童顔系腐男子監督生は現実逃避中   作:深生

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※※Attention※※

●お話に関して
このシリーズは「もしも21歳腐男子が監督生としてナイトレイブンカレッジによばれたら」という作者の妄想を形にしたお話です。
ゲーム内の監督生とは言動・思考が異なることが非常に多いので注意してください。

それに伴い一部キャラクターの発言・シナリオ展開の改変・捏造がございます。
苦手な方はすぐにブラウザバックいただきますようお願いいたします。

まだ出てきていない設定に関しては自己解釈・捏造を多々入れておりますので、ご注意ください。

今回は

・アズール制服

のパーソナルエピソードのシナリオバレがございます。
ご注意ください。
時間軸はマシュマロよりふわふわです。

●監督生に関して
監督生の名前は『ユウ』固定です。
そこそこキャラが濃い目なので、苦手な方はご注意ください。
中の人が雑食性なので、ユウくんも雑食性の腐男子です。推しCPはあります。

また、このシリーズでは今後不快な描写が出てくる可能性がございます。
別途注意喚起させていただきます。



Ep2.童顔系腐男子監督生と部活とアルバイト

「そーいやさぁ、ユウって部活どーすんの?」

「ぶ……かつ……?」

エースから発せられた単語の響きがあまりにも懐かしくて、一瞬頭の中で変換ができなかった。

ぶかつ。ブカツ。部活……ああそうか、高校だと部活って言うんだもんな。サークルじゃないんだもんな。懐かしいなぁ部活動。あの頃は確かバレー漫画が流行ってて、俺もバレー部に入ったっけ。

「いや~……あんまり興味ないなぁ。ほら、俺にはグリムの世話があるし」

「え? 何言ってんの、うち部活動必須だぜ?」

「………………ゑ?」

待ってなぁにそれ初耳なんだけどぉ!?

エースが言うには、ごく一部の例外を除いて生徒は皆何かしらの部活に入部しなければいけないという。

どうやらナイトレイブンカレッジという学校は名門校らしく文武両道を目指しているとか。なにそれつらい。高校卒業後はほぼスポーツらしいスポーツをしていない俺にとってはつらさしかない。

「……今初めて知ったわ……ちなみにエースは何部入ってんの?」

「オレはバスケ部。んでもってデュースは陸上部だってさ」

「へぇ、バスケ。エース上手そうだしぴったりじゃん」

「わかってんじゃん。オレ1年のうちからレギュラー取りたいんだよねぇ」

うん、バスケ部のユニフォームを着たエース。いいね、めっちゃ似合いそう。爽やかな陽キャスポーツマンって感じ。ジャ●プっていうよりマ●ジン系だな。

…………いや、さらっと流しちゃったけどなんでこの場にいないデュースの部活も教えて来たんだお前。

これはあれか、「オレはデュースの部活も知ってるぞ」っていうマウントを取って来たのか!?

ッッか~~~~~~~!!! 最高か?

男友達であろうとデュースに近付く奴には牽制して積極的に仲良しアピールしてくるその姿勢、素晴らしいと思います。いいぞもっとやってくれ。

ずっと思ってたけどエースはヤンデレの素質あるよな。『なんでオレから逃げるわけ?』とかデュースの首掴みながら言ってほし~~~想像しやすい~~~! 若さ故の暴走が似合いそう。酒が進む。そこからのすれ違いメリバも想い通じ合ってのハッピーエンドもどっちも美味しい。

問題があるとすれば、腕力はエースよりデュースの方が強いから力ずくでって展開が難しいってことか。素手での喧嘩も経験値の差が結構ありそうだし。でも俺は拘束具とかあまり口にできない道具とか使うプレイも嫌いじゃないから、っていうか好きだから、そっち方面使えば……。

「……でさ、フロイド先輩ってば全然動かねーの! どんだけ気分屋だってハナシ!」

「えっフロエー?」

「は?」

おっとうっかり口から欲望が出た。いけないいけない。

「悪い、なんでもない。大変な先輩もいるんだな、エース」

「そーなんだよ……じゃなくて。オレの部活の話はいいから、ユウはどうすんのって話だよ」

「部活……部活か……スポーツ系はちょっと……」

元からやっていたならともかく、20歳過ぎて年下の子達と部活で汗を流そうぜ! って俺のキャラじゃない。

「なら文化部とか? 文化部っていうと~……確かトレイ先輩はサイエンス部って言ってた気がする」

「あんまり興味ねぇな……」

「あとは~……ケイト先輩が軽音部だったような」

「エース、ひとつ教えておいてやろう。俺は音痴だ」

伊達に中学高校の合唱コンで「口パクしてくれればそれでいい」って言われ続けてないからな、俺。自慢じゃないが音楽の成績はいつも低空飛行墜落スレスレだ。

あちゃー、とエースが苦笑する。他にいくつか教えてもらったが、男子校らしく運動部がメインで、文化部はそもそもの数が少ないらしい。

「う゛~ん……どれもイマイチなぁ……」

「ワガママすぎねぇ? とにかく、なにかしら入っておけよ~」

じゃあ俺これから部活だからと手をひらひらさせながらエースが教室を出ていく。これは困ったな……部活なんか入る気なかったのに。

どうしたものかと頭を悩ませながら俺も教室を出て、職員室を目指す。エースが挙げていた部活以外にも、何か別の部活……幽霊部員OKな部活とかも、あるかもしれない。先生方ならどんな部活があるかは把握しているだろうし、教えてもらえるだろ。

 

:  :  :

 

失礼しました、と一礼し職員室をあとにする。

トレイン先生にもらった部活動一覧が書かれた書類には、いくつかの部活の名前の上に横線が引かれている。どうも各部活人数制限があるらしい。人気のある部活に集中して人数が飽和しないように調整しているそうだ。

わかる。部活とかサークルって、人数が多ければ多いほど面倒だもんな。派閥とかできるし。大学1年生の時に入ったサークルは大手で、それ故派閥争い——実際にはサークルの姫2人の対立――で解散した苦い思い出がよみがえる。

「しかし……キャラが濃い生徒が多いと変な同好会もあるな……なんだこの、ガーゴイル同好会と山を愛する会って」

どっちも在籍人数1名だし。ナイトレイブンカレッジは部活の予算を気にしないのであれば1人からでも同好会が作れるらしい。いや、それにしたって、山を愛する会は多分山岳部系列だとは思うけど、この、ガーゴイル同好会って……なんだ……?

「……っと、活動場所はここか」

部活動の名前が並んだ一覧の中、1つだけ興味を惹かれたものがあった。

ボードゲーム部。

元の世界にいたころからボドゲは嗜む程度ではあるけど色々と遊んできた。異世界だとしても遊び方さえ分かればある程度楽しめるだろうし、それに何よりこういう部活ってあまり熱心に活動していなさそう! ぶっちゃけ言えばオタクが多そう!

幽霊部員として在籍だけすればいいってのが一番だけど、毎日ちょっと顔を出してすぐに帰れるだけでも充分だ。なんせ我がオンボロ寮にはまだまだ掃除や修繕が必要だからな……住むからには出来るだけ快適に過ごしたい。

「失礼しまーす」

活動場所である教室のドアを開く。

即、ドアを閉じた。

一瞬ちらっと見えただけだけど、教室の中にはやたらめったらに綺麗な顔の眼鏡男子と何故か髪から青い炎が出ている男子がいた。いやあれ絶対やばいヤツだろ。どっちもキャラがビンビンに立ってる。

すなわちモブじゃない!

しかも眼鏡の方、アイツ入学式で見た覚えがある。確かリドルと一緒にグリム追っかけてた奴だった気がする。入学式にいるような奴は寮長とか、各寮の幹部連中だってケイトが言ってた。リドルと対等に口きいてたってことは、恐らく、どこかの寮の寮長とかだろう。

よし、逃げるか。

三十六計逃げるに如かず、君子危うきに近寄らず。面倒そうな奴は避けて通るが吉だ。

「お待ちください」

「ヒッ」

回れ右をしてダッシュで逃げようとした瞬間、肩をガシリと掴まれる。すごい痛いやばい、指が肩に食い込んでてめっちゃ痛い。握力つえぇ……。

「貴方は―――確か、入学式で魔力が無い、と言われていた新入生の方ですよね?」

「ハイ……ソウデス……」

「ようこそボードゲーム部へ。歓迎しますよ」

「いやあの俺この後忙しくて……グリムと遊ばなきゃいけないんで……」

「いえいえ、遠慮なさらず」

「いやでも」

「ね?」

「ハイ……」

美人の笑顔の圧ってすごいのな。

ずるずると連れ込まれた教室の机の上には、今まさに対戦中であったであろうチェス盤と駒が置かれていた。へぇ、こっちにもチェスってあるんだ。パッと見た限り、駒もチェス盤も元の世界にあったものと同じに見える。

「そちらへどうぞお座りください」

「あ、はい……」

勧められるがままに、空いている椅子に腰かける。眼鏡男子も先程まで座っていた場所に戻る中、青く燃えている髪の男子は何故か立ったままの状態で固まっていた。

彼は落ち着きなく俺と眼鏡男子を見比べている。身長こそでかいけど、その様子はまるで周囲を警戒しているげっ歯類みたいな動きだ。

「イデアさん、新入部員が来ましたよ」

待って?

「待って? 俺もうボドゲ部入る事決定してんの?」

「おや、そのつもりで来たのでは?」

「いやまぁ……そうなんだけど……っていうかそっちの人大丈夫? さっきから動いてないけど」

「彼、人見知りなんですよ。そのうち動き出すと思うのでご安心ください」

「人見知りが過ぎない?」

教室の中をぐるりと見回してみれば、中にはこの2人しかいないようだ。先生にもらった資料では、もう少し在籍人数いたと思うんだけど……。

「さて!」

パン、と眼鏡男子が手を叩く。その音でフリーズから再起動したのか、「イデアさん」と呼ばれていた青髪の男子がびくりと肩を震わせたあと、変わらず警戒したげっ歯類みたいな動きでで椅子に座り直した。……ちょっと距離を取られてるのは、まぁ、気にしない様にしよう。人見知りだからな、しょうがない。

「まずは自己紹介をしましょうか。僕はオクタヴィネル寮2年、アズール・アーシェングロットと申します」

「オンボロ寮所属の1年のユウだ」

「……………………」

「ほらイデアさん、ご挨拶しないと」

「え、えぇっと……ぼ、僕はイデア・シュラウド……イグニハイド寮、の、3年……」

俺から視線を思いっきり逸らしながらボソボソと呟くようにされたイデアの自己紹介を聞いて、うすうす感じていたことを完全に察した。

あ、こいつ、コミュ障だな、と。

高校の時の友達の1人がこういう感じだったなぁ、と思わず懐かしくなる。元気だろうか鈴木くん。一緒にやったス●ブラのオンライン対戦じゃ、教室と打って変わって通話中の対戦相手をガンガンに煽って鬼神の如きテクで下していたなぁ。

眼鏡男子―――アズールの方へ視線を向ければ、彼はやれやれといったように肩を竦めている。

「すみませんね、ユウさん」

「ああいや、大丈夫。似たようなの、友達にいたし」

「!?」

「そうでしたか。貴方も愉快なご友人をお持ちですね」

「!?」

「そういう奴って1回慣れると別人か? ってくらいに豹変するじゃん。そのギャップが楽しい」

「ああ、なるほど……少し覚えがありますね」

ちらり、とイデアの方に視線を向けるアズール。ほほぅ、こいつもそんな感じなのか。

……ということは、イデアはアズールに気を許している、と。夕方の教室……放課後の2人きりの部活動……なるほどね。うんうん、ありだわあり。全然あり。

どっちがどっちかな……俺的にはこの2人リバっていうかなんだろ……百合……? アズイデでもイデアズでも、どっちでも美味しい。退廃的な雰囲気が似合うカプだな。Pi●ivなら廃墟とかバックにしたイラスト投稿されてそうだ。

「あとはここにサインをお願いします」

「わかっ……って、え?」

「入部届の記入、ありがとうございます。後ほど僕の方で先生に提出しておきますね」

「い、いつの間に!」

「少しぼんやりとされていたので、その隙に。いやぁ助かりました。今年は新入部員が少なくて。おかげで規定数は集まりましたし、予算も減らされずに済みそうです!」

「予算目当てかよ! っていうか俺以外にも新入生いるの? にしては姿が見えないけど……」

「ほとんど幽霊部員ですので」

「じゃあ俺もそれがいい……」

「何を言ってるんです。ここで会ったのも何かの縁。ぜひ仲良くしましょう!」

貴方に興味があったんです、と綺麗な顔に笑みを浮かべるアズール。興味ってなに、興味って……。そんな注目される事…………してるなぁ……。

「なんで学園長と言いお前と言い、笑顔が胡散臭い奴が多いんだよこの学校」

「胡散臭いとは人聞きの悪い。僕はいたって普通の、慈悲深い生徒ですよ」

「本当に慈悲深い奴は自分で言わねぇよ……」

入部届にサインをした以上、退部は難しそうだ。なんとか幽霊部員にジョブチェンジできねぇかな……。

 

:  :  :

 

……なーーーんて思ってた時期が俺にもありました。まる。

「よっしゃー! ゴール!」

コン、とプラスチックでできた車の形の駒をゴール地点に置く。右隣からぐぬぬ、とアズールの悔しそうな呻きが聞こえて大変愉悦愉悦。先にゴールしていたイデアと顔を見合わせて、にんまりと笑い合う。

「いえーいやったぜイデア~!」

「いえーいユウ氏やるぅ~!」

お互い笑顔でハイタッチを交わす。イデアも普段はここまでテンション高くはないけど、今回は別だ。

なんせ、ボードゲームでの勝負で、初めてアズールが最下位になったのだ。

今回イデアが持ち込んだマジカルライフゲームという名のボドゲは、所謂俺の元の世界の人生ゲームのことだった。マスに書かれた内容にはツイステッドワンダーランドらしく魔法や魔力なんて単語や聞き覚えのない単語も出てきたけど、ルールはほとんど変わらない。

どうもアズールは運要素の強いダイスゲームは苦手らしく、珍しく眉間にしわを寄せたままプレイし、最終的に最下位になって終わった。的確にマドルをむしり取られるマスにばっか止まるのは、ある意味才能だと思う。

「くっ……これだから運任せなゲームは…………。いえ、これも克服してこそ……」

「何ぶつぶつ言ってんだ?」

サイコロを手に何やら考え込んでいるアズールに声をかけるが、自分の世界に入っているのか聞こえていないようだ。

まぁいいか、とイデアと一緒にマジカルライフゲームを箱にしまっていく。

入部当初こそ目は合わせられないわタブレットがなければ会話もままならないわのイデアも、しばらく顔を合わせるうちに慣れてきたのか少しずつ話せるようになり、ツイステッドワンダーランドの漫画やアニメ、映画について聞いている内になんとか打ち解けることができた。

オタク趣味は国境どころか世界をも超える。はっきりわかんのな。

「それにしてもおもしろかったな。イデア、これどこで買ったんだ?」

「購買部ですな。あそこなんでも売ってて、麓の街に降りたくない拙者大助かり」

「お前は麓の街に降りたくないってよりも、自室から出たくないってのが正解だろ」

「ユウ氏大正解~」

「いやいや、胸張って言うことじゃないだろ」

「サーセン」

語尾に単芝生やしたような口調で、イデアが笑う。特徴的なギザ歯が見えて、「噛まれたら絶対歯型めっちゃ残るだろうな……」と思わずアズールの方を見てしまった。

どうもイデアが言うには俺は『陽キャの皮をかぶった陰キャ』らしい。だから仲良くできるんだとか。俺、陽キャの自覚はないけど、陰キャの自覚もないんだよなぁ。

「これいくらくらいするんだ?」

「最新作ですし……このくらい」

「うげ」

イデアに買ったときのレシートを見せてもらい、ぎょっとする。思ってた金額よりもお高い。エースとデュースがオンボロ寮に遊びに来た時にグリムも混ぜて4人一緒にやるのにちょうどいいかと思ったんだけどな。

うぅん、とレシートを握り唸る俺を見て、イデアが意外そうな声を出す。

「そんなに悩む額ですかね」

「……俺にとっては。そもそも他の奴らと違って親からの仕送りとかもないし……」

「なら普段はどう暮らしてるんで?」

「あー……学園長に校内の清掃の仕事とかもらって小遣い稼ぎしてる。でもそれもいつもあるわけじゃないし、グリムは食い意地張ってるし……」

「えぇ、ユウ氏かわいそ。拙者のおやつ食べます?」

「食べる~……どこかにいいバイトあればいいんだけど」

出来れば安定してシフトに入れて、賄いとか出れば最高だな。なんて呟いた瞬間、肩を掴まれた。この痛さは覚えがあるぞ。

「なっ、なんだよアズール……」

「今、仕事を探してる、とおっしゃいましたね?」

「え、うん……」

「ユウさん、貴方これまでにバイトの経験は?」

「えーっと……ファミレス……じゃ、なくて、レストランでキッチンとホール両方やってたけど……」

元カノの遊びレベルに合わせるために、大学の講義とデート以外の時間はほぼほぼバイトに充てていた俺だ。最初はキッチンだけだったはずが人手不足でホールにも回され、両方できるようになったからとバイトリーダーにもさせられた。

時給が上がったから文句こそは言わなかったけれど、社員でさえも俺に頼りきりになるのは本当にどうかと思う。

俺、学生! 俺、バイト! なんで俺に何でもかんでも聞いてくるんだ!

あの頃の俺はよく病まなかったな、と褒めたいくらいだ。

「素晴らしい!」

アズールの目がきらりと輝く。その後ろで、イデアが俺に向かって合掌していた。

待って。それどういう反応? イデアくん? なんでこそこそ逃げるように帰ろうとしてるの? 待てこら説明しろ。

「ユウさん、貴方に紹介したいバイトがあります」

アズールが眼鏡のブリッジを押し上げながらにこりと笑う。

短い期間の付き合いだけど、その威圧感のある笑顔、嫌な予感しかしないんだが?

 

:  :  :

 

大きなガラスの向こう、揺蕩う海藻とその間を縫うように泳ぐ魚たち。シックな家具に高級ラウンジを思わせる内装は、ここが学校の敷地内だという事を忘れさせるほど大人っぽく落ち着いた雰囲気を漂わせている。

「さぁ着きましたよ」

「あの、アズールさん。ここどこ?」

「モストロ・ラウンジ——―オクタヴィネル寮で運営しているカフェです」

「はー……すっごいな。というか、生徒主導で金儲けってしてもいいんだ」

「許可さえ取れれば可能ですよ」

「ふーん……。……オクタヴィネル寮で運営してるってことは、まさかアズールがここの責任者ってこと?」

「ええ、その通りです」

にっこり、と擬音が聞えてきそうな笑みをアズールは浮かべる。

「働き口が欲しいと言っていましたね。僕が雇って差し上げましょう」

正直、怖い。その笑顔が怖い。

ここで働きますと言ったが最後、卒業まで延々こき使わされそうだ。

ただ……こんな立派な設備があるということは、そこそこ稼げているんだろう。話を聞けば賄いもあるし制服も支給、残業代は100%出るということだ。ホワイト企業じゃん。

目の前にいる責任者が胡散臭そう、という点を除けば魅力的な職場だ。

「うぅ~ん……、っ、ぅお!?」

待遇と自分の苦労、その2つを頭の中で天秤にかけて悩んでいると、突然肩になにかが圧し掛かってきた。驚いて顔を横に向ければ、まず目に入ったのはギザギザと尖った歯、そして整った顔。

わお。イケメンだぁ(IQ3)。

「ヒィエ」

「アズールゥ。誰? コイツ」

「本日からモストロ・ラウンジで働くことになったユウさんですよ、フロイド」

「待って。アズール、俺まだ働くなんて言ってな……」

「そぉなの? 」

「ヒッ顔が良い……」

ぐるりとイケメンもといフロイドとかいうヤツがアズールから俺へと顔を向ける。

「はは、なにコイツびくびくしてておもしれ~。よろしくね、小エビちゃん」

「なんで小エビ!?」

しかしこいつ、身長でかいな……。俺も一応170後半はあるけど、それよりも頭一つ分はでかい。

そしてなにより顔が良い。ターコイズブルーの髪色も金とオリーブのオッドアイもまったく不自然に感じないくらい顔が整ってらっしゃる。なにこいつ、乙女ゲームのキャラクター……?

「お戻りでしたか、アズール。……おや、この方は?」

「!?」

「ジェイド、いいところに。彼はオンボロ寮の監督生のユウさんです」

「ああ、例の……」

「ホールかキッチンの服、予備がありましたよね? 彼のサイズに合いそうなのを持ってきてください」

「わかりました」

待て。待て待て待て。

双子、だと……!?

シンメトリーでオッドアイで、片ややんちゃ系の片や穏やか系……? は?キャラ濃すぎでは? キレそう。

っていうかこの2人を侍らせるアズールの絵面が完璧すぎて想像しかできない。

いやこれはもうあれだろ、双子×アズールあるだろ。ないわけがない。双子に前後挟まれて、普段はお高く留まってるアズールが翻弄されてわけわからなくなっちゃうやつ……R-18マークがついた薄くて厚い本がいっぱいありそう。今すぐ虎穴にダッシュしたい。

……いや、待てよ。双子同士でのカップリングも美味しい。倫理観が彼方にぶっ飛んでるけど。BLの前では近親相姦とか一新等二親等とか考えちゃいけない。倫理観はしまっちゃうよおじさんにしまってもらわねば。

しかし……どっちが……どっちだ……!?

やんちゃ×穏やか……か? ……いやでもこういうのって、穏やかな方が実はSっ気強くて、夜の性活ではイニシアチブとってるのでは?

ネット上で穏やか系が二次創作だとドSキャラに改変されてちょくちょく学級会起こってたなぁ。

あー、でも逆に女王様プレイもありなのか? 受けがイニシアチブとるのは昨今のBL事情じゃ珍しくもないだろう。

どの組み合わせにしろ、この3人のカップリングはまず間違いなく成人指定が多い。うん。

「終わりましたよ」

「おや、似合っているじゃないですか」

「……はっ!? いつの間に俺着替えさせられた!?」

「なにやら考え込んでいる隙に。……このやり取り前もしましたね」

「ああ、俺が入部届書かされた時だな」

「貴方、ぼんやりしていることが多いんじゃないですか?」

「……否定できないわ……」

……ん? そういえばさっき、フロイドって呼ばれてたな。その名前、なんか聞き覚えがある気が……。

「もしかして、お前、エースの部活の先輩の、フロイド?」

「ん~? カニちゃんのこと?」

「カニちゃ……あー、うん、多分そうだと思う」

「なに、カニちゃんの友達なの?」

「そうだけど……」

「へぇ~、そうなんだ。じゃあオレがいろいろと教えてあげる」

「あ、ありがとう……?」

……。

…………いやいや、俺まだここで働くって言ってないよな!?

なーんて俺の意見なんか通るわけもないワケで。

よろしくお願いしますと微笑むジェイドと、頑張ってねなんて他人事なフロイドと。

期待していますよと綺麗に笑うアズールに囲まれて、俺はモストロ・ラウンジで働き始めるのであった。




ユウ
ナイトレイヴンカレッジ1年生兼オンボロ寮監督生兼ボードゲーム部新入部員兼モストロ・ラウンジアルバイト。
気付いたら肩書と知り合いが増えていく毎日。
エスデュが推し。早くくっつけばいいのにって思ってる。
顔が良い人物に囲まれて、妄想するのが楽しい。
一度考えだすと黙って動かなくなるので、これからも気付いたらサインさせられてたりする。
そろそろアルコールを摂取したい。
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