UNSUNG EVOLUTIONS   作:B.O.A.

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「……本日は、お忙しい中、お集りの所有難うございます」


「ふん、誰一人会場に居ない癖に(・・・・・・・・・・・)「お集り」とはな」


「喧しいぞ、「新入り」。マナー(規範)に適応出来ない様では、不良思想(・・・・)として「追放」の対象になっても文句は言えんぞ」


「10年経っても「新入り」扱いって時点でテメエの古い思考が見えてんだよ。一回油刺さねぇと動かないんじゃないか?」


「何だとこの——―」


「待て、「新入り」に乗せられてる時点でお前が錆びてるのは事実だ、受け入れろ。……それより、とっとと何故今更招集したのか言ってくれないか」


「はい、では先ず配信した資料をお読みください――――」












Break-01

 ……どうして私は、此処に居るのか。

 ずっと、それだけを考えて、彼女は世界にあった。

 何故、私は何か悪い事(・・・)でもしたのか。

 問い掛けても、ずっと、まるで「家族」の様に共にあった声はもう聞こえない。

 たった一人、この世界に放り出された。

 

 答えを見付けたとは言わないけど(・・・・・・・・・・・・・・・)、それでも、今分かっている事が有るとすれば。

 私は、この世界に生きる人間達の「有りの儘」を見てきて。

 その上で、「彼女達」のやっている事は、決して許されない「偽善」であるという事。

 

 

 

 ……それでも、その「偽善」を行く“彼女達”を、何処か羨ましく(・・・・)感じる。

 そう思ってしまう、この“私”が、何よりも「怪物(Evil)」であるという事だけ――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A. Revised Edition

      ~UNSUNG EVOLUTIONS~

 

 

 

 

 

 

「Breaker's」 Prologue:嘗て夢見た「幻想(Bee Line)」より――。

 

 

 

 

 

 彼女は、必死に“逃げていた”。

 血の様な赤い空の下、降りしきる雨の中を、がむしゃらに。

 細い路地を、泥やゴミが散らかる其処を、息が上がる事も構いなく走っていく。

 跳ねるそれらで服は汚れ、伝った雫が視界を遮る。

 すると、壁面の汚れも、服の汚れも、全部もっと恐ろしい色の何か(・・)に変わって行くような気がして。

 

「――ッああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

 叫ぶその声は、果てしない苦痛と恐怖を天に呪う。

 それでも胸に開いた様な穴の様な絶望は消えず。

 痛む足の悲鳴を無視して。

 前も見ず、滅茶苦茶に角を曲がって。

 

 

 

 

 

 それなのに(・・・・・)

 

 

 

 

 

「……ぁ」

 

 ふと前を見れば、

 

あの曲がり角が目の前にある(・・・・・・・・・・・・・)

 

 それは何処にでもありそうな建物と建物の間の路地の角、ゴミの集積場として残された小さな広場のその先は今は工事中という事もあって、フェンスで仕切られ通り抜けできない。

 何故か、そんな記憶が直ぐに浮かぶ(・・・・・・・・・)

 そう、此処に来たのは、“確か”学校の帰り。

 

 

 

 迷子になった犬を探そうと来た、踏み入れた事も無かった路地だった(・・・・・・・・・・・・・・・・)と言うのに。

 

 

 

 嫌だ、あの先だけは、何が有っても絶対に見たくない(・・・・・・・・)

 そう思うのに、地面に縫い付けられたように足は動かない。

 それどころが、まるで操り人形の様に(・・・・・・・)妙に滑らかな動きで前に踏み出し始めた。

 どれだけ頭で拒否しても、足の動きに関係ない様に地面さえもが後ろにスクロールして(・・・・・・・・・・・・・・・・)、その角の先へと運ばれてしまう。

 ギュッと目を瞑る、絶対に、開いたりはしない。

 

 

 

 

 

『……“さやか”?』

 

 だけど、その声(・・・)で、瞳は魔法の様に開いてしまい、

 開けた視界には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さやかー、起きないと遅刻するわよー!」

 

 一般的な賃貸マンションの一室、その扉の向こうにあるリビングから女性の声が聞こえる。

 その声が自分の母親だと知って安堵する一方で、心には重い疲労が残っていた。

 

「……はぁ、最近多いなぁ(・・・・・・)。この夢」

 

 少女、「美樹さやか」の数ある内の一つの悩み。

 忘れたくても忘れられない記憶(・・)、誰にも言えない“苦しみ”。

 頭を振って、それを何時か忘れられる様に、祈るように一回だけ大きく息を吐いて。

 

 

 

「……ってヤバッ! 本当に時間がなぁいッ!!?」

 

 慌てた様に、「何時も通りに」ベッドを飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、突然だが時間は夕方に移行する。

 学校を終えて親友たちと別れ、彼女はふと思い付きで病院に向かう。

 最早顔見知りレベルに親しい受付の看護師達に挨拶し、目指すのは3階の個人病室。

 “重度の病気、外傷”の患者が入る病室の一室に、慣れた様に彼女は辿り着く。

 

「……ふぅ」

 

 扉の前に立ち、何処か緊張した面持ちで息を整える。

 服や髪が乱れてないか、確認する様な仕草を見せる。

 そして、気合を入れる様に肩をストンと落とし、スライド式の扉に手を掛ける。

 

 

 

 

 

 その直前に、ガラッと扉が動いて、

 

「あら」

 

 その向こうで立っていた「誰か」が驚きの声を上げた。

 

 

 

 

 

 「あっ」

 

 さやかも同じ様な声を上げる。

 だけど、その声色は単純な驚きと別に、小さな「忌避感」も含まれていた。

 僅かに後退る、その行動を知ってか知らずか、その「誰か」はドアの脇へと身を寄せた。

 

「どうぞ。私は彼の飲み物を買ってくる所だったから。貴方の分も用意するわね」

「……はぃ」

 

 導かれる様に病室に入る。

 入れ違いになるように出てったその人に目もくれず、彼女は病室の中央に安置されたベッドの上の「友人」に声を掛けた。

 

「あの人、まだ来てたんだ」

「まだ半年だからね。僕自身、事故のショックで最初は取り乱してたし」

 

 嫌っている訳ではないが、何故かさやかは「あの人」に苦手意識を持っていた。

 距離感が掴みにくいというか、丁寧なのに気さくにな印象があるというか。

 それよりも一番なのは、やはり「事故」の直後の彼に対する態度(・・)だろうか。

 

「恭介、迷惑だったら断っていいんだよ? あの日の事を無理に思い出そうとして、辛い思いばっかするのも傷に悪いよ(・・・・・)

「まぁ、今でもショックかと言われればそうだけどね。ただ、このまま何もしないで塞ぎ込む位なら、「あの人」の手伝いになれた方が少しは楽になる。だから心配しなくても良いよ」

 

 「上条恭介」はそう言って、起こしていた上体をベッドに倒す。

 ベッドその物が若干上に傾いているので、椅子の背もたれに腰掛ける様な角度になっている。

 その表情や態度を見て、彼女は思わず溜め息を吐きそうになった。

 

 心配しないでって、そんな「世捨て人」の様な風貌で言われても説得力ないよ。

 

「まぁ、と言っても恥ずかしながら。余りあの日の事ははっきり思い出せないんだけどね。頭も割と強く打ってたって聞いたし、記憶が飛んじゃってるのかも」

「……それ、初耳なんだけど。大丈夫なの? いきなりボケたりとかしないよね」

「仮にそうでも、さやかのド忘れよりはきっと問題ないよ」

「そっか――ってちょと待てゴラ」

 

 詰め寄ろうとさやかがベッド脇の椅子に腰かけた時、後ろの方でドアが開く物音がした。

 入って来た人間は、二人の注目を浴びながらベッドを回り込み、せり出したテーブルに二人に買って来た飲み物を置くと、自分は缶コーヒーを開けてさやかの対面に座った。

 

「脳のトレーニングに関しては親友が幾つか「手法」を持っているので、良ければ聞いて来ましょうか」

「何でアンタまでナチュラルに乗っかってるのよ」

 

 思わず年上の筈の人物にタメで突っ込むさやか。

 一方で、それを意に返さない様な風にさやかを一瞥し、缶コーヒーを一口飲む。

 

「“身体の発育に対して(おつむ)の成長が進んでいない”って話ですよね。見た所、バストもこの1か月で一回り増えてますし、悩むのも頷けるかと」

「そんな話してないしそもそも余計なお世話じゃ! 後そこの恭介! 「えっ、そうなのか」って顔して胸を覗き込むな!!」

 

 胸元を腕で隠して、羞恥で顔を真っ赤にして怒鳴るさやかに、顔を少し赤くして顔を背ける恭介、一方でその“元凶”は悪戯好きそうに小さく笑う。

 そうだった、一番重大な理由があった。

 「この人」、矢鱈自分を弄るのだ。

 

「まぁ、成長期の悩みと言うのは、様々な事にあらぬ思索を巡らせる時期です。然るべき時に正しく成長できれば、今お頭(おつむ)が弱かろうが関係は無い。ですから、下手に悩まず、一先ず自分が一番強く思う事をその様に考えて動けばいいのですよ」

「フォローしてるつもりなのだろうけど、サラッとアタシの頭馬鹿にしてるよねアンタ」

「……所で上条君、さやかの成績は」

「僕が居なくて、鹿目さんや志筑さんに迷惑を掛けてるって思うと、心が重いです」

「何でアンタ等一緒になって保護者面してんのよ!? 何時の間にそんなに仲良くなってやがった!?」

 

 大袈裟に頭を左手で抱える恭介に、等々若干涙目になりつつあるさやか。

 流石にマジ泣きで病室を飛び出されるとマズい、と思ったのか、コホンッと咳ばらいが病室に響いた。

 

「ま、成績に関しては最悪、私も力になりますから。これでもソコソコのキャリアなのですよ?」

「……あの、凄く個人的なイメージなんですけど、キャリアの人は刑事(・・)として現場にあまり出ない様な印象が」

「私は警察庁本部(・・・・・)から直々に派遣されたのです。……まぁ、貴方達にはイメージしにくいかもしれませんけど」

 

 「警察庁」というと、彼女等程度では精々「東京の“かすみがせき”とかにあるお偉いさんの役所」のイメージしかない。

 普段から難しいドラマを見ずにバラエティー番組ばっかのさやかや、ある種「音楽バカ」である恭介ではなじみが無いのだろう。

 

 ただ、彼女が警察の人間で、そして彼の元に足を運ぶその訳は、流石に二人も知っている。

 

「とは言え、キャリアが居れば何とかなる訳でも無く、少しでも手掛かりが欲しいのが現状です」

「……進んでないんですか?」

「あんまり漏らすべきではないんですけどね。まぁ、被害者当人の上条君は知る権利はあるか」

 

 年頃の青年である恭介が入院する理由になった「事故」、それがどうも面倒な事(・・・・)になっているらしい。

 あまり詳しくは教えられていないが、その事故の原因とも言える存在が、彼女の追っていた「事件(ヤマ)」に関わるらしい。

 

 上条恭介の青春時代を奪ったのは、「自動車事故」だった。

 具体的には、「逆走」していた乗用車を避けた大型トラックがスリップし、それに下校中の彼が巻き込まれたのだ。

 集中治療によって何とか一命はとりとめたが、その代償はかなり大きかった。

 全身に万遍なく残る麻痺、特に右腕が酷いものだった。

 一時的な心肺停止から蘇生させるのに時間が掛かり、結果脳への後遺症を患ったらしい。

 今はリハビリと投薬で、左腕や両足の感覚は戻りつつある。

 だが右腕だけは、全く快方に向かっていない。

 

 さやかは彼の全く動く気配のない右手を見て、少し気分が落ち込む。

 出来る事なら代わってあげたい、それが叶わない願い(・・・・・・)だと知っていても、そう思ってしまうう。

 

「周囲の防犯カメラの映像も不鮮明。目撃者も、そもそもトラックに集中してしまって「逆走」していた車に関しては少ない……そしてその数少ない「目撃証言」が貴方から出た、だからこそこうやって訪ねているのです」

「他の人達の所には?」

「何度か。でもあまり芳しくない」

 

 彼女が追っていたのは、逆走していた車(・・・・・・・)の方。

 ある種「事故」の本当の元凶であり、その点で言えばこれは「事件」だとも言える。

 訳については教えて貰ってないが、そもそもスーツ姿の人間(・・・・・・・)が追っている時点で相当な相手なのだろう、と二人は考えていた。

 ただその人物像はかなりマイルドな想像、具体的には「ルパン三世」的な感じだ。

 

「まぁ、此方の事は此方にお任せを。必ず辿り着いて見せます」

 

 その言葉には、有無を言わさない堅い意志が込められていた。

 二人も閉口せざるを得ない。

 

「ま、本日はそんな所です。久々にさやかも弄れましたし、満足しました」

「……アタシはもう御免なんだけど」

「何か思い出したら、必ずお伝えします」

 

 期待して待ってます、と言い残して「その人」は病室を後にする。

 その廊下を歩き去る音を聞いて、ぷはーっ、とまるで息継ぎのような声を出してベッドの縁に突っ伏すさやかを見て、楽しそうに恭介が笑う。

 

「言って、さやかも楽しそうじゃん。「あの人」だって、本気で嫌がってる時は弄らないし」

「でもさ~、結構疲れるんだよ? 「あの人(・・・)」だし。友達とか親戚とかなら分かるけど、会って3時間であのノリになってたじゃん最初の時点で」

 

 ムスッとした顔で恭介を見上げるさやか。

 普段はまどかや仁美を弄る彼女が、逆に弄られて見せる困った様な顔は何処か滑稽で、とうとう少し吹き出してしまった。

 

「まぁまぁ、寧ろ「あの人」だからこんな風に笑っていられるんだよ。もしさ、「あの人」じゃなくてテレビの刑事の様な人が来て「事故」の事聞こうとして来てたら、僕は多分、こんなに長い間かけて、ずっと「その事」を思い出そうとはしなかったよ。途中で断ってたと思う」

「……確かにね、それはそうだと思うよ」

 

 

 

 

 

 

 

「意外な高評価、これはもっと弄っていかねば」

「まだ居たのかこのヘンタイ!!?」

「……変態って、そう思われてたのですか……」

 

 ドアを僅かに開けて聞いていたらしい「その人」が、さやかの絶叫にショックを受けた様にガックシと手を付いて落ち込む。

 それが結構ガチな反応に思えて、慌ててフォローに入る二人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「その人」の名前は「ミラ・L(レーゼヴァイル)・ルイズ」。

 日本人には思えない、190cmの高身長と白磁の様な肌。

 金髪をサイドテールに纏め、透き通るような空色に近い碧眼は目力に溢れる。

 女優の様な完璧な美貌を持つ一方で、アスリートの様な引き締まった筋肉が手足を覆う。

 丁寧で真面目な性格、でも気さくでお茶目な一面も持つ。

 文武両道を地で行く才能、その癖サブカルチャーや若い世代の流行にも通じる。

 

 完璧人間、とはまさにその人。

 嫉妬するのが馬鹿らしくなる程の、圧倒的な魅力。

 

 でもそんな彼女が、さやかは何処か苦手(・・)だった。

 嫉妬してたり、弄られるのが嫌だったり、色々理由は出てくる。

 ……でも彼女は、その根源的な理由(・・・・・・・・)に、自分自身気付けていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 病院を出て来たミラが、病室の方を振り返って一息吐く。

 弄るのは楽しいのだが、無限の活力に溢れる子供と接するのはそれなりに疲れるのだ。

 

「あの様子なら問題ない、か」

 

 そんな風に呟く彼女の携帯に着信が入る。

 通話に出ると、酷く雑音の少ない(・・・・・・)声が聞こえて来た。

 

『ミラ~? またあの子の元に行ってたの~?』

「……非番の筈ですが」

『まぁ別に良いけどね。貴方がその程度で支障を来たすとは思ってないから。……でも、ちょっと最近通う頻度が増えてるよね』

 

 その声は平淡だが、明らかに棘のある言い方だ。

 見抜かれてたか、そう思った彼女は正直に答えた。

 

「……定着し切る(・・・・・)のがそろそろの筈。それはご存じでしょう」

『うん、でも処置は完璧だったよね。態々増やす意味があるのか問いたいの』

「人間の感情とは、理屈だけでは納得出来ない物なのです。分かっていても、理解してても、納得が行かないなら不安が生まれる(・・・・・・・・・・・・・・・・)

『ふぅーん』

 

 その口調は、何処か他人事の様な言い様だ。

 共感できない価値観を見る様な、冷たい拒絶(・・・・・)を込めた声。

 思わず彼女のため息が漏れる。

 

 

 

 ……貴方は、そんな風になる人べきじゃ、無かったのに(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

『まぁ良いよ。取り敢えず直ぐに戻って来て。物資(・・)の受け取りの準備があるだろうから、検品して欲しい』

「分かりました。直ぐに向かいます」

『こればっかりは、貴方じゃないとどうしようもないからね。……私が行っても迷子だと思われて摘まみ出されるし』

「いっそ、その時だけ“身体を大きく”したらどうです? 貴方なら訳ないでしょう?」

 

 すると、急に向こうの声のトーンが落ちた。

 嫌な記憶を思い出したような反応だ。

 

『……実は、やった事はあるんだよ、大分前に。貴方に会うよりも前』

「そうだったのです? 初耳ですが、上手く行かなかったのですか?」

『いや、結構バランス良く出来たし、動きが重くなるのは仕方ないとして、そこそこ自然な動作も出来たよ。……出来た、けどね(・・・・・・・)

「……うん?」

 

 微妙に含みのある言い方に、ミラも眉を潜める。

 

 

 

 

 

 

 

『そこら中のセレブとパパラッチに尻を、そのセレブのパートナー達と雇われヒットマンに(タマ)を、別荘の寝室まで追っかけられてね』

「……、」

『「Gran FORT(グランフォート)」幻の美女会長、現代に蘇ったヘレネ―(傾国の美女)、なんて話、聞いた事あるでしょ? ……ホント、貴方が来てくれて助かったよ』

 

 

 

 

 

 

 

 因みに、寝室に侵入された時は「元の姿」だった為、相手が混乱していた所をベッド脇の電気スタンドでフルボッコにして退治したとか。

 因果応報とは言え、相手からすれば理不尽だっただろう。

 

『あれ以来、絶対に人前であの姿にはならないと心に決めた。何と言うか、「存在が災いを呼ぶ」ってああいう事なのかって初めて実感できたわ』

「……そんななのですか。其処まで貴方が言うと、寧ろ怖いもの見たさの興味が湧きますね」

『止めた方が良いかも。セレブって言ったけど、アレ異性だけじゃなくて同性も含むから(・・・・・・・)。挙句に、一部は本来ノンケだった人を目覚めさせてしまったというか、最早淫魔の領域というか』

 

 美女過ぎて戦争を引き起こした(・・・・・・・・・・・・・・)神話上の人間に例えられるだけある、と言う感じらしい。

 どうもトラウマになってる節があるように感じたミラは、これ以上突っ込むのはマズいと感じた。

 

「事情は分かりました。一先ず、私はこのまま港に向かいます」

『よろしく。……後、一つだけ』

 

 先を促すと、彼女は少し“悔しそうな”感じでこう言った。

 

 

 

 

 

ごめんなさい(・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう良いよ。私は、何もかも分かっているから。

 

 

 

 

 

 貴方の悔しさも、悲しさも、辛さも、全部知ってるから。

 

 

 

 

 

 こうやって話してるこの時間も、もうそんなに長くない(・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 だからせめて、貴方がその時を、後悔無く迎えられるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 貴方が「ユイ」で居られる、その最期の時(・・・・・・)まで、私は貴方の傍らで戦うから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 貴方と同じ世界(地獄)に、私も逝く為に。

 

 

 

 

 







 悪夢に悩むさやかの前に現れたのは、また悪夢だった。



 希望の光に隠された破滅と怨嗟。



 隠された選民の築いたポトシ銀山。



 偽善と蔑視、傲慢と絶望とを口に含んで吹き付けた、



 ここは見滝原という名のプランテーション(奴隷農園)





「次章:偽りを齎す当事者」





 さやかもまた、地獄に落ちるのだろうか。




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