逆行しても俺の未来はメルヘン冷蔵庫 作:ハマグリ一派
俺の名前は垣根帝督。
学園都市第二位の
まだ発見されてないだとか、俗に言う暗黒物質とかでもない。本当にこの世には存在しない物質を操る能力。
羽毛のようにしなやかな形状にも鋼のように強靭な形状にすることも、俺の思いのままに変化することができる、あらゆる用途で活用できる生産力の極地の力。
そして、俺の優れているところは超能力だけじゃない。
まず、権力。学園都市第二位の能力者であることが、既にブランド価値を秘めている。能力研究の謝礼金で莫大な金はもちろん。能力開発施設の優遇なんかもそうだ。
さらに、俺はビジュアルも秀でている。長身の背丈に精巧な顔付き。その気になれば女を侍らすこともできる。
そんな超能力、権力、金、力、顔、全てのステータスがそこらの凡人を遥かに上回るこの俺は現在。
やる気を失っていた。
「あー、めんどくせえ……。このまま永遠に1ミリも動きたくねえ」
あの垣根帝督とは思えない発言を、活力を一切感じられない目と声で彼はしていた。見てくれはホストのような印象を受けるが、その姿を見れば残業終わりのサラリーマンにしか見えないだろう。
ソファーに身体を預けて全力で脱力していた彼に向かって、頭上からどこか色気を感じさせる声が降ってきた。
「何馬鹿なことを言っているのかしら?いいから、あなたは赤味噌とバルサミコソースを買ってきて」
そう言ったのは、スマホを弄っている
そんな彼女を初めて見た者が抱く第一印象は、その風貌からホステスか何かにしか見えないだろう。
その様子から先ほど述べた、調味料などを口にするようにはとても見えないと思うが、彼らにとっては既に見慣れた光景だった。
「相変わらず対極な物を食卓に並べようとしてますね。いや、めちゃくちゃ美味しいんスけどね」
「うん、
「ふふっ、ありがと。それじゃあ特別に一品追加してあげるわ。──ねえ、追加で豆板醤もよろしく」
「和と洋に、さらに中までっ!?ワールドワイドな食卓すぎませんか!?」
そんな風に声を荒げたのは
「グローバル化は大事でしょ?あなたもそう思うわよね」
「うん、とっても大事」
「……いや、
「はあー、これだから妖怪シャンプーハット──じゃなかった、
「黙れボッチ」
「テメェやんのかあ"あん!?」
逆鱗をピンポイントで踏まれ、
先輩に直接ぶち切れるなど表でも裏でもまずあり得ないが、それでも
「つーか、特に何かある訳じゃねえのによく集まるな。どうした暇なのかお前ら」
「何よ。こうして自堕落に陥っているあなたのために、ご飯を作りに来ているでしょ?私は感謝されたいくらいだわ」
「うん、垣根に感謝されたい」
「別に来いだなんて言ってねえし、あと林檎に関しちゃ俺がお前を居候させてんだろうが」
「俺らも仕事終わらせて来てるんで今日はもうオフっス。なので
「それ以上ボッチだのなんだの事実無根なことで弄るなら、私の黄金の左足が火を吹きますよ瞳孔開きっぱ」
すると、今の会話を聞いた
「……
「ぶふうっ!!」
その言葉を聞いて
このとき、彼らには見えなかったようだが、垣根は派手なドレスを身に纏った彼女が、顔を逸らしながら肩を揺らしていたことに気付く。彼女にも受けはよかったようだ。
眉根に皺が寄っていた
「
「おいコラ。いたいけな女の子に何ふざけたこと言ってやがりますか。この美少女である
暗部のお仕事とかで遊ぶ時間が取れないことや、私が在学している学校はお嬢様学校なので、放課後に出掛ける方が少数派です。つまり、そもそもそう言った状況になりにくいというだけの話でしかないんですよ。断じて私がボッチとかではなくこれは私の置かれた環境がそうさせ
「美少女(笑)」
「殺す。絶対に殺す」
そこから二人の取っ組み合いが始まった。林檎を
そんな
それこそ、プライドが高く俺様上等な垣根帝督ならばここで、威圧の一つや二つはかけるのが自然だ。
そして、彼はこの光景を見て思った。
「(まあ、いいかどうでも。めんどいし……)」
彼はそう考えさらに身体を沈める。彼の定位置はここである。自分に王座などはいらない。必要なのはこの低反発なソファーだけだと本気で思っている。
権力?殺し合い?自分に関係ないところで勝手にやってろ。そんなことを思いながら怠惰に過ごす日々。その姿を見れば本当に学園都市第二位なのか疑わしくなってくるはずだ。
しかし、遺伝子から何まで全く一緒の彼は間違いなく垣根帝督である。彼の人格の根っこの部分は変わってはいないし、別の人格が彼の身体に宿るような
彼は正真正銘、ここまで
「(そもそもこんなことにならなければ、俺がこんな感情を持つこともなかったのか……?)」
彼は過去に思い馳せる。この現象の始まりと、自らを取り巻くこの賑やかな空間がどうして出来上がったのか。
それは自分自身の変化の原因にして、周囲が変化した全ての原因そのものであった。
彼の類いまれなる優秀な頭脳を持ってしても、原因を未だに完璧には理解できない現象。
つまり、
「(タイムリープとかしても暇な時間ばっかとか、割りと拷問に近いんじゃねえのこれ?……あー、マジでダルい)」