逆行しても俺の未来はメルヘン冷蔵庫   作:ハマグリ一派

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誤字報告ありがとうございます。助かってます!

木原くんの最後を少し延ばしました


5話 計画通り

 ここにいることを許されて、はにかんでいる林檎を見ながら俺は思考にふける。木原相似(そうじ)が生死不明となり(ゆずりは)林檎がここに居座った。

 そんな曖昧な結末を俺は一言で受け止める。

 

「(全て計画通り上手くいったな)」

 

 そう、ここまでは全て俺の筋書き通りの展開だ。周りからは大失敗とも受け取れる今回の結末だが、俺からすればこれ以上無い手であった。

 

「(なにせ、木原相似を始末することができた。これで後顧の憂いを断つことができる。これで林檎が襲われる危険性はかなり下がったはずだ)」

 

 俺は奴を殺すことを始めから決めていた。奴は木原一族、害しか生み出さない社会のゴミでしかない。百害あって一利ないのだから奴を生かす理由を探す方が面倒だ。

 そして、奴の諦めの悪さは前回体験済みだ。それを踏まえても奴に付き合うなど時間の無駄でしかない。わざわざかったるいことを増やす趣味は俺にはなかった。

 

「(問題なのはその殺し方だった。いくら悪党とはいえ表の世界じゃあそれだけで捕まっちまう。そうなれば暗部に叩き込まれるのは確定と言ってもいい。

 とはいえ、はっきり言って暗部をそこまで拒絶する意味はない。暗部での生き方はもちろん俺は本質的に悪党だ。今さら殺すことに拒否感は無い)」

 

 では、何が問題なのか?そんなもの決まっている。

 

「(垣根帝督が暗部に入ることは、当たり前だと考えている奴らが気に入らないってのもあるが、俺は前回とは違ってアレイスターとの『直接交渉権』を欲してるわけじゃない。

 今の俺が欲しいのは()()の学園都市ではなく、()()の学園都市にある。近いうちに終わる今の学園都市なんざに囚われるわけにはいかねえんだよ)」

 

 俺が見据えているのは今は誰も想定すらしていない、未来の学園都市だ。そこに辿り着くまでに余計な足枷を付けるなど、邪魔でしかなかった。

 その状態で木原相似(そうじ)を殺すのであるならば、完全犯罪をしなければならないのは自明の理だ。

 

「(まあ、これを『完全』と呼ぶには、いささかスマートさが足りないがな)」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「……チッ!やってくれるじゃねえか」

 

 そう言って身体を覆うように展開した未元物質(ダークマター)を彼は通常の状態にし、改めて爆炎に隠れた敵を見据えた。

 

「邪魔だ」

 

 そう言うと、一凪ぎで目の前にある死のカーテンを吹き飛ばす。しかし、そこに木原相似(そうじ)の姿はなかった。

 垣根はその後も辺りを飛び回り捜索するが、結局木原相似の痕跡は何一つ見つけられずにいた。

 

 

 

 

 

 そして、数十分後。

 空中を飛行していた垣根はピタリと止まり、風を肌で感じながら内心で呟く。

 

「(──さて、演技はこの程度でいいだろう。滞空回線(アンダーライン)はもちろん、人工衛星からも俺が奴を消したようには見えないはずだ)」

 

 今しているのは、言ってしまえば犯行のアリバイ作りの一環だった。彼は風をその身に感じながら頭の中を整理していく。

 

「(奴を始末する上で面倒だったのがその二つだ。それを騙すためにわざわざ自分で作った爆発で吹き飛ばされたんだからな)」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 木原相似(そうじ)が認識したときには全てが終わっていた。

 

「何、ですかこれは!?遺灰──ではありませんね。まさか、これは本物の砂ッ……!?」

 

 未元物質(ダークマター)の翼で斬られたところから、身体が砂になり崩れていく。

 垣根が操る未元物質(ダークマター)はこの世にない素粒子を扱うため、形状や強度に囚われない特性を持つが、彼の力が及ぼす範囲はそれだけにとどまらない。

 

「俺の未元物質(ダークマター)はこの世に存在しない物質だからな。当然、未元物質(ダークマター)を通して引き起こす結果も、この世界の物理法則とは違ったものになる。これは俺の未元物質(ダークマター)特有の演算方式から導き出した事象の一つだ。

 ──まあ、もう聞こえちゃいねえだろうがな」

 

 パシャアッ!と音とともに、砂の塊となった彼は呆気なく崩れ落ちる。それが木原相似(そうじ)の最期だった。

 前回のように未元物質(ダークマター)が及ぼす数千の事象を見せることなく、垣根は一方的に淡々と惨殺する。そして、垣根はそのことになんの感慨も見せず、すぐに次の行動に移った。

 

「ここまでは予定通りに進んだ。そして次の工程で最後だ」

 

 そう言うと、彼は二つの翼を両隣に配置した。この二つの翼をぶつければ辺りを吹き飛ばすほどの大爆発が起きる。これも、未元物質(ダークマター)というフィルターを挟むことで生まれる事象の一つだ。

 彼は不敵な笑みを浮かべて断言する。

 

「この街のイカレた技術をもってしても、俺の未元物質(ダークマター)を常識に当て嵌めるのは不可能だ」

 

 そして、ほどなくして昼の学園都市が騒然となるほどの大爆発が起きた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「(最初から最後まで自作自演のものでしかなかったが、これなら俺が奴を殺したかどうかすらわからない。つまり、俺を指名手配犯にすることは不可能だ)」

 

 死体はおろか血痕一つ無い状況で、犯罪が本当にあったのかわかるはずもない。

 

「(奴を砂に変えたが爆風で吹き飛ばしたし、何よりあそこで俺は、未元物質(ダークマター)を発動させて戦っていた。

 砂や瓦礫が俺の未元物質(ダークマター)でその性質が僅かに変質するなど、普通にあり得る話だ)」

 

 彼は木原相似(そうじ)のDNAよりも遥かに砂の成分へと近付けたが、それでも他の物より変化しているのは否めない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()D()A()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「(滞空回線(アンダーライン)は学園都市に5000万ほどばら撒かれた目に見えない微細な監視機。この街でそれを騙すのは日常生活ならほぼ無理だが、視界をゼロにできる状況なら当然それも違ってくる)」

 

 滞空回線(アンダーライン)は言ってしまえば小さな撮影機器だ。別に体表熱感知装置(サーモグラフィー)が取り付けられているわけでもないのだから、砂煙などで視界を塞いでしまえばそれで潰すことができる。

 

「(他にも未元物質(ダークマター)を微振動させ空気に干渉し、音の遮断膜を同時に展開するなんて細工もしたが、それも学園都市の上層部が情報そのものを捏造すれば話は変わってくる。まあ、それにも当然手を打ったあとだけどな)」

 

 一つは警備員(アンチスキル)

 垣根は自宅の近くで警備員(アンチスキル)に『DA』を引き渡している。それを見た正義感の強い彼らの証言は必ず上がってくるだろう。

 二つ目はタワーマンションの住人だ。

 彼はすぐに鎮圧したがそのときに何人かの住人に見られていた。それもそのはず、彼が襲われたのは真っ昼間の時間帯なのだから。

 そして、三つ目はそのときに捕まえた『DAアラウズ』。

 そいつらは既に正規のは警備員(アンチスキル)の手に渡っている。今さら口出ししても必ず文句が出るに決まっている。

 

「(警備員(アンチスキル)は民間の教師で組織されている。そんな先生たちからすりゃあ今回の騒動は、かつての同僚たちが守るべき子供に対して、事件を引き起こしたようなもの。

 上からの命令だとしても大人しく黙っているのは、果たして何人いるかな?)」

 

 彼らを能力を持たず権力もないただの人間と、断ずることはできない。彼らの教える子供は皆能力者であり武力を持つ子供だ。

 彼らが子供たちに今回のことを説明すればそれこそ暴動が起きかねないし、言わずにその教師たちが上に粛正されても、数が多ければ風紀委員(ジャッジメント)が動き真実を見つけ出す。

 そうなれば泥沼の始まりだ。

 学園都市第二位を暗部へと引き込む代わりに、学園都市中の人間の不信感や敵意を持たせることになるのは、果たして釣り合いが取れているのだろうか?

 いや、そんなことはないだろう。学園都市の上層部ならば今回は木原相似(そうじ)に関わることで俺に脅しをかけてこず、また次の機会を窺うに決まっている。

 

「まあ、今回で目を付けられた可能性が高いがな……」

「どうかした?」

「いや、なんでもねえ」

 

 心理定規(メジャーハート)の問いに適当に返事をしながら、彼はこの先の展開を予測する。

 

「(()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「ハア……まさか、林檎ちゃんが第二位の庇護下に入っちゃうとはね。さすがに超能力者(レベル5)に喧嘩売って勝てるとは思わないし、今回の依頼はここまでだな。

 依頼人も行方不明のままなんの連絡も寄越さないし、多分だけど死んだかな?お陰で用意していた物が全部パアなのはもちろん、報酬も無しなんて言う無駄骨だ」

 

 そんなことを言いながら作業しているのは黒夜海鳥。彼女は『暗闇の五月計画』の一人にして数少ない生き残りにして、多くの研究者を惨殺し計画を終わらせた張本人である。

 そんな彼女は依頼主である木原相似(そうじ)の研究所に入り込み何か得られるものはないか物色していた。そして今彼女は、彼が使っていたパソコンを操作し何か情報がないか調べている。サイボーグ技術は興味深く一番の収穫となるだろうことは、わかっていたがもう少し何か欲しいというのが、彼女の本音であった。

 

「(だが、出てくるのは『暗闇の五月計画』のことばかり。これは当てが外れたかな?………………ん?これは)」

 

 すると、その途中である文言が浮かび上がってきた。それは、今まで調べていた情報とは違ったタイプのものだ。

 

「……オイオイ、いきなり出てきやがったと思ったらなんだこりゃあ?つーか、記述式そのものが全く違くねェかこれ?」

 

 黒夜はその新しく出てきたその表示に、怪訝な顔をして眉根を寄せた。彼女はその出てきた不穏なフレーズをつい口に出して呟く。

 

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 同時刻。

 垣根の部屋で(ゆずりは)林檎が倒れた。




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