暴走族と魔法少女   作:ヘッズ

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第44話 READY GO

◆殺島飛露鬼

 

「まだ、こねえのかよ」

 

 殺島は起きてからすぐにスマホを確認し苛立たしさをぶつける様に愚痴を溢す。花奈が魔法少女になってから1週間、今頃魔法少女としてのトレーニングを積んでいるのだろう。

 一方こちらはFSから準備が出来次第連絡するといったので、連絡がくるまで基本暇だ。それでもやれる事はやっておこうと魔法少女探索を実施するが当然のように見つからない。花奈が魔法少女排除のために頑張っているのに、こちらは何もできずにいる。その現状に少しずつ着実にイライラが募っていた。

 するとスマホにメッセージが届く、どうせ友人や知り合いからだろうと半ば諦めながら手に取ると画面にはFSと文字があった。

 やっと目途がついたか、殺島は無意識に笑みを浮かべながらメッセージを開く、そして内容を読み終えると笑みは消えた。

 

「いらっしゃいませ、お一人ですか?」

「いや、連れが居る」

 

 殺島は店内に入り辺りを見渡す。するとジャージ姿のFSが合図のように手を振るのを見つけ、そこの座席に座った。

 

「ご注文が決まりましたら手元のボタンで……」

「コーヒー、単品で」

「かしこまりました」

 

 店員が案内する前に注文する。店員が一礼しキッチンに向かう姿を見送ったのちに目の前のFSに視線を向ける。少し前は花奈の夢を手助けしてくれる救世主に見えたが、今は最も警戒しなくてはならない人物だ。

 

「あれはまだありますか?」

「ああ」

 

 殺島は内ポケットから取り出し机に置く。FSが取ろうと手を伸ばすがその前に再び手に取る。

 

「なんでヘルズクーポンを所持(もって)いると知っている?そもそも何で存在を知っている?てめえ何者だ?」

 

 殺島はドスの利いた声で尋ねる。その目つきは極道でも息をのむように鋭かった。

 メッセージには「魔法少女打倒の為にヘルズクーポンが必要ですので、持っていたら渡してください」と日時と場所が指定されていた。

 この文章を読み大いに動揺した。ヘルズクーポンは前の世界の物で、この世界の殺島飛露鬼の意識に移ったと思ったら何故か3枚だけ持っていたものだ。そして花奈にすら存在を明かしたことがない。この世界で知る者は誰も居ないはずだった。

 

「これは最終兵器(きりふだ)だ。オレはこれの使い方次第で魔法少女を倒す可能性がある方法を知っている。それを素性が分からない相手に渡す気はないし、信用できない相手と手を組むつもりもねえ。アンタも慈善事業(ボランティア)でオレたちを手助けしてねえのは分かってる。お互い利用し合う関係でも最低限の信頼関係は必要だ」

 

 FSは顎に手をやり沈黙思考する。ヘルズクーポン2枚服用が魔法少女を倒す方法だがほぼ実現不可能な策である。それを出来る方法と見せかけて交渉の材料にする。

 これで相手の機嫌を損ねれば魔法少女を倒す方法どころか、次善策の魔法少女になることすらできなくなる。それでも相手の素性を知る事必要があると感じていた。

 

「わかりました。貴方の言う事にも一理あります」

 

 FSは目を瞑り浅く息を吐くと観念したかのように喋り始める。

 

「まず予想しているかもしれませんが、私は貴方と同じ世界で生きていた人間です」

 

 世間話のようにあっさり語る。言葉通り予想はしていたが衝撃は大きかった。まさか自分以外にも前の記憶を持った生まれ変わりのような存在が居るとは、だが1人いるなら2人居てもおかしくはない。

 

「長沢組若頭、聖華天(せいかてん)総長、暴走族神(ゾクガミ)こと殺島飛露鬼(やじまひろき)

「よく認知(しって)るな。信者(ファン)か?」

「貴方は自分が思っている以上に有名なのですよ。そして前の世界では極道でした」

「だろうな。この世界に来たのはオレが死んだ前か後か?オレは帝都高速(テトコー)の事件の時に死んだ」

「あとです」

「ちなみに忍者は死んだか?極道(ボス)は、極道は勝ったのか?」

「過ぎた話です」

 

 FSは平静にそして拒絶の意志を込めて答える。言いたくないのだろう、ならば聞く必要はない、ボスと極道の行く末は気になるが言う通り過ぎた話だ。

 そして極道だった。確かに極道であればヘルズクーポンが配られ使用していれば知っている可能性はある。

 

「次に何故オレが所持(もって)いると知っている?あっちのものがこっちにあるだなんて非現実(ありえねえ)だろ?」

「諸事情で貴方と忍者風の魔法少女の戦いを見ていました。その時の動きを見てどう考えても人間離れしていますし、目元の血管の浮き出具合がヘルズクーポンを使用した際の特徴に似ているのでもしかしたらと。そしてもし複数持っていたら計画の手助けになるので、持っていて良かったです」

 

 胸をなでおろすように息を吐く。忍者風の魔法少女との戦いを見ていた。つまり覇威燕無礼棲(ハイエンプレス)が為す術もなくやられ暴走族の魂と呼べるバイクが破壊されるのを見ていたと。

 一瞬怒りで血液が逆流する感覚に陥るが強引に平静を保つ。相手は暴走族でもないし助ける義理もない。責めるのはお門違いだ。

 

「よし、最低限の信頼関係は築けた」

 

 殺島は手に取っていたヘルズクーポンを再びテーブルに置き、FSはゆっくりと手に取り懐に仕舞う。

 

「ありがとうございます」

「そしてヘルズクーポンだが、渡したら返ってこないのか?」

「返すつもりですが?」

「いや、アンタの計画が失敗した際にオレの方法で魔法少女に挑むが、ヘルズクーポンが無ければ始まらねえから」

「それはどのような方法で?」

 

 FSがじっと見つめながら問いかける。これは値踏み、こちらの秘密を喋ったのでそちらも喋れということだろう。

 

「ヘルズクーポンは基本1枚服用(ぎめ)が基本だが、2枚服用(ぎめ)することでさらに力が増す」

 

 じっくりと間を作り重々しい雰囲気で喋る。これは別に秘密にするようなことでもないが重大な秘密を受け明けたかのように語り、貸しを作ったように見せかける。

 

「それでヘルズクーポンは何に使うんだ?」

「まず私が考える魔法少女を倒す方法はヘルズクーポンと一緒です。マジカルドーピングにより戦闘力を強化する。ですがマジカルドーピングは効果時間がとても短く不安が残ります。そしてマジカルドーピングの効果や時間は投与前の肉体の力によって変わります」

「つまりヘルズクーポンで肉体の性能(スペック)を上げておいて、マジカルドーピングをすると」

「理解が早くて助かります。何回か実験と調整を繰り返して魔法少女を打倒できるぐらいの効果と時間を目指します」

「いや待て、それはヘルズクーポンを使用するってことだろう?返ってこねえじゃねえか。そもそも何回かってクーポンは1枚しかねえ」

「それは心配なく」

 

 スマホを取り出し打ち込むとキャップを被った何者かがこちらに近づきFSの横に座る。

 

「こちらはニコ、魔法少女です」

「よろしく」

 

 ニコと呼ばれた魔法少女はキャップを外して頭を下げる。ベリーショートで一見少年のように見えるが、顔立ちは女性で美麗というより可愛らしい顔をしている。ロングヘアーならアイドルにいそうだ。

 FSは懐に仕舞ったヘルズクーポンを渡す。そしてニコはヘルズクーポンをFSと殺島に渡す。

 即座に手渡された物を確認する。偽物でも渡して本物を奪おうとしたのかと思ったが、手触りや匂いからして間違いなく本物だ。ではもう1つは偽物か?

 

「ニコの魔法はざっくり言えば複製です。これでヘルズクーポンを複数作ります」

「何でもありだな」

 

 殺島は思わず乾いた笑みを漏らす。どんな魔法でも使えると訊かれたら多くの人が答えるであろうコピーを作る力、本当に持っている魔法少女が居るのか。

 

「良い魔法持ってるな、これなら偽札作りたい放題か、いや製造番号で露見(ばれ)るから硬貨だな」

「お金には困ってないからダイジョブです」

 

 ニコは遠慮がちに答える。お金に困っていれば使っているとも捉えられる。そこはそんな事に魔法なんて使いませんと説教でもして欲しかった。魔法少女というのはアニメみたいな感じではないのか。

 するとニコは何枚かのコピーを作ると席を立ち「例の件お願いします」とFSに告げ店内から出て行った。

 

「あとはヘルズクーポンとマジカルドーピング剤の調整をしますので、数日はかかります。完成したらゴッドスピードが居る場所に行って性能テストです」

了解(りょ)だ」

 

「では、そろそろ失礼……」

最後(ラスいち)の質問だ。アンタなりに利益があって協力してるだろうがオレがやろうとしているのは殺しだ。魔法少女としてどう思うんだ?」

「魔法少女はしたい事をやる為の手段ですので、失礼します」

 

 一礼して席を立つ。魔法少女は皆がピンク髪や忍者風の魔法少女のように弱き人を守るために悪と戦うアニメのような魔法少女だと思っていた。そしてそんな人間にしかなれないと思っていた。

 だが実際は殺島や花奈などの倫理観がおかしい暴走族、状況によって魔法を悪用しようとするニコ、殺人を止めようとしないFS、とても魔法少女アニメには出られないような人間ばかりが魔法少女の才能が有る。あの2人が特殊なのかもしれない。

 

「もう少し何とかならねえか」

 

 もし娘の花奈がこの事実を知ったらどう思うだろう?きっと優しい子に育つがそれ故に魔法少女になれないかもしれない。だとしたら笑えない。何より笑えないのがその清く正しい魔法少女を欲望のために殺そうとしている己だ。

 

「お待たせしましたコーヒーです」

 

 店員が注文したコーヒーをテーブルに置き、ミルクを入れて口につける。気のせいかいつもより味が苦い気がした。

 

♢3代目ラピス・ラズリーヌ

 

 魔法少女を統括する魔法の国には様々な部署がある。

 

 キューティーシリーズなど魔法少女アニメなどの制作に関わり魔法少女へのイメージアップ戦略などを担当する広報部門。

 外部の企業や自治体や国などとの交渉を担当する外交部門。

 魔法少女のスカウトや既存の魔法少女の研修や教育を担当する人事部門。

 各部門の不正の有無、魔法少女の犯罪行為の調査及び逮捕に勤しむ監査部研究部門。

 そして今向かっているのが魔法少女の可能性を探るために様々な研究をしている研究部、その支部の中にある研究施設の1つである。

 入り口から100メートル進んだT字路を右に曲がり50メートルほど進んだところで右側の壁に指で六芒星を描く。すると突如扉が現れドアノブを回して中に入る。

 そこには全面が白で塗られた部屋が有った。確か1辺1キロメートルぐらいだったか、容量を明らかに無視した巨大な空間だが魔法を使えば幾らでも作れる。

 その部屋で魔法少女数人が飛んだり跳ねたり殴ったり蹴ったりしている。昔は同じようにやっていたなと懐かしさを覚えながら進んでいく。

 

「お疲れ様です」

「お疲れ様」

 

 地面に座っていた魔法少女が勢いよく起き上がり挨拶する。彼女達は初代ラピス・ラズリーヌ、今はオールドブルーに魔法少女としての才能を買われ魔法少女になった、あるいは魔法少女として活動しているなかスカウトされた魔法少女である。

 彼女達は4代目のラズリーヌを目指すラズリーヌ候補生として日々訓練を積んでいる。そして3代目ラピス・ラズリーヌは2代目ラピス・ラズリーヌが死亡したことにより3代目に襲名した元ラズリーヌ候補生である。

 今の魔法少女はある意味頂点である自分に対して憧れと好意を抱いている。だがそんなラズリーヌ候補生ばかりではない。嫉妬憎悪など負の感情を抱いている者のほうが多い。

 初代ラピス・ラズリーヌ、今のオールドブルーはその人心掌握術によって大半のラズリーヌ候補生は好意を抱き、下手したら心酔や崇拝レベルまで慕っている者もいる。その分だけ自分がラズリーヌを襲名してオールドブルーに貢献したいという想いが大きい。

 ラズリーヌは部屋でトレーニングをしている候補生を観察する。今日はオールドブルーに呼ばれてこの施設に来たが、その前に済まそうと思っていた用事が思った以上に早く済んだので、集合時間より早く来て後輩にトレーニングでもつけてやろうと思っていた。

 すると1人の寝そべっていた魔法少女が起き上がるとこちらにやってきた。黒髪のロングに白のメッシュ、下は赤色に白の一本線が入ったスカートで、上がへそ出しの赤色キャミソールの肩紐が片方のみで妙にテカテカしているレースクイーン風のコスチュームだ。この魔法少女は見た記憶が無い、新しく入ったラズリーヌ候補生だろうか?

 

「センパイくん、猛特訓(かわいが)ってくださいよ」

 

 一応敬語を使っているがこちらを睨みつけて敬う気がサラサラ無い。指導を申し込むというより喧嘩を売っている感じだ。

 一目で魔法少女になって日が浅いのが分かる。そんな新人がラズリーヌ候補生より格上である3代目ラズリーヌに挑もうとしている。

 ラズリーヌ候補生は直感を鍛えるトレーニングをしている。それなのに相手の強さを測るという初歩ができないのはいただけない。

 怒ってはいないがほんの少しだけ痛い目にあって教訓としてもらおう、これも指導方法の1つだ。床に触れて操作すると黒い穴が発生し二人とも穴に落ちていく。その先は先程までいた部屋と同じ壁と床の部屋だった。

 

「いいよ、かわいがってあげる」

 

 3代目ラズリーヌは挑発的に手招きする。それに乗るように新人は間合いをつめ顔面に向けて掌底を放つ。よく見ると指の第二関節を曲げて直角にしている。打撃に加えてあわよくば目潰しも狙いか、指に向けて額をぶつけるなど幾つかの防御方法を浮かぶが無難に躱す。

 そのまま指を曲げた掌底を連続で打ち続けるが全てを躱し捌いていく。身体能力は魔法少女でも高い方だろう。

 新人は掌底から右フックに変化する打撃を織り交ぜる。身を屈んで躱し腹部に向けてストレート、頭を下げたところに右足を蹴り上げ、新人は回転し数メートル後方に飛びながら宙に舞う。

 顎に蹴りが当る直前自ら回転して威力を殺したか、腹部の打撃で肋骨の1つや2つ折った手応えがあったがよく威力を殺した。それでも手応えからして顎は砕けている。

 本来なら宙に舞う新人に向かって飛び追撃するのだが、この後はどうするか気になるので様子を見る。

 新人は何とか着地し即時にこちらに向かってくる。痛みや実力差を感じて戦意喪失していない、目には怒りや闘志が漲っている。精神力は最低限あるようだ。

 お互いの距離が1メートルと迫ると新人がタックルを仕掛けてくる。無防備な頚椎に拳を振り下ろそうとするが、タックルから片手逆立ちで急停止しての蹴りを放ってくる。振り下ろそうとした拳を防御に回し防ぐ。

 新人はさらに片手で跳ぶと同時に足首をつかみにくる。引き倒しながら頭部への蹴りが狙いだろうが、掴まれた足とは逆の足で頭を蹴る。新人は足首から手を放しバウンドしながら吹き飛ぶ。

 

 ラズリーヌは十数メートル先で倒れている新人に駆け寄りながら手を打つ。それと同時に部屋の色が白から青に変わる。この部屋は合図さえすれば負傷した個所は治る仕組みになっている。

 新人の魔法少女としての耐久力はある程度把握し、手加減して頭部を蹴ったが完全な自信がなく万が一で死ぬかもしれない。トレーニング中に新人魔法少女を殺したなんて夢見が悪い。

 

「ごめん、やりすぎた」

頭蓋骨複雑骨折(ずがいふくざつ)ってこんな音がするのかよ。もう一本だセンパイくん」

 

 新人はネックスプリングで起き上がるとこちらを睨みつける様にお願いしてくる。全く怯んでいない。いくら傷が治るといっても痛みは伴い今の組手で実力差は分かっただろう。

 それでも挑むなんて、自分の実力はこんなものではないと過信しすぎているのか、実力差を未だに理解出来ないほど鈍感なのか、理解していながらも戦わずにいられない戦闘狂か。

 少し違う、実力差を分かっていながら挑もうとしている。模擬戦を通して少しでも強くなろうという意志を感じ取れる。

 それは4代目ラズリーヌになるためか、オールドブルーの役に立つ為か、恐らくどちらでもない。

 

「いいよ」

 

 口にした瞬間新人が顔面に突きを放ち腕の内側に手の甲を添えて軌道を逸らす。なんでこんな魔法少女がこの場にいるのか少しだけ興味が湧いてきた。かつてラズリーヌになるための訓練で、戦いのなかで相手のバックボーンや精神性を出来るだけ探り答えろという課題があった。久しぶりにやってみるか。

 

──

 

「もう一丁だ……センパイくん……」

「もう終わりだから、この後用事あるし」

「じゃあ、試合放棄(ギブ)でいいんだな?」

「いいよ。それで」

 

 三代目ラズリーヌはうんざりとしながらシッシッと手を払うと新人は倒れ込み肩で息をしている。暇つぶしで新人の指導をしていたが、暇をつぶすどころか待ち合わせの時間まで5分まで迫っていた。遅れればオールドブルーに小言を言われる。

 

「しゃっあ!アタシの勝ち!」

 

 新人が大げさに喜ぶ。実戦なら数十回は死んでいるし手加減してあげたのに、今から心折れる迄まで指導してあげようかと一瞬頭を過るがグッとこらえる。

 

「まだ人間の時の戦いの感覚が抜けてないね、魔法少女は想像力、やれると思った動きは案外できるから」

 

 ムカつくがこの時間まで挑み続けた精神力、そして指導の中で少しずつ強くなった成長力のご褒美がてらにアドバイスをしながらダッシュで出口向かう

 行く先々の暗証番号や魔法の解除手順を思い浮かべながら走り出口に差し掛かったところで扉が開きぶつからないように急停止する。そこには3人がいた。

 1人はオールドブルー、あちらから来てくれたことで一応は遅刻にならずにすんだ。そしてもう1人は見知らぬ男性だった。

 場の空気が明らかに変わる。オールドブルーは多忙で訓練生の様子を見に来ることはあまりない。そのせいか久しぶりに会えて単純に嬉しいと思う者、目の前でアピールして4代目、あわよくば3代目ラズリーヌの称号を奪い取ろうと考えている者などそれぞれ思いは違うが感情は大きく揺れ動く。

 一方男に対する感情は困惑や動揺で固定されている。この施設で働く者は全員が女性という訳でもなく魔法使いの男性もいる。だが大半は裏方で魔法少女と接する人はいない。

 それが男でしかも魔法使いですらない者がオールドブルーに引き連れられてやってきた。これは明らかに異様だ。

 そしてもう1人は茶髪でそばかすでジャージ姿の魔法少女、オールドブルーの関係者、それとも男の関係者か、特に特筆すべき何かがあるわけでもない普通の魔法少女という印象だ。

 皆は魔法少女ではなく男に意識を向け見定めるように見つめ三代目ラズリーヌも観察する。黒髪の無造作ヘアーで何故か特攻服を着ている。そしてたれ眉たれ目で顔は整っていて美形に部類され一部のラズリーヌは見惚れ黄色い声で語り合っている。そういう年相応の女の子らしい反応に思わず頬が緩む。

 気を取り直して再度観察する。間違いなく魔法使いではない、だが唯の人間かと言われると言葉が詰まる。鍛えられた感覚が何かが違うと告げる。

 男も同様に周りの魔法少女を観察する。どこかしら嬉しそうでまるで憧れの人に出会えたファンのようだ。

 

「そこに居たのですか?10分前には来なかったので直接こちらにきました」

「申し訳ございませんオールドブルー」

 

 ラズリーヌは頭を下げ謝罪する。2人きりなら『ごめん師匠、新人への指導に熱が入っちゃって』とくだけた口調で若干言い訳を入れながら謝罪するが、後輩がいるのでしっかりとした言葉と態度を見せておく。

 

「次からは気をつけるように、それで今日呼んだのはある魔法少女の指導を頼もうと思って、黒髪で一部が白で赤い服を着た」

「その魔法少女なら、さっきまで一緒に組手していました」

「では引き続きお願いします。そしてこちらの準備が整ったら呼びますので戻ってきてください」

「了解しました」

 

 三代目ラズリーヌは踵を返して先程のトレーニングルームに向かう。自分基準で勝ったと思って油断しているだろう。残り時間が何分か分からないがどうにかして負けを認めさせてみせる。トレーニングルームに向かうとまだ休憩している新人が居た。

 

「さあ、2回戦をやろうか」

 

 新人は思わぬ展開に驚きながらも立ち上がり構えを取り組手を開始する。そしてオールドブルーに呼び出される1分前に新人は疲労のために気絶した。相手の口から負けたと言っていないが勝ちだろうと納得した。

 

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