◆殺島飛露鬼
「おうおう、今回の
殺島は思わず呟く。辺りは光一つない暗黒空間が広がっていた。その非日常的空間を見た瞬間に自身は死んだことを認識した。
前世では死んだ瞬間に階段の踊り場のような場所に立っていた。上に登る階段の奥から暖かな光が届き、娘の花奈の声で『パパ』と呼ぶ声が聞こえてくる。
思わず階段を登ろうとしたが踏みとどまる。娘が居るということは天国であり、登った先は天国であるのは間違いない。階段を上り花奈に会いたかったがそれは大人のすることではない。
大人とは悪い事をしたら責任を取るものだ。そう思い薄暗い闇が広がる下り階段を下りて行った。しかし今回は登り階段も下り階段もなくどこに行けばいいのか分からない。さて、どうしたものか。
すると何かの音が聞こえてくる。耳を澄ますとそれは人間の声なのが分かり、ひどく哀しい孤独の者の声だ。
当てもないのでとりあえず声がする方向に歩き始める。すると進行方向から僅かな光が漏れ、近づくごとにその光は大きくなっていく。
──クソ!これじゃねえ!これじゃねえんだよ!バイクで暴走してえ!
シャッター商店街の一区画で花奈が叫んでいる。この光景に見覚えがある。初めて花奈に会った時と同じ光景だ。この孤独な者の悲痛な声と娘の花奈にどこか面影を感じて声をかけた。第2の人生はここから始まった。
殺島はあの時と同じように声をかけようとするが思いとどまる。これでいいのか?思わず自問自答する。花奈は暴走族になって孤独な者ではなくなった。例え幻覚でも花奈を幸せにするには同じように行動するのが正しいはずだ。だが声をかけられない。
すると小雪の姿、正確に言えば魔法少女スノーホワイトの姿が思い浮かぶ。その瞬間殺島の姿は生前とは別の姿になっていた。身長も150cm台に縮み、髪も金髪のロングウェーブに変わり、服は結婚式の時に居たカトリックの神父のように真っ白な祭服を纏っている。これはFSに魔法少女に変身させられた時の姿だ。
「ああ!!てめえ何ガンくれてんだ!」
すると花奈は殺島の存在に気付き威嚇しながら近づいてくる。弱い姿を見せてしまった恥ずかしさを誤魔化そうと因縁をつけるつもりだ。その性格はよく分かっている。
『私の前で
何やってんだオレ
気が付けばキューティーヒーラーのように名乗り口上を言いながら決めポーズを決めていた。アドリブにしては口上も決めポーズも堂に入っている。魔法少女ファンとして無意識に考えていたのだろうか?しかし中々のクオリティーだと内心で自画自賛する。
「なんだテメエ!ラリってんのか!?」
予想外の名乗りに花奈は一瞬怯むが即座にメンチを切り威嚇する。確かにこんな格好をしたガキが名乗ったらラリったと思うのは仕方がない。
『貴女から悲しい声が聞こえたからやってきたよ。力になるから何でも相談して』
殺島は名乗りと決めポーズを決めた勢いで魔法少女になりきると決め、己の全知識を総動員して理想の魔法少女を演じる。一方花奈は憐れまれたと感じ逆上して襟首を掴み拳を振り上げる。
「うるせえ!お前みたいなガキに分かるか!」
「分かるよ。孤独な者の苦しさや辛さは」
その言葉に花奈の動きが止まる。この言葉を発した時の殺島は魔法少女のエミュレートではなく、素の殺島だった。
一瞬絆されそうになるが、年下のガキに心情を理解された恥ずかしさをぶつける様に再度拳を振り上げ振り下ろす。殺島は攻撃を悠々と避けて襟首を掴んでいた手を剥がす。
「ぶっ殺す!」
花奈は怒りと恥ずかしさと攻撃を避けられた悔しさで顔を赤くしながら再度襲い掛かり、その攻撃を殺島は全て躱していく。花奈は数分後には疲れで路面に大の字になる。
『どう?すっきりした?』
「クソが、疲れて動けねえ、ここまで当らないなんて笑えてくる」
花奈は大の字になりながら吹き出し笑う。孤独の者の辛さは体を使うことで紛らわせる。そして花奈が笑っているのは本来の感情ではない。「皆を笑顔にできるよ」の魔法を花奈に使っている。笑いも辛さを紛らわしてくれる。
『悔しかったら、また喧嘩していいよ』
「上等だ、喧嘩売りにくるから、連絡先教えろ」
『いいよ』
殺島はいつの間にか持っていたスマホを手に取り、花奈のスマホに連絡先を教える。
『じゃあまたね』
最高に魔法少女らしい笑顔を向けながらその場から立ち去り、離れたところで花奈の様子を見守り、暫くして立ち上がりバイクに乗って移動したのを確認して追跡する。
『こんばんは!一緒にご飯食べよう!』
「てめえ!何でここに居る!?どうやってこの場所知った!?」
『
「つけてきたじゃねえよ!」
『あと暫く泊めて、魔法の国から人間界で一人前の魔法少女になるまで帰って来るなって言われて、
「何ラリった事言ってんだてめえ!?」
こうして魔法少女アニメのシュチュレーションを再現するように花奈の家に居候する。その間に殺島は花奈を何度も遊びに誘った。明らかに乗り気ではないが強引に押し切り参加させ、その度に魔法を使い笑わせた。少しずつ仲良くなっていく。
これは明らかに夢だ、だが夢と分かってもどうすることも出来ないので、やりたい事をやり続ける。
殺島は花奈が学校に行っている間に出かける。目的地は第2の人生で通っていたS高校、その高校は記憶通りの場所に存在した。そして校舎裏に向かう。そこには辛さや退屈さを抱えている孤独な者の目でタバコを吸うデルタの姿があった。
「こんにちは」
「誰だ?」
「私の前で
殺島は花奈の時のように名乗り口上を言いながら決めポーズを決める。一方デルタは予想外の出来事に呆け、暫くして落ち着いたのか話しかける。
「えっと、アニメの真似かな。中学生はここに入っちゃいけないよ」
「貴方から悲しい声が聞こえたからやってきたよ。あなた、相撲部を退部になって相撲やれないんでしょ。だったら私が相撲してあげる」
「ハハ、気持ちは嬉しいけど、君じゃ相手にならないよ」
「大丈夫、私は横綱より強いから」
「冗談でもそんな事言っちゃいけないよ。訂正して」
「本当に横綱より強いから」
「これで最後だ、訂正しろ」
「横綱より強いから」
「立ち位置につけガキ」
デルタは敵意を剥き出しにしながら地面に土俵を描く。相撲をドロップアウトしても誰よりも相撲をリスペクトしていた。横綱は相撲の神であり、今の言葉は神を侮辱したに等しい。
そうなったら容赦しない。女児だろうが相撲を取り叩きのめして分からせる。それが
「はっけよい、残った!」
お互い立ち位置につき立ち合いが始まる。デルタは殺島に頭から全力でぶつかりに行く。女子中学生に当れば確実に病院送りのぶちかましだ。だが殺島は魔法少女であり、ぶちかましを受けても一ミリも動かず、デルタを無造作に捕まえ投げ捨てる。
デルタは信じられないという表情を見せながら、再び開始位置に戻り立ち合いを始める。数分後には泥まみれになっていた。
『どう強いでしょ』
「ああ、今まで戦った誰より強え」
『良かったね。相撲部に入れなくても、相撲部屋に入れなくても横綱より強い私と毎日相撲ができるんだから』
『ああ、人生の目標が出来た。お前が横綱より強いわけがねえってオレが勝って証明してやる』
デルタの目に光が宿る。その目は一緒に暴走していた時と同じ目だった。
殺島はデルタと別れ次の場所に目指す。景色はいつの間に夜に変わりネオンの光が夜を彩っていく。目的地は繁華街にあるラブホテル、そこに身長は170cmぐらいでかなりの美人でスタイルも良い、黒髪の長い二つの三つ編みで孤独な者の目をした女が居た。
ガンマだ
「
可愛らしい笑顔を浮かべながら中年男性の手首を握り締める。中年男性は容姿には似つかわしぬ力と警察と言う言葉に慄き女子高校生を置いて逃げていく。一方女性は殺島を死んだ目で睨みつける。
「なに、あなた?」
『私の前で
「それで魔法少女が何の用?邪魔しないで」
ガンマは特に驚くことなく問いかける。何も感じず何も楽しめなく暴走するまではクソみたいな人生を送っていたと訊いたが目を見ただけで雄弁に語っている。
『貴方から悲しい声が聞こえたからやってきたよ。あんなおじさんと愛し合っても何も気持ちよくないし、何も感じないよ』
魔法少女じゃなければセックスと言っているがキャラを守って言葉を濁したが伝わるだろうか?そしてガンマは己の悩みを見抜いていることに少なからず驚いた様子を見せる。
「やってみなきゃ分からない。折角の機会を奪った落とし前はどうつけるの」
「だったら私が貴女を楽しませてあげる」
殺島はガンマの手を取り夜明けまで遊びとおす。カラオケなどごく普通の遊び場所だが魔法を使い、ガンマは僅かばかり笑顔を浮かべていた。
それから殺島は魔法少女として多忙の日々を過ごす。花奈と一緒に暮しながら遊び、デルタと相撲をとり、ガンマと遊ぶ。しかしそれだけではなかった。
──
『私の前で
「なんの用だ」
『貴方から悲しい声が聞こえたのでやってきたよ。室田昇一さんだね、一緒にバイクで走ろ?走れば室田つばめさんの気持ちが分るかもしれないよ』
「何でそれを知っている!?」
『いいから、いいから』
──
『私の前で
「魔法少女か、それにしてはそれっぽくないね」
『貴方から悲しい声が聞こえたのでやってきたよ。中藤さんだね、アナタの漫画のファンなの?また漫画描こ?』
「何で知っているの?」
『雑誌で写真が載っていたんだよ。それよりヤンキーものを描こ?以前インタビューでヤンキーもの描きたいって言っていましたよね。やっぱり好きなモノを描くのが一番だよ』
「いや、ヤンキーものは流行っていないし無理だって」
『だったら私が原案するから、これはオジサンが聖華天って暴走族に居てその時の話で…
』
昇一と中藤も見つけ出し接触した。昇一は妻を失った悲しみ、中藤は夢破れた悲しみで心が折れた大人になっていた。その苦しさを癒そうと昇一とはバイク仲間─暴走行為はせず峠を攻める程度─になり、中藤には聖華天と
魔法少女でも普通にコンタクトを取ってもここまで事は上手く運ばなかった。全てはこの「皆を笑顔にできるよ」の魔法のおかげだ。
この魔法で昇一にとってバイクで走るのを楽しいと思い込ませ、妻を失った悲しみが癒えていき、中藤は聖華天と
この5人以外にも多くの人と接触して交流した。全員がかつての
時が経ち10代のメンバーが大人になっても交流を続け、大人の困難に潰されないように励まし続けた。その甲斐あってか皆が大人の困難に潰されない強さを手に入れていく。
ガンマは殺島も通して多くの友人を作り、休日は友人と遊び楽しい生活を送っている。そして花奈とは親友と呼べる間柄になった。全てに対して何も感じず楽しさを見いだせない孤独な少女はいない。
デルタは殺島の総合格闘技を目指し、そこで王者になってから角界に入るというアイディアを参考にし成し遂げた。不祥事で相撲が出来なくなったが時が経ち、かつ総合格闘技の王者が角界に入るという話題性を見逃すわけにはいかず、無事に相撲部屋に入門し、横綱を目指している。
両親と相撲を奪われ希望を失った孤独な少年はいない。
花奈も殺島を通して多くの友人を作り、この世界でも極道技巧は習得していないが、卓越したバイク運転技術を持っており、その技術を生かしてプロのオートレーサーになった。
そして時が経ちとある男性と交際を経て婚約する。結婚式には花奈の友人達が参加してくれた。ウエディングドレスを着て幸せそうな笑みを浮かべながら歩く花奈を式場から数キロ離れた鉄塔から見守る。
目から涙が溢れるのを懸命に堪える。もし娘の花奈が生きていれば新婦の父親として式に参加し、花嫁姿を見られた。残念ながらその夢は叶わなかったが、代わりにかつて娘の面影を重ねた親友の花奈の花嫁姿を見られた。それだけで充分だ。
「お疲れさま、殺島君、いや魔法少女ラフメイカー」
視界に移っていた花奈の姿が消えた代わりに花畑の景色が飛び込んでくる。そして肩に置かれた手の先にはスノーホワイトがいた。
「小雪……!」
「10万人の人達の心を救って、大人の困難に負けない強さを育んだ。そのお陰で誰一人暴走に逃げないで、その結果多くの人達も被害にあわずにすんだ」
「ああ、大変だったぜ」
殺島は驚きながらも魔法少女ラフメイカーの仮面を外し、素の笑顔を見せ労いに応える。
魔法少女になった際にある可能性を考えていた。魔法少女であれば暴走という人様に踏みにじり迷惑をかける幸福を得るという行為以外で皆を幸せに出来るのではないかと。
前世の殺島であれば全く考えなかった。同じ状況であれば皆を救うために暴走族に誘うだろう。
だが2度目の人生では小雪と知り合い魔法少女アニメに出会った。それを通して魔法少女達の生き様に感銘と影響を受けた。だからこそ誰にも迷惑をかけないようにしようという考えに至った。
「
「うん、花奈さんと初めて会ったところから。魔法少女になれないって言ってたけど、立派な魔法少女だよ」
「
「凄く良かった。他の人に見習ってほしいぐらい。でもあの魔法の使い方だと監査部門から注意が入って、それを無視すると魔法少女資格はく奪になるかも」
「
「だよね、魔法の国も人々の為ならもっと魔法を使うのを推奨すればいいのに」
スノーホワイトは不満そうに呟く。その姿は清く正しい魔法少女を目指して戦うスノーホワイトというより、魔法少女アニメトークで花を咲かしている際に多少くだけている小雪に近い。
「しかし、殺島君が魔法少女になるとこんな感じなんだ。もっと年齢高い感じだと思った」
「だよな。でもこの
「うん、あと容姿に合わせてキャラも作ってたよね。やっぱり男子はそういうものなのかな?」
「他に
「うん、ラ・ピュセルっていう中二男子の魔法少女が、騎士っぽい言葉遣いだったけど時々出来てなかったりしてた」
「まあ、
「それとあの名乗りとポーズって前々から考えてたの?なんか殺島君っぽい感じが既存の魔法少女とは違って特徴的だけど」
「
「昔に考えたのはあったけど、一般人に名乗るわけにはいかないし、魔法少女相手に名乗る慣習もないからやってない」
「
「そう?じゃあ、愛の為!友の為!世界の為!いつでもあなたのお悩み解決します!よろず魔法少女スノーホワイト!」
「おお、
殺島は思わず拍手しスノーホワイトは照れ臭そうにはにかむ。殺島の名乗りと比べ魔法少女らしさがあり、キャラにも合っている。そして決めポーズのキレも違う。
それからはかつての魔法少女アニメトークしていた時と同じような調子で雑談を続ける。死に際では時間切れで会話は終わったが、ここでならいくらでも時間がある。
「しかし魔法少女を
殺島の言葉にスノーホワイトは嬉しそうに笑みを浮かべる。だが次の言葉でその表情は僅かに曇る。
「だが実際はそうはならなかった。小雪より先に花奈にあって魔法少女になれたのも大分後だ。花奈を、皆を肯定し救うには
殺島ははっきりと言い切る。もし何もしなければ花奈は孤独な者として誰にも理解されず、人生の退屈さに耐えきれず救われなかった。この選択に何一つ後悔はない。
すると2人の目の前に突如二つの階段が出現する。左は空に向かってどこまでも伸びる階段、その先は暖かな光に包まれている。
右は空いた地面に向かってどこまでも伸びる階段、穴からは薄気味悪い冷気が漂い、先は見えない程薄暗い。
「殺島君の行動は魔法少女として認めたくないし許さない、でも私や他の魔法少女では救えない人を多く救った。そこは本当に凄いと思う」
「
「だから上にも行けると思う」
「それはねえ」
殺島は迷いなく右に向かう。前にも同じ選択を提示されたが決断を変えるつもりはない。暴走という悪事をしたからには責任を取らなければならない。そもそも悪事の責任を取るために地獄に行ったのに、2回目の人生を過ごしていたのがおかしいのだ。
本来であれば即座に命を絶ち地獄に向かうべきだったのだが、花奈と出会い肯定し救うためにここまで生きてしまった。きっと罰が追加されるだろうが後悔はない。
「おい、なんで小雪が
殺島は思わず目を見開く。小雪が何故か並列して歩いている。予想外の事態に思わず肩を掴む。
「私は魔法少女になる時に何もしなかった!だからそうちゃんやアリスが死んだ!魔法少女になってもいっぱい失敗して、犠牲者を出したこともある!首都高の暴走だってもっと暴力を行使してハイエンプレスの心を折ってれば犠牲者も出なかった!私はこっちにいかなきゃならない!」
小雪は自暴自棄になったかのように叫び殺島の手を払う。以前小雪から相談を受けて目を見た時に目を見たが、辛いことがあったけど歯を食いしばり前を向き、真っすぐ強い意志を持った澄んだ目をしていたのが強く印象に残っている。
その辛いことが今の独白に含まれた部分だろう。それが自責の念になり地獄に行くべきだと思ってしまっている。
「違え!小雪は!魔法少女スノーホワイトは絶対に
殺島は再度肩を掴み睨みつけるように見つめ語り掛ける。もし忍者であれば治安を守る者としては甘いと言うだろう。
だが魔法少女は忍者ではない、他人の痛みを理解し優しい方法をとった。その優しさを無下にした当人が言うのは筋違いであるのは間違いないが、この優しさを馬鹿にする者がいれば問答無用で殺す。
「でも!私は……私は……クックックック……プハハハハ!」
小雪は悲痛な顔をしながら突如笑い出し腹を抱えてその場に蹲る。小雪に殺島の言葉が届かないと目を理解した。ならば実力行使で止める。
魔法少女ラフメイカーの魔法は「皆を笑顔にできるよ」だ。
だが使い方によっては笑い過ぎによる窒息で殺すことすら出来る。そして小雪には強めに魔法をかけている。人は大笑いしている最中には行動できない。
その間に殺島は階段から引き返すと虚空に向かって拳を振るう。すると空間がガラスのヒビのような亀裂が入り、何度か拳を振るうと空間に穴が空く。
「小雪が行くのは右の階段でも左の階段でもねえ、この穴だ」
殺島は小雪を肩で担ぎ穴に向かう。この穴に気付いたのは直感だった。魔法少女としての訓練はしなかったが、直観力が鍛えられたのだろうか。だとしたらオールドブルーに感謝する。
この穴の先は現実に続いている。スノーホワイトはダメージによって生死を彷徨っているのだろう。上か下の階段に行けば死ぬが、この穴を通れば生き返る。根拠は何一つないが確信はあった。
「小雪、大切な人を亡くした
殺島は肩に担いでいた小雪を穴に向かって放り投げ虚空に落ちていく。姿が見えなくなったのを確認すると下りの階段に向かう。もう少しエモい別れをしたかったが仕方ない。
小雪なら問題ないこれからも自責の念で苛まれるかもしれないが、清く正しい魔法少女として時には立ち止まりながら進んでいく。
そして魔法少女スノーホワイトによって倒された魔法少女が地獄に来るかもしれない。その時はその魔法少女からスノーホワイトがどれだけ凄かったか聞く。地獄は罪を償う場所で楽しむ場所ではないが、楽しみが出来た。
「頑張れよ小雪、地獄の底で応援しているぜ」
殺島は堂々とした足取りで下りの階段を下りて行った。