バイブ書道   作:プリン

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単行本収録時のプロローグと登場人物紹介です。
本編とは微妙に関係ありません。


バイブ書道 2巻付録

バイブ書道が始まった! 

 

 

 

 芸術にかこつけ淫蕩に耽る闇の駆逐艦・秋雲の姦計により、未知なる芸道「バイブ書道」を習得してしまった潮。夜な夜なバイブを唸らせる潮に気もそぞろな姉たちだが、彼女らの煩悶が妹の胸に届くことはない。潮はひたすらその手を震わせ、邪悪な技を磨いている。

 

 

 秋雲がもたらした歪みはそれだけではない。彼女が資料として買い込んだのは、極彩色の夜戦魚雷──そう、ディルドだ! もはや数えきれないほどのそれを受け入れたのは、提督の通販アカウント。あきつ丸のオナホ華道写真を陸軍当局に叩きつけた提督は、当局の監視が鎮守府に及ぶことを憂い、ディルドの購入履歴が残ってしまったことにひどく気を揉むのだった。

 

 

 秋雲は新兵装ペニバンを購入し、他ならぬ提督自身が「堀り」をされていたのだという釈明をあつらえようとするが、あまりに現実離れした彼女の発想が一般人に理解されるべくもない。

 

 

 ぬぷぬぷと泥沼化していく事態に、ついに提督が膝を折り、その口から泣き言が漏れる。

 

 

「今回は本当にダメかもしれん」

 

 

 その悲痛なうめきは、鎮守府を駆け抜けるこだまとなった。

 

 

 こだまは長門と木曾、己を提督の最大の理解者であると自負する古株たちの魂を震わせる。彼女らの一途なまでの思慕は、こだまと重なり新たな調べを紡ぎ始めた。

 

 

 ディルド茶道・最終楽章も、いよいよ第二編! 闇か光か、潮の運命のゆくえはどっちだ! 

 

 

 

ディルド茶道シリーズ 登場人物

 

 

 

第七駆逐隊

優しくて強いあがり症。ドがつく天然。緊張するとめっちゃ震える。驚くと大声を上げる。彼女の退避勧告が深海棲艦に届く日は来るのか。
姉妹の部屋にあまり居ない通い妻。かに道楽の動く看板を買うため、提督に貯金を申し出たらしい。だが、提督からのかに道楽の誘いは固辞した。
クソ提督のことも潮のことも別に気にしてなんかいないが、力が欲しいお年頃。実はカニさんやうさぎさんのようなマスコットが欲しいらしい。
ご主人様のチャハーンが大好物。実は最古参だが、今は秘書艦に任命されることは殆どない。外出のついでに雑貨屋でいちご柄グッズを漁るのが趣味。

 

 

ディルド茶道部

ディルド茶道新四巨頭と呼ばれる新世代。

長門ディルド茶道鎮守府の重鎮。鎮守府の先行きを憂う。
武蔵先日、水中戦を試み、窒息しかけた。「薄着だからいけると思った」
那智シャンプー代を給与から引かれているらしい。ディルド茶道の申し子(響談)。
不知火ゲームで負けると敗因を研究するので、姉妹から接待プレイを受けている。

 

 

 

暁流

抹茶に砂糖を混ぜていたことが露見し、雷に暁流を乗っ取られた。
ディルド茶道に飽きて第一線を退いた、暁流のご意見番。
暁流を乗っ取ったものの、伊流との闘いで神経をすり減らしている。
はわわ、足柄さんのパーティーの招待状、提督の分がないのです。

 

 

オナホ華道部・扶桑一門

扶桑扶桑型の不幸というより薄幸な方。時折、雪風の荷物に足をひっかける。
山城提督に貰った宝くじを落としたが、端から当たるとは思っていないので無傷。
あきつ丸サンマ漁を手伝うことが深海棲艦殲滅の役に立つと信じ込まされている。
まるゆ溺れていると思われないよう努力した結果、水中で直立できるようになった。

 

その他

木曾提督とは気の置けない間柄だと自負しているが、最近すれ違いがち。
球磨新巻鮭に内臓が入っていないのことが気に入らない。妹らを扱い慣れている。
多摩ネコじゃないならタチなのかと発言した提督を、五日に渡り無視し続けた。
伊168オークションアプリで破れた制服を売ったため、厳重注意を受けた。
伊58「提督、一緒に行こ♡」を、重労働を苦にした心中の誘いと勘違いされた。
伊8イムヤと秋雲から電子書籍派への転向を薦められている。
伊19提督が怒らない限界を模索している。からあげにマヨネーズはセーフだった。
妙高自分の説教を録音した音声が懲罰として使われていることに気付いていない。
足柄特製ミルフィーユカツが完成の数分後に自然発火した。現在工廠にて解析中。
羽黒入渠するたびに轟沈をちらつかせ、悪気無く提督の胃を攻撃している。
五十鈴彼女の任務に対する熱意は、潜水艦らをして「理解できない」と言わしめた。
大淀本当の特技は事務仕事ではなく索敵と早着替えと高速メイクらしい。
明石艤装で芋を焼く装置を開発した。現在は海水で芋を育てる研究をしている。
夕張戦後は全自動でかき混ぜるディルド給茶機の特許で生計を立てたいらしい。
初霜一人でも多く救って見せると言いながら、金魚すくいのテキ屋は破滅させた。
若葉若葉だ。初霜が大量の金魚を海に放しているのを見たが、彼らも最後に広い海で泳げて幸せだっただろう。そうだな、次の祭りの時は気をつけよう。
那珂ある日を境に縄跳びばかりしている。最近五重跳びができるようになった。
雪風出撃中に拾ったサマージャンボが当選したが、提督には申告せず。
時津風最近急に羽振りがよくなったが、理由を尋ねるとはぐらかされる。
浜風「素人ではありません」という発言が何故誤解されるのかを理解していない。
秋雲鎮守府三大芸道を生んだ元凶。提督の胃に特効(二.二五倍)があるようだ。
提督我らが提督。人並みに真面目な一般人。巻き込まれ体質を極めている。

 

 

十月一日 二三三〇 七駆居室 ?

 

潮がバイブ書道を始めて、はや二週間。

 

――こんな書き出しはよろしくないかもしれない。彼女の姉たち三人は、否、この鎮守府でたった一人、秋雲を除いては、潮が「バイブ書道」などという意味不明な遊びをしていることなど知りはしないのだから。いささか客観的、超越的に過ぎる視点からの状況把握だ。

 

とにかく、朧、曙、漣はバイブ書道など知らない。しかし、バイブが何に使われるものなのかは知っている。だから、潮が上げる声にならないうめきも、三人にとっては妙に婀娜めいている。

 

実際のところ、それは悶える筆を制御しようと格闘する息遣いで、そうとわかってしまえば悩ましくも響かないのだが。

 

色、肉、情、そういったものには目もくれず、一心不乱に字を書く潮。妹が色情狂に成り下がったのではないかと悩み、取り越し苦労をする姉たち。唸りを上げる、バイブと合体した筆、バイブラシ。異様な空間。

 

異様。本当にこの空間は異様なのだろうか。朧たちの誤解などは、この世にごくごくありふれたものだ。誰しも、聞き取りも対話も無しに、いや、対話があったところで、他人の思惑なんて真に理解はできない。他人を理解しようなどと思ったところで、できる事などしれている。発言や行動をかいつまみ、勝手に解釈すること、そして独り善がりに納得することくらいだ。自分の経験したことのない事柄や、知見において自分を上回る者の深謀遠慮などは、そもそも認識することすらできない。にもかかわらず、人は他人の胸の内、頭の中を勘ぐらずにはいられない。窓から見られる世界がいかに狭いかは、外に出なくてはわからない。

 

想像力のたくましさ、頭の回転の速さなどを自負している者こそ陥りやすい罠。他人の思考を理解するために観察したとしても、ありのままを受け止めることはできず、自分の持ち合わせている材料で他人の世界の箱庭を作るしかない。そのうち、箱庭作りに夢中になるあまり、箱庭を通して実物を理解するという目的を忘れる。果ては、箱庭こそが相手の世界なのだと思い込む。再現しえなかった小道具や、縮尺の果てで均されきった凹凸だって、いくらでもあるにもかかわらずである。そして、自分が単純化した世界を見て、わかりもしない他人の世界のことを貧しいとあげつらう。

 

 

そんなことはさておき潮である。彼女の「戦い」は既に始まっていた。

 

「ぁっ……!」「ぅぅ……」「ひゃ……!」などと、例によって声を殺して筆を押さえている。

 

その声が妙に艶っぽく、朧たちは眠りに就けない。就こうとしない。

 

本当は興味深々なのだ。

 

朧は、潮が一体何を考えているのか、そもそも潮は彼女の手元で唸りを上げているだろうモノが何のために存在するのか分かっているのか、どこで手に入れたのか、など考えつつ、横を向いて布団を被っている。

 

曙は仰向けで寝転がり、平静を装っている。しかし、潮が声を漏らす度、眉や目元がひくひと動いている。いつから潮はこんなことをしているのか。誰に教わったのか。潮にあんな声が出せたのか。潮は誰と睦み合うのを想像しているのか。そんなことばかり考え、悶々としている。

 

では漣はというと、全身を布団に埋めている。こんもりと盛り上がった布団の山は、時折ぶるぶるっと震えている。なにも痙攣しているのではない。漣は、妹の立てる物音を聞いて笑いが止まらないだけである。

 

――何にせよ、この部屋に潮と同じ世界が見えている者など居なかったということだ。

 

十月ともなると、残暑の厳しさはいくらか落ち着いてきた。などと言えれば、どれほど良かったか。

 

来る年来る年、気温は高くなるばかりである。温暖化のせいだろうか。深海棲艦の跳梁とも関係があるのかもしれない。温暖化を起こして南極の氷を溶かし、人の住む大地を沈め、己が縄張りに置き換えてしまおうという魂胆――という説明をラジオか何かで聞いた気がする。確か、青葉は「いやぁまたワイドショー的なコメントしてますねぇ! ジャーナリズムの風上にも置けませんよ!」なんて言っていた。その発言が青葉に似つかわしいかはともかく、馬鹿げた話だという主張には同意できる。私だって、仮に連中が超自然的な能力で気温を上昇させられたとしても、そんな迂遠なやり方で勢力圏を拡げるとはどうも思えない。現に、いくつかの島嶼は既に深海棲艦に攻略され、その手に落ちてしまっている。連中がその気になれば、土地を奪うくらい簡単にできるのだ。

 

奪われた土地を艦娘たちが奪還し、また深海棲艦が――といういたちごっこは、もう五年は続いている。なぜ防衛にここまで手をこまねいているのか。鎮守府は有り余っているのだから、数に任せて離島から次々に陣地を広げ、敵を追い込んでいけばいい筈だ。

 

これほどまでの長期戦を続けているよりは、反攻に打って出ていたほうがむしろ消耗は少なくて済んだように思える。戦力も、経済力も。

 

なぜ、深海棲艦からの失地回復は遅々として進まないのか。考えられる要因はいくつかある。

 

増えすぎた鎮守府の管理が、作戦立案を圧迫している。あるいは、深海棲艦の出没箇所、数的および質的な戦力の把握ができていない。そういった、運営鎮守府側の都合は間違いなくあるだろう。

 

だが、少し穿った見方をすれば、末端にも原因があるのではないかという推察も可能だ。

 

一つは、戦況を膠着させておくことが上の意向でもあるという可能性。艦娘の戦闘能力や、生体部分の機能などについて、調査や分析を躊躇なく行えるのは、戦時下という状況あってこそなのではないか。深海棲艦が現れなくなれば、戦闘も無くなるだろうし、運用についての予算も付かなくなる。人類にとって未だ解析しきれない、艦娘という存在。その建造のメカニズムや、人智を超えた力について、存分に情報を蓄積するため、戦わせ続ける必要があるのかもしれない。また、かつて存在した艦すべてに艦娘としての姿があるのなら、それらを建造するために試すべき手法があるのかもしれないし、敵に(あるいは、敵「として」?)囚われている艦娘が居るのかもしれない。

 

もう一つは、各鎮守府が反攻に尻込みしている可能性。総力を挙げての反攻作戦が行われれば、間違いなく各鎮守府の艦娘たちは傷つく。提督各位がそれに胸を痛めているのではないか。あるいは、深海棲艦を完全に殲滅した暁に、艦娘と引き離されるのを恐れているのではないかと……。

 

だとしたら、馬鹿げているにも程がある。

 

戦わせないなら、なぜ蘇らせたのか。人間の肉体を用意したのは、深海棲艦の脅威に対抗するためであって、交感するためでは、ましてや愛でるためではない筈だ。

 

同情などされるばかりに、戦うという本懐が遂げられないというのは、意味不明だ。我々への冒涜だ。

 

そういった忸怩たる思いが、艤装を通してひしひしと伝わってくることがある。

 

そんな時も、私には何もできない。彼女らと共に弾雨を潜っているつもりではあるが、つもりでしかない

 

私は、情けなくなるほどに、無力だ。

 

 

 

 

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