バイブ書道   作:プリン

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バイブ書道 8

十月二日 〇五四八 七駆居室 朧

 

 頰をなぜる冷たい感触。凹凸はあるけれど、ざらざらしているなんてことはない。かといって、金属ほど容赦なく体温を奪ってくることもない。陶器みたいな軽さで、それ程脆くもない手応え。キチン質って言うんだっけ。とにかくこれは毎日起こしてくれる鋏。

 

 カニさんに起こして貰うようになったの、いつからだっけ。最初はいつか目に刺さるんじゃないかって心配してたけど、ちゃんと避けてくれてるみたい。

 

 まだ身体は起こさないけど、いつも目が覚めたら甲羅をそっと撫でる。言葉でお礼を言った方がいいのかもしれないけど、あたしはずっとこう。みんなより起きるのが早いから、っていうのはもちろんだけど、カニさんのためにも。返事のできない挨拶を続けられると、なんだか悲しくなるんじゃないかな。多分。

 

「ね」と言う代わりに、鋏の前に指を差し出すと、カニさんが指を突く。ハイタッチ。

 

 まだまだ蒸し暑くて、布団を思いっきり放り投げたいけど、みんなのためになるべく静かに身体から剥がす。それから、頭の中で今日の計画を立てる。筋トレして、遠征に出て、いつもの訓練……と、思い浮かべた予定表に大雑把に任務をはめ込んでいく。そうしつつも身体は動かして、布団を畳んで、寝押ししていた制服を羽織る。朝ごはんを食べてから筋トレに行こうか。栄養が回ってなきゃ運動してもあんまり意味がないみたいだし。でも、満腹だと動く気なんて起きない。

 

 なんて考えながらも、みんなを踏まないように、明け方の薄明かりの中で目を凝らす。曙ちゃんの寝顔……普段からこの十分の一でいいから緊張を解いていればいいのに。逆に漣ちゃんはもっと警戒したほうがいいと思う……寝付くときは布団を被ってた筈なのに、いつのまにかうつ伏せで寝てるし、なぜか右手は頭の上まで伸ばしてるし……。

 

 最近はいつも一番遅くまで起きてる潮ちゃん。昨日も例の変な音を立てながら変な声を出してた。何してたか、なんでこんな気持ちよさそうに寝てるのか。見当がつかない訳じゃないけど、潮ちゃんがそこまで大胆なことをするとは思えない。我慢できないくらい溜め込んでるのかも知れないけど……。

 

 とにかく、この件は曙ちゃん漣ちゃんと話し合うとして。

 

 寝間着にしていたジャージの上を脱いでシャツ一枚になったら、もう準備完了──じゃなくて、しゃがんでカニさんに手を伸ばす。自然な動きで、カニさんはあたしの手を昇ってくる。チクチクして痛いってことは全然無い。こんなに足は尖ってるのに、尖ってるからあたし達の身体だって登れてるはずなのに。やっぱり、小さくて軽いからかな。

 

「あっ」

 

 くすぐったくて声が出ちゃった。痛くはなくても、Tシャツ一枚のときにうなじをよじ登られるとくすぐったい。カニさん、今日は頭に居たいんだ。別に、大丈夫。訓練中は運動の邪魔にはならないように動いてくれるから。

 

 たたきに腰掛けて、運動靴に足を入れる。ちょっと靴が緩い気がしたから、紐をほどいて固く締めなおす。

 

 振り返っても、やっぱりまだ誰も起きてない。だらしないくらい、ぐっすり眠ってる。

 

 行ってきます。言葉にはしないけど、出発するときはいつも心の中で言ってる。みんなと、会ったことのない誰かがこうやって眠るために。あたしは、ここに帰ってくるために。

 

 練兵場は一周八〇〇メートルくらい。ここを何周したところで、あたし達は滅多なことでは筋肉痛を引きずったりしない。それでも毎日走るのは、やってどうなりたいとかじゃなくて、やめたらそれでこれまでの積み重ねがムダになっちゃいそうだから……多分。本当に? どうなんだろう。本当は朝からもっと追い込んでもいいのかな。いや、きっと大丈夫。そのくらい追い込んでも、あたしは平気だとは思う。けど、朝からヘトヘトでご飯がおいしくないのは、あんまりうれしくない。

 

 だから、ランニングはもう終わり。別に息は上がらないし、脚ももつれないけど、ちょっと汗はかく。

 

 鎮守府の本館までは、小走りで呼吸を整える、部屋には寄るけど、上がり框に置いた荷物を取るだけ。また行かなきゃ。鍛錬は終わってない。

 

 走ってると、「自分が無くなるタイミング」ってあると思う。

 

 まだ追い込めるって意地だったり、あと何分走ればいいんだって弱音だったり、とにかく走ることしか考えられなくなる一線。そこを超えてしまうと、普段の心配事とか、漠然とした不安とか、そういうものが無くなって、走ることだけに集中できる。

 

 でも、今日は何故だかそこまで行けなかった。あたしの呼吸に合わせて、潮ちゃんの息遣い、それと、押し殺した悲鳴みたいな声、あれを思い出しちゃって。何か困っていただけであって欲しいけど、でもあの声はなんとなく切なげだったような……。それに、あの音……工具とか掃除機とか、機械なのがあからさまな唸り。噂には聞いたことあるけど、やっぱりアレなのかな……。

 

 どうして潮ちゃんがアレを? 鎮守府でアレを手に入れる手段なんて無いはず。いや、スマホ勢ならこっそり通販で買うこともできるのかも。いや、そもそも潮ちゃんはあんなものにハマるような子だったかな。

 

 どうすればいいんだろう。あれは恥ずかしいことなんだってあたし達が教えてあげなかったからなのかな。いや、身体を壊さない程度なら、見守ってあげるべきなのかな。

 

 なんて考えてるうちに、本館の突き当たり、ガラス戸の部屋に着いた。廊下側の壁は鏡張り、反対側は大きなガラス窓になってる。窓側にはたくさんのトレーニング機具が並べてある。

 

 この部屋は、鎮守府の他の所が、木造の、昭和レトロにこだわった内装だから、明らかに浮いてる。

 

 室内鍛錬場。艦娘も身体が資本!  って一部戦艦の鶴の一声で整備された施設で、使ってる人はまだ少ないみたい。あたしは駆逐艦だてらにこうして毎朝来てるけど。

 

 ガラス戸を押して鍛錬場に入る。廊下とか執務室と同じ板張り。だけど、ほかの所の床より少し明るい色。もっと違うのは、やたらとテカテカしてること。ニスが違うのかな。ガラスの膜が張ってるみたいに、つるつる、つやつや。そこに座り込んで、柔軟体操。まあ、何したってあたしの身体が壊れたりはしないから。腰と腕とふくらはぎを伸ばして、筋肉を慣らすというよりは、可動を確認するくらいの気持ちでさっさと終わらせるけど。

 

 さて。腰を上げて機具の方に。機具が並んでる方の床には、光沢のない、真っ黒なゴムが敷かれてる。絵の具がはねたみたいに、うっすらと白い水玉模様が見える。みんなの……汗。戦うための身体だから、沢山冷やすために汗をかくのか。それとも、こんなになるまで追い込んでいるのか。とにかく、これは文字通りみんなの忍耐の結晶。

 

 並べられた機械には、滑車や錘が組み合わさった複雑で大きい物もあるけど、今日はそれは無視。まっすぐ、合革張りの長椅子みたいな機具に歩いていく。腹筋用のベンチ。椅子で言う座面が水平で固定されているのを見ると、ああ、前の人はこの程度だったのか、なんて、ちょっと誇らしくなる自分が嫌になる。

 

 床についてない方の端を持ち上げて、角度を一番急にする。足元には三角柱が渡してあるから、膝がそれに沿うように脚を乗せると、うまいこと固定される。

 

 一度、深呼吸。頭が斜面の下だから、どんどん血がのぼってくる。よし。上体を持ち上げる。

 

「んっ」と、声が漏れる。

 

 最初はなるべく声が出ないようにやってたけど、仕方ないのがわかった。声も、息も。どう抵抗してみた所で、負荷をかけると声は出るし、口で息をしてしまう。何も気にすることないのに、誰も気にしないのに、あたしはなに考えてんだろう。そんな事が頭の中をぐるぐるしている。雑念。まだ追い込み足りない。なんて思った頃に二十回の上体起こしが終わる。間髪入れずに身体を九十度右に回して、左側面の腹筋で身体を起こす。体側が座面にぶつかるたびに金具が鳴る。声と、息と、機具のあげる軋み。それだけがこの部屋の音。

 

 と、キイ、と新たな音が混じる。ガラス戸。生き別れになった蝶番が互いを呼ぶ声。

 

「朧か。朝から感心だな。無理はするなよ」

 

 提督。英字が印刷されたTシャツに、紺色の短パン。どちらとも、いかにも化学繊維ってテカり方をしてる。たまにこうやって現れては、顔だけ出して帰ってく。運動する気満々な恰好なのに。自分がいるとあたしたちが緊張するだろうって、気を遣ってるのか、気後れしてるのか。朧は別に、いいのに。

 

「はい、朧は大丈夫です」と返事すると、「結構結構」なんて言って、帰ろうとする。ほんとはしたい筈なのに、筋トレ。あたしから誘えばしていくのかも。

 

「あの、提督」

 

「お、どうした」

 

 思い立つが早いか、つい呼び止めちゃったけど、どうしよう? 「一緒に腹筋しましょう」じゃあ、びっくりするよね。というか、ほんとに何考えてたんだろう。あたしに構わず運動していくするように勧めたって、遠慮されるのはわかってる。

 

 提督は、黙ってこっちを向いて、返事を待ってる。どうやったら、どうやったら提督は逃げないだろう。悩んでたら、「相談でもあるのか」と、話すよう促されちゃった。ああ、もう。

 

「良かったら、補助してもらっても、いいですか、あれの」

 

 *

 

「そんな話なら勿体ぶることないだろう」

 

 ベンチに寝そべったあたしの顔をのぞき込みながら、提督が話しかけてくる。ベンチプレス。上げ下げし終わったら、ベンチの左右それぞれに置いた支柱に乗せてバーベルを固定する。提督には、万が一落とすことがないようにバーの真ん中に手を添えてもらっている。普段、支えられなくなるようなことはないから、本当に念のため居て貰ってるだけ、みたいな感じだけど。一応、支柱に置くときは提督にも力を入れて手伝ってもらってるから、居ても居なくても一緒ってことは、全然ないんだけど。

 

「恐縮しちゃいます。提督に指示するなんて」

 

 そう言って、バーベルを支柱に戻すと、端につけた円盤型の錘を揺すりながら外す。せっかく補助してもらえるんだから、もっと重いやつを上げないと。提督は特にあたしが何か言うのを待つでもなく、反対側の錘を外していた。

 

「お前たちが快適に過ごす役に立つなら、何だって言って欲しいけどな」

 

 と、提督。でも、提督はわかってるんだろうか。

 

「どっしり構えててもらうのが、あたし達は一番やりやすいです。多分」

 

 そういうこと。そんな、あたしたちの顔色とか窺われても、困る。

 

「そいつは悪かったな。じゃあ今後は空いてるときを見計らって来る必要も無いと」

 

「そんな話じゃなくて。提督も要望があれば言って欲しいし、あたし達に気を遣ってばかりなの、なんか嫌です」

 

 提督には目を合わせないで、壁際のラックから次の錘を持ち上げつつ、答える。手に取った錘は、もうCDとかレコードじゃ例えられない存在感がある。あたしの顔より大きい。たぶん。

 

「でかっ。何キロあるんだ、これ」

 

 いつの間にやら、提督も一つとってシャフトに取り付けようとしている。

 

「ひとつ四〇、です」

 

 そう、四〇キロ。左右に着けるから錘だけで八〇キロ。シャフトは九キロだったか、十キロだったか。

 

「九十キロくらい負荷かけてるってことか。いや、凄いな」

 

「別に。後の心配しなくていいなら、もっとやれます」

 

 本当は、任務に支障が出るくらいの筋肉痛にならないように軽めにしてるけど、今のくらいでへこたれる朧じゃないから。

 

 またベンチに寝転んで、シャフトに手を掛ける。ふっと息を吸って、また胸に力を籠める。金属同士の軋みのあと、支柱からバーベルが離陸していく。

 

「限界だと何キロ挙げられるんだ、朧は」

 

 提督が頭の方からこっちをのぞき込みながら聞いてくる。心無しか、その目はバーにピントを合わせるばかりで、あたしを見ていない気がする。気にしてるのかな。やっぱり。

 

「一一〇くらいは、ふっ……挙がります」

 

 視線が合わないと思った提督と、急に眼が合う。どうしたんだろう。余裕って言ってる割に今挙げてるのとあんまり変わらないと言いたいのか、それとも、あまりに数字が大きすぎて想像がつかないのか。提督が手ごたえを試してるのか、重みがすこし揺らいだ。

 

「やめてください。危ないから」

 

 抗議すると、すまんな、と一言言って、また手を添えるだけに戻った。と、急に提督が口を開く。

 

「朧はすごいな」

 

 何も言わず、バーベルを胸に引き付ける。負荷を感じながら、ゆっくり。表情は変えない。

 

「艦娘ならっ、はぁ、当然、です」

 

 返しつつ、またバーベルを挙げる。提督の手が一緒に上下し、提督はそれを見ている。もしかしたら、それ越しにあたしを見ているのかもしれない。

 

「そこまで挙がるようになったのは朧の頑張りのおかげじゃないのか」

 

 朧の頑張り? 

 

 その言葉が引っかかって、バーベルを支柱に置く。急にやめたから、提督が不思議そうに見ている。不思議? 

 

「提督、これって本当にあたしの力なんでしょうか」

 

「これ? ベンチプレスか?」

 

 提督は、何を疑っているのか全くしっくり来ていなそうな、言っている意味が分からないというか、あたしの疑問とはかけ離れた能天気な顔でこっちを見ている。

 

「じゃなかったらなんだ? 艦娘としての力も朧の力、じゃあ不服なのか」

 

「不服では……ううん、不服です」

 

 不服です。艦娘としての力もあたしの力と言ってしまうと、あたしは艤装と分けられない存在なんじゃないのか──ううん、もしかしたらあっちが本体なんじゃないか。違う。それもあたしの力だって話を認めるのは、そう認めてしまうこと。多分。

 

「あたしは、あたし自身で強くなりたいってずっと思ってます。だから身体だって鍛えました。一一〇キロをやれるまでは半年かかりました」

 

 そう言って脇を掴んで、ちょっと痛む胸筋を指先で押す。提督はまじまじと見ている。ちょっと睨むと、提督はきまり悪そうに視線を外した。

 

「時間をかけた分、疲れます。手も足も、どこもかしこも痛いですけど、痛いのがちょっと嬉しいんです。痛くなるってことは、できなかったことをしようとしてる、ってこと、です。多分」

 

 そう言いながら、シャフトの下に頭をくぐらせて身体を起こす。頭側に立つ提督と向き合うために身体を回すと、あたしはベンチを跨いで座る恰好になった。

 

 それから考える。トレーニングも「艦娘だからできる」ことだとしたら、疲れたり、筋肉痛になったりはしない筈。多分。これはあたしの痛み、あたしの疲れ、あたしの空腹。そう信じたい。結局のところは分からないけど。「朧」である以前に「あたし」である部分なんて、あるのかな。あって欲しいけど。

 

「とにかく、誰のおかげとか、誰のためにとか、そういうんじゃなくて……」

 

 握力を使い過ぎて、握りこめなくなっている手を開いたり閉じたりする。その手を見つめながら、まだまだ話す。

 

「義務とか、運命とかじゃない、そういうものが欲しいんです。そう生まれたから、そのほかに無いから、そうなったから、そうできたからとかじゃなくて……」

 

 提督は、今度は難しそうな顔をして、ベンチの足あたりを見ている。

 

「本当に望んだものが、手に入れたいです。あたしの望み」

 

 そう。あたしの望み。

 

 あたしが目指したいところ。どこにあるんだろう。

 

 提督は何も言わない。それはそう。だって、あたしが望むものなんて言われて、提督が何か勧めることなんてできないし。提督はこれまで、あたしたちが何をしたいかなんて考えてもみなかっただろうし。

 

 だから、戦闘技術以外の何か、なんて勝手な事まで言うんだ。多分。

 

 でも、そんなこと言うのは酷だというか、そんな厳しく文句を言いたくなるのって、なんでなんだろう。あたしが提督に何か期待してるからなのかな。

 

 だとしたら、あたしも大概勝手だ。

 

 相変わらず、提督は返事をしない。

 

 居心地悪いから、バーベルを持つ。流石に疲れてきたからか、簡単には挙がらない。大きく息を吸って、ふっと息を吐きつつ持ち上げる。

 

 手のひらに、汗のぬるっとした感触。

 

 左に傾くバー。ぶつかり合う金属。痛み。関節の悲鳴。

 

「いかん! 危ない!」

 

 提督が飛びつくように、左側を支えようとするけど、持ち上がらない。

 

 ああ、このままじゃ、挟まれるな。

 

 まあ、いいや。肋骨が折れたくらい、高速修復材で何とでも……。

 

 あれ。

 

 なぜか、バーベルが落ちてこない。

 

 提督、まさか傾いたままこれを止めて……。ううん、提督は朧をのぞき込んでまたポカンとしてる。

 

 じゃあ何が……? 

 

 とりあえず起き上がろうとすると、重くて上体が上がらない。あたしの両手は離れてるのに、バーベルは胸の上で止まっている。止まって? 

 

 思い切り首を俯けて、自分の胸を見る。そこには見慣れたものが、見慣れない姿で居た。

 

 カニさん。

 

 胴体は胸に密着させ、足を全部胸に食い込ませて、力を込めている。

 

 そしてその両の鋏を振り上げて、バーを支えている。

 

「カニさん!」

 

 こんなことができたなんて。

 

 カニさんはブルブルと震え出したかと思うと、傾いたバーベルをそのまま左にポイと放った。

 

 どういうことだろう。

 

 よくわからないけど、カニさんのおかげで助かったみたい。

 

「どういうことだ……」

 

 提督は、瑞雲祭りを告知されたときみたいにポカンとしている。

 

「カニさんが助けてくれたんです。たぶん」

 

 とりあえず、カニさんをベンチに下ろして起き上がる。カニさんにお礼しなきゃ。

 

 まだ、どっしりと身体を落として、鋏を振り上げた格好のカニさん。人差し指をその右の鋏に持って行って、いつものハイタッチ。

 

 ぽろっ。

 

「え?」

 

 鋏が取れる。第一歩脚が、第二歩脚が、そこかしこの関節がぽろぽろと取れる。

 

「カニさん? カニさん!」

 

 叫んでる間にも、次々に身体が外れていく。外れないようにと、両手でカニさんを覆うけど、触れている間にも身体のそこかしこにひびが入って──

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