既読がついているが返事はない。来ることに期待したがそう簡単にはいかないか、落胆で出そうなため息を押し込めながらヤジに電話する。

 

 

「よっ、そっちはどうよ」

 

 

◆殺島飛露鬼

 

 殺島は自宅で身支度を整える。今日は全国統一記念として総員10万人が集まっての暴走だ。

 特攻服はこの日の為にクリーニングに出しておいた。しかし白の特攻服には縫われた跡や所々に染みがついてる。これは抗争の際に刀やナイフで切り裂かれたり返り血を浴びた箇所だ。

 特に返り血は幾度も浴びたせいで完全に落ちない。これは勲章のようなものなので余程汚くならない限りは着続けるだろう。

 それから装備するリボルバーを点検する。邪魔されない事前準備は入念にするが備えは必要だ。それでも使う機会は限りなく少ないだろう。

 今の覇威燕無礼棲は敵無しだ、単純な数と武力によって警察を叩きつぶせる。それでも全力で潰しに来たがこちらも相当の被害が出るがそれはない。警察は全力を出せない。

 まずは人員の問題で覇威燕無礼棲は産科を含め総勢10万人、警察は去年の人数で27万人、それを総動員すれば数で負けるが絶対にできない。それをすれば他の悪事に対応できなくなる。

 最初は警察の威信にかけてと勢力を割いたがその代わりに強盗などの被害が増大する。

 ヤクザや半グレが機会を狙ったのだ。それを受けて警察は暴走族検挙に人員を避けなくなった。それは殺島が計画したものだった。

 宝島組系列や半グレに暴走日時を教えて強盗などの悪事をしてもらう。こちらは警察が本腰を入れなくなる。ヤクザと半グレは悪事をやりやすくなる。WIN―WINである。

 最後に袋に入れたヘルズクーポンを口に入れる。前の世界でも全国統一してから暫くして忍者達に襲われ総員10万人のうち5万人が文字通り半殺しされた。

 この世界に忍者は恐らく居ないが推定魔法少女は確実に居る。今のところ襲撃に来ないがいつ逆鱗に触れるか分からない。忍者レベルでも遭遇してからヘルズクーポンを口に入れてキメるまでの時間で殺される。忍者以上の魔法少女であればなおさらだ。

 取り出して摂取するより、口にある袋を噛み切り摂取した方がほんの僅かだが時間を短縮できる。出来る限りクスリをきめるまでの時間は縮めたい。最もヘルズクーポンでどうにか出来る相手だとは思えないが。

 

 殺島は家を出て出発地点であるS川の河川敷に向かう。そこには既に覇威燕無礼棲のメンバーや他所からやってきた傘下のメンバーが居た。

 それらのメンバーと言葉を交わしながら後からやってくる傘下のメンバー達の点呼や事前の説明などをして準備に追われていた。

 暫くすると余裕が出来たので集団から離れ河川敷の上のほうに移動し外から見下ろす。皆が今から始まる暴走にワクワクしている。この景色はいつ見ても良い、疲れが吹き飛ぶ。

 

「本番前にへばるなよ」

 

 すると後ろからデルタが缶コーヒーを片手に声をかけてくる。一緒に人員整理などをしていたが。

 

疲労困憊(ヘバ)っているように見えたか」

「少しな」

「まあ、暴走が始まれば吹き飛ぶ」

「だな、麻薬(クスリ)みたいなもんだ」

 

 デルタは同意するように豪快に笑う。麻薬とは言い得て妙だ、暴走は暴走族にとって最高に気持ちよくなり現実の辛さを忘れさせてくれる。

 

暴走族王(ゾクキング)には本当(マジ)感謝してる。あの時誘ってくれなかったら、学校退学(やめ)て引き籠ってたか、どっかで傷害おこして刑務所(ムショ)暮らしだった」

 

 デルタは真剣なトーンで言う。花奈と出会いチームの仲間集めをしている時にデルタを見かけたが一目見て分かった。

 あれは困難に打ちひしがれた者の目だった。あの目をしている者はチームに入る可能性がある。何より救ってやりたかった。

 

「それはオレもだ。デルタがいなきゃ覇威燕無礼棲の全国統一は非現実(ありえ)なかった」

 

 デルタは素手では間違いなく覇威燕無礼棲最強の男だ。相撲で鍛えた心技体は極道技巧(ゴクドウスキル)までに昇華した。この世界でも極道技巧を体得できる人間が現れるとは思わなかった。

 そして戦力面でもそうだがメンタル面でも貢献してくれた。暴走について全く知らなかった者がどんどんハマっていく姿は暴走によって多くの仲間を集めたいと思っていた花奈に自信を与えてくれた。何よりその姿を見ていてこっちも嬉しかった。

 

「デルタは大人になっても暴走するのか?」

無論(あたりまえ)だろ。こんなオモシレえ事やめられるわけねえ。暴走族王(ゾクキング)はしねえの?」

「するにきまってる」

 

 思わず声が弾んでしまう。即答でやると言ってくれた。高校卒業は節目の1つであり、ふと自分を鑑みて暴走族を辞める人間は出てくるだろう。

 仮に聖華天が忍者に潰されなかったとしても10万人が暴走族であり続けたかと訊かれれば断定はできない。何人かは暴走族を卒業しその中に殺島も入っていたかもしれない。

 花奈はやりたくない者の首根っこ掴んで迄暴走族をやらせるつもりはないと言っている。それは本心であるが、理想は皆が大人になっても暴走族であり続ける未来だ。デルタの答えを聞けば花奈は嬉しいだろうし暴走の力をさらに信じるだろう。

 

「おっ、そろそろ時間だな」

出発(でっぱつ)前の挨拶、ビッと決めろよ」

「任せろと言いたいところだが放火班がまだ戻ってねえんだ。まだ出発(でっぱつ)できねえ」

 

 出発時間が迫っているがまだ戻っていない。何かのトラブルもしくは警察に追われているか。

 損な役回りをしてもらっているので警察に追われているなら、捲いてから合流して一緒に出発したいが、あまりにも遅い場合だと他のメンバーには先に出発してもらい、放火班を救出してから合流するか、するとスマホが鳴る。花奈からの電話だ。

 

「よっ、そっちはどうよ?」

「放火班がまだ戻ってこねえ。こっちはちょっと出発を遅らせる」

「そっちもか、こっちも放火班が帰ってこないから待って、そっちは先に出発してろって言おうと思ってたんだ」

 

 どちらのグループでも放火班が帰ってこない。放火は見つかると即刑務所の重罪なので絶対にバレないように入念に準備し、実行犯にもマニュアルを渡して万全を期している。現に今まで逮捕されていない。

 

「何か嫌な予感がするな」

「同感だ」

「ん?何か騒がしいな、警察(イヌ)か?いや違う?なんだあれは!?」

 

 花奈は電話を切る。あちらで何か起こっているようだ、しかも声からして唯事ではない。同時出発の予定だが少し遅らせて暫くしたら花奈に連絡を入れて報告を受けるか。

 一抹の不安を覚えながらこの後の行動について考えると同時に。誰かを威嚇する声が聞こえてくる。即座に声がする方向に走った。

 

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