バイブ書道   作:プリン

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バイブ書道 5

同一四〇三 本館・艦娘居住区間 渡り廊下 木曾

 

 近頃、何にも張り合いがねぇ。

 

 ここんとこ、出撃も演習もめっきり回数が減った。

 

 代わりに遠征が増えたとかで、天龍が駆逐の連中を連れ歩いているのを見るようになったな。妬いちゃいないが、ここで出番の数が入れ替わっちまうのは腑に落ちないぜ。俺? 消費が多いから遠征は向いてないんだとよ。ったく、役に立てると思って改装したのに、流石に想定してないぜ。俺が養われる側になるなんて。

 

 ま、腐ってても仕方ねえし、予定通り新任の駆逐と軽巡共の指導はしてやってる。ああ、これもあいつの今の方針ってことだ。指示されてる内容やら配付される冊子やらは、教官だの教員だのになるとき役に立つよう配慮された内容らしい。教育をやれなんて謎めいた指示だとは思うが、文句を言ってどうなるでもないからな、上官命令は。それに教育自体だって、得意も何も、やった事ないからわからないが、俺にできないことだとも思わん。

 

 それで、やってみたら意外と苦じゃないが、戦いに比べたら今一つしっくり来ない。結果だって出してるつもりだ。だが、不思議と満たされない。何なんだ? 

 

 結局、俺は戦うのが好きで、戦いに明け暮れる日々のほうが合ってたってことだろうな。

 

 そして、海を取り返してやろうという気概のまるで感じられなくなった今のアイツは……気に入らない。面白くもねぇ。

 

 だからって「お前はつまらなくなった」と悪態をついたところで、アイツなりの大義名分があったなら「配慮はしよう」なんて言われるのが関の山だ。何より駄々をこねてみるなんてガキ臭ぇ真似はしたくない。

 

 というか、こんなクソ面倒臭い、しみったれた、反省会紛いのことしたくないんだよ。

 

 御託はいいから、海に行きたい。

 

 そんなことを考えながら。渡りの壁にもたれて、練兵場越しに海を見ることが増えた。

 

 波の歌、潮の香り。砲の叫び、火薬の匂い。

 

 俺にとっての郷愁も、はたまた高揚も、そういうもんだけが呼び起こしてくれる。

 

 白墨が黒板を鳴らす音や、擦れ落ちる粉の香じゃ、とても満足できない。

 

 今日は珍しく練兵場に艦娘がいる。縄跳びを跳んでいるのを見るに、また新任の駆逐……いや図体がでかいな。違う……。おいマジかよ、那珂じゃないか。何してんだ。

 

 声を掛けようと思ったが、掛けてどうなるでもない。っかし、アイツがなんでこんなことさせるか──。

 

「木曾センセ、おいすー」

 

「先生とはなんだ。お前は講義受けてないだろ」

 

 気付かないとは、マジで俺もヤキが回っちまったか? 

 

 いつの間にやら後ろに居たのは、薄紅色の髪の駆逐。漣。飾りのついたゴム、フリルの着いた前掛け。一目して、背格好相応に少女らしい趣味をしているのがわかる。だが、こいつはなかなか大物なんじゃないか? こういう飾り物を堂々と身に着けられるところもだが、意味不明な語彙を、誰に対しても忌憚なくぶつけてくるところもだ。

 

「いや、授業が評判いいから口コミで。在籍年数関係なく受けさせてくれればいいのに」

 

「分数の掛け算と割り算がそんなに知りたいとは、見上げた意欲だ」

 

「あ、やっぱ忙しいからパスで。漣、いそが死にそうです」

 

 漣、言わなくても「余計な事を言ってしまった」と聞こえてきそうだ。肩をすくめて、視線はそっぽを向きながら、両手の人差し指を合わせている。相変わらず愉快なヤツだ。

 

「それで、何してんだ? 通信室に用事でもあったか」

 

「あ、せんせーなら知ってるかも! 提督のこと」

 

 提督のこと? アイツの事なら大抵知ってるが。それともなんだ、また「極秘だ~」とかなんとか言い出したのか。

 

「あ、すっとぼけるんですか? 忠実ぅ」

 

「ちょっと待て、すっとぼけるってどういうことだ」

 

 アイツの秘密を洩らさないように、って、仲間として至極当然のことを「忠実」なんて陳腐な言葉で表現されたのは腹が立つが、この際いい。「すっとぼける」なんて、またアイツはなにか隠し事みたいだな。そっちの方が癪だ。

 

「提督、鎮守府辞めるってよ」

 

「なんだと! それは本当か」

 

 本当に聞いてないぞ。そんな事。一大事じゃないか。またコソコソと……。それに何だ、こいつ。

 

「オイ、どうして漣が知ってるんだ」

 

「あ、そういう噂を聞いたので長門氏に確認してみたら、意外とあっさり」

 

 ……長門? 

 

「……だから、別に漣が特別に聞いたとかじゃないのです。鎮まりたまえ~。さぞかし名のある巡洋艦と見受けたが~、なぜそのように荒ぶるか~」

 

 漣はどうでもいい。長門だ。アイツは良くて俺はダメなのか? 

 

「確かか?」

 

「あ、ソースがしっかりしてないし、辞めたいんじゃなくて嫌々だけど辞めなきゃいけない、という事なのかもしれないんですが、居なくなるのは確実と思われ……」

 

 だがそうなると理解できるかもしれない。提督の不可解な指令についても、俺たちが戦えなくなってからのことを考えて、ということなら一応辻褄が合ってしまう。

 

「ま、辞めて欲しくないのはみんな同じでしょ。漣が何としても食い止めるから、ここは任せてくれていいですよー!」

 

 最後は背中だけ向けて話していた。……あいつ、言いたいことだけ言って行きやがった。ま、俺だってこれ以上話すことは無いが。

 

 また俺だけになった廊下で、壁にもたれて考える。

 

 ──なんでだよ、俺とアイツの仲だと思ってたんだが、俺が期待していただけなのか? それに、なんだ、傍にいたい、なんて女々しい事は思っちゃいねえ。それでもだ。

 

 長門、なんでお前なんだ。

 

 練兵場では、隼跳びをしていた那珂が盛大にすっころんだ。

 

 

 

同一四〇五 執務室 長門

 

 窓から練兵場を眺めると、那珂が縄跳びをしている。一体何を言い渡されたのだろうか。艦娘である我々が基礎体力の底上げなどする必要は無いと思うのだが。現に那珂は二重跳び、後ろ二重跳び、隼跳びと、あらゆる技を見事にこなしている。

 

 もしかしたら実験の意味合いもあるのかもしれない。艦にまつわる記憶とまるで関係なさそうな技術も、訓練なく習得・再現が可能なのか。……きっと邪推だな。彼女であれば「アイドルは頑張っている様子やスポ魂的なドラマを見せてあげるのも仕事なんだから!」なんて──言うだろうか? どちらかというと「那珂ちゃんは生まれたときからカワイイんだから、今更頑張ることなんてないんだよ~」なんて──なんだか違うな。「新しいパフォーマンスの特訓だよ〜☆ 那珂ちゃんジャンプ!」なんて──言いそうだな。これは言いそうだ。

 

 彼女は戦わなくなったら歌の道に進むのだろうか。なんだかんだ、彼女は催し物に合わせて騒いでいるのが似合いだ。……目立つ、か。艦娘は目立っていいのだろうか? 艤装も制服もなければわかりはしないだろうが、経歴が怪しくなりすぎる。まぁ、それもまた見ものだ。彼女がいきなり「普通の女の子に戻りま~す」なんて言ってるのは──想像できてしまったが、得も言われぬ寂寥の感に襲われた。

 

 憧憬だの使命だのを手放す。それは己のことでなくとも、これほどまでに心を揺さぶってくる。

 

 元は那珂の話だったな。那珂は殺されようとアイドルを目指しそうな気がする。

 

 あ、転んだ。生まれながらに戦闘できても、失敗することがあるのか。知見だな。いや、かくいう私も柱の角に足をぶつけたりするので、運動の才覚は戦闘とは関係ないのかもしれないが。

 

 足音。迎える用意をしなければ。秘書艦として。

 

 それにしても感傷的になったものだ。出撃が無いせいだ。間違いない。

 

 いや、目先のことに集中することで迷いを断つというのも、結局のところ逃避なのではないか? 

 

 否、私はビッグセブン。長門だ。そんな思案をするより敵を討つこと、戦うために鍛錬を積むこと、そして、今は戦っている者たちが安心して帰還できる場所を守ること。それらを優先すべきだ。

 

「邪魔するぜ」

 

 入ってきたのは木曾。仄暗い髪は、夜空を漂う雲のような風情がある。肩に掛けた黒い外套や腰の軍刀は、改装当初は仰々しいと感じたが、今はむしろ、これがあってこそ彼女、という気がし始めている。

 

「木曾か。たまにはノックしてみるのもいいんじゃないか」

 

「どういう提案だ」

 

 あまりに命令を聞かないから趣向を変えてみたが、効果は大して無かったらしい。

 

「ノックして入ってくれ。それで何だ」

 

「気が向いたらな。提督が居なくなるとはどういうことだ」

 

 何を言い出すかと思えば、またしてもこの件か。漣、やはり秘密を守る性質ではなかったようだな。

 

「居なくなる。逃れられないことだ」

 

 感傷は禁物とはいえ、かくも残酷なことばかり言うとなると、流石に堪える。

 

「そうか。どうして黙ってたんだ」

 

「……教えたとして、耐えられたのか」

 

 そうだ。誰もかれも真実を求めはするが、受け入れられはしない。当然想定すべき事柄であるにもかかわらず。

 

「耐える……? ハッ。黙って『はいそうですか』と聞き入れる、という意味なら無理な相談だ」

 

「だろうな」

 

 当然だ。私も受け入れたくはない。しかし、提督がゆくゆくは居なくなるのは確定事項だ。誰が決めたでもない。

 

 摂理。

 

 思えば私も木曾も憐れなものだ。命令であれば恨む相手も居ただろうに。

 

「だろうなとは何だ。何かしたんだろ、長門は」

 

「していない。しても無駄だからだ」

 

 木曾。責めたりはしないが、あまりにも答えにくいことを言っている自覚は持ってくれないか。私も無力感を噛み締めたい訳ではないのだ。

 

 木曾の舌打ちが、さらに私を責める。

 

「おい……。お前が止めないなら誰がアイツを引き留めてやるんだよ! お前、それだけの絆があるから打ち明けられたんじゃないのか!」

 

 そうだな、そう願って秘書艦をやっていた時期もある。だが違うんだ。

 

「木曾、折角来たんだ。もう一つ秘密を教えてやろう。私が秘書艦をやっているのは何も……気に入られているからではない。どんな艦にも指示を出せる立場の補佐役が必要で、艦歴……背負っている「箔」も申し分ないから私が選ばれているだけだ。殊更に好意があるなどということではない。少なくとも提督からはそうなのだと考えている」

 

「……長門を好いてるんじゃなくて、『長門』を継ぐ者だから選ばれているだけってことか」

 

 歯噛みをし、渋い表情の木曾。

 

「見下げ果てるぜ、長門。アイツがどう、じゃなくて、お前がどうか、だろうが。どこへでも行け、なんて思ってる訳じゃあないだろう? 澄ましたツラしちゃいるが、自分の気持ちからは逃げてるんじゃないのか?!」

 

「話を聞け!」

 

 艦級を傘に着て威圧しているとは思われたくなく、語気を荒げないよう努めてきた。しかし、黙って居れば言いたい放題を言って、流石に我慢ならなかった。

 

「……悪かった。大人気なかったな……」

 

「いいんだ。冷静になれない気持ちも汲んで話すべきだったろう。私もそうだったからな。だが、人間にはできないことがある。どうしようもなく。多くの艦娘が提督は永遠にここにあって欲しいと願うだろうし、その気持ちに咎められるところは無い。しかし、それと本当に永遠であれるかは関係無い」

 

「……そういうもんなのか」

 

「……提督にはなんとか残る方法はないかと聞いたよ。だが、そんなものは、ない」

 

 そう、永遠などない。日は昇り、やがて沈む。それくらい明らかで、そうでなくてはならないことなのだ。どんな力があろうと、それからは逃れえない。

 

「お前がそう言うなら仕方ないよなぁ……」

 

 うなだれた木曾の表情は、帽子と前髪で覆われて伺えない。彼女は感傷に浸ったり、泣いたりするのだろうか。

 

「ああ。そういう訳で、提督は後のことでずいぶん悩んでいる。だからな、この話はあまりしないでくれるか」

 

「お前もしないのか」

 

「ああ。これだけ時間を共にしてもな」

 

 逃れえぬものに耐えるには、忘れるほかない。話題するのを避けるのは、ごく当たり前の判断だ。──提督に限った話ではないだろう。

 

「ハァ……。仕方ないってことか。まぁ、なんだ。お互い、いつも通りにするしか無い、か」

 

「話が早くて助かる」

 

 木曾は、上を向いてもう一度溜息を洩らした。そのまま、何の言葉もなく踵を返し、雑に戸を開けると部屋を後にした。

 

 しかし、彼女は強いな。逃げられないものにこだわるのも、立ち向かうのと同じく不毛だ。

 

 私も私で、いろいろと考えなくては。

 

 もう一度練兵場を見やると、那珂が高速でけんけん跳びをしていた。

 

 

 

同一七三五 寮(七駆居室) 漣

 

「妹よ! 私は帰って来た!」

 

 ご主人様の周りの情報を洗いつつ、出撃して、入渠して、夕飯を食べて……なんて生活してたらあっという間にこんな時間。趣味も仕事も妥協できないのが漣のツラいところなのよねえ。出撃については週間作戦で必要だったんだってよ。戦闘やる気勢(仮)の皆様は最近出撃が少ないのを気にしてそうだったけど、木曾せんせーも長門氏もそのうち出番あるんじゃないの? 

 

「あ、漣ちゃん、お疲れ様」

 

「お疲れ」

 

「おっつー。二人とも、今日はお早いお帰りだったみたいですね」

 

 朧に潮。今日は一緒だったのかな? 寝転がって漫画なんて読んじゃってる。

 

「えっと、これ? 貸してくれて、秋雲ちゃんが」

 

 え。潮まで愛の秋雲部屋に? 

 

「原稿、もう慌て始めてるみたい。潮ちゃんもいるのに、ずっと一人で唸ってた」

 

「あれ、ああやって唸ってると絵、うまくなれるのかな」

 

「そうそう、あれが産みの苦しみってやつよ」

 

 潮、本気にしちゃったのか、また困った顔してる。産みの苦しみを想像してるのかな。

 

「秋雲氏はね、冬になったら泣きながら原稿書いてるのよ。で、原稿を生み終わったら、有明に帰っていく……」

 

「それで秋雲は海に帰っていって、また来年帰ってくる……?」

 

 朧は察したみたいだけど、潮は首をひねってる。かわE……。で、どうやってオチつけるの、これ。

 

「あ、スープにするの。秋雲ちゃんを」

 

 え? 何がどうなってそうなるの? 朧はなんか、潮の事じっと見てるし。いつからそういう関係になったわけ? 

 

「あ、違う、よね。来年じゃなくて夏の次なら冬だし……」

 

 いや、そこ? 何がどうなってるんだか。まあ、このマイペースさが潮。七駆上級者を自称するなら、ついてきてもらわないと。この感覚がXperia。

 

「……ねぇ、漣ちゃん」

 

「おっ、マジトークですかな? とにかく三行でヨロシク」

 

 いきなりかしこまった調子でどうしたんだろ? まぁさか……「あたし、潮ちゃんも好きだけど秋雲ちゃんも好き……」とか言い出さないよなぁ! 

 

「潮ちゃん、可愛いよね」

 

「お、朧ちゃん……?」

 

 え、お姉ちゃんの癖に今まで気付かなかったの? 常識でしょ。ネルソンは偉い人、明石はアイテム娘ってくらい常識。

 

「当たり前じゃん。潮は漣の次に可愛いぞ☆ ぼろネキもぼのも二位タイで」

 

「ふざけないで」

 

「ふざけなくても二位は二位よ。贔屓目なしに」

 

「で、でも……朧ちゃんは頑張り屋さんだし、曙ちゃんはしっかりしてるし、あたしなんて……」

 

「ちょ、漣は?」

 

 わざとか! いつの間にこんな陰湿な技を……あんなにいい子だったのに……。

 

「あ、忘れてた。漣ちゃんは可愛いよ。いつも。でも潮は、ビクビクしてるだけで……」

 

 そう言っている間にも、漣に向ける目は心なしか上目遣いで。どうしたんだろ。まさか、可愛くないなんて言ったやつが居るのね! 頃す! 潮を侮辱する香具師は全て頃す! まぁ、それより先に潮ね。

 

「ちょっと、潮のいいところなんて一杯あるじゃん。優しいし」

 

 あれ、潮、照れると思ったらなんか不満そうじゃん。「別に……」とでも? 

 

「天然かわいいし、癒し系だし」

 

 まだ浮かない顔してる。潮の萌えポイントは網羅してるつもりなんだが? 

 

「そのくせ、戦うと強いし、ちゃっかりキルカウントしてるし。物騒なことしてるくせにシールだし、いちいち可愛いし」

 

 あ、ちょっと顔が赤くなった。口元はなんか言いたそうだけど。とにかく畳みかけるよ。

 

「ほっとけないっていうか、庇護欲くすぐっちゃう感じ? いや、逆にいじり倒すのもいいかも」

 

 潮、「あの……」とか「恥ずかしいよ」とか言ってるけど、折角だから漣は潮の見た目もホメるぜ! 

 

「アホ毛もキュートだし、何よりおっぱいがでかい!」

 

「……」

 

「……」

 

 あれ? 二人揃ってスルーですか? 

 

 漣、なんかマズいこと言った? 朧もそっぽ向いて腕組んでるし。

 

「これ、ほんとにいいのかな。潮は漣ちゃんみたいになりたいよ」

 

 あ? 今度はイヤミか貴様ッッッ。漣は妹をそんな風に育てた覚えはないよ……シクシク。

 

「いらないならオクに投げろよ。てか、それ頂戴!」

 

 両手を振りかざしつつ、潮にじわじわ近寄る。

 

「え、あげられるの、これ」

 

 ちょっと、何胸を張りだしながら言ってるのかな……セーラー服がぱつんぱつんだし、胸当ても張力に屈して、己の非力を呪うしかなさそうな恰好になっているッ……! お姉ちゃんおこだよ! ハァ、ハァ、許さねえ……。いや、COOLになれ、漣。

 

「絶対だいじょうぶだよ☆ 信じるそれだけで超えられないものはないって東郷平八郎も言ってるし、何より明石の技術は世界一だから」

 

「それは無理」

 

 誰だ今の。じゃなくて、ぼろネキ、急に何を。まさか試したのか? 

 

「……わかった? 潮ちゃん。そんな、人からどう見られるか気にすることないよ。そもそも潮ちゃん、かわいいし。多分」

 

「この世に多分なんてない、あるのは絶対だけ……」

 

 あ、今いい事言ってそうだったし、余計なこと言うべきじゃなかったかな。まいっか。

 

「自信を持っていいんだけど、なんか、こう、それを前面に出すのは潮ちゃんにとっていい方向には働かないんじゃないかなって。秋雲ちゃんも言ってたみたいに」

 

 あのさぁ、さっきから話に出てくるのが漣より戦闘力高いのは嫌がらせか? 巨乳アンチのスレには巨乳しか居ない説が漣の中で有力に……。

 

「いや持って生まれたものを好きになってもいいでしょ。漣は生まれてから今までずっと可愛いけど?」

 

 妹よ、なぜ目を背けるのだ。

 

「いや、潮も鏡見なさすぎなのでは? こんなかわいいのに」

 

 まだ納得できないって顔しちゃって。なんでや! 艦娘は数撃ちゃ当たる方式、とはいえ全員かわいいから下手な鉄砲じゃないし。ん? 

 

「それにほら、あんまり人にかわいい? かわいい? って確認してると都市伝説にされるよ」

 

「都市伝説」

 

 いや、そんな都市伝説あっても困るというか、まず潮がつけまわされたりする方がありそうというか。というか、潮をびっくりさせたらオバケもびっくりしそうだよな……「ひゃあああ」には退魔の力があるのはご存知の通り。だから潮の攻撃は深海オバケによく効くのよ。嘘だけど。

 

「……うん?」

 

「いやそこは『うん!』でしょ」

 

 なんだか締まらないなぁ。漣はこのユルさもかわいいと思うけど。潮が五十鈴殿みたいに自信満々ではっきり物申すようになったら……gkbr。

 

 あれ、可愛いのに自覚ないところが可愛いなら、別に照れ屋なのを矯正する必要無いのでは? 

 

 ま、ネキがそうしたいならそうすればいいけど。

 

 また足音。ぼのだね。このせかせかしたリズムは。 

 

 

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