ドラえもん のび太のSTARWARS   作:断空我

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おそらく、終わるのに後二話追加になる可能性がでてきた。




夢幻三剣士Ⅱ

 

「おーい、シズク、どこへいったんだ?」

 

 月ごと川へ落ちたアナキン。

 

 ざぶざぶと泳いで陸地へ辿り着いた彼はシズクを呼びかけるも反応はない。

 

 どうやらどこかへ行ってしまったらしい。

 

「困ったガイドだ……さて、ここからどうすればいいか」

 

 濡れた服はあっという間に乾いていた。

 

 夢の中だからだろうか?

 

 そんなこと思いながらアナキンは服をチェックする。

 

 ジェダイの服装だが、腰にライトセーバーはない。

 

 コムリンクや道具の類もなし。

 

 ここで危険な生き物に遭遇したら命はないだろう。

 

 そんなことを考えていると肉の焼ける香ばしい匂いが漂ってくる。

 

「行ってみるか」

 

 このまま立っていても変わらない。

 

 アナキンは臭いの方へ向かうことにした。

 

 臭いの方へ向かうと焚火をして丸太に腰掛けている小柄でキツネのような顔をした人がいる。

 

「誰だ!」

 

 キツネ顔の男はアナキンに気付くと警戒した様子で叫ぶ。

 

「驚かすつもりはないんだ。僕の名前はアナ……ノビタニャン。道に迷ってしまって」

 

「旅人か?それにしては何もないじゃないか」

 

「まぁね。僕自身、白銀の剣士とやらになる為の旅を」

 

「アッハッハッ!」

 

 アナキンの会話を遮るようにして大声で笑うキツネ顔の男。

 

「剣も兜もなくて白銀の剣士だって?図々しいにも程がある。第一、どこにあるか知ってんの?」

 

「残念ながらそれを知る前に連れとはぐれたんだ」

 

 キツネ顔の男の態度に少しの苛立ちをみせながらアナキンは情報を求める。

 

「この先の森の奥にあるヨラバ大樹の頂上に剣と兜は置いてある!その様子だと場所も知らないようだな」

 

「まぁね」

 

「どうだろう、取引しないか?」

 

「取引?」

 

「この僕も白銀の剣と兜を求めている。キミも求めているんだろう?でも場所を知らない。じゃあ、僕がそこまで案内してやろう。その道中、僕の荷物持ちをしてもらう」

 

「荷物持ちはヨラバ大樹とやらのところまでだな?」

 

「そうだ!丁度、召使いに逃げられて困っていたんだ」

 

 少し考えて、このまま一人で森をさ迷ってしまうよりはマシかと思う。

 

 召使いという言葉に嘗ての奴隷という考えが過ったが、夢の中だ、我慢我慢と成長した精神で耐えて見せるアナキン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、キツネ顔の男ことスネミス(一応、貴族で子爵らしい)の話を聞きながら荷物を抱えていた。

 

 ジェダイとして過酷な修業を受けていたアナキンにとってこの程度、造作もない。

 

 彼としては情報を得るべく話を聞いていた。

 

 話を聞いて自慢話ばかりで後悔している。

 

「白銀の剣と兜を手に入れてそのまま妖霊軍と戦えるわけじゃないんだな」

 

「当然だ。命は一つ。伝承によると過去に妖霊軍と似たような存在が過去に現れた時も白銀の剣士が現れ、竜の血を浴びて不死身となりユミルメを救ったという。剣と兜を手に入れたら竜の血を浴びて不死身になる。そうして、妖霊軍と戦うのだ!オドロームを倒しユミルメを救えば、王様は王女様を妻として迎えるといっている。王女様~、待っていてくださぁい」

 

「鼻の下が伸びているって、聞いていないな」

 

 アナキンの指摘を聞かずにるんるん気分で歩いていくスネミスだが、茂みの中に入った途端、大慌てで戻ってくる。

 

「どうしたんだ?」

 

「あの先に何かいる!お前、行ってみてこい!」

 

「偉そうに……だが、先に行けないのは困るな」

 

 スネミスの態度に思うところがありながらも目的地へ行けないのは困ると考えてアナキンは茂みの中に入る。

 

 茂みの中には一匹の子熊がいた。

 

 子熊が悲鳴を上げながら暴れている。

 

 よくみると子熊の足元に罠がついていた。

 

「罠にかかったんだな」

 

 周りに誰もいないことを確認したアナキンは子熊のトラップを解除する。

 

 トラップから解放された子熊は逃げ去っていく。

 

「こらぁ、お前ぇええええ!」

 

 スネミスのところへ戻ろうとしたアナキンのところへ巨漢の男が駆け寄ってくる。

 

「なんだ?」

 

「俺の獲物をなんで逃がしたぁああああああああ!」

 

 飛び掛かってくる巨漢の男の突進を躱しつつ、足をひっかける。

 

 派手な音を立てながら地面を転がる大男。

 

「罠を外した事ならすまないな。だが、あれだけ泣かれていたら流石に放っておけないじゃないか」

 

「このぉ、白銀の剣士たるジャイトス様になんて態度だぁ!」

 

「なんだって、お前が白銀の剣士?」

 

「こらぁ!なんて図々しい奴め!白銀の剣と兜は僕のものだ!」

 

 話を聞いていたのだろう茂みをかき分けて怒り心頭というスネミスが現れる。

 

「何を?このチビめ!」

 

「ち、チビだと!無礼な奴め!」

 

 侮辱されて我慢できなかったスネミスは腰の剣を抜いた。

 

「面白い、決闘だぁああああ!」

 

 巨漢の男は獰猛な笑みと共に腰の剣を抜いた。

 

 決闘ということで構えるスネミスだったが男の一撃を受けてぶるぶると震えている。

 

「乱暴な一撃だな……だが、受けたら大ダメージ必須か」

 

 アナキンの指摘通り、何度も受け続けていたスネミスは剣を奪われ頭に一撃。

 

 敗北してしまう。

 

「参りました!貴方は強い!貴方の子分になります!召使いも好きに使ってください!」

 

 アナキンは否定していたのだが、どうやらスネミスの中で召使い認定されていたらしい。

 

 丸腰のまま意見しても先の一撃を受けてしまうだろう。

 

 ヨラバ大樹までと言い聞かせながらアナキンは二人分の荷物を抱える羽目になる。

 

 巨漢の男、ジャイトスにへりくだるスネミスの姿にアナキンはあの取引は間違いだったと後悔していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター、随分と過酷な夢をみているわね」

 

 気ままに夢見る機でアナキンの様子を見ていたアソーカは驚いた表情をしている。

 

「最初は面白そうかな?とか思っていたけど、マスターがこき使われているのを見ると少し心配になるかも」

 

 夢幻三剣士は英雄譚のようだが、英雄になるまでが過酷な話だ。

 

 情報によるとヨラバ大樹で剣と兜を手に入れてようやく一人前という事らしいが、競争者は多い。

 

 果たしてアナキンは白銀の剣士になれるのだろうか?

 

 そんなことを考えていたアソーカは欠伸を漏らす。

 

「あぁ、遅い時間になっちゃった……アラームをセットして、私も寝ようっと」

 

 気ままに夢見る機のアラームをセットして就寝の準備に入る。

 

「この後の内容によるけど、私もこの夢、入ってみようかな?」

 

 横になりながら夢の中で頑張っているアナキンの身を案じながらアソーカは眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何百年もその場に存在している巨大な樹木。

 

 噂によれば、天まで届いているといわれる樹木の天辺。

 

 光り輝くその場所に白銀の剣と兜が存在しているという。

 

「うわぁ~凄い」

 

「天辺がみえないぞ?」

 

「これがヨラバ大樹か」

 

 どこまでも伸びている大樹を見上げる三人。

 

「この頂上に白銀の剣と兜があるんだ!」

 

「よーし、行くぞ!」

 

 やる気を見せて樹木を登り始める二人。

 

 アナキンも続こうと思ったが頂上が見えない以上、無策で挑むわけにいかない。

水と食料を準備しようとアナキンは近くの川に向かう。

 

「あれ?」

 

 川辺に着いたアナキンは異変に気付く。

 

 川の中がきらきらと輝いている。

 

 沈んで光っている形にアナキンはどこか見覚えがあり、川の中に入る。

 

「これは、あの時の月か!?」

 

 アナキンが川から引っ張り出したのは妖霊軍から逃げる為に先端が千切れた月だ。

 

 ふと、アナキンは突拍子もないことを考える。

 

 これが夢の中ならば膨らませればあの大樹の天辺へ辿り着けるのではないか?

 

 夢物語みたいなものだが、実際に、彼がいるのは夢。

 

「試してみるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スネミスはジャイトスを追い抜いてぐんぐん大樹を登っていく。

 

「いやぁ、これだけ登ってもまだ天辺がみえない。食料とか用意しておいてよかった」

 

 腰に下げているポーチから水を一口、含みながら上を目指そうと考えるスネミス。

 

 その時、スネミスの目の前の浮遊する物体が通過していく。

 

「あれは、なんだ?」

 

 ぽかんとしているスネミスの前を過ぎ去っていく月。

 

 その月の上でひらひらと手を振っているノビタニャンこと、アナキンの姿に気付くことを一瞬、遅れた。

 

 

 月を膨らませて天辺まで辿りついたアナキン。

 

 大樹の天辺は驚くことに澄んだ空気が広がり、中央に豪華な宝箱が置かれている。

 

「定番といえば、定番だが」

 

『ようこそ、知恵と勇気を持つ者よ。貴方に白銀の剣と兜を授けましょう』

 

 パカッと音を立てて開く宝箱。

 

 その中から現れる兜と剣。

 

 アナキンはそれをしげしげと眺めながら装着する。

 

 不思議と体が身軽になったような気分だった。

 

「さて、ここから地上へ戻るにはどうするかな?」

 

 ここから飛び降りたらミンチのようにはじけ飛ぶだろう。

 

 月は空へ帰ってしまっている。

 

 ゆっくりと降りていくしかないか?

 

 そんなことを思案していたアナキンへ宝箱から声が響く。

 

『ご心配なく。帰りはこの箱の中』

 

「箱の中?大丈夫なのか?」

 

『そなたは白銀の剣士、ノビタニャン』

 

 アナキンは箱の中に飛び込んだ。

 

 箱の中は滑り台のようになっており、アナキンは一気に大樹の根っこを抜けて地上にたどり着いた。

 

「ふぅ、楽しかったな」

 

「待てぇ~~~~」

 

「待て待て~~~!」

 

 このまま大樹を離れようとしたところでロープを使って降りてくるスネミスとジャイトスの二人。

 

「その剣と兜を寄越せ!」

 

「ノビタニャンの癖に生意気だ!」

 

「滅茶苦茶な。僕は別にお前達の奴隷でも何でもないんだ。渡す道理はない」

 

「生意気な!俺達に勝てると思うのか?」

 

 剣を抜いたジャイトス。

 

 アナキンはため息を吐きつつ、下げている剣を抜いた。

 

「決闘だ!俺達が勝ったらその剣と兜をいただく!」

 

「寄越せぇええええ!」

 

 叫びと共に剣を振り上げる二人。

 

 アナキンはライトセーバーの型を使おうとした。

 

 瞬間、剣が生き物のように動き、アナキンはそれに引き寄せられる形で次々とジャイトスとスネミスを倒してしまう。

 

「ま、参った!」

 

「参りました!子分にしてください!」

 

 土下座をする二人にアナキンは剣を仕舞う。

 

「僕は別に子分を求めていない。それに、キミ達の理由はどうあれ妖霊軍と戦うんだろ?だったら僕に協力してほしい」

 

「強力、子分じゃなくて?」

 

「参った!お前の心の深さもそうだが、その強さに参った!」

 

 土下座をするジャイトスの肩に手を置くアナキン。

 

「手伝ってくれるか?」

 

「勿論だ!」

 

「そ、そうだ!あの夕日の下で誓いを立てようよ!」

 

 スネミスの提案にジャイトスとアナキンは頷いて夕日の下で掲げるように剣と重ねあう。

 

――アラームが鳴り響いてアナキンは目を覚ます。

 

「あぁ、そうか、夢を見ていたんだったな」

 

 不思議と満足した気持ちになりながら体を起こすアナキン。

 

「あ、おはよう。マスター」

 

 アラームで目を覚ますアソーカ。

 

「おいおい、寝ていたのか?」

 

「だって、一日起きているわけにもいかないでしょ?それより、どうなったの?」

 

「ようやく、第一関門突破というところだな。アラームで目を覚ましたが白銀の剣と兜を手に入れて仲間を手にしたというところだ」

 

「すごいじゃん!じゃあ、次から妖霊軍と戦うってことなのね?」

 

「そんな感じだろう」

 

「最初はどうなるかと思ったけど、マスターがみている夢、面白そう。私も参加しようかな」

 

「おいおい、途中から参加して楽しめるのか?」

 

 アナキンの揶揄う言葉にアソーカはムッという表情になる。

 

「マスターの活躍見ているばかりじゃつまらないもん。マスターができるなら、私もできるよ!」

 

「そうか、楽しみだな」

 

「何の話かな?」

 

 第三者の言葉にアナキンとアソーカが振り返る。

 

 入口にオビ=ワンが立っていた。

 

「騒がしいようだが、何をしているのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

 

「マスターケノービも参加するんですか?」

 

「お前達が無茶をしないか、保護者が必要だ」

 

 二人の話を聞いて夢幻三剣士の夢に参加することになったオビ=ワン。

 

「このアンテナをつけてね」

 

 アソーカに言われて二人は赤いアンテナをつける。

 

 アンテナを着ける事でより気ままに夢見る機の夢へ繋げる事がスムーズに行える。

 

「じゃあ、始めるよ」

 

 アソーカの操作のもと、アナキンとオビ=ワンは夢の中に入った。

 

 その時、アソーカは“気付かぬうちに”夢見る機の隠しボタンを押した事に気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが竜の谷だ」

 

 魔法使いドラモン(オビ=ワン)の説明を聞きながらノビタニャン(アナキン)、ジャイトス、スネミスは谷の入口へ足を踏み入れる。

 

 三剣士が旅をしている途中に助言者として仲間になった魔法使いドラモンは竜を倒して返り血を浴びれば不死身になれるという情報を伝える。

 

 竜の血を得る為に三剣士とドラモンは竜の谷へ向かうことにした。

 

「色々疲れた」

 

「本当……」

 

「ドラモンは箒をなくすし」

 

 道中、ドラモンが持っていた魔法のバッグをうっかりジャイトスが空へ放り投げてしまい、慌てて取り戻そうとした箒は持ち主であるドラモンを置いて飛び立つ……というアクシデントがあった。

 

 何も悪いことばかりではない。

 

 ノビタニャンが助けた子熊の親の協力を得て、短期間で竜の谷へ辿り着くことができた。

 

「ありがとう、熊さん。子熊君のところへ帰ってあげてください」

 

「やはり、行かれるんでガンスか?竜の谷へ行って帰ってきたものは誰もおらんでガンスよ?」

 

「だが、妖霊軍と戦う為に必要な事なら行かなければならない」

 

「それが俺達夢幻三剣士の使命なのです!」

 

「怖いけど、やるしかない!」

 

「魔法使いドラモンもいる。我々の事を信じてほしい」

 

「そうでガンスか、お達者で!」

 

 熊はそういうと去っていく。

 

 彼の姿が見えなくなるまでノビタニャン達は手を振り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「竜の谷にきたはいいけど、竜はどこにいるんだろう?」

 

「この谷の奥にいるのだろう」

 

 彼らは警戒しつつ、谷の中を進む。

 

 谷の中は硫黄の香りが漂い、岩が多い。

 

「竜の息吹は気を付けるんだ。当たれば石にされてしまう」

 

 皆へ竜について、説明するドラモン。

 

「弱点は髭、髭を斬られると力が抜けてふにゃふにゃになる」

 

「へぇ、流石はドラモン」

 

「詳しいね」

 

「魔法使いだからな」

 

 魔法使いとして様々な修業の際に知識として様々な書籍に目を通した。その中で竜についての情報があったのだ。

 

 周りを見ながらゆっくりとノビタニャンが一歩を踏み出した時。

 

「なっ!?」

 

 いきなり地面が吹き飛んでノビタニャンの姿がみえなくなる。

 

 突然の事に近くの岩場へ隠れるドラモン、ジャイトス、スネミスの三人。

 

「これは、間欠泉だ」

 

「間欠泉?」

 

「一定の期間に水蒸気や熱湯を吹き出すことだよ」

 

「竜が漏らしたのかと思ったぞ?」

 

「あれ、ノビタニャンは?」

 

 スネミスが周りを見る。

 

 一緒にいた筈のノビタニャンの姿がどこにもない。

 

「もしかして、ノビタニャン、さっきの間欠泉でどこかに飛ばされたのか!?」

 

「何だってぇ!?すぐに探さねぇと」

 

「手分けして探そう。竜に気を付けて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドラモン、ジャイトスと別れたスネミスはノビタニャンの名前を呼びながら谷の中を進む。

 

 硫黄の臭いが鼻につくし、岩しかない。

 

 スネミスはため息を零す。

 

「ノビタニャン、どこいったんだよ?いきなりバーは嫌だよぉ?」

 

 若干の怯えをみせながら歩いていると前の岩にぶつかりそうになる。

 

 驚いたスネミス。

 

「なんだ、人の顔をした岩か」

 

 人の形をした岩をみて笑うスネミス。

 

 しかし、すぐにある可能性に気付く。

 

「人の顔!?これ、まさか」

 

 

――竜にやられたんだじゃ?

 

 

 怯えて、下がるスネミス。

 

 後ろにあった岩にぶつかり悲鳴を上げる。

 

 悲鳴をあげながら坂道をあがるスネミス。

 

 竜にやられて石にされたのだろう。

 

 多くの剣士達の岩が転がっている。

 

「あ、あ、ぁぁ」

 

「大声出すなっての」

 

 スネミスの悲鳴を聞いて駆けつけてきたのだろう。

 

 怯えた様子のスネミスに注意するジャイトス。

 

「り、竜」

 

「りゅう?」

 

 スネミスの指さす方向をみるジャイトス。

 

 崖の向こうの大きな平地でこちらをみている緑色の竜。

 

「臆するな!髭を斬ってしまえば!」

 

 ジャイトスが剣を抜いて駆け出そうとした瞬間、竜の息吹が二人を襲う。

 

 悲鳴を上げる暇もないまま、二人は息吹に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?ノビタニャン」

 

「ドラモン、僕は」

 

 その頃、ノビタニャンとドラモンの二人は無事に合流をしていた。

 

 間欠泉で吹き飛ばされたノビタニャンだが、幸運にも大きな怪我はなく、意識を失っていただけ。

 

「間欠泉で吹き飛ばされたんだ。大きな怪我がなくてよかった」

 

「そうか……他の二人は?」

 

「キミを探している。竜もいることだ、すぐに合流しよう……ん?」

 

 ジャイトス達と合流しようと考えていると、謎の声が響く。

 

 兜をかぶり、ノビタニャンとドラモンが声の方へ向かうと大きな翼を動かして飛行する巨大な竜が現れる。

 

「竜だ!」

 

 竜は二人の姿を見つけると息吹を吐く。

 

 二人は慌ててその場から逃げる。

 

「石になる!?」

 

「いくら私達でも何の対策もなしにあれへ挑むわけにいかん!逃げるぞ!」

 

 逃げる二人を竜は追いかけてくる。

 

 後ろを確認しながら走っていた二人は前方をみていなかった。

 

「あぁ!?」

 

「しまった!?」

 

 崖から真っ逆さまに落ちる二人。

 

 底は温泉になっており、二人はドボンと落ちる。

 

「ノビタニャン、大丈夫か!?」

 

 慌ててノビタニャンを抱えて浮上しようとした。

 

 しかし、待ち構えていた竜の口から息吹が放たれる。

 

「わっ!?」

 

 二人は慌ててお湯の中に戻る。

 

 息吹はお湯に当たると弾かれてしまうらしい。

 

 ドラモンは底に裂け目があることに気付くとそのまま奥へ進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、ノビタニャンやアソーカと同じように夢幻三剣士の世界へ入ったアソーカはというと。

 

「散々な目にあった」

 

 夢幻三剣士の世界に入ったアソーカこと、シズカリアンはどういうわけかユメミル王国の王女様という役割を与えられていた。

 

 王女様の生活という堅苦しい生活に加えて、妖霊大帝を倒した者に妃として与えるという話。

 

 我慢の限界であった。

 

 シズカリアンは王国の兵士が所有している装備一色を奪うと王国から逃走。

 

 シズカールという旅の剣士に身を隠したのは良かったのだが、何の拍子かウマに乗ってしまい、三日三晩走るという事態。

 

 最後はウマに放り出されて草原の上で倒れこんでいる。

 

 夢の中で空腹で死にそうというのも変な話だが、シズカールは疲労を感じて限界だった。

 

「ダメ、もう腹ペコで動けない……」

 

 夕焼け空を見上げながら涙を零すシズカール。

 

 その時、流れ星の一つが大きな音を立ててシズカールの近くに落下した。

 

「いたい……」

 

 コツンとシズカールの頭に落下したものがある。

 

 手に取るとバッグだった。

 

「何か食べ物……」

 

 震える手でバッグの中を漁る。

 

 すると、パンや飲み物など、次々と現れてくる。

 

「フォースの、じゃない。神の恵みかな?」

 

 シズカールはパンを手に取ると空腹を満たすために食べる。

 

 ミルクを飲み終えた所でクレーターから音が聞こえることに気付く。

 

「音?」

 

 シズカールはクレーターの中心へ向かう。

 

 クレーターの中心地で地面から抜け出そうともがいている動く箒があった。

 

「抜けないの?」

 

 シズカールは箒を掴んで引っ張る。

 

 その瞬間、自由になった箒は大空へ舞い上がった。

 

 掴んでいるシズカールと共に。

 

 シズカールは悲鳴を上げて箒に跨って空へ飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目が覚めたようだな。ノビタニャン」

 

「ドラモン、僕はどうして」

 

「竜から逃げる為に温泉の中に飛び込んだのさ。その後に裂け目から一度、竜の谷から離れたのさ」

 

「そういうことか」

 

 体を起こすノビタニャン。

 

「あの竜の息吹は厄介だな」

 

「今の我々にアレをどうにかする手段がない。不意を突いて髭を斬ればなんとかできるかもしれないが」

 

「髭を斬るというのは言うのは簡単だけど、あの息吹を防ぐ手段がなければ、僕達は全滅だ。魔法使いの力でなんとかできないのか?」

 

「方法はあるのだが、箒がなければ、なんとも……おや?」

 

 目を凝らすドラモン。

 

 夕焼け空に何かが飛行しているモノがある。

 

「あれは、箒だ!」

 

 ドラモンは歓喜の声を上げる。

 

「ドラモン、箒の上に何か乗っているぞ?」

 

 ノビタニャンの言葉通り箒の上に誰かが乗っている。

 

 箒は持ち主であるドラモンを見つけると乗っている人物を振り落とし、そのままドラモンへ抱き着いてくる。

 

「よしよし、再会できて嬉しいぞ」

 

「まるで犬みたいだな……キミは大丈夫か?」

 

「えぇ、一日、箒に乗っていたから」

 

 ノビタニャンに助けられながら立ち上がる剣士。

 

「貴方は?」

 

「僕はノビタニャン、白銀の剣士だ」

 

「白銀の剣士?貴方が」

 

 シズカールは驚きながら目の前の剣士をみる。

 

 父である国王が言っていた剣士が目の前にいる。彼が変な剣士でないか確かめるチャンスだ。

 

「私はシズカール、旅の剣士」

 

「よければ、キミも我々の竜退治に協力してくれないか?」

 

「構わないわ」

 

 シズカールという仲間も得られた事でドラモンは考えていた案を伝える。

 

 箒の手助けを借りて石像に偽装して竜に接近。

 

 隙をついて髭を斬るという作戦。

 

 箒によって全身を煤塗れになった三人は再び竜の谷へ挑む。

 

 空を飛ぶドラモンとゆっくりと岩場を進む二人。

 

 しばらくして、寝息が聞こえてくる。

 

 寝床で規則正しい吐息で眠っている竜がいた。

 

 ドラモンの指示でノビタニャンとシズカールは二手に別れる。

 

 箒からゆっくりと降り立つドラモン。

 

 その際に足元の岩が崩れて崖へ落ちていく。

 

 岩の音が谷の中に響く。

 

 むくりと身を起こす竜。

 

 目を逸らすノビタニャン。

 

 動きを止めるシズカール。

 

 ドラモンは目を閉じる。

 

 周囲を調べて敵がいないことを確認した竜は再び眠りにつく。

 

 竜が眠りについた事を確認して安堵の息を吐くドラモン。

 

 再び歩き出すシズカール。

 

 ノビタニャンはゆっくりと歩き出そうとした。

 

 その眼前で石にされた者の姿が目に入った。

 

「ジャイトス!スネミス!?」

 

 仲間が石にされた事で驚きの声を上げるノビタニャン。

 

 その声に竜は目を覚ます。

 

「しまった!」

 

 目を覚ました竜はノビタニャンへ標的を定める。

 

 慌ててその場から離れて岩の影に隠れるノビタニャン。

 

 竜の息吹から身を隠しているノビタニャン。

 

 その足元がぶくぶくと揺れだす。

 

「なっ!?」

 

 間欠泉によって空へ舞い上がるノビタニャン。

 

 石にせず、飲み込もうと口を開けて近づいてくる竜。

 

 竜をみてノビタニャンは白銀の剣を抜く。

 

 抜くと同時に伸びている髭の左右を斬り落とす。

 

 髭を斬り落とされた竜は力が抜けて地面へ倒れこむ。

 

 落下していくノビタニャンを間一髪、ドラモンが箒に乗ってキャッチする。

 

「流石だ、ノビタニャン」

 

「間欠泉に助けられるなんてな」

 

「凄いわね!」

 

 シズカールは駆け寄ってきてノビタニャンを褒める。

 

「これでも白銀の剣士だからな」

 

 剣を構えるノビタニャン。

 

 竜へ刃を突き立てる。

 

 返り血を浴びれば不死身になり、妖霊軍と戦うことができる。

 

 その為に竜を犠牲にしなければならない。

 

「竜を……できない」

 

 ノビタニャンは剣を鞘に納める。

 

「「何だって!?」」

 

 驚きの声を上げるドラモンとシズカール。

 

「不死身にならなければ妖霊軍と戦うことができないんだぞ」

 

「そうかもしれない。でも、竜はここに住んでいるだけだ。村を襲ったわけでも国を滅ぼしたわけでもない。悪意を持って何かしたわけでもない竜を斬るなんてことは僕に、できない」

 

「貴方。優しいのね」

 

「仕方ない。不死身になる以外の方法を考えるしかないな」

 

 ノビタニャンの言葉にシズカールとドラモンは彼の考えを尊重する事にした。

 

 その時、シズカールは竜の髭が再び生えていることに気付く。

 

「髭が生えている!?」

 

「いかん、竜の髭は再生するんだ」

 

「えぇ!?なんでそんな大事な事を忘れているの!?」

 

「とにかく、隠れ」

 

「その必要はない。勇敢なる剣士よ」

 

 逃げようとした三人へ起き上がった竜が呼びかける。

 

「私の血を狙って多くの剣士達が襲い掛かってきた。身を守るために襲い掛かってきた者達を石にしてきた。だが、キミのように心が清らかな剣士は初めてだ」

 

「竜、僕は貴方の命を狙わない。他の方法を考えます」

 

「待ちたまえ」

 

 去ろうとしたノビタニャン達を呼び止める竜。

 

 竜は近くの温泉へ身を沈める。

 

「キミ達の為に血を流すという事はできないが……私の汗をこの湯に流そう。

不死身になるわけではないが、一度、命を落とした時に再生する力がある」

 

「まるでだし汁だな」

 

「その考えって、違うと思うんだが」

 

 二人はそういいながら服を脱いで竜の湯の中へ入っていく。

 

 シズカールはそのまま入ろうとする様子がない。

 

「どうしたんだ?」

 

「僕は後で良い」

 

「そうなのか」

 

 ドラモンは不思議に思いながら湯に顔をつける。

 

 二人は煤を落としたところでノビタニャンは立ち上がった。

 

「すまない。石にされた仲間を元に戻したいんだ。方法はないのか!」

 

 着替え終わったノビタニャンとドラモンは兜と帽子に竜の湯を淹れて走っていく。

 

 竜はノビタニャンの仲間という事で特別に方法を教えてくれた。

 

 お湯をかける事で石の呪いは解けるという。

 

 言われたとおりにお湯をかけた途端、眩い輝きと共に二人は元に戻った。

 

 バランスを崩した二人はそのままぺたんと座り込む。

 

「元に戻ったんだ。よかった!」

 

「俺達はどうして」

 

「竜のおかげなんだ。それに仲間もできた」

 

 ノビタニャンの言葉に呆然としているジャイトスとスネミス。

 

 しばらくして落ち着いた彼らは竜の前に立つ。

 

「これからどうするのかね?」

 

「妖霊軍と戦う為に街へ向かいます!」

 

「それならば谷から少し離れた所に川がある。川を下ればアンデル市と呼ばれる人の住処がある」

 

「ありがとう、竜さん」

 

 全員が身構える。

 

 これから本当に妖霊軍と戦うことになる。

 

「いよいよね!」

 

「怖いけど、やるんだ!」

 

「腕が鳴るぜ」

 

「妖霊軍との戦いが本格的に始まるんだ」

 

「さぁ、行こう!」

 

 

 竜に言われて谷から少し離れた所にある川。

 

 

「この川を下るの!?」

 

「なんて流れだ」

 

 驚くシズカールとジャイトス。

 

 目の前の川は勢いが強く、油断すればあっという間に川の中へ落ちてしまうだろう。

 

「船をつくるしかないな」

 

「作るって!?」

 

 ドラモンの言葉に戸惑っている彼らの前でノビタニャンが剣を抜いた。

 

 一撃で一つの分厚い木を斬り落とす。

 

 音を立てて崩れ落ちる木。

 

 驚く皆の前でノビタニャンは剣一本で船をつくる。

 

「凄い剣だね」

 

 出来上がった船に乗り込む。

 

 川の揺れはすさまじく少しでも気が抜けば振り落とされてしまうだろう。

 

「気を抜くな!油断すれば川の中に落ちるぞ!」

 

 ジャイトスの叫びを聞きながらノビタニャンの意識は落ちる。

 

 




結構な長さになってしまった。

次はどうなるか?

ほぼほぼ、映画と同じ流れになっていますが、後半から変更も入る予定です。

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