UNSUNG EVOLUTIONS   作:B.O.A.

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Ch-8-Act-04

・校舎内

 

 

 

 無人の校舎の中を、ほむらは必死に移動する。

 その速度は常人の早歩き程度の物だが、今の彼女にはこれが精一杯だ。

 何せ腹部は大きく抉られ、片足は真面に動かないのだ。

 殆ど身体を引きずるように動く速さとして見れば、寧ろ今の彼女は「常人離れ」していた。

 

「……ふん」

 

 その後を、ゆったりとした徒歩で追跡する竜二は、何かを探る様な雰囲気で鼻を鳴らす。

 単純に逃げている訳ではなさそうなのは明らかだが、だとすると何を意図しているのか。

 上階に逃げる訳でも無く、身を隠そうとする素振りも無い。

 背後を何度も振り返り、此方の様子をしきりに伺う様子からすると、残る線は時間稼ぎか。

 

「そう言えば、「エフエ―」が来ないな。仕込みでもしているのか」

 

 彼女の位置を探ろうかと思ったが、今頃向こうは校舎の外で自由に動いて居る筈だ。

 此処からでは流石に、彼の力を持ってもしてもその位置は検討が付かない。

 屋外に出れば何とかなるか、と一旦窓に視線を向ける。

 

 

 その時、

 

 

「……チッ」

 

 舌打ちした彼は視線を前に戻した。

 彼が一瞬注意を反らしたその時、視界の端で彼女の右手が身体の左側に添えられるのを見たのだ。

 正確には、左腕に備わる灰色の円盾に。

 

「此方の注意を散漫にさせるのが狙い……、「エフエ―」に気を取らせて逃げ延びるつもりか」

 

 注意が戻った事で、時間を止める事も無く彼女は再び逃走を始める。

 その場で止めても良い筈だが、「前例」を考慮して警戒しているらしい。

 または、此方の探知範囲が分からない以上、迂闊に逃走に移るのは危険だと判断したのか。

 

 

 

 なら、この辺りで少し仕掛けるか。

 

 

 

 

 

「……来た!」

 

 歩調を速めた彼が急激に接近するのを背後に見て、ほむらは息を呑んだ。

 一本道の廊下を走って迫ってくる相手に、だが逃げる足を何故か止め、半身を向けて右手の拳銃を向ける。

 危険なのは重々承知だ、だが今は迎撃に出ねばならない。

 

 彼女の()()を、より確実にするために。

 

 最早躊躇なく、彼の胴へ狙いを付けて発砲する。

 正確に放たれた弾丸は、真っ直ぐ胴へと突き刺さる。

 

「無駄だ」

 

 だが彼は避ける素振りも無く、被弾を無視して真っ向から突進する。

 撃たれた辺りから大量の血が噴出するが、まるで彼が怯む様子はない。

 幻影の様な力さえ使わない、その必要さえ「拳銃」相手には無いのか。

 

――なら、これはどうだ?――

 

 そう思いながら、彼女は左手に握っていた手榴弾のピンを親指で抜く。

 此処は廊下であり、遮蔽になる物は無い。

 部屋に逃げ込むことは愚か、完全に伏せる様な時間も無い。

 だから、彼女が選んだのは「通常の」物ではない。

 

 

 強烈な火炎を周囲にまき散らす、殺傷力の高い「焼夷」タイプの物である。

 

 

 彼目掛けて投げた直後に、その反対側へ飛び込む様に身体を投げ出す。

 爆発までに完全に伏せるには時間がないが、爆発の衝撃波に対して出来るだけ身体の表面積を減らすのは決して意味が無い訳ではない。

 彼も流石に手榴弾には警戒したのか、右足を軸に滑る様な動作で身体の向きを変えるや、横の教室のドアを()()()()()中に逃げ込んだ。

 飽くまでギリギリまで使うつもりは無いらしい。

 

 

 

 だが、寧ろ彼女にとっては好都合だ。

 

 今の瞬間、彼女の行動を彼は()()で追っていない、その事実が重要なのだ。

 

 

 

 

 

 廊下を紅蓮の炎が覆う。

 焼夷手榴弾の火炎は廊下の木材に瞬く間に引火し、そこから黒煙が教室の方にまで充満し始める。

 最早廊下の様子を目視で伺うことは不可能だが、それでも彼に狼狽える様子はなかった。

 

「甘い、この程度で逃がす物か」

 

 周りに聞こえない程の小声で呟くや、彼は教室から飛び出し、自ら燃え盛る炎の中に身を躍らす。

 金属すらも歪む程の熱にも怯まず、そのまま砲弾の様な勢いで横切るや反対側の窓を()()()()()()宙に飛び出した。

 背後の炎に背中を照らされながら、彼は自らの「感覚」を解き放つ。

 

「何を惜しんでるのか知らんが、今更追えなくなるとでも――」

 

 その喋りが、唐突に詰まる。

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 必要なのは、「確信」だった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()、その為の材料だった。

 そして、ある種(諜報員)とはその道のプロだ。

 アマチュアにも満たない彼女が裏を掻くには、それなりの「対価」が必要になる。

 

 

 幸いなのは、彼女の体はある意味()()()()()()()()()()()()()事か。

 

 

「……「()」だ」

 

 

 ()()()()()()ほむらは呟く。

 持っていたサイレンサー(消音器)付きの狙撃銃を床に放り捨て、彼女はその場から動き出す。

 その歩みは今までと変わらないが、何故かその体から()()()()()()()()()()音が鳴っていた。

 実は既にその「原因」を知ってはいたが、その時になって初めてほむらは「それ」に愕然とした。

 つい、知りたくもないのに彼女は自らの両手を見下ろす。

 そして、

 

「………………………………、」

 

 ショックを受けたように、彼女は一瞬立ち止まってしまう。

 それもそうだろう、彼女は払った「対価」は余りにも悍ましいものだったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

――『(まず) 最初 知 必要 (たかい)、 彼 能力(ちから)』――

――「それは、既に彼自身が言って――」――

――『(それ) (あらず)、 知 彼 「探知能力」』――

――「……そういえば、妙に鋭い感覚を持ってたりするわね。あの人」――

――『生物 (その) 能力 (すべて) (つながる) ――(はやく) (うごく) (なら) 身体 (かるく)、 毒 (あつかう) 成 身体 耐毒 (つよし)』――

――「知覚の由来を知れば、そこから彼の能力のトリックを暴けるかも、て事か」――

 

 

 

 

 

――単純な()()としての音だけじゃない、多分、物体を伝わる「振動」としての音なんかも掴んでいる。だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――

 

 実はあの時、彼女は彼が教室に退避した後、手榴弾の起爆タイミングに合わせて、倒れ伏そうとする姿勢のまま近くの窓ガラスを壊していたのだ。

 たとえ時間停止を奪われようと、彼女の武器である「盾」はその手にあるし、其処からなら「投げる物」は幾らでも確保できた。

 踏ん張れるタイミングではなかったが、魔力的なブーストを掛ければ彼女にも出来ない事ではない。

 

 だが、彼女の本当の「苦難」はその先だった。

 

――だけど、流石に廊下中を埋め尽くす炎の音や振動の中の物は聞き取れない。だから最初に警戒して避けたのだろうし、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――

 

 単純に「追跡手段」を割り出すだけでは足りない。

 追跡手段から逃れる方法を考えなければならなかった。

 その為に、彼女は己の身を削ることにした。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 常人どころか「奴ら」からしても常軌を逸した、余りに悍ましい方法で。

 

 

 魔法少女の身体は、極端を言えばソウルジェムそのものが破壊されなければ問題ない。

 そして彼女等は共通して、理解さえすれば汎ゆる感覚を遮断できる。

 例え、一般的な魔法少女としては()()なほむらであっても、例外ではない。

 

――でもこれで、少なくとも予想に裏付けは出来た……――

 

 再び動き出した、彼女の体から今も響く乾いた音は、高熱に炙られて炭化しかけてる皮膚の摩擦音か。

 ゆっくりとした歩みのはずなのに、息切れや動悸が激しいのは、高温の空気に肺が焼かれたからか。

 そこに映る筈もないが、思わず窓の方から目線を外す。

 理解していても、やはり実際に見るのとではショックが違う。

 

「後は、「アイツ」と、合流できれば……」

 

 既に、彼女にまともな戦闘能力は無い。

 全身に酷い火傷を負ってるのもそうだが、何よりこれ以上彼の不意を突けるとは思っていない。

 此方の意図は既に知れているだろうし、そう知ったなら向こうも出し惜しみはしないだろう。

 

 彼女が火の中から動き出す、その直前。

 スコープ越しの彼の姿が、空中で姿勢を崩したその体が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 彼が本気になった、その虎の子の「能力」を解禁した、その様を知っているから。

 

 

 

 

 

 やっとたどり着いた、廊下の端の階段。

 手を伸ばした手摺が、()()()()()()()()()()()

 彼女は、何処か諦めたように息を吐くだけだった。

 

 

 

 

 

「……油断しすぎたな。お前はともかく、「アレ」が居ることを過小評価しすぎたか」

 

 ぼんやりと遠くに聞こえる、その声には何処か以前のような力がない様に感じる。

 グラグラと頭が不自然に揺れて、その度に後頭部に鈍い痛みが走る。

 全身に感じる倦怠感を無理矢理跳ね除け、手足をなんとか動かそうとして、そこで初めて自分が仰向けの姿勢になっているのに気づいた。

 ぼやけた視界の端で微かに瞬いて見えるのは、自ら起こした校舎を燃やす火の光か。

 

「だが正直、「アレ」の入れ知恵が有るとはいえ、お前はもうちょっと「人間らしい」奴かと思ってたよ。けしかけた俺が言うのも間違っているだろうが、()()()()()()()()()()()()()()

 

 動こうとして、なんとか体を横にしようとするが、何故か上手くいかない。

 腹の辺りで、何かが引っかかっている気がする。

 腕を動かしてその辺りに持って行くと、手で握れる太さのプラスチックの棒のようなものに触れる。

 丁度、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「この行動力は危険だ、既に想定していた「回答」を超えている。敵味方以前に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 光の輪郭が少し変わり、そこに「誰か」が居るという事を察する。

 その人影が少しづつ大きくなり、同時に微かに「奇妙な風切り音」が聞こえる様になる。

 首を少し傾けて、改めてよく見てみると、人影の片手が「首」の辺りを強く押さえていた。

 

 

()()()()、だ』

 

 

 血のように赤く光る瞳を向けて、荒く息を吐く彼が言う。

 そのセリフに()()()()()()()()()()()()()()()ような、何かが抜けるような音が混じるのは、自分の幻聴ではないだろう。

 

『片足を踏み出しかけている。そこまで引き出さねばならないと、()()()()()()()()()()()()()()。……これ以上此処に残らせる訳にはいかない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 バキリ、という音が響く。

 彼の体内から、何か大きく仕組みを変えるように、構造を変更するように立て続けに音が響く。

 目の前で、まだ人間らしさを保っていたシルエットが、少しずつそれを失っていく。

 人を捨て、化物としての「内面」を晒し始める。

 

『既に、ある程度の「成果」は得ている』

 

 その言葉に、先のような抜けるような音は消えていた。

 

『お前が「アレ」と共に動こうが動くまいが、それは利となれど不利ではない。初めからそんなものを()()()()()()()()()。これは、ただお前を見たいだけだった。甘い判断で勝手に動かれるぐらいなら、適当な役割を与えて、多少のリスクと引き換えに当たり障りない「成果」を掴ませる、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その指針を見出す為だった。……だがお前は、言わば「自ら突っ込むタイプ」だ。それがお前の()()()()()()()()、お前にとっての最善は「自ら泥沼に入っていく」ものだ』

「……それは、」

『「(魔法)を奪われた」、その事実でお前の行動は変わってしまった。……それだけなら良かったが、どうも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 煌々と輝く二つの紅眼が、言葉を失う彼女に冷徹な光を向ける。

 その位置が、次第に()()()()()()()()()()()()

 

『そもそも、本気で「アレ」がお前を助けると思ったのか。仮に「アレ」自身が()()()()()()()()()()()()()()()、それにお前を同行させる理由にはならない筈だ。あれは「戦略家」の側面もあるのだろう? そいつが、態々()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

 一瞬、ほむらの思考が止まりかけた。

 それは、単純に自らが「アイツ」の思惑を殆ど知らずに、希望的観測だけで行動していたという事に気付いただけではない。

 それとは別に、そもそもの話で、

 

「……ちょっと待って。「アイツ」が始めから助けないと分かっていて、それでッ――」

『今頃なら、比較的警備の甘い「西側」の拠点に着いてる具合か。彼処は避難した民間人も多い。服装を変えれば難なく紛れ込めるだろう』

 

 ………………………………。

 等々、ほむらの思考が真っ白になった。

 そうして、そして初めて、自分が、自分の行為が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『お前が来る前に既に「取引」は成立していた。あの時点で、「アレ」は始めから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……それが()()()()お前の傷を手当して行ったようだが、ま、何かしらの工作でも仕掛けてると見ても疑いは無いだろうな』

 

 何もかも、始めから予定調和だった。

 そこから脱するつもりが、自らで動くつもりが、その実、()()()()()()()()()()()()()()()

 ただ、無闇にジタバタと暴れただけ。

 問題は、その結果が彼女の「(魔法)」で想定以上に増幅してしまうという事。

 幼児が駄々をこねる勢いで毎回家が火に包まれてしまう様な、どんな不幸や意図があろうと()()()()()()()()()()()()()()()状況になってしまう、そんな危険性を孕むという事。

 

『という訳で、残念だが此処までだ。出来る限りの尊重はしてきたつもりだが、此処からは「俺の利益」を追求させてもらう』

 

 彼の身体から響く音が次第に落ち着いていく。

 プロセス(変身)が完了する。

 後は、速やかにタスク(処理)を遂行するだけ。

 その姿は、もはや今までの「彼」からは似てもつかない物。

 背後の火の逆光で細部は見えなくても、既に()()()()()()()()()()()()()()()()()全てを言っている。

 対して、地面に縫い付けられたほむらに出来ることは何もない。

 ボロボロになった身体では、拳銃一丁でもまともに撃てるかどうか。

 時間を巻き戻すにしても、もしその力を「アイツ等」に知られればどうなるか。

 確実に「この世界」から逃げ果せる、その確信を持てるのか。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 今まで一切を疑わずにいた自らの行為に、初めて疑問が向く。

 その思考が、彼女の全ての行動を阻害する。

 

 そして、全ての抵抗を放棄した彼女の方へ、「彼」が動き出す。

 多くの利益のために、「一人」が踏み潰される。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が完成してしまう。

 それは、「彼」も最後まで()()()()()()結果かもしれない。

 それでもこの先の悲劇を回避するためには、これ以上は「本当に」庇う事が出来なくなるから。

 その前に、「現実」で押し潰す。

 完璧に壊れる前に、取り返しがつかなくなる前に、()()()()()()()()()

 一人を犠牲にするという「罪」を背負う、その覚悟を彼が持つ。

 

 

 まさに、

 

 

 その前に、

 

 

 

 

 

THEN(ならば) MY ANSWER IS IT(これが私の「利益」だ)

 

 「彼女」は、()()()()の感性で動く。

 

 

 

 

 

 「彼」の動きが止まる、「声」に反応して注意が逸れる。

 その瞬間に、それは起きた。

 

 真っ白な「閃光」が、流星の如く学校の上空を一直線に突っ切ったのだ。

 

 進路沿いの木々が大きく揺らぎ、窓ガラスが尽く破裂する。

 大きく膨らみ、強靭な身体となった「彼」の身体がぐらつき、吹き飛ばされかけたが腹で固定されているほむらが苦痛の声を上げる。

 だが、それで終わりではない。

 

『…………あの野郎』

 

 彼は気付いた。

 学校上空、あの「閃光」の通った進路上に複数の物体が撒かれている。

 それは大小様々の直方体の物体で、爆発するような物体ではない。

 それは広義には、日常的に手に入るもの。

 意識せずにお世話になっているだろう()()()()()

 だが、その「処理」には適切な手法が必要なもの。

 

 彼女達の、その驚異的な「能力」の一つ。

 膨大な、()()()()

 

『あの野郎ッ!!!』

 

 

 

 

 

 ()()が起きた。

 それは火炎に依るものではなく、ばら撒かれた乾電池から自動車用のバッテリーまでの「蓄電機」が、一斉に全ての電力を放出した事に依るものだった。

 彼女の、「エフエー」の放った電撃に誘発され、それに上乗せする形で圧倒的なエネルギーが流し込まれ、まるで爆発のような現象になったのだ。

 所詮、欺瞞能力によって残像のように姿を晦まそうが、本体そのものが大きく動いている訳ではない。

 「彼」自身の素早さは分からないが、それでも一瞬で数百メートルを移動できるものではない。

 故に、確実に打撃を与える術は、実は最初に()()()攻撃を仕掛けた時点で、彼女にはある程度見えていた。

 問題は、今の彼女の「身体能力」だけでは、実現性が薄いという事。

 その差を埋めるには、どうしても「時間」が必要だった。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その時間は、「あの人間」が稼ぎ、その役を果たした。

 ならば、「彼女」に課される「責務」は、その労に報いる事だけだった。

 

 

 

 

 

 バッテリーが地上に到達する直前、適切に起爆するために()()()()()()()()()()()()()()()「エフエー」は、その速度を維持したまま建物の隙間をすり抜ける様に飛行し、学校周辺を離脱する。

 例え高度な聴覚や触覚で追跡されていようが、それを振りきってしまうレベルの素早さで。

 地面や建物の近くを意図的に飛んで、それぞれに伝わる衝撃を干渉させて撹乱しながら。

 強引とも言える方法で追手を引き離した彼女は、そこで漸く片手に握った()()に目を向ける。

 その先に吊り下げられる、今は意識を失った一人の「少女」を知覚する。

 褒められる事ではなかったかもしれない。

 それでも、「人間」としての己を捨ててでも、大切な「何か」を守ろうとした彼女(ほむら)を、「主」に反目してでも「種」を守ろうとした「エフエー」は、

 

NICE GUTS(よくやった) BUDDY(友よ)

 

 何処か、羨ましがる様な声色を込めて、そう労った。

 

 

 

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