UNSUNG EVOLUTIONS   作:B.O.A.

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Ch-7-Act-04

・劇場、外周。

 

 

 

 非常に困った事になっていた。

 首尾良く観客達を引き渡したまでは良かったのだが。

 

「あの、一応俺は“この手”の関連に通じてる捜査官なんですけど」

「と言われてもね、上としっかり確認出来ない内に勝手に向かわせる訳にはいかないんだよ。此方も」

 

 どうも、事態が大きすぎて顔パスの効かない状態になっているらしい。

 かなり極秘に手を回している事が仇になって、完全に「一般人」扱いになってしまっていた。

 確認を取るにも、情報が錯綜している今では期待できそうもない。

 と言う訳で、

 

「面倒だ。忍び込むか」

「……一応聞きますが、どうやって」

「要は、見つからずに向こうまで行ければいいんだ」

 

 そう言って、彼等は劇場に背を向けて100m程まで移動。

 人気のない路地に入るや、ポケットから端末を取り出した。

 

「この辺りは水捌けが悪い事で有名だ。大雨で氾濫しない様に下水関連が特別大きく作ってある。前日に雨でも降ってない限りは普通に歩いて行ける」

「うぇ」

 

 つい、マミは露骨に嫌な顔をしてしまった。

 ほむらから彼の“悪行”を聞いていたので嫌な予感がしたが、まさに的中してしまった様だ。

 躊躇なくマンホールに飛び込んでいく彼の後ろで、自分だけこのまま勝手にビルの屋上を渡って行こうか迷っていたが、やじ馬が大量に居る最中に堂々と現れる勇気は流石にない。

 今日は3回身体洗うぞ、と心に決めて彼女も穴の中に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・劇場前。

 

 

 

 竜二らが何とか劇場を目指すその頃、クリス等は非常に厳しい現状に置かれていた。

 障害物が殆どない中、必死にライフルを撃ちながら走る彼の元に、地響きを立てながら「エフエ―」が走っていく。

 羽の重量がかなりあるのか、足を振り下ろす度にアスファルトに亀裂が走っていた。

 

CRAWLER(クロウラー)

 

 揃えた人差し指と中指が変形して、瞬く間に1.5m以上の長さの細剣(レイピア)状になる。

 それを両手にで二本作ると、一気にクリスの後方から接近して「X字」に切り払う。

 それを前方に転がるように躱すと、背中の翼から「白い粒子」をジェットの如く噴出、滑るように近付いてもう一度切り払ってくる。

 不安定な体勢のまま滑り込む様に躱し、何とか立ち上がろうとするクリスの背に再度攻撃を掛ける彼女だが、その頭部辺りに火花が散った。

 彼女の斜め後ろに回り込んだピアーズの対物ライフルによるものだ。

 

「【隊長!】」

「【構うな! そっちに行くぞ!】」

 

 クリスが叫ぶと同時、エフエ―は翼のジェットで高速反転すると、その勢いを殺さずに回転しながらピアーズに突進する。

 その額から、2m超えの「青い刃」を正面に向かって伸ばしながら。

 

TWIST(ツイスト)

 

 駒の様に回転しながら薙ぎ払われる「刃」を後方に飛び込み前転して躱すと、ピアーズは先のクリス同様に逃げながらライフルで頭部を狙って発砲する。

 そして同じ様に、「エフエ―」は銃撃を意に返さずに彼を追いかけていく。

 彼を助ける為、別の隊員達が彼女の背後に移動していく。

 

 

 

 さっきから、ずっとこの調子だった。

 

 

 

「【埒が明かない。アイツのバリアを銃撃で破るのは不可能だ】」

「【感圧地雷なら何とかなるのでは?】」

「【「エーワックス」の様に無力化されなければ良いがな。やってみるか】」

 

 部下に装備を持って来させるように指示する最中でも、彼は「エフエ―」の様子をジッと見つめていた。

 

 先程から見てて気付いた事だが、この「エフエ―」、どうやら集団相手に対する攻撃手法に乏しいようである。

 「グラウンド・ドライブ」による範囲攻撃を警戒して距離を離す事に専念しているが、彼女は電撃やレーザーどころか、ずっと走り寄っての近接攻撃しか出してこない。

 エネルギーを使い果たした、というよりは、力を温存しているような(・・・・・・・・・・・)印象だ。

 対物ライフルによる射撃すら無効化するバリアを張っている事で手加減しているのだろうか。

 だがそう言う油断よりは寧ろ、彼には相手に合わせて攻撃を選んでいる(・・・・・・・・・・・・・・・)風にも見える。

 

 

 現に、部下が地雷を持ってきて、隊が集まったその途端、

 

 

GROUND DRIVE(グラウンド・ドライブ)

 

 

 全員で伏せた、その直ぐ上を青い光が突き抜けていく。

 

「【敵性存在の位置関係で攻撃を変えてきてるな。そして、散開している間は同時に一人しか狙わない(・・・・・・・・・・・)】」

「【強力な力を持ってる割に、思考は大分単調ですね。目の前しか見えてないというか】」

「【その代わり単体では非常に厄介だ。ひょっとしたら、「エーワックス」の指揮があって行動するのが本来なのかもな】」

 

 あの指揮力と火力が合わされば恐ろしい戦力になり得るし、「エーワックス」を助ける様に現れたのもその辺りが理由なのかもしれない。

 だが、先の「エーワックス」は離脱してしまい、今は彼女(エフエ―)だけだ。

 勝手に力を制限している様なら、まだつけ入る隙があるかも知れない。

 

 例えば、誰かが囮になって地雷を踏ませるとか。

 

 

INJURED(損傷)

 

 

 平坦な声でそう言う彼女だが、地雷の影響かバリアが薄れ、膝を付いていた。

 チャンスか、そう思って全員で銃撃を開始する。

 アサルトライフルの射撃はまだ弾かれていたが、対物ライフルは弾けずに貫通、伸びていた髪で頭部を庇ったが明らかに傷を負っていた様子だった。

 だが、そんな時間も長く続く訳が無く、

 

RECOVERD(復帰)

 

 バリアの色も、足の損傷も修復して立ち上がっていた。

 今の攻撃の影響を考えれば明らかにピアーズにヘイト(対象)が向く、彼は何時でも退避出来る様に身構える。

 だが、そこで彼女は立ち止まり、頭部の蛾の触覚の様な部分を軽く上に向ける。

 何かを探る様なその動作の理由は、直ぐに彼等にもわかった。

 

 

 特徴的な風切り音。

 今までの流れを考えるなら、自衛隊の攻撃ヘリの羽音だと思われる轟音。

 

「【自衛隊とすると、コブラか……?】」

 

 「コブラ」は世界で最も最初に生み出された「戦闘ヘリ」の系譜であり、米国主力戦闘ヘリ「アパッチ」の前身となったヘリコプターである。

 多目的軍用ヘリ「ヒューイ」をベースとして戦闘ヘリとして設計した「コブラ」は、旧式とは言え決して性能に不十分な訳ではなく、ミサイルポッド、ガトリングガン、機銃等の対地攻撃には十分な火力を持っている。

 自衛隊は「アパッチロングボウ」という新式の戦闘ヘリの導入もしているが、この機体は数が少なく、恐らく向かって来てるのは「コブラ」だろう。

 

 

 果たして、ビルの間から小さく姿を見せたのは迷彩色を施した「コブラ」だった。

 その丸い見た目は一見すれば余り攻撃的には見えないが、胴体両サイドから突き出した「スタブウィング」と呼ばれるユニットに装備されているのは、10式戦車撃破の報告を受けているなら恐らく対戦車ミサイル「TOW」、「第三世代」戦車の装甲を貫通する強力な武装の筈だ。

 

『――――、』

 

 ぼそっと、「エフエ―」が小さく呟く。

 その言葉は、空軍に居た事で耳が慣れているのか、将又ヘリの音に誰よりも気を散らされなかったのか、クリスだけがかろうじて聞き取れた。

 

 

 

――THREAT LEVEL(脅威度認定) DANGER(リスク高) ANTICIPATORY DEFENCE(先制的自衛) EXERCISE(発動) PROCEED(行動開始)――

 

 

 

 直後、ボウッっと髪が大きく広がり、その間に激しいスパーク(電撃)が発生する。

 そして、羽根からジェットを吹きながら真っ直ぐ上昇、宙返りする様に身体を動かしてコブラ目掛けて飛んでいく。

 コブラもその反応に気付いたのだろう、ウィングに装備されたミサイルランチャーから花火の様に幾つも火花が散っているのが見える。

 発射されているのは「ハイドラ70ロケット弾」、然も目測でも2km以上離れたこの距離で放ったという事は。

 

「【ハイドラ派生誘導ロケット弾か……!?】」

 

 湾岸戦争を経て開発された、比較的最新の追尾式ロケット弾である。

 電波による誘導方式だが、「エーワックス」と異なり電磁波による妨害を行わない「エフエ―」を捉えるなら寧ろ好都合だ。

 それを示す様に、ロケット弾は回避行動を取る「エフエ―」にしっかり追従し、確実に後を追っていく。

 

 だが、彼女も黙ってロケット弾を喰らう訳も無く。

 

BUBBLE SPARK(バブル・スパーク)

 

 背部から発生させた帯電した球体を放出、フレア代わりにする様にロケット弾に当てて炸裂させていく。

 だが、回避行動で生まれた隙を「コブラ」は見逃さない。

 距離を詰めて来た「コブラ」が、操縦席の真下に取り付けられたガトリング砲を起動させ、毎分700発の弾丸の行列を「エフエ―」に向けて撃ち放つ。

 「20mm口径M197ガトリング砲」による射撃は的確に「エフエ―」を捉え、対物ライフルよりも激しい火花が飛び散る。

 幸運とすべきは、「エフエ―」が、戦車砲を真正面から凌ぐ(・・・・・・・・・・・)「ムーロー」の様な「上位個体」では無かった事か。

 激しい回避行動を取ってガトリング砲の射線を逃れるも、それでも喰らった数発の弾丸で動きが鈍り、それが仇となって追い縋って来たロケット弾が直撃したのだ。

 激しい爆発と損傷で錐揉みを起こして5階建ての建物の屋上に落下した「エフエ―」に対し、無慈悲にも「コブラ」は対戦車ミサイルを撃ち放った。

 

 直撃すれば建物ごと潰しかねない、そんな威力の物を真面に避難出来てるのかも怪しい(・・・・・・・・・・・・・・・)この状況で使って来てる辺り、相当向こうも焦っているのだろう。

 だが、それが着弾する事は無かった。

 

 

 

 

BOSON DRIVE(ボソン・ドライブ)

 

 何処までも青く、強烈な「刃」が。

 滞空していた「コブラ」ごと、対戦車ミサイルを撃ち貫いたからだ。

 

 

 

 

「【やはり、航空機レベルでないと空で真面に立ち向かうのは難しいか……!】」

 

 空中で爆発し、燃え盛る破片が街中に落下していく。

 どうか避難が終わっていると良いのだが、そう思う彼等の方へ、真っ直ぐ飛んでくる白い光がある。

 「エフエ―」だ。

 ガトリング砲やロケット弾の攻撃による影響で衣服がボロボロになり、挙句に片腕が根元から千切れている(・・・・・・・・・・・・・)様で、その断面から激しく“白い粒子”が放出されている。

 だが、此方に向けられる殺気は健在だった。

 素早く銃を構えて彼女に応戦する態度の彼等だったが、直後にその出鼻を挫かれる事になる。

 

 つまりは、

 

 

 

BOSON DRIVE(ボソン・ドライブ)

 

 「コブラ」が援軍に加わってしまった事で、彼等の脅威度が跳ね上がってしまったらしい。

 

 

 

 

「【流石にもう手は抜いてくれないか……ッ!!】」

 

 「青い刃」を横に広げた手の延長上に放った「エフエ―」は、その状態で彼等の周囲で旋回を開始する。

 要は、物凄く長いラリアットを自分の描く円の内部の物体に向けて放っているという事だ。

 ただし、当たれば痛いどころか「切り裂かれる」が。

 地獄の追いかけっこの始まりだった。

 反撃を受けない様、ある程度の高度から腕を斜めに向けている関係上、完全な円ではなく円錐の側面に沿う(・・・・・・・・)様に放たれる事もあり、外周の隙間に逃げれば一応はやり過ごせる。

 だが向こうもそれを承知で、細かく軌道を変えたり「8の字」を描いたりで此方を追い込んでいく。

 このままではジリ貧だ。

 此方の攻撃は届かない高度を維持されている、強力な爆薬や地雷を持って来ても意味が無い。

 一人一人、疲労で鈍った者から奴の餌食になる。

 必死になって誰もが打開策を考える、その時だった。

 

 

 

 

 

『――――!』

 

 突然、彼女の脇腹に突き刺さる様な爆発(・・・・・・・・・・・・)が発生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……流石に、このまま「彼等」を見捨てるのも気分が悪い」

 

 ゴトン、と少女の身体に似つかわしくない筒状の物体(・・・・・)を地面に落としたのは、誰にも悟られぬ様にジッと息を潜めていたほむらだった。

 落下していく「エフエ―」の様子を見て、だが用心する様に大きく崩れた劇場の壁に身を隠す彼女は、次のロケット砲(・・・・・)を盾から引き抜いた。

 

 「RPG-7 対戦車(・・・)ロケット砲」。

 本来地上の装甲車両を破壊する為の兵器で、動きの止まる事の多いヘリと違い、単純な旋回軌道ではあるが飛行していた(・・・・・・)「エフエ―」に直撃させたのは、単純な彼女の技量だけではないだろう。

 彼女の魔法、そして「エフエ―」の思考回路上発生する、一発だけなら先制を与えられる(・・・・・・・・・・・・・・)という脆弱性も合わさった快挙だった。

 

 正直、初めから乗り気であった訳ではない。

 「戦闘ヘリ」のロケット弾が「エフエ―」に大きなダメージを与えた、その事実があったからこそ彼女は動いた。

 実際、かなりの打撃になったようだが、念には念を入れて2発目のロケット砲を用意していた。

 

「確認は彼等に任せるか、態々向かう必要は無い」

 

 時間停止を遮られる事も無かった事から、恐らく向こうの対抗策も何かしら発動条件があるに違いない。

 下手に自分の存在を感付かれて準備されるのは御免だ。

 このまま待機していればいい、もう直ぐマミ達もやって来るだろう。

 そう思って、彼女は外の光景から目を反らす。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、見つけて(・・・・)しまった。

 

 

『……あーあ、こんなつもりじゃなかったのになぁ(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 そんな風に呟く、白く小さな少女が、音も無く、自分の肩越しに様子を見ていた事に(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 凍り付いてしまった彼女に、その白い少女はその瞳を向けた。

 

『本来だったら「エフエ―」の暴走を協力して止める(・・・・・・・・・・・・・・・・・)ってルートだったのに、「エーワックス」を「ムーロー」ちゃんに離脱させられちゃった所為で、本来出て来る予定の無かった「コブラ」まで来ちゃったし。まぁ、多少の人的被害は仕方ないとして(・・・・・・・・・・・・・・・)、上手く住民の避難先を纏められるかが心配だなぁ。勝手に彼方此方にあらぬ分散を起こして各地で騒動が起きるのも困るし』

 

 そう言って、彼女は背後を振り向く。

 其処には幾人もの全身白い防護服の人間達が、瓦礫の破片の採取や調査を行っていた。

 一様に、その肩に付けられているロゴは「Gran FORT(グラン・フォート)」となっている。

 

『とは言え、これで実施試験計画(・・・・・・)は一先ず完了か。本番に向けての小規模リハーサル(・・・・・・・・)は概ね問題なし。これで何時でも大丈夫なはず』

「……何を、言っているの」

 

 思わず、彼女はそう聞き返す。

 

「これだけの事が有って、問題なし(・・・・)……?」

『ああ、「ムーロー」の襲撃が予定外だったのは事実だよ。でも寧ろ、そういう時は思い切って舵切るのが意外と正解なのよ。結局、貴方たちの活躍(・・・・・・・)で「U-8'」「セイクウ」、その変異種の「レギオン」、そして「エフエ―」と、最初に試験官となった「キョウフウ」も含めて、貴方達の実力は如何無く発揮され、全て滞りなく(・・・・・・)討伐処理された。まぁ「レギオン」はボーナスステージ(・・・・・・・・)みたいなものだったけどね』

 

 あっけらかんと、少女は話していく。

 余りにもあっさりと、この「騒動」の舞台裏事情を。

 

『予想される過程(ルート)において、本番においての「あの男」と「貴方達」の介入は早期に置いて確定的だった。だからこそ、巴マミの非放逐性もあって(・・・・・・・・・・・・)、多くの魔女の出現する良好な餌場(・・・・・)として有名であり、その為に数多くの魔法少女が割と自由に行き来する(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)この街一帯は、特殊な人間(魔法少女)の行動観察を行うには当にうって付けだったのよ。他にも幾つか候補地はあったんだけど、「本拠地」その物と言える此処なら結局一番都合がいい。過去データは米の中枢に潜ればある程度引っ張れる「あの男」と違って、「貴方達」はゼロからの収集だから御膝元故に疑いが増す(・・・・・・・・・・)リスクは多少目を瞑るべきだしね。まぁ、そんな中でも「貴方」の出現は驚いた。だからこそ、多少リスクを冒してでも問題の根元(・・・・・)に引っ掛けておいたの。変に掻き回して、折角想定した「ルート」を悪い方に向けられると困るからね』

 

 初めから、全て想定済み(・・・・)

 それどころか、これは全て魔法少女が介入する事を予期した上での事前準備(・・・・)

 その為に、予め自分達が巻き込まれる様に設定していた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

『巴マミは一種信念的なもあるけど、佐倉杏子を餌にすれば確実に寄ってくる。美樹さやかも何時でも繋げる状態にあった(・・・・・・・・・・・・・)。鹿目まどかは本来は「クローズド」で繋げる予定だったけど、「彼」が巴マミと面識を予め持ってた事はプラスになったし、そして「貴方」の行動も引き込むきっかけになった』

 

 単純に、全て「出会わせる」為のきっかけに過ぎなかった。

 こんな地獄を見せる、死地に向かわせる、悲劇を知る為の演出だった(・・・・・・・・・・・・)

 

「……いや、ちょっと待ってよ。巴マミはまだ分かる。だけどその言い分じゃ、始めからまどかとさやかが魔法少女になる(・・・・・・・・・・・・・・・)事を予期してた(・・・・・)って事じゃないの?」

候補(・・)って言う分でなら、ある程度は「筋道」を用意しておけるんじゃないかな? でしょ?』

 

 そして、彼女は余りにも唐突に言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

『この街の住人184万7492人、更に連帯している企業やスタッフ約5000万人、そして1年前から何かしらの理由で不意に訪れた経験のある人間約8億人(・・・)。今からでも全て制御、統制可能だからね(・・・・・・・・・・・・・・)。魔法少女候補の人間の「筋書き」の用意なんざ容易い物だよ』

 

 

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

『ああ、だけどどうも「魔法少女」に関しては根本的に体質が違うのか、「エーワックス」の「スナッチ」なんかで直接ネットワークに繋がないと(・・・・・・・・・・・・・・)上手く機能しないみたいだけどね。だからこそ、介入を恐れたって事なんだけど』

 

 ま、無い物ねだりしても仕方ない、と彼女は放り投げた。

 

『と言う訳だから、ま、一先ずお疲れ様(・・・・・・・)。貴方達が期待通りに動いてくれたおかげで、「あの子達」もきっと有意義に動けたはずだよ。“私”達は“私”達の間の「個性」を尊重してるからね。多少の意見や持ってる情報に違いは生じた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)だろうけど、結局は全員の総意通りのペースで進んだよ……あ、でも「ムーロー」は“離脱者”だから少し違うけど』

 

 缶コーヒーでも奢ってあげようか、ブラックコーヒーよく飲むよね、とまるで後輩を労う先輩の様な気楽さで「少女」は言う。

 その何でもない様子が、余りにも「異質」過ぎて。

 可愛らしい仕草が、何もかも不気味に思えて(・・・・・・・・・・・)

 

 

『ほむ。その「選択(アクション)」で来たか』

 

 

 拳銃なんかじゃ生ぬるい、と言うように持っていたロケットランチャーの弾頭をその顔面に押し付けた。

 

「……何なの、貴方達は。其処までして私を困らせたいの(・・・・・・・・)

 

 もう、我慢の限界だった。

 今此処で、コイツを殺して何もかも終わりにしたい(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、そんな気分だった。

 散々全てを無茶苦茶にして、全部台無しにして、それで尚通過点(・・・)と抜かして。

 必死に戦って来た、必死に対処してきた、その努力は全て自分が作った「筋書き(ルート)」でした、よく頑張りましたと上から目線(・・・・・・・・・・・・・・)

 そんな下らない物の為に私は戦ってきた訳じゃない、それを勝手に人様に都合押し付けやがって――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

『なら、私の「応え(リアクション)」はこうかな』

 

 だけど、そんな都合など関係無い様に(・・・・・・・・・・・・・)、その少女は何処か楽しそうに呟いて。

 

 そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【で、結局「エフエ―」は回収できたのか】」

「【まぁな。あれでまだ生命活動が有った(・・・・・・・・・・)のが恐ろしいが、「彼女の系譜」を知る為にも生体のまま回収するべきだった。今は密閉されたケースに保管してある】」

「……、」

「で、問題の、これ(・・)か」

 

 

 

 彼等は、「それ」を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をどうやったら、音も無く(・・・・)誰にも気づかれずに(・・・・・・・・・)劇場一つを纏めて跡形も無く消せるんだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

 

 

 

 







何もかもが、ただ闇の中に沈んだ。


信じあえる筈の友情も、繋がれる筈の親愛も、明かす筈の秘密も。


そして、あらゆる疑念も災いもまた同じだ。


全てが振り出しにもどった。


英雄は折れかけた意志を入れ物の身体に包んで、混沌と、血溜まりの大地を臨む。






予告:UNSUNG EVOLUTIONS「裏編」 始動




少女は誰も、未来を見ない。




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