異世界狂騒曲 ―ハイスクールD×D×D   作:グレン×グレン

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さて、三勢力の薄氷の同盟が成立して、ほんの少しの時間。


第一章 2 嵐の前の変態談義

 

 共同戦線が成立したといっても、まあ何でもかんでも混成部隊というわけでもない。

 

 何せ数の上での主力は埋葬連隊の代行大隊一つ。こいつらは生粋のタカ派であり、悪魔や堕天使が悔い改めてもいないのに共闘なんて論外って連中ばかりだ。

 

 しかも末恐ろしいことに、ロザール配下の代行大隊は三割ぐらいが堕天使や悪魔、もしくはその血を引いている者だったり転生悪魔だったりするそうだ。悔い改めて教会に入ったからこそ、悔い改めずに悪逆非道を繰り返す同族に対する敵意は強い。入ってきた連中は発見即抹殺(サーチアンドデストロイ)をしない程度には理性的な連中を、投降の余地ありと見せつけるために用意していたらしい。

 

 その外周部を警戒する連中は、あくまで殺し合いをしないという程度で待機。場所をきちんとカルンウェナンに伝えることで、「近づいた堕天使陣営は敵」という認識にすることで対応している。

 

 そしてゼノヴィアとイリナも別行動……というより、代行大隊から部隊をある程度融通してもらって、この駒王町でコカビエル一派がいないか探索中。

 

 リアス・グレモリー眷属たちは、全体の情報統括などを行ってもらってるんだが―

 

「………」

 

 ―そこで待機という名のお目付け役をすることになった俺は、敵意満々の金髪に辟易していた。

 

「……あの、僕たちが何かしましたか?」

 

 ラルドとか言った少年がそう言いたくなるのもわかるぐらい、金髪はこっちに敵意満々の視線を向けている。

 

 主が手を組むといったから我慢してますが、いやいやです。……それが見え見えだった。

 

 ったく。こっちとしてもコカビエル側のやばさが面倒なことになってるみたいで、余計な戦闘はしたくないんだがな。

 

 コカビエルに同調して消えたはぐれ悪魔祓いや堕天使は四桁を超える。さすがに潜入する都合上全員が入っているとはいいがたいが、それでも粒ぞろいの連中があつまってる可能性は十分にあった。

 

 そんな状況下で余計な内輪もめはしたくないんだがなぁ。

 

 と、思ってたらドアがノックされて、なんか駒王学園(ここ)の生徒っぽいのが入ってきた。

 

 見るからに男子学生っぽいけど、この状況で入ってくるということは関係者か?

 

「……あのー。会長……いや、ソーナ・シトリー様からの使いできたんですがー」

 

「あ、この街に住んでいる異形関係者についての名簿なら、堕天使側(こちら)が頼んだものです」

 

 と、ラルドとか言っていた少年が、片手を上げて応じる。

 

「ありがとうございます。増援との兼ね合いでもめないためにも、ある程度の把握は必要でしたから」

 

「……そりゃどーも」

 

 和やかに応対するラルドに対して、生徒の方はちょっと警戒している。

 

 ま、悪魔と敵対している教会側や神の子を見張る者側のやつ相手に警戒しない悪魔の方がどうかしてるわな。

 

 それは当然なんだが、生徒はちらりと金髪の方を見ると、俺たちを手招きする。

 

 なんとなく素直に応じたら、そのまま小声でこそこそと耳打ちしてきた。

 

「……何かしたのか? あのさわやかイケメン王子が何であんな荒んでる状態なんだよ?」

 

 ……さわやか。

 

 それとなーく、金髪のほうを見る。

 

 ……さわ、やか?

 

「……ふだん、そんな感じなの?」

 

 ラルドが敬語を忘れてそう聞くぐらいには、イメージが直結しない印象なんですけど。

 

「そりゃもう、この駒王学園男子人気でたぶんトップ独走の男だぜ。……畜生、俺にも一割ぐらい、一割ぐらいあんな感じのがあれば……っ」

 

 あのすいません。歯ぎしりまでして血涙流しそうな悔しげな表情を浮かべないでください。

 

 どんだけ悔しいんだよ。いや、年頃の男ならもてたいと思うのは当然だけども。

 

「……あのさぁ。こういう年頃の女の子ってのは恋愛とかそういうのに幻想見てるし、男は男で似たようなもんなんだよ。まず童貞を遊びでいいから捨てろ。まずはそこからだ」

 

 俺はポンと肩に手を置きながら諭す。

 

「……君はもうちょっと性的にまじめになった方がいいと思うよ?」

 

「あんた、それでも教会の悪魔祓いか」

 

 おい、(転生)悪魔と堕天使(陣営)がそろって信徒に見下げ果てたものを見る目を向けるな。

 

「いや、俺は教会に拾われた義理で信仰してるだけだから。むしろお前らは悪魔や堕天使側なんだから、もうちょっと遊んだほうがいいと思うぞ?」

 

「いや、たしかに僕堕天使になってるけど、そんなにはっちゃける気はないよ?」

 

 ………ん?

 

 ラルド君、ちょっと待とうか。

 

「「今なんつった?」」

 

「……あ」

 

 ラルドはちょっと詰まったかのように視線を逸らすけど、やがてちょっとため息をついて気持ちを切り替えたらしい。

 

 うん教えて。転生制度は悪魔側だけが実用化している代物なのに、なんで堕天使が転生しとるねん。

 

「……スピネル様の研究で、一応転生悪魔ならぬ転生堕天使技術は確立してるんだよ。上層部は正式採用しなかったから、スピネル様の独占技術になってるけど」

 

「え、マジで? っていうか転生制度却下したのかよ!?」

 

 転生悪魔の人が驚いてるけど、当然だな。

 

 堕天使側にとっても転生制度はメリット多いだろうに。いったいなんで?

 

 ……っていうか再現できたのなら、もしかして転生天使とかもできるのか?

 

 いやいや、まず聞くべきは一つだろ、一つ。

 

「……なんでまた」

 

「いや、不良天使をわざわざ増やす必要もないとか。天使が堕ちるのは大歓迎とか言ってたけど」

 

 俺の質問に素直に答えてくれることと言い、どうやらマジらしい。

 

 いや、マジか。

 

 戦争再開に興味を持ってないのはスピネルが言っていたけど、こりゃマジっぽいな。

 

 なるほどなるほど。よくわかった。

 

「……んじゃ、とりあえず話し戻すけど、異性に夢を見すぎてもいいことないから童貞はさっさと捨てた方がいいぞ?」

 

「切り替え早いな!? っていうか、もっと深く聞いた方がいいんじゃね?」

 

 ええ~? だって深く踏み込んで答えてくれる方がどうかしてるだろ、そんなもの。

 

 そんなことより、変に女に夢を見て人生こじらせるほうが問題だって。

 

「女だって性欲はあるし、男とは別の意味でアレなところはあるんだよ。へんな純情保ってないで卒業しとけ」

 

「絶対に断る! 俺は、会長で童貞を捨て、そして―」

 

 俺の説得を振り切るように、転生悪魔は息を吸い込み―

 

「―会長と、できちゃった結婚をするんだ!!」

 

 ―魂からの本音を叫んだ。

 

 ………うん。

 

「なんか、ごめん」

 

「なんで謝る!?」

 

 いや、なんとなく。

 

「……あの、どういうこと?」

 

「……彼は匙元士郎といって、この駒王学園で生徒会長を務めている支鳥蒼菜ことソーナ・シトリー先輩の眷属悪魔なんだよ」

 

 後ろでラルドが、毒気を抜かれた金髪にフォローを受けている。

 

 うん。これは何というか、シリアスになれないよな。

 

 少なくとも、シリアスになったらいけないことだと思う。

 

 っていうかこれでシリアスになれる奴がいたら見てみたいって。

 

「……そう、だったのか」

 

 なんか、めっちゃシリアスなトーンが聞こえる。

 

 振り返ると、そこには赤龍帝の兵藤一誠が、全身を震わせていた。

 

 そして静かに震える手で、匙の肩に手を置く。

 

「匙。俺は、俺の夢は、部長のおっぱいを吸うことだ」

 

 ……命知らずと言いたいけど、たぶんその夢はすぐにでもかなえられると思うぞ?

 

 俺はそう思ったが、匙もまた全身を震わせる。

 

「主の、おっぱいを? そ、そんなことが―」

 

「できるさ。少なくとも、俺は部長の生おっぱいをこの目で見たし、何より顔を埋めることもキスしてもらうこともできた」

 

「「なん……だと」」

 

「あれ? なんで君までショック受けてるの?」

 

「なんというか、あの三人……似てるのかもね」

 

 はっ! 後ろでラルドと金髪が指摘しなければ、俺は自覚できなかった。

 

 あのおっぱいを服ではなくマッパで見て、更にはダイブできたなど、なんて奇跡だ。

 

 思わず声が出るぐらいの衝撃だ。なんてことだ。義理がなければ転生悪魔になりたいといってしまいそうだ。

 

 我慢我慢。そんな理由で教会を抜けるのは、お世話になった人たちに対してあまりに礼儀がなってないだろう。

 

 我慢だ、我慢!

 

「俺たちは同士だったんだな。それなのに、俺はお前のことを嫌って……」

 

「気にすんな、嫌われるのは慣れてる。それより、今この場で生まれた友情の方が大事さ」

 

「……たぶんくだらないことでもだえ苦しんでいる教会の戦士と、おっぱいで意気投合した悪魔の友情………カオスだ」

 

「その、三割ぐらいごめん」

 

 うるさいな!

 

「っていうかそこの金髪! さっきから共同戦線を張るってのに睨んでばっかってのも空気悪いだろ! なんで睨んでるのか理由を説明しろ! 理由を!」

 

 納得できれば大抵のことは流せるんだよ。納得できるどころかそもそも理由が出てこないから困ってるんだよ俺は!!

 

「……ああ、木場は聖剣計画で失敗作として殺されかけたって部長から聞いたけど」

 

 ……そんな奴がエクスカリバー使いを見れば、そりゃいい感情は浮かばいね。

 

 当然だったわ。納得!

 

 説明ありがとう兵藤一誠!

 

「……え? 聖剣計画? なにそれ?」

 

「……あ~。そういえばコカビエルさんに同調した人に、当時の計画責任者がいたような……」

 

 ………ん?

 

 あのすいません。匙と一緒についていけてないラルドさんや。

 

 今、なんつった!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……コカビエルの配下に、「皆殺しの大司教」が?」

 

「その通りだ。ゆえにコカビエル殿が奪っていったエクスカリバーに、使い手が見繕わられている可能性は大きいだろう」

 

 リアスは、リアやスピネルと交わした情報交換で、何かしらの運命を感じてしまった。

 

 自分の眷属の木場祐斗は、聖剣計画の被験者になり、そして失敗作として処分されそうになって逃げだした瀕死の状態だったのを、自分が救った少年だ。

 

 その当時の計画主任であるバルパー・ガリレイという男は、その行動を問題視され教会を追放。そして堕天使側についていたらしく、しかも今回のコカビエルの暴走に同調している。そうなれば当然のこと、コカビエルが奪取したエクスカリバーの使い手も用意できている可能性がある。

 

 さらにそのコカビエルの追撃に、完成した人工聖剣使いが二名も参加している。

 

「……はっきり言ってできすぎね。運命というものを信じたくなったわ」

 

「そういうこともあるものだよ、リアス嬢。世の中、全くドラマチックな出来事を経験せずに一生を終える者もいれば、望んでもないのに日常茶飯事で驚天動地な物語に巻き込まれる手合いもいる者さ」

 

 したり顔でそう諭しながら、スピネルは紅茶を一口飲む。

 

 それで気分を切り替えたのか、スピネルはリアスの隣にいる朱乃に視線を向ける。

 

 正直な話、朱乃はスピネルに対して警戒心をしっかりとむけている。そしてそれは自分の眷属であることや転生悪魔であることとは関係ない。ついでに言えば、スピネルが堕天使側に行く前から、そのあたりの情報を彼女は知りえていたはずだ。

 

 さらに堕天使側についてからも情報があるだろうし、何か言ってくるのかもしれない。

 

 そう思ったのだが、スピネルはもう一度紅茶を口に運び、それで切り替えたのか顔をリアの方に向ける。

 

「さて、次は連携を考慮するべきことだろうな。とはいえ、こちらもすべてを開示できるわけでもないのだが」

 

「……そうですね。あまりお互いに話しすぎるのは、現状では避けるべき状況です」

 

 このピーキーな問題を理解していないリアは素直に返答するが、しかし耐えきれないものがいてもおかしくないのが実情だ。

 

「……スピネルさん。貴女は、私に言うことはないのですか?」

 

 そして、朱乃は耐えられなかった側だったようだ。

 

 なんとなく予想できていたからこそ、リアスもため息はつかずに眷属の意思を汲むことにする。

 

「……そうね。神の子を見張る者(グリゴリ)の首脳陣から言われて派遣されたのなら、当然知っていてもおかしくないことがあるわ」

 

「……ふむ、まあ知ってはいるが―」

 

 リアスにうなづきながら、然しスピネルはちらりとリアを見てから、静かに首を振った。

 

「思うところはあるが言うことはない。他人が言うのは野暮というものだし、そんなことをするような関係ではないのだから」

 

「………一応、お礼は言ってきますわ」

 

 朱乃はそう言って一礼するが、然し態度は硬くなっている。

 

 どうやら、そういう関係扱いされたこと自体が癪に障ったらしい。

 

 代わりに謝るべきかと思ったが、この場でやると朱乃の不興を買いそうなので、見えない角度で軽く手で謝るにとどめておく。

 

 リアの視界には映っているが、うかつに深入りしていい内容ではないと判断して、静かに紅茶を一口飲んで流すことにしたようだ。

 

 それに感謝しつつ、リアスは話を進めようとして―

 

『―リアス、大変です』

 

 ―念話でソーナが連絡を入れてくる。

 

 ソーナにも協力を要請し、今はある程度の準備をしてもらっていたところなのだが、その口調には緊張感がにじんでいた。

 

「どうしたの?」

 

 手短かに促すと、ソーナもまた即座に応えてくれる。

 

「……教会側がコカビエル側と接敵したようです。一応こちらにも連絡が来ましたが、今追撃戦が行われているようですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉおおおおおおん! なんて話だ、許せねぇえええええ!!」

 

 大泣きして鼻水すら流す匙に軽く引きながら、しかし俺もまあ同意ではある。

 

 教会の醜聞である、聖剣計画の初期責任者であるバルパー・ガリレイ。その所行を被害者の視点で語られると、確かにこれはきっつい。

 

 全く。正義を成す側と行動が正義であるかは別の話だってのに、その辺を考えない連中が多すぎるのは困ったもんだ。

 

 ……あれ? 俺ってめちゃくちゃ信徒としていい加減な生活してるけど、こいつと比べたらましに見えてきたぞ? 比較対象が悪いだけだとは思うけど、頑張ってくれよ本格的な信徒め。

 

 俺がため息をついていると、俺たちの耳元に魔方陣が展開して通信が入る。

 

 内容は単純明快。エクスカリバー使いのゼノヴィア・イリナ組が接敵して追撃しているらしい。そこに代行大隊も一個分隊ほど追随しているとか。

 

 こりゃ、俺たちも行った方がいいか。

 

「仕方ねえ。ちょっくら行ってくるか」

 

 俺は話を聞くように渡された紅茶をあおり、そして飲み干して立ち上がる。

 

「……一緒に行っていいかな? バルパーがいるなら、できればこの怒りを叩きつけたい」

 

 木場祐斗も立ち上がりかけるが、俺はそれを手で制す。

 

 なにせ代行大隊が向かってるなら、連携が取れる気がしない。

 

 流れ弾に見せかけて殺すなんて面倒な事されても困るからな。その辺は気を使わないと。

 

「見つけたら半殺しにして突き出すよ。だから待ってろ」

 

 俺はそういうと、軽く伸びをしながら歩き出す。

 

「おい、気をつけろよ」

 

「……そうだね。本隊が来るまで無茶は避けてね」

 

「ああ、頑張れよ」

 

 後ろから次々に声援が来る。

 

 なんというか、すでに仲間意識が芽生えてるみたいだな。

 

 そんな簡単に敵味方が変わるわけでもないんだが。いや、こいつらならそういう軽い切り替えができるかもな。

 

 んじゃまあ、俺が言うべきことはなんだろか……よし。

 

「コカビエル倒したら自分にご褒美をしたいんでな。あとでうまい飯屋を教えてくれや」

 

「「「「それ死亡フラグ!?」」」」

 

 ………あ、やべ。

 

 総ツッコミ受けて初めて気づいた。

 

 ま、まあ大丈夫……だよな?

 




はい、次からコカビエルが本格的に動き出します。

こっからが大変ですぜぇ?
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