暴走族と魔法少女   作:ヘッズ

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第56話 涙をこぼすわけにはいかない

♢リップル

 

 20メートル手前に居るゴッドスピードをじっと見つめる。殺意を持った目でこちらを見つめている。純粋な怒りではなく、リップルへの好意、暴走族のリーダーとしての責任、様々な感情を飲み込み殺すという結論に至った目だ。

 相手は殺すつもりだがリップルにはそのつもりはない。気絶させ変身が解いた後に警察に引き渡す。魔法少女として監査部に引き渡し裁かれても、魔法少女資格はく奪か再教育、それでは暴走は止めない。

 ゴッドスピードはバイクから降りないということは乗りながら戦うのだろう、その姿は何時ぞや旅行先で喧嘩した時と同じだ。

 だが魔法少女でも同じように戦うとは限らない。あの魔法のバイクはスペックがとんでもないがそれだけとは思えない、ミサイル、レーザービーム、巨大丸ノコ、様々な武器が出ると思ったほうがいい。魔法少女の魔法はまさに何でもありだ。

 瞬間ゴッドスピードの姿が肥大化する。大きくなったのではない、そう見える程近づいたのだ。対峙している間瞬きすらしていなく、ゴッドスピードの初動を捉えようと意識を集中していた。それなのにここまで接近されるまで気づけなかった。このままでは轢き殺される。

 リップルは咄嗟に右に横っ飛ぶ、ステップする余裕も無いほどの緊急回避、それと同時にバイクが直角に近い角度で左に曲がり前輪が胴体に迫る。咄嗟に刀の側面を掲げ防御する。右手に強い痺れを襲い刀が腹部にめり込み、アスファルトに弾みながら後ろに吹き飛ばされる。

 

 リップルは忍者がモチーフなせいか元々の敏捷性や動体視力は高く、日々の実戦やトレーニングでさらに向上した。魔法によって性能がアップした拳銃の弾丸を弾き、性能がアップした重機関銃でもサイドステップで躱し弾丸も弾ける。調べてはいないが、その能力は魔法少女全体を見ても上位であるという自負がある。

 その動体視力に感知できないほどのスピードで直進し、咄嗟の横っ飛びに反応して方向転換して轢いた。とんでもないほどのスピードと敏捷だ。

 リップルは即座に態勢を整え膝立ちに近い状態になる。両足でアスファルトを踏みしめブレーキをかけながら刀を手放す。空いた手で手裏剣を12枚作り、全ての指で挟みながら向かってくるゴッドスピードに投げる。

 手裏剣は上下左右に軌道を描き蛇行するなど、物理法則を無視した変則的な動きで向かっていく。リップルの投擲はただ正確に当たるだけではなく。軌道を自由自在に操作できる。それによりあり得ない軌道を描き相手を惑わし、回避しづらくさせる。手裏剣が上下左右からゴッドスピードに襲い掛かる。その瞬間姿が消える。

 消えたわけではない、その動体視力で辛うじて捉えられた。バイクはリップルに向かって走りながら右10メートルに超高速でスライド移動し、手裏剣が到達する前に回避した。

 ゴッドスピードはそのまま接近する。リップルはアスファルトを踏み抜き停止し、ゴッドスピードに向けて手裏剣を連続で投げる。上へのジャンプ回避は無いと判断し、スライド移動回避対策で左右、横倒し走行対策で下のスペースを埋めるように軌道を描く。

 だが相手は予想に反して直進、左右の手裏剣は挟み込むのに間に合わず、胴体に向かってくる手裏剣を最低限の操縦で回避、横倒し走行対策で投げた下方向の手裏剣はタイヤを浮かし、上から刃がついていない側面を踏みつぶす。

 

 ゴッドスピードが数メートル手前まで迫る。リップルは轢かれる恐怖を押し殺しながらその場に留まる。先程のように横っ飛びではないにせよ、左右にサイドステップして回避しようとすれば対応してくる。

 相手の方が俊敏性と反射神経は上だ、サイドステップ回避中に攻撃されれば、不安定な状態で防御してしまい態勢を崩す。それを繰り返せばいずれ隙を作り、轢かれて致命的なダメージを負おう。であれば方向展開できないほど最小限の動きかつギリギリで避け、すれ違い際に相手を攻撃する。

 リップルの集中力は高まりバイクの動きを捉える。スライド移動せずこのままリップルを轢く進路を取り、バイクが数十センチ手前まで迫る。

 その瞬間半身になりながら右斜めに移動する。バイクが起こした風が腹部を撫でるが車体は当っていない。その勢いのまま刀を振る。狙いはハンドルを握っている左手の腱、左手が動かなくなればバイクの操作は難しくなる。それは身をもって知っている。

 刀を振った瞬間悪寒が走る。気が付けばゴッドスピードは左手をハンドルから離し、いつの間にか持っていた剣を首元に向かって振るっていた。

 このままでは刀で斬れず首を斬られて死ぬ。咄嗟に軌道を変えて剣を弾き、刀と剣が当たり火花が散る。ゴッドスピードはすれ違いそのまま前に直進した。

 花奈はバイクの突進を避けた相手に対してシートの上に立ち蹴っていた。武器有り無しに違いはあるが、単純にバイクで轢くだけの攻撃をするわけがない。結果的に過去の経験が身を救った。

 

 今の攻防で分かった点がある。バイクに特殊装備はない、レーザーやミサイルがあれば走りながら遠距離で攻撃すればいい、丸ノコなどの近接武器があればゴッドスピードが直接攻撃する必要もない。攻撃方法は唯轢くだけのシンプルなものだ。

 だが普通の運転はもちろんスライド移動などの特殊な挙動のスピードも尋常じゃない、それに搭乗者のゴッドスピードも高速で移動しながらギリギリで避けての攻撃にしっかり迎撃してきた。

 反応速度や動体視力も魔法少女の中でも上位クラスだ。スピードと俊敏性と動体視力と反応速度。魔法少女としてのストロングポイントを全て上回られている。

 ならばそれ以外の要素で上回ればいい。リップルは手に持てる限りの手裏剣を作り投擲態勢を取る。あのスピードで直進すれば停止して方向転換するにせよ、Uターンして接近するにせよ時間がかかる。その間に大量の手裏剣を叩きこむ。

 もし戦っている場所が広大な荒野であれば負けていたかもしれない。だがここは首都高の道路だ。幅は約30メートル、30メートルを埋め尽くす数の手裏剣を投げるのは可能である。

 仮に手裏剣を避けて道路から飛び出しても、首都高環状線は側道の上を走っている。外に出れば側道に着地するまで数秒間は宙に浮いた状態だ。

 超高速移動は脅威だがバイクが走る地面があって可能となる。地面が無ければ超高速移動は出来ず手裏剣を避けられる術はない。

 リップルの魔法は近距離でも脅威だが本領を発揮するのは遠距離である。あの時は接近されてこうして戦っているが、ゴッドスピードの俊敏性やスピードを体感し、それを計算に入れて手裏剣を投げれば接近する前に当てられる自信はある。

 

 リップルは投擲動作に入るが驚きで目を見開く、直進している背中、またはUターン中の側面に投げるつもりだった。だがゴッドスピードは手裏剣を作り投げる動作の間に直進しながらジャックナイフターンで180°方向転換してこちらに向かっていた。

 スピードを出せば出す程停止するのに時間がかかり進んでしまうはず、だがその一瞬ともいえる時間で停止、方向転換、発進の三動作を実行し距離を詰めている。どう考えてもバイクの挙動ではない。速すぎる。

 リップルは咄嗟に手裏剣を投げる。上下左右に挟み込むように投げても時間がかかりスピードで突破される。ならば避けづらさより速度を優先させ、手裏剣は直線の軌道を描き密集させる。ゴッドスピードは手裏剣を左のスライド移動で難なく回避し、リップルは思わず舌打ちする。

 密集させればスライド移動で回避、スライド移動を警戒して散らばしても簡単に弾かれる。タイヤを潰そうにも上から踏みつぶされる。散らばしても避けられないように手裏剣の量を増やそうにもスピードの差でさせてもらえない。完全に後手を踏んでいる。

 リップルは集中力を研ぎ澄ます。先程と同じようにギリギリで回避し交差際に攻撃する。手裏剣が通用しないならばこれしか手がない。

 バイクは先程と同じように猛スピードで迫る。残り数十センチの地点で半身の姿勢で左に移動する。だがバイクは追跡するように右に進路が変わる。

 攻撃は無理だと判断し、足に力を入れてステップでの回避に移行する。バイクは前輪を支点にしてコンパスのように左回転し側面が迫る。

 リップルは咄嗟にジャンプで側面を飛び越える、その直後シートに立っていたゴッドスピードが上から剣を振り下ろす。刀を掲げて防御すると同時にミドルキックが脇腹に直撃、リップルは血反吐を吐きながら吹き飛ぶ。

 

 半身で直前回避しての攻撃を予測しての軌道修正、その結果回避に専念させてからのバイクでの攻撃、そこで回避するが態勢を崩してからの剣での攻撃、それを防いでも態勢は崩され死に体のところにミドルキック。あれは花奈の極道技巧と呼ばれる技術だ。大半の人間の武術は魔法少女の世界では通用しないが、暴走族時代に鍛えた技を魔法少女の世界で通用するまで昇華させている。

 リップルは痛みに耐え迫りくるゴッドスピードを見ながら思考する。ギリギリで避けての反撃は通用しない、手裏剣は避けられ大量に投げる時間も与えてくれない。道路から飛び出して離脱して遠距離攻撃も考えたがその暇すらない。

 ゴッドスピードの魔法は速く走れるバイクを作る、見る限りでは有用で強力な魔法ではなく、書面で書かれていれば多くの人が低評価を下す。

 だが戦うとこれほど恐ろしい魔法はない、速さという一点で相手の魔法を十全に使わせず回避し、有用さも強力さも凌駕していく。正確に言えば魔法のバイクを使うゴッドスピードが恐ろしい。超高速で走るバイクに乗りながら、相手の動きに対応する操作技術と反射速度と動体視力、並の魔法少女が乗っても絶対にこうはならない。

 

 リップルは思考を中断し手裏剣を作り出す。投げる先はゴッドスピードではなく、自身の周辺だった。相手が速すぎて当らないのであれば当ってもらえばいい、ゴッドスピードの攻撃方法は基本的に突撃、必然的に相手に近づかなければならない。その間の空間に手裏剣が有ったとしても攻撃するつもりなら進まなければならない。そしてスピードが速ければ速いほど手裏剣に当った時のダメージが大きくなる。

 高速で回転する手裏剣がリップルの周辺を埋め尽くしていく。相手にダメージを与えるほどの手裏剣やクナイを投げようとすれば時間がかかる。だが手裏剣やクナイを高速回転させて周りに放り投げるぐらいであれば手首と指先のスナップだけで可能であり、通常の投擲より時間は大幅に短縮でき、ゴッドスピードが突撃する前に弾幕を張る程度は充分にできる。

 

 ダメージを恐れ躊躇するのであれば、即首都高環状線から飛び出し側道に降りて態勢を立て直す。そのまま無視して暴走を続ける可能性もあるが、リップルを殺さなければ他のメンバーが殺される可能性があると考えれば追ってくる。

 ダメージ覚悟で突っ込んでくるのであれば回避しながらこれを続け削っていく。持っている剣で弾幕を払われる可能性もあるが、その動作でバイクの操作が鈍り、投擲攻撃や躱しながらのカウンターが成功させやすくなる。

 ゴッドスピードはノータイムで直進する。リップルは弾幕の隙間から相手を見ながら、手裏剣とクナイを相手の頭部に当るように調整し周りに放り投げる。

 残り数メートル、弾幕に激突する直前にバイクの前輪と車体が上がり後輪だけで走行、ウイリーで車体を盾にして弾幕を弾き飛ばしていく。

 残り十数センチ、リップルは体に半身にさせ右ステップする。躱してからの攻撃は考えておらず回避に専念することで、先程よりギリギリで回避できる。

 車体を躱すが視界の右に剣を振りかぶるゴッドスピードが映る。狙いは足元、刀身の長さがいつの間にか長くなり当たる。咄嗟に回転ジャンプしながら回避、完全に回避できず足首を数センチほど斬られる。そしてリップルに躱されたゴッドスピードはそのまま壁に向かって進む。

 リップルは即座に振り向く。弾幕はダメージ狙いでなく視界を狭め、リップルの後ろにある壁への意識を逸らす為だった。

 壁まで残り数メートル、先ほどのジャックナイフターンで180°方向転換した時より残り距離が短く、スピードも数度躱されたせいか速くなっている。

 Uターンもスライド移動も間に合わない、この勢いで進めば壁を壊しこの首都高から出て、落ちていくゴッドスピードに向けて手裏剣とクナイを投げ込む。ブレーキで止まってもその間に背中に投げ込む。

 ゴッドスピードはスピードを緩めることなく壁に直進し、リップルは手裏剣とクナイを作り出し投擲態勢に入る。壁に前輪が当る。ここで決めると相手が描く放物線の軌道を予測し右手に力を籠める。

 直後予想だにしない光景に目を見開く。バイクは壁を壊し側道に向かって落ちていかず、バイクが横向きになっていた。そしてそのまま壁を走り左に5メートルほど走ってからスピードを全く落とさずUターンしていた。

 バイクの性能とゴッドスピードの運転技術は尋常ではないと分かっていたつもりだが、まだ過小評価していた。

 リップルは迫りくるバイクをどう躱すか対処法を模索する。

 

◆ゴッドスピード

 

 ゴッドスピードは己の感覚に戸惑っていた。世界がどんどんと遅くなっていく。流れる景色の速さもどんどんゆっくり見え、手裏剣やクナイもはっきりと見えるようになり、相手の動きもどう動くか分かる。今まで多くの模擬戦をしたが一度もこの感覚を体験したことがなかった。

 リップルが投げた手裏剣とクナイが左右にぶれながら顔面や胴体に向かってくる。最初はバイクのスライド移動で避けていたがその必要もない。左右のぶれに合わせながら最小限の動きで避け、数十キロほど減速し手裏剣と目の前を通過する。これは先程投げたモノが戻ってきたのか。

 投げた手裏剣やクナイは物理法則に反した軌道を描き襲い掛かる。唯でさえ相当避けづらく、バイクで高速移動しながらではさらに避けづらい。昨日までのゴッドスピードであれば何発か貰っていた。

 裏流儀に乗っ取り名乗り絶対に殺すと決意した。この感覚はそのお陰だろうか。魔法少女は想いや感情の爆発で力が上がると3代目ラズリーヌに言われたのを思い出す。

 バイクがリップルに迫りあと1メートルというところでジャンプする。だがその動きは直感で分かった。ウイリーで体当たりすると同時に足の指でハンドルを握り、身体を横に倒し水平状態にしながら剣を振るい刀身を伸ばす。この剣はマジックアイテムの1つで本人の意志で刀身を伸び縮みさせられる。

 伸びた刀身は前輪が当たり吹き飛んだリップルの胴体に向かう。相手は刀で横薙ぎを受け流す。胴体が両断されるのを防ぐが衝撃を吸収しきれず刀は宙高く舞い、横方向に吹き飛ばされる。

 前方に吹き飛ばされた勢いを利用して首都高道路から離脱しようとしていたのは直感で分かった。それはさせない。このままこの道に縛り付ける。バイクのスピードと今の感覚があれば可能だ。

 ゴッドスピードはリップルに突撃する。今回は左右に高速スライド移動しながら間合いを詰める。移動の幅やほんの僅かな加減速を織り交ぜ相手が避けるタイミングをずらす。

 距離を瞬く間に詰め、相手の眼前に迫ったところで車体を横にし、アクセルターンの応用で右回転し相手の背後をとりながらシートの上に立ち、左斜めに切り上げる。リップルは首に迫る直前で小刀を取り出し受け流し、小刀の破片が宙に舞う。

 防御してガラ空きになった顔面にサイドキックを繰り出し、リップルはキリモミ回転しながら吹き飛ぶ。直撃していない。直前で首を捻りながら自らの体を回転してダメージを逃している。

 

 今のゴッドスピードが魔法少女になってから間違いなく最強だった。今ならどのラズリーヌ候補生も瞬殺し、模擬戦で負け続けた3代目ラズリーヌに勝てる自信があった。それでも未だに殺せていない。

 華乃の強さは認めていた。喧嘩の実力はかなりのもので、デルタと戦えば勝てないがいい勝負、花奈と戦えばバイクに乗れば勝てるが素手なら負けるかもと思わせる程だった。

 そして魔法少女リップルとしても華乃と同じように相当に強かった。もし昨日戦っていたら恐らく負けている。

 暴走を邪魔する魔法少女が強い事に喜ぶべきではないと分かっていながら、親友がこんなにも強かったことが無性に嬉しかった。

 その一方冷静な部分が分析する。致命傷を与えられていないが着実にダメージを与えている。刀は手元になく小刀も耐久性に乏しく攻撃を受けていればいずれ壊れる。

 相手の飛び道具は問題なく避けられる。躱し際の攻撃も相手の動きを見て感じてカウンターのカウンターを取り続けて結局防御しかできていない。攻め手もなく耐え続けている。

 ゴッドスピードは再度突撃する。今度は相手を惑わせる左右のスライド移動は入れず勢いそのままに車上から剣の刀身を伸ばし槍のように突く。バイクの勢いと魔法少女の力が加わった一撃、まともに当たれば胴体に風穴があく。

 その一撃もリップルは受け流す。驚きよりしぶといと苛立ちが過る。だが代償は大きく小刀は粉々に砕け散り腹部から出血し、銀色と赤がリップルの周りを染める。

 これで剣を防ぐ手立てはなく、今の一撃も浅くはない。もう攻撃を防ぐ手立てはない。最後は暴走族らしくフルスロットルの突撃で轢き殺す。そう決めた瞬間直感力が発揮したのか、左に数センチほど移動していた。その地点には刀が刺さっていた。

 思わず頭上を見上げ、リップルの険しい表情を見て理解する。リップルの魔法は恐らく投げた物を操作する魔法、そしてこの刀は攻撃を防御した際に弾き飛んだものだ。だが刀は弾き飛ばされたのではなく投げたのだ。そしてタイミングを見計らって当てようとした。

 完全に意識の範囲外だった。今日は周りが遅く見えるだけではなく直感力も冴えていた。もし冴えた状態でなければ喰らっていただろう。魔法少女リップルは凄い魔法少女だ。だがこの奥の手だろう。もはや打つ手はない。

 ゴッドスピードはハンドルを握り締め発進する。これで決着か、ゆっくりと流れる景色を見ながら華乃との思い出が蘇る。

 洋食屋で初めて会って喧嘩した。中々に強かった。もう一回店に寄ったら馴れ馴れしく話しかけてきて、いつの間にかに友達になっていた。その後はバイト先の余り物もって駄弁ったり、飯をたかりに行ったり、コンビニや本屋で立ち読みしたり、買いもしないのに店回ったりした。

 チームに誘っても最後まで断り続けた。それでも後ろに乗るようになって自らバイクに乗るようになった。それで満足しておくか。そういえば夏休みにはツーリング旅行したりしたな。地元の半グレと喧嘩したのも楽しかったが、ビーチバレーしたのも楽しかった。

 冴え渡った感覚は思考すら加速させ、衝突する一秒にも満たない僅かな時間で出会ってからの記憶を振り返り懐かしむ。

 

 リップルの顔を記憶に刻み込もうと視線を向けた瞬間直感力が訴えかける。何かまずい。

 

 思考が再び加速する。打つ手がないはずなのに何をしようとしている?リップルは右手を下げ居合切りのような姿勢をとり、指の間にはクナイが挟まっている。

 投げるつもりか?ならば上手投げのほうがスピードは出る。チョップで居合切りをしようとするのか?それなら攻撃が届く前に轢ける。問題ない。

 リップルがゴッドスピードに向かってくる。避けないつもりがない、捨て身の攻撃で道連れにするつもりか?

 それはダメだ、ここで死ぬつもりはない。攻撃を受けないためにはどうする?恐らく攻撃手段は右手、何をするか分からないが右手を無力化する。

 持っていた剣を抜き右腕に向かって振り抜き、斬られた腕は高々と宙に舞い血飛沫がゴッドスピードの頬に付着する。

 ジャックナイフでUターンした瞬間高下駄が飛んでくる。履いていた高下駄を投げたのだ、首を動かして躱し、飛んできた逆足の高下駄も躱しながら近づき、痛みに堪えながら口をすぼめると同時に目に向かって針のようなものが飛んでくる。それも躱して膝をついているリップルの目の前で止まり、眼前に剣を突き立てる。

 

「最後まで反撃するだなんて驚嘆(たいした)奴だよ。でもアタシの勝ちだ」

 

 リップルの生命線は右腕だ、投擲物を操作する魔法も右手で投げてこそ本領を発揮する。足や口から手裏剣やクナイを投げられる可能性もあったが、今の悪あがきで無いのが分かった。できるのであれば高下駄や針を投げず、クナイや手裏剣を作って投げている。

 勝ちは確定した。その瞬間にあんなに遅かった世界がいつもの速度に戻り、思考の速度も通常に戻る。リップルは、華乃は殺さなければならない敵だ、そして友達だ。殺すのは避けられない。それでも唯殺すだけでいいのか?

 戦いを通して感じた強さや想い、友達としての感謝を伝え、そして最後の言葉を刻む。それが友達を殺すということだ。

 

強敵(つよ)かった。あの滅茶苦茶に動く手裏剣やクナイを避けるのも困難(きつ)いし、アタシの攻撃も何度も防がれた。才能じゃねえ、何かをするために猛努力(きたまく)ったのが分かった。今日は魔法少女になってからの超絶好調(ベスト)だった。でなければ負けてた」

「花奈は魔法少女になってどれぐらい?……?」

「半年ぐらい」

「そう……、才能があったみたい……でもそれだけじゃない……暴走するために……私とスノーホワイトを殺すために……どれだけトレーニングしたか分かった……本当に強かった……」

 

 華乃は歯を食いしばり痛みを堪えながら言葉を振り絞る。ゴッドスピードにも分かったように華乃にも分かっていた。暴走への情熱が認められたようで嬉しさがこみあげる。

 

「これから華乃を殺して、ピンクの魔法少女を殺しに行く。何か言い残すことはあるか?」

 

 もっと言葉を交わしたい。このまま出血多量で死ぬまで話したい。だがヤジがピンク髪の魔法少女の元に向かっている。

 ヤジが死ぬかもしれないが助太刀が間に合えばそうはならない。そしてヤジが死ねば対抗できるのはゴッドスピードのみである。ピンク髪は他のメンバーを襲っているかもしれない。ヤジとメンバーを守るのはリーダーの役目だ。その為に時間を喰っている暇はない。

 

「友達として一緒に過ごして……本当に楽しかった」

「アタシもだ」

「もし……、…………、…………」

 

 リップルの言葉がよく聞こえない、ゴッドスピードはバイクを降りて傍による。

 

「魔法少女になるより……、先に花奈に会っていたら……暴走族として一緒に……暴走していた……。これはほんの僅かな差……、花奈と一緒に暴走しなかったのは……魔法少女としてのプライドがあったから……、トップスピードに顔向けできないから……別に花奈と一緒に暴走するのが楽しくないわけじゃないから……」

 

 思わず涙が出るのを堪える。華乃は暴走の魅力を認めてくれ一緒に暴走していた可能性もあったといった。最後の言葉で言ってくれるだなんて。脳内で一緒に暴走するイメージが無数に浮かび上がり埋め尽くされる。

 突如首に激痛が走り華乃が赤く染まっている。思わず首を触れようするとあるはずの肉と骨の感触が無かった。それと同時に視界が横に傾いたので咄嗟に右手で首を抑える。

 何が起こった?状況を確認しようと辺りを窺う。華乃が赤く染まって泣きそうな表情をしている。これは血?誰の血だと考えるがすぐに自身のものだと分かる。そしてリップルの足元には右腕が刺さっていた。

 

 

♢リップル

 

 膝をつき右手で首を支えた状態でピクリとも動かない花奈を見つめる。本来であれば刀を弾き飛ばされたと見せかけての投擲で勝負を決めるつもりだった。死角からの不意打ちだったが、虫の知らせで察知したかのように回避した。

 あれが奥の手だった。このままでは殺されると絶望を感じるなか起死回生の一手を思いつく。決まる可能性は低く、決まっても今後の魔法少女生活に重大な障害を負う可能性がある捨て身技、しかしそれをやらなければ確実に死ぬ。それほどまでに魔法少女ゴッドスピードは強い。

 リップルの一手は所謂ロケットパンチだった。腕を斬られながら腕を投げ、投擲物として魔法で操作して攻撃、刀の投擲とやり方は似ているが、腕を投げるとは予想できない。

 手刀の攻撃の迎撃で相手が剣で斬っている瞬間に自ら腕を投げるイメージで腕を振り抜く。普通であれば相手の首を貫くほどの運動エネルギーは出せない。

 魔法少女の魔法は過大解釈でいくらでも強くなる。それは人脈作りで様々な魔法少女と話して知った。百発百中であれば投げた物の運動エネルギーが足りなく目標に届かなくとも、魔法によって運動エネルギーが加わり届くと解釈する。さらに当たるのであれば、かすかに触れても的をぶち抜いても当たるのに変わりはないとも解釈する。その結果切り飛ばされた腕は投擲物となり、魔法少女の首を貫通するほどの運動エネルギーを得た。

 これは試したことがなくぶつけ本番だった。そしてより確実に当てるには花奈が止まり、気を逸らしている必要があるので、話しかけた。

 

 完全に賭け、しかも分が悪い賭けだった。まず右腕を切り飛ばしてくれるか、切り飛ばしやすいように誘導したが相当に確率が低かった。次に会話に乗ってくれるか、これは花奈が話しかけてくれたので何とかなった。

 気づかないでいてくれるか、躱さないでくれるか、これは小声で敢えて喋り聞くためにバイクを降りさせるなどした。

 針の穴を通すような確率を通してやっと初めて攻撃を当てられた。そしてこれは一度限りの攻撃で、普通の攻撃も当たらない。一撃で殺すしか生き残る方法はなかった。

 友達を殺したくなかった。不利になっても何とか殺さずに済む方法を模索したが、魔法少女としての経験が不可能であると無慈悲に結論付けた。

 

「花奈、やりたい事の為に誰かを傷つけちゃいけない、それは悪い事で、悪い事をしたら責任を取らなきゃいけない」

 

 責任は人の手によって取らせるべきであり、その取り方は個人が与える死で決して償えるものではない。それを死にたくないという身勝手な理由で殺した。

 偉そうに言ったが結局は花奈と同じだ。生きたいというやりたい事のために花奈を殺した。これで友達を2人失った。今度は自らの手で殺した。

 

「私は花奈の夢を断った分だけ魔法少女として生きる。そして死んだら地獄に行く。その時は一緒に暴走しよう」

 

 弱かったから花奈を無力化できなかった。これからは人生を捧げて誰も殺さなくていいように強くなる。そしてスノーホワイトと協力して1人でも多くの人を助ける。それが花奈の夢を奪った責任だ。そしてゴッドスピードというとてつもなく強かった魔法少女と、生島花奈という最高の友達を記憶に刻み続ける。

 カラミティ・メアリ、スイムスイム、花奈、個人的な理由で3人も殺した。何千人救っても地獄に行くだろう。その時は花奈も地獄にいる筈だ。

 

 リップルはゴッドスピードの目を閉じようと瞼に手を伸ばす。その瞬間気づく。魔法少女は意識を失う、あるいは死ねば人間の姿に戻る。

 だがいまだにゴッドスピードの姿だ、生きている!?首の八割は無くなり、手の支えが無ければ千切れてしまう状態で!?いくら魔法少女でもあり得ない!

 

「だったら今すぐ一緒に地獄に行って暴走しようぜ!」

 

 目から生気が失っていたゴッドスピードの瞳はいつの間にかにギラついていた。

 

◆ゴッドスピード

 

 切り飛ばしたリップルの腕が首を貫いた。理屈は分からないがそう結論付けた。本当に魔法は何でもありだ。

 しかし残った片方の腕を犠牲にしてまで攻撃した。物凄い根性だ。何度も凄いと思ったがこれほどまでに凄いと思ったことはない。

 これで死んでも仕方がない、それに親友に殺されるのであれば悪くはない。あとはヤジに任せよう。次第に意識が途切れ始めていく。

 

──私は花奈の夢を断った分だけ魔法少女として生きる。そして死んだら地獄に行く。その時は一緒に暴走しよう

 

 その言葉を聞いて、つばめを思い出す。魔法少女に殺され大切な者を守れなかった。赤ちゃんを守れなかったつばめ、リップルに殺され皆の暴走を妨害される花奈、偶然にも同じだ。

 

 ふざけるな!

 

 半年前のお彼岸につばめの墓前で叫んだ。

 

──アタシはどんな事があっても覇威燕無礼棲を、大切な物を守り抜く。絶対(ぜってー)だ、つばめとは違う

 

 華乃であれば両手が無くても覇威燕無礼棲を皆殺しにできる。このままでは大切な物を守り抜けない。

 

 だったらつばめを超える!

 

 そう決意すると自然に意識がハッキリして力が漲る。なんでこの状態で生きているか分からないがどうでもいい。

 このままこの命は持ってあと数分、今からピンク髪を探して殺すのは無理だ、ならば体が動くうちにリップルを殺しておく。ヤジや皆の脅威を減らす。それがリーダーとしての最低限の責任だ。

 ゴッドスピードは立ち上がり魔法のバイクに乗り、右手で首を支えながら左手でハンドルを握る。リップルは生きていると思っていなかったのか動揺して固まっている。このまま全速力で単車を動かし轢き殺す。それ以外の行動をする余裕はない。 

 魔法の単車を作れるという魔法、確かにスピードと操縦性と硬さは凄いがそれだけだ、ビームやミサイルが出るわけではない。周りの魔法少女は外れの魔法だと口々にする。だがゴッドスピードはそう思っていなかった。

 

 もし光の速さで走ればどんな遠くからでも魔法を使う暇すら与えず轢き殺せる。まさに無敵だ。

 

─ガンマ、デルタ、みんな、今まで感謝(サンキュ)な。本当に楽しかった。そしてヤジ、悪いけど覇威燕無礼棲は任せた。

 

 ゴッドスピードが乗ったバイクが発進する。初速から今までの最高速度を遥かに上回っていた。バイクは辺りを衝撃波で全て破壊し進んでいく。道路は衝撃に耐えきれず崩壊していき、ゴッドスピードから直線5キロの道路は消え去る。

 バイクはひたすら直進し道路を突き抜けて側道に向かって落ちていく。シートの上にはゴッドスピードの姿はなかった。

 

 

───

 

 

 そこは何一つ光が無い空間だった。不思議と自分の姿だけは見え、魔法少女の変身は解け、特攻服を着た生島花奈の姿だった。それ以外は何も見えず、室内なのか屋外なのかすら分からない。

 

「え~っと、首都高で暴走して、その時にリップル、華乃と戦って首を落とされかけて、単車に乗って~」

 

 花奈は懸命に記憶を掘り起こす。華乃を道連れにしようとして単車に乗って突撃した。単車のスピードを光の速さ並みに出せれば最強、その考えに限りなく近づけた。その結果体が耐え切れず体が粉々になって死んだ。そして華乃も死んだ、あのスピードはどの魔法少女でも反応出来ず轢かれてしまい、その衝撃に耐えきれるわけがない。

 

「さて、どうするか」

 

 死んだという事実を思い出したが、意識があり何もない空間に放り出され何をすればいいか全く分からない。

 すると前方に明かりが見える。とりあえず当てもないので明かりが見える方向に向かって歩き始める。しばらく歩くと明かりがどんどん大きくなっていき、明かりの大本に辿り着く。

 そこは階段の踊り場だった。登り階段の先は仄かに明るく暖かさを感じる。下り階段の先はどこまで薄暗く寒気のようなものを感じる。

 どちらかに進めということだろうか?であれば明るい場所がいいと登り階段を登り始める。すると先から誰かが階段を下りる足音が聞こえてくる。花奈は警戒と興味から足を止め降りてくる人物を待つ。

 

「よっ、少し身長伸びたか」

 

 左側を大きな三つ編みにした茶髪で特攻服を着た女は気安く声を掛けてくる。その声と姿を見た瞬間に思わず涙がこぼれる。

 

「つばめ!生存(いき)てたのか!?」

「んなわけねえだろ。死んでるから」

 

 つばめはバカ言ってんなと笑みを浮かべる。それもそうだ、こちらが死んでいるのだから、会えるのは生きている人間ではなく死んでいる人間だ。

 

「つばめ、悪かった。お前を散々赤ちゃんを守れなかった弱者(しゃばぞう)だと散々愚弄(ディス)った」

 

 花奈は目一杯頭を下げる。魔法少女となって何人かの魔法少女と戦って分かった。魔法少女は恐ろしく強く。戦いに敗れたとしても愚弄はできない。

 

「それでも、アタシは守った!ピンクの魔法少女は殺せなかったけど、リップルを、華乃を道連れにして、皆の暴走を守りヤジに後を託した!道連れにしなきゃ覇威燕無礼棲は壊滅させられたかもしれねえ」

 

 花奈は胸を張って叫ぶ。ピンク髪の魔法少女とリップルを殺して生き残るという最良の結果は得られなかった。それでも皆の為に懸命に戦った。

 

「ああ、見てたよ。首が千切れかけても死なずによく最後の力を振り絞って戦った。お前はオレを超えた。そして昇一を救ってくれてありがとう」

 

 つばめは労うように優しく抱き着く。お前は私を超えた。密かに憧れだった相手からその言葉を聞けた。それが何よりも嬉しく誇らしく再びに涙が込み上げる。

 

「そうだ、アタシはつばめを超えたんだ!アタシは覇威燕無礼棲のリーダーで、メンバーは総勢10万人、燕無礼棲(エンプレス)の万倍だ、しかも誰も出来なかった全国統一もやった 」

 

 それから2人は階段に腰掛け話し込む。話し込むといっても花奈が一方的に話しかけ、つばめが黙って聞いているだけだった。

 ヤジとの出会いからこの暴走までの記憶を思いつく限り喋る。最初は自慢だったが時折弱音や泣き言も混じり、つばめは黙ってそれを聞いていた。

 

「お前の話を聞いているのとオレも走りたくなってきた。あっちで走ろうぜ」

 

 つばめは立ち上がると花奈の手を取り暖かな光を指差す。生前はつばめと一緒に暴走したことがなかった。あの先の暴走でいかにイカレていてドラテクがあるかを見せつけ、走りでもつばめを超えたと証明してやる。

 花奈は心躍らせながらつばめに手を引かれながら上を目指す。だがその歩みはふと止まり、つばめは訝しむ。

 

「どうした?あっちで暴走しようぜ」

友達(ダチ)に、華乃に言われたんだよ。『やりたい事の為に誰かを傷つけちゃいけない、それは悪い事で、悪い事をしたら責任を取らなきゃいけない』ってよ」

 

 意識が朦朧としているなか聞こえてきた華乃の言葉、今までは暴走が悪い事だと何一つ思わなかった。だがふとそれは悪事であるという認識が芽生えていた。

 

「アタシは悪事だとしても暴走をしていた。でなきゃ退屈過ぎて辛すぎて死んじまう。それに暴走で他のメンバーも救済(すく)った。でもその中で何人もの一般人(パンビー)警官(イヌ)を殺してきた。だったら責任を取らなきゃいけねえ」

 

 つばめが居てこれから向かう先は天国のようなものだろう。天国に行ってつばめと暴走を楽しむのは最高に楽しいだろう。だが楽しんでは責任を取っているといえない。責任を取ると言うのは辛く苦しいことだ。

 

「いいのか?お前はメンバー10万人の心を救った。それは誰もが出来ることじゃない。こっちに行く資格は充分にある」

 

 その言葉に花奈の決心は揺らぐ、そうだ10万人を救ったのだ、今まで殺した人数は絶対に10万人はいかない。差し引きプラスとなり天国で暴走しても許されるとあちらの神様が認めてくれた。階段を登ろうと踏み出すが首を横に強く振り動きを止める。

 

「アタシは暴走を止めようとした華乃を殺した。華乃は友達(ダチ)、いや親友(マブダチ)だ。どんな理由(わけ)があっても親友(マブダチ)を殺した奴がそっちに行くわけにはいかねえ、いやアタシがアタシを赦さない」

 

 華乃は魔法少女としての誇りの為に、花奈は皆の大切なものを守り、欲望を満たすために戦った。どうやっても戦い合う運命だった。

 華乃は死んだら地獄に行くと言った。それ程までに花奈を殺したことを重く受け止めていたという証だ、それなのに花奈だけ軽く受け止め天国に行くわけにはいかない。

 

「それでいいんだな?」

「ああ、地獄に行く前に話せてよかった」

「オレもだ」

「たぶんそっちに華乃、忍者みたいな恰好をしたリップルっていう魔法少女がそっち行くから、暴走に誘ってくれ、そっちなら誰も傷つけず暴走できるだろ」

「ああ、お前の分まで存分に楽しませてやる。じゃあな」

 

 つばめは涙ぐみながら拳を突き出す。花奈も一瞬逡巡しながらも拳を合わせ別れの挨拶をかわし階段を下り踊り場につく。

 下の階段を降りようと足を踏み出そうとすると黒い何かが上に向かっていく、思わず上の階段にある光を見る。

 

──お前、リップルか!?へえ~、人間の時はこんな感じなのか、何かツンデレっぽいな

──うるさい、トップスピードだって変わらない。何か馬鹿そう。

──ハハハ、相変わらずだな、それよりバイクで走ろうぜ、どこも最高のコースばかりだ

──いいよ、花奈仕込みの運転技術見せてあげる。きっとトップスピードより上手いし速い

──言うじゃねえか、花奈の弟子に負けるわけにはいかねえな

 

 上から楽し気な声が聞こえてくる。どうやら華乃は天国に行けたようだ。華乃は友達を殺した罪で地獄に行くと思っていた。

 確かにダメージは大きかったが暴走の為に気合いで首を繋げたはずだ。そして華乃は強くあの攻撃で無ければ殺せなかった。そして攻撃に耐えきれず死んだので自殺だ。華乃は殺してない。

 花奈は思わず上の階段を登ろうとするが歯を噛みしめ必死に耐える。責任は取らなければならない。

 

「閻魔!今からそっちに行くから待ってろ!皆の分まで悪事の責任を取ってやるから超極悪(とびっきり)の罰を用意しておけや!」

 

 花奈は啖呵をきりながら罪を噛みしめるように一歩ずつ階段を下りて行った。

 

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