そして日本に再び到達。そんなこんなで今日の夜が会談である。
心臓に悪いというほかない状況下。俺もリアも半日休息をとって心を休めている。
ちなみにイリナはメンタル的な疲労より、主の死のショックをどうにかするべきとグレイバー猊下が判断された。その為、あえて猊下の身の回りの警護をする方向で精神の安定を図っている。
まあ、それはいいんだが―
「……観光って気分にはならないんだよなぁ」
「ええ。何せ一瞬でも遊び惚けれるような状況ではないですからねぇ」
なので俺達は適当にぶらついた公園で、ジュースを片手に黄昏ている。
仮眠はしっかりとったから、合流するまでの五時間ぐらいが暇なんだが。
「そういえば、こういうチャンスを逃さず、お菓子とかこっそり調達したらどうですか? 異空間の魔法を習得していることは分かっています。登山用のバックパックぐらいは習得しているそうですね?」
「何で知ってる!?」
俺の動向をどれだけ知ってんだお前。
くそ、いつでもどこでもこっそり買い食いできるように、今少しずつ練習中だってのに。
まあ、それも今する気にはなれないしな。
「……流石にこんな状況下で、お前に余計な負担はかけられねえよ」
「ふむ。そういう心がけはいいですね。適度なガス抜きは認めてますが、それはそれとしてしっかりしてくれるに越したことはありません」
俺の微妙な殊勝な態度が、ちょっと嬉しかったのかねぇ。
ちょっと口元が緩んでるな。
あ、そうだ。
普段面倒をかけてる分、ここは俺がリアに面倒をかけられよう。ちょうどいい時間だしな。
「リア。そういやそろそろ三時だし、どっかでお茶でもしようぜ? 奢るぞ」
「え、本当に?」
おいおい。お前は何でそんな疑問符浮かべてんだよ。
俺だってお前には結構感謝してるんだぜ?
「お前が俺の首輪役になってくれたおかげで、教会での立ち回りが楽になってるしな。説教の手間分は奢るさ」
「そこは構いませんよ? 私もそこでは感謝してますし」
………はい?
「え、お前マゾ?」
「やっぱり奢ってもらいましょう」
問題ないけど藪蛇つついたか?
一応給料は貰ってるが、清貧をよしとする信徒として動いているから金に限度はあるんだけどなぁ。
第一、俺はいい加減な信徒だから、お目付け役やってるお前より給料は低いからね? その辺考えてね?
なんて視線で願っていると、リアはため息をついた。
「そうではなくてですね。ただ「これが正しいからこうする」しか出来てなかった人形一歩手前の私は、これでも信徒でもちょっと浮いているところがあったんですよ」
ああ~。なるほど。
「信徒も結構人間臭いってわけか」
「まあ、だからこそ評価してくれる人も多いですが、グレイバー猊下はむしろ問題視していたのでしょう。だから、欲とか俗とかを人並み以上に持っている鶴来と組み合わせたんでしょうね」
「……自覚はあったんだな」
俺はそうだと思ってたけど、お前はそういうところは素直だと思ってたよ。
「貴方のおかげで少しはですけど。まあ、猊下ほどの目はないお堅い人からは評価が多少下がりましたが」
「やっぱりごめん?」
謝った方がいいかと思ったが、リアは苦笑すると首を横に振った。
「いえいえ。確かに困ることも多いですが、代わりに生きているって実感は得られますから……まあとんとんで」
そ、そっか。
まあ、その、なんだ。
「相棒として信頼があるならそれはよかったよ」
「ええ、その辺は安心してください」
リアはそう言って微笑むと、少し勢いをつけて立ち上がった。
「ですので、相棒としての親睦を深める為にもどこか行きましょうか。大仕事の前に小腹を美食で済ませるぐらいなら、草葉の陰の主もお目こぼしくださるでしょう」
………あれ? なんかかなり機嫌がいい?
そして俺達は、大いなる問題にぶち当たった。
そう、それは大いなるシンプルな問題点。
「「……どこに行こう」」
俺達、観光関係の知識なんぞ持ってないよ。
いやぁ、駒王町は観光名所があるわけでもないし、かといって近年ある喫茶店のような田舎というわけでもない。名門学園駒王学園はあるが、そういうのは現地向けであり遠いところから来た人向けでは断じてない。
つまり、そういうのを探すのがある意味面倒だということだ。
「下手に学生向けの店を探しても、当然だけどカップル扱いに見られるしな」
「ですよねぇ。一目惚れが失敗した直後にそれはないですよねぇ」
俺達は首を捻ってどうしたものか考える。
いや、本当にどうしたらよろしいのでしょうか。
もうこれ、帰った方がいいんじゃないだろうか―
「……おや、そちらさんも大仕事の前の一休み?」
「なんだ。考えることは皆いっしょか」
「ふむ、これは奇縁もあるものだな」
………
俺達は後ろを振り向くと―
「「あ」」
イルマ姐さんとスピネルが、もう一人年下っぽい少年と一緒にいるんですが。
え、なに? どういうこと?
「まあ待て。どうせ会談に出席ということで来たのだろう? なら私達三人もそうなので、こちらも余計なことをするつもりはない」
と、スピネルがそう言って、視点で隣を示す。
そこには、チェーン店系列の喫茶店があった。
「好きなものを頼んでいい。ちょっと話をしないか?」
と、言われたので俺達は店内に入る。
なんというか、このままだと時間を無為に過ごしそうだからな。
と、言うわけで俺達はコーヒーとか紅茶とかを頼みながら、適当にだべっていた。
本当にだべっていただけだったりする。日本食はこんなのが美味いとか、俺達が英国に行ったことでイギリスメシマズ伝説とかだ。
とくにスピネルはものすごくその二つに食いついていた。
「ああ。英国最大の欠陥はそこだろう。21世紀になってだいぶマシになっていてもメシマズ伝説なのだ。20世紀の時は本当に酷かった………」
なんで十代後半程度でそんなに1990年代の英国メシマズ事象に詳しいんだよ。
「それに比べて日本はいい。羊羹はまさに極東の神秘。そして卵かけご飯は日本が誇る最高峰の食文化だ。卵かけご飯こそ日本が世界を凌駕する最高峰の食文化社会だとは思わないか?」
どんだけ日本文化好きなんだよ。いや、俺も卵かけご飯はある意味日本のすごいところだと思うけど、そこまで言うか?
「ごめんねー。スピネルの大好物だからさ、ほら、そういうのって饒舌になるじゃん」
「ま、まあそうですね……」
とまあ、イルマ姐さんとリアも苦笑い。
さて、然しこれはチャンス。具体的にはイルマ姐さんとお近づきになるチャンス。
ぜひこうあれだ、会話を続けたいんだが―
「しかしリアちゃんはかわいいねー。ねえねえ、女の子同士って興味ない? それとも妻妾同衾は?」
「あの、私聖書の教えを信仰しているんですが!? ついでに言うと今は21世紀なんですが!?」
「気にするなリア嬢。イルマのそれはツッコミ前提のギャグだ。こいつSEXの経験は豊富だが彼氏いない歴=年齢だからなぁ」
……会話……。
「そんな!? だって乱〇もスワッピン〇もアウトな人ばかりなんだよ!? イルマさんは最低でのひと月に一度は脂ぎった中年男性の情欲をたるんだおなか事ぶつけてくれないと頭痛と胃痛に悩まされるのに!」
「そこはもう少し直せ。ときどき思うんだが「売春グループに縄張り荒らしとか言われたくないし」とかいう理由で「じゃ、募金しに行こうか」と万札五枚も募金させるのはどうなんだ?」
「いやいやスピネル。イルマさんはSE〇目的だし、金に困ってないし、する必要のない犯罪に興味ないし。だけど変な敵作らないようにするには相場以上のお金をもらった方がいいし。だからこう、世の為人の為になる義賊的な?」
「それもそれでどうなんでしょうか。いえ、堕天使側の人にとやかく言うのもあれですけど……」
………。
「よし、とりあえず今日からサラダ油を毎日200ミリリットル飲もう」
「飲むなよ」
オイ少年。ツッコミを入れるな。
「少年。俺は今真面目な話をしてるんだからな」
「イルマさんのあれは基本スタンスだから無理だ。諦めろ、あの人は常人にはきつい」
なんだと? それはつまり―
「……なら普通に問題ないな。……待てよ? 同性OKならいっそのことバイセクシャルのカップル二組捕まえてダブルでサンドイッチとかしながら会話できるのか」
なるほど。興味深い新世界を開けるわけだな。
「……誰かその破戒信徒を吊るしたらどうだ?」
「すいません。ここ数年は抑えてるんです。当人的には相応に気を使っているんです」
リアはなんでスピネルに謝る。っていうかスピネルはなんで堕天使なのに俺にツッコミ入れる。
俺は女装程度なら大丈夫ですし、体型とか顔とか女装が似合うって自覚はあります。だから初めて会った時の発言は結構まじめに検討可能ですぜ?
「……ふ、ふぉおおおおおおお………っ」
あれ? イルマ姐さん、顔真っ赤。
「いや、ドン引きしましょうよイルマさん」
「諦めろ義弟よ。こいつは妙なところで純情なんだ」
義弟に対してそういうスピネルを見て、俺はふと思った。
「そういや、おたくとは初対面か?」
顔に見覚えはないんだが……どっかで会ったような気がしないでもない。
と、そこでスピネルがポンと手を打った。
「いや、コカビエルが召喚した増援を倒したパワードアーマーを着た奴がいただろう? その中身がこの我が義弟、アルファルド・マルガムだ」
「うっす。アルファルドっす。カルンウェナンじゃ一応オフェンス担当やってるんで、よろしく」
「ん、ああよろしく……義弟?」
義理っていうと………。
は、まさか!
「言っとくがエロゲ的展開はない。前にも言ったと思うが、どうも私がガチの同性愛者らしくてな。後継者を産まなければならないというのに困ったものだ」
いや、心を読まないでください。あとすごいこと言わないでくださいな。
俺が内心でツッコミを入れたうえで、今度はアルファルドがぼりぼりと頭をかきながら、遠い目をする。
「実は俺記憶喪失で。身寄りもいないし身体データもあれ何で、神の子を見張る者《グリゴリ》に面倒を見てもらう時に、縁のあった義姉さんの義弟って扱いになったんだよ」
「それは大変ですね。身元や記憶が分かることを祈りたいですが、既に主は死んでますし堕天使側に加護を与えるのもあれですし……」
リアがすぐに同情して、さらに困り始める。
こういうところはいいところなんだろうけど、結果的に自分にダメージ入ってないか?
ほれ、アルファルドも苦笑してるし、イルマ姐さんもスピネルも同情的な目をお前の方に向けてるぞ。
「まあ気にするな。もし神の加護があるにしても、それは本当に苦難を乗り越える努力をした者に与えられるべきものだろうしな」
「うんうん。転生堕天使になってるから時間には余裕があるし、もらうにしても一世紀ぐらいは頑張ってからじゃないとねぇ」
フォローありがとう! あと、確かに正論だな。
人事尽くして天命を待つとかこの国じゃいうし、まずは一生懸命頑張るべきだ。神様に何か恵んでもらいたいなら、それなりのものはきちんと用意するべきだからな。
せめて一生懸命頑張るぐらいして、加護を与えてもいいような人間だと証明しておかないとな。
いや、転生堕天使らしいけど。
と、なんとなくうんうんしているとスピネルがこっちをまじまじと見つめていた。
「……な、なに?」
「いや……」
見れば、イルマ姐さんも俺を見て、何やら感慨深い表情をしてる。
「ん~。一目惚れされた人から言った方がいいと思うけど、君……今幸せ?」
そんなことを言われて、俺はふと考える。
「まあ、俺は結構欲望発散しやすい生活を送ってたからなぁ。教会暮らしは堅苦しいから大変にも思うけど、幸いちょっとやそっとの息抜きならお目こぼししてくれる上役や、それを名目にして自分もちょっとはガス抜きする相棒にも恵まれてるな、うん」
「……あの、私にも恥の概念はあるんですが?」
別にいいだろ相棒。俺が週一でかつ丼とラーメン食べる間にちょっとパフェ食べる程度の息抜きぐらい、問題視されないとも思えるけどな。
ま、教会にいた時もちょっとはお目こぼししてくれるシスターにも恵まれたし―
「うん。総合的に見てやりがいもあるし保証もあるから、幸せな部類じゃねえの? ……命の保証は微妙だけど」
「なるほど。なら会談は頑張らないとな」
「うんうん。いい感じに終わらせたいね」
……顔を見合わせてニッコリしてるところ悪いんですが、どういう感じ?
「あの、もしかしてと思いますが……脈ありなんですか?」
「どうなんだろう? なんていうか、二人ともなぜかそちらの相棒さんを気にしてる感じがあって」
ほれ、外野も気に知れるじゃねえか。
しかしまあ、会談ねぇ。
前代未聞レベルだし、何もないなんて思う方がどうかしてるよなぁ………。
スピネルの義弟であるアルファルド。彼は将来的に超重要なキャラになる予定です。
……そこまで書きたいぜぇ
会談そのものの変化球とは、なんだ!
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もめにもめて大乱闘勃発
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いきなり乳神降臨。危機が伝わり大混乱!
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開幕速攻和平成立! 混乱するトップ以外!