●お話に関して
このシリーズは「もしも21歳腐男子が監督生としてナイトレイブンカレッジによばれたら」という作者の妄想を形にしたお話です。
ゲーム内の監督生とは言動・思考が異なることが非常に多いので注意してください。
それに伴い一部キャラクターの発言・シナリオ展開の改変・捏造がございます。
苦手な方はすぐにブラウザバックいただきますようお願いいたします。
まだ出てきていない設定に関しては自己解釈・捏造を多々入れておりますので、ご注意ください。
今回は
・ヴィル運動着
のパーソナルエピソードのシナリオバレがございます。
ご注意ください。
時間軸はマシュマロよりふわふわです。
●監督生に関して
監督生の名前は『ユウ』固定です。
そこそこキャラが濃い目なので、苦手な方はご注意ください。
中の人が雑食性なので、ユウくんも雑食性の腐男子です。推しCPはあります。
また、このシリーズでは今後不快な描写が出てくる可能性がございます。
別途注意喚起させていただきます。
悲鳴のような嬌声が聞こえる。
水音が響く。
ドア1枚へだてた向こう側で何をしているのか分からないほど、俺は鈍くない。
開けなければ、と頭の中で声がする。
開けたくない、と心が叫ぶ。
このまま目と耳を塞いで、何も知らなかったことに出来ればどれだけいいだろう。
最愛の彼女と、親友とも呼べる友人の不貞。
そんなの、知りたくなんてなかった。
震える指先がドアノブを掴む。
悪いことをしているのであれば、暴かないと。
誰かが耳元で囁いた。
: : :
「っ、あ、はぁ……はぁ……」
跳ね起きる。所々に穴が空いたカーテンの隙間から、ぼんやりとした朝日が差し込んできていた。少し埃が篭った空気に、ほぅ、と小さく息を吐く。
夢……だったか。
あの日の夢。アルコールの力で流したはずの、思い出したくない記憶の断片。
あれからもう2ヶ月は経つのに、こうして夢に見てしまうだなんて。
「ん…………」
ゴロリと寝返りを打ったグリムが薄く目を開く。
「ユウ……? もう朝なのか……?」
「ああ、悪いグリム。起こしたか」
ベッドサイドに置いた目覚まし時計を見れば、時刻は5時半頃。起きるにはまだ少し早い時間だ。まだ寝てていいぞ、とグリムの顎下を撫でるように掻けば、再びすぅすぅと穏やかな寝息が聞こえ始める。
ふ、と笑みが溢れた。元の世界にいた頃は犬派だったけど、こうして一緒に過ごしてみると猫もいいかもしれない。グリムは猫扱いすると怒るから、口に出して言う気はないけど。
そのまま俺だけベッドから降りる。ボロいベッドだから少し体重をかけるだけでぎぃ、と軋むけど、今ではもう気にもならなくなった。
ぐぅ、と大きく伸びをする。寝汗で身体がベタベタだ。シャワーでも浴びてくるか。
出来るだけ音を立てないように支度をして自室を出る。オンボロ寮はトイレと水道こそ使えるものの、お風呂は未だ未修理の状態でお湯が出ない。
学園長に校舎の方のシャワールームをいつでも使っていいと合鍵を渡されてはいるが、毎回校舎まで行くのは面倒だからさっさと直してほしい。もしくは自分で金出して直すか……いくらくらいかかるんだろ。
ぱっと覗いた限り、造り自体はしっかりしてそうだったし、それを全部直すとなると相当かかるんじゃ……水回りとかあんまり詳しくないし、今度誰か詳しそうなやつに聞いてみよう。
ぼうっとした頭でオンボロ寮を出て校舎を目指す。この道のりがまた遠いのなんの。地図上でみればオンボロ寮と本校舎は隣り合っているように見えるが、実際の校舎は崖の上で高低差があるからちょっと歩けば着く、なんて距離じゃない。
植物園と魔法薬学室の前を通って鏡舎と購買部を通り過ぎ、メインストリートに出てようやく本校舎への入り口が見えた。この間約25分。本当……さっさと水回りなんとかしよ。
朝もやが立ち込める中校舎を目指しメインストリートを歩いていると、グレートセブンの像が視界に飛び込んでくる。……これ、どう見ても……いや、やめよう。夢の国のチキンレースに参加する勇気は無い。
よしんばあったとしても、ここはツイステッドワンダーランド。
魔法が使える不思議の国ならなにがあってもおかしくはない……はずだ。うん。多分。
自分で自分を納得させて頷いていると、前からタッタッタッと軽快な足音が聞こえてきた。こんな朝早くからランニングだなんて真面目なやつもいるもんだなぁ、なんて足音の方を見て、ヒュッと息を呑む。
美女と野獣。
その言葉が頭の中にぱっと浮かぶ。
白金色から紫へとグラデーションのかかった髪を緩く編み込んだきつめの美人と野性味溢れる褐色肌のケモミミ青年が連れ立ってランニングしていた。
早朝ランニングデートか??? やるな????
すれ違った時に見た限りだと別々の寮……色的にサバナクローとポムフィオーレ、だっけ。だった気がする。お互い違う寮に配属された恋人たちが、朝に人目を忍んで、見つかってもランニング中に偶然会ったと言い訳できるような形でのデート……とかだったらどうしよう。めっちゃ滾る。なにそれ現代版ロミジュリ?
今すぐ追っかけて関係性を根掘り葉掘り聞き出してぇ。そんなことしたら通報待ったなしだから流石にやらなけどさぁ。いやでも気になるな。どういう関係なんだろ。
あっちの……サバナクローの方と仲良くなって、酒盛りしながら聞き出したい。
……いやいやまだこの学校にいるやつみんな未成年だった。酒飲ませらんねぇじゃん俺の責任になる。
「はぁ~~…………アルコール摂取したい……ストゼロを浴びるように飲みたい……」
「ふむ、すとぜろ……とはなんだ?」
「アルコール飲料のことだよ。所謂さ、け…………え?」
ギギギ、とさび付いたブリキ人形のように横を見れば、それはもう端正な顔立ちの少年がきょとんとした表情で俺を見上げていた。
ぉ、あ……確かこの人、ディアソムニア寮の、リリア……だったっけか。合法ショタの。
「ふむ、なるほど。酒か」
「お、あ、おう……」
やべぇ。まさか独り言を聞かれるなんて思わなかった。実際には20過ぎているとは言え、今の俺の肩書は学生。飲酒したいとか何をどう頑張っても校則違反だろ。見逃してくんねぇかな~~……。
「……お主、なにか妙な感じがすると思えば既に成人しとるのか」
「えっ……なんでそれを!?」
「わし程にもなるとな、わかるのじゃよ。それにしても……未成年ならば止めねばと思うたが、成人しているのであれば飲酒は問題ないな」
「……なんで新入生やってるのとか、聞かねぇの?」
「大方クロウリーめが年齢を見誤ったのじゃろう?」
「大正解」
そうだと思うたわ、と見た目の年齢に似合わない老獪な笑みを浮かべた。これが俗にいう……ショタジジィってやつか? 初めて遭遇した。流石不思議の国。
「お主、オンボロ寮の者だろう。名は?」
「ユウ。あんたはリリア、だったよな?」
「おお、覚えていてくれたか。これは嬉しいな」
確か入学してすぐの時に食堂で会ってたよな……と頑張って名前を思い出してみたけどあってたようだ。よしよかった。内心ほっと安堵の息を吐く。これで間違えてたらかっこがつかない。
「その、ストゼロ……なるものはないが、ワインであればわしの部屋にあるぞ」
「えっワイン!?」
「しかも貴腐ワインじゃ」
「まじで!? めっちゃ飲みたい!」
思わず食い気味に叫んでしまう。いやでもアルコール。いくらなんでも置いてある購買部でも、学校という場所柄置いてなかった代物だ。このチャンスを逃せば次に飲めるのはいつになるやら……。
このリリアとかいうやつ、得体の知れなさはあるが悪い奴ではないだろう。いや、学校にワイン持ち込んでる辺りワルではあるんだけど。そんなの酒断ち中の俺とアルコールの前では些細なことだ。
「して、今夜の予定は?」
「今日は……放課後モストロ・ラウンジでバイトがあるけど、夜は大丈夫だと思う!」
「ほう、お主あのラウンジで働いているのか」
すっとリリアの目が細められる。え、なに、その反応なに。イデアといい、モストロ・ラウンジってなんか厄ネタあんの? だったら早めに教えておいてほしいんだけど?
「なら、ワインを馳走する代わりにつまみを準備してくれんか?」
クラッカーとチーズだけでは味気ないじゃろ? とリリアはウィンクする。まったくわかりみが深い。良いワインに良いおつまみは必須条件だ。
なんだびっくりした。料理作ってほしいってことか。……いやまぁまだモストロ・ラウンジの厄ネタ疑惑は晴れていないんだけど。うん、考えないどこ。
「おっけーやるやる。任せて。材料も自分で買って行けば厨房ちょっと使うくらい文句も言われんだろ」
「くふふ、楽しみにしておるぞ。誰かと共に飲むのは久しぶりじゃ」
じゃあ、夜に! とお互い手を挙げて別れる。ひゃっほーー酒だ酒だぁ! 寝起きの悪さも忘れて、うきうきした気分で校内のシャワー室へと向かっていく。
今ならスキップもできちゃいそうだ。
: : :
「……よし、これで終わりかな」
ピカピカに磨き上げたフォークの最後のひとつを所定の位置に戻す。
今日は厨房メインの上、1年生だけのシフトだったらしくなかなかに忙しかった。
入ってから2ヶ月は経っているとはいえ、今まで趣味程度の料理しかしてこなかったような連中の面倒を見ながら自分の仕事をするのはだいぶ精神削ったわ……。でも、俺にはこの後のお楽しみタイムがあるのだ。
それを考えればどんな辛いシフトでも耐えられる。おれ、おさけ、だいすき。
「本日もお疲れ様です、ユウさん」
キッチンの隅に置かれた丸椅子に座って休憩していると、ひょこりとアズールが顔を出した。レジ締めも終わったみたいだな。
「お疲れさん、アズール。今日の売り上げは?」
「ぼちぼち……といったところでしょうか。本日はイベントもない平日でしたし」
「なるほどね……。あー、うん。平日だったとしてもまだ1年生しかいないシフトはきっついわ。回すのも結構ギリギリだったし。せめて2人は上級生が欲しい」
「おや、そんなに忙しかったんですか? それにしては貴方にはまだまだ余裕がありそうですが」
「そりゃ俺は平気だよ。一応仕事としてやってたんだし。でも他の奴らはきついだろ、あれ。スパルタで教え込むのもいいけど、ある程度気持ちに余裕持たせながらやらせないと結局ミスも増えるし、何より潰れる可能性が高くなると思うぞ?」
かちゃりとアズールが眼鏡を押し上げる。レンズの下の薄い青の瞳がきゅぅと細められた。あ、やべ、なんか地雷踏んだか?
「……それは僕に対する業務改善の要求ということで?」
「いや違うよ。俺の経験を話してるだけ。レストランで働いてる時にいたんだよ。詰め込まれ過ぎてパンクして辞めた奴」
「なるほど……」
じぃ、っとアズールの値踏みするような視線が突き刺さる。
この学校のやつらは総じてプライドが高く、命令されたり一方的に要求されるのを嫌がる傾向にある。どうやらアズールもその傾向があるみたいだ。俺としては要求、というよりも、働き方改革とかそういうつもりの指摘のつもりだったんだけど……。機嫌損ねたかな、これは。
けど、ここに関しては引くつもりはない。ここで働いているのは俺を含めて、全員学生だ。本業は勉学にある。モストロ・ラウンジで働いてるのが原因で精神的に潰れた結果本業に支障をきたすのは、違うだろ。
負けじとアズールの目を見つめ返す。しばらく見つめ合って、先に折れたのはアズールの方だった。目を逸らして、大げさに溜息を吐く。
「……はぁ、わかりました。我が寮の1年生はともかく……優秀なスタッフである貴方に逃げられたら大損です。シフトの件、考えておきますよ」
「悪いな、頼んだぞ」
「いえ。普段からあまり下からの意見は出ませんので、ありがたく参考にさせていただきます。……ところで、カトラリーの磨きも終わったようですが寮に帰らなくてもいいんですか?」
「あ、そうだった。ちょっとこのまま厨房使わせてもらいたいんだけど」
「片付けさえきちんとしてくれるのであれば、まぁ。……何か作るつもりですか?」
「うん。このあとリリアんとこに行くから、手土産作ってかなきゃ」
「……なんですって?」
「え? いや、だから手土産を……」
「そちらではなく。『あの』リリアさんのところに行くと?」
「う、うん……」
なんで信じられない、みたいな顔してるんだ……?
ディアソムニアのやつらが近寄りがたいとはきいていたけど、そこまでなのか。他の面子のことは知らないけど、リリアだけ見れば意外ととっつきやすいと思うんだけどなぁ。
ちらりと壁に掛けられた時計を見やれば、そろそろいい時間だ。手軽に作れるものにするつもりだから時間自体はそんなに掛からないけど、あまり遅くなっても向こうさんに迷惑だからな。
丸椅子からよっこらせと立ち上がって手を洗いに行く。
「ユウさん。貴方の交友関係は少々特殊のようですね」
「そんなに言う?」
どうやらアズールはこのまま厨房にいるつもりらしく、俺がさっきまで使っていた椅子を引っ張り寄せて座った。
……ま、いっか。特に邪魔にもならないだろうし。1人で黙々と調理してるよりも話し相手がいる方が寂しくなくていい。
あらかじめ購買部で買っておいた材料を取り出して調理台の上に並べる。ワイン飲むならチーズ系のおつまみは必須だし、こっちはバイト終わりなんだから腹に溜まるものも食いたい。事前に決めていたメニューのレシピを思い出しつつ手を動かせば、アズールが感心したような声を出す。
「貴方、本当に手際がいいですね。レストランで働いていたと言っていましたが……もしかして料理人志望だったんですか?」
「別にそんなことはないけど……1人暮らしが長かったから、自然とできるようになったって感じ」
県外の大学に進学してからはずっと1人暮らしだったし、外食よりも自炊した方が安かったし。あと、元カノがお嬢様すぎて「料理ってなに?」レベルのキッチンデストロイヤーだったから、おうちデートとかしてた時は全部俺が作ってたってのもある。
「……そうでしたか。これは失礼」
「?」
聞いてはいけないことを聞いた、というような顔をしたアズールが目を伏せる。何か変なこと言ったか、俺。たまにわっかんねぇんだよなぁ。
黙りこくってしまったアズールを横目に、次々につまみを作り上げていく。……む、じゃがいもが余りそう。どうするかな。じゃがいもはそこそこ保存もきくし、厨房に置かせてもらって、次に来た時に持って帰っても……。
ちら、と視界の端に映ったアズールに、そうだ、と内心ポンと手を打つ。あれ作ろう。
30分ほど手を動かし続けて、すべてのつまみプラスαを完成させた。
ずらりと作業台の上に並んだタッパーの数に、ちょっと……いや、だいぶ作りすぎた気がした。でも久しぶりのワインだ、途中でつまみがなくなって侘しく何も乗っていないクラッカーをかじるよりも、多少余るくらいのがちょうどいいだろ。
「できたっ……と。ほらアズール。厨房使わせてくれた礼」
「……これは?」
「じゃがいものポタージュ。お前、仕事始まる前くらいから何も食ってないだろ。多少腹に入れておいた方がよく寝れるぞ」
開店前に見かけた時もなんか書類仕事してたみたいだし、営業中はもちろん食べられないだろうし、平日だから開店時間が短い分飯が食えるような休憩時間もない。その上レジ閉めしたあとにここに来てるんだから、何も食べてないはず。多分。
「貴方は……いえ、なんでもありません。ありがたくいただきましょう」
数度目を瞬かせたあと、ふ、とアズールは小さく笑う。
はぁ~~~……顔が綺麗な奴って、こういうのがいちいち絵になるんだよなぁ。美人は3日で見飽きるだなんて嘘だ。本当に綺麗な奴には、見る度「綺麗だな」って感想になるんだから。
「どういたしまして。よし、じゃあ厨房片付けて、と……」
「ああいえ、そのくらいの量の洗いものであればそのままで構いませんよ」
「え、いやでも……」
「どうせ貴方のことだ。そちらの鍋の中にジェイドとフロイドの分もあるのでしょう」
「……よくお分かりで」
「どうせその鍋も洗わなければならないですし、あの2人にやらせますよ」
「でも……いや。じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとな、アズール」
「いえ……お気をつけて」
タッパーに入れたおつまみの山を持ち、アズールに別れを告げて目指すは一路、ディアソムニア寮。
待ってろよ俺のワイン!
: : :
「誰だ、貴様は」
ディアソムニア寮に足を踏み入れた途端、目つきのきつい青年に肩を掴まれた。いかにも誠実そうというか、堅物そうというか……曲がったことが大嫌いですって感じの奴だな。犬に例えるならドーベルマン。
「俺はユウ。今日はここの寮のやつにお呼ばれしたから遊びに来たんだけど」
「なに……? 誰にだ」
「リリア」
「……は?」
青年がくわっと目を見開く。アズールと言いコイツと言い、なんでリリアと会うだけでこんな顔されるんだ? もしやリリアは王族とか、お偉いさんだったりするのか?
「おい、冗談は……」
「騒がしいぞ」
青年が声を上げかけたその時、奥の部屋から聞こえた別の声が制止をかける。
かつかつと靴音を鳴らして出てきたのはさらりとした銀髪にスミレ色の瞳の端正な顔立ちの青年で、彼は俺の方を見ると「親父殿……リリア様が言っていたユウ、か?」と問いかけてきた。よかった、ちゃんと話は通してくれてたみたいだ。
「うん、そうだ……」
けど、と言いかけたところでドーベルm……目つきがきつい方の青年が「何故教えておかなかった!」と銀髪の青年に食って掛かった。
銀髪の青年はうるさそうに顔を歪めたあと至極冷静に「その場にいなかっただろう」と返したが、その返答が気に食わなかったのかさらに言葉を重ね、気付けば俺の存在は蚊帳の外。完全に2人で話し始めてしまった。
俺は……何を見せられているんだろうか……? 痴話喧嘩か……?
ガタイが良く強面な青年と、銀髪銀目の美形。うむ、いい感じだ。見る限り、これ多分銀髪の方が年上っぽいな。年下強面大型犬攻めと年上玲瓏美人受け。普段は喧嘩ップルかつ年上の方が強いけど、夜になると腕ずくで組み伏せられる。
昼夜で形勢が逆転するの、俺好きだよ。大好き。ここが他の寮じゃなくて自分の部屋だったら床でジタバタするくらいには好きなカップリング傾向だ。
「なんじゃ、騒がしいと思えば……よく来たな、ユウ。待っていたぞ」
「おっ、リリア。今日はありがとなー」
「いやいや、わしも1人での晩酌には物足りなさを感じておったところじゃ。歓迎するぞ」
「やったー! ワインだァ!!」
「ほれ、こっちじゃ」
未だ何やら口論してる……というより、一方的に文句を言っているような……いや、銀髪の方寝てない……? あれ、放置していいんだろうか。
「なぁ、あれ……」
「気にするな。いつものことじゃ」
あっそうなの……ふぅん……毎日あんな感じなんだな……? 最高か……?
ディアソムニアに入寮したやつ羨ましい。これが毎日拝めるなんて……。いやでもハーツラビュルも捨てがたい……いやいやオクタヴィネルも……。
結論:どこでも美味しそう。流石全寮制男子校。餌がたくさんだぁ! ひゃっはぁ!
「さ、着いたぞ」
リリアの部屋にはそこかしこに何処かの国の民芸品みたいなものが転がっていて、クローゼットは目も当てられないほどごちゃごちゃになっている。整理整頓好きの俺なら、普段であれば片付けたくてうずくのだが、今ばかりは部屋の真ん中に置かれた折りたたみテーブルの上にドンと置かれたガラス瓶に目を奪われていた。
「お邪魔しまーす……まじでワインだぁ~~~!!」
テンションが今日イチ上がった。久しぶりのアルコールだ。上がらないわけがない。
「ありがとうリリア~~! あ、はいこれおつまみ」
「おお、多いな!?」
「飲んでる最中につまみが無くなることほど萎える話、なくない?」
「確かに、言われてみればそうじゃな」
「だろ~。よーしそれじゃあ、」
「「かんぱーい!」」
チン、とワイングラスを交わして一気に煽る。マナーが、とかそういう話は知らない。俺はずっと酒が飲みたかったんだ!
鼻を通り過ぎる芳醇な香りに、アルコールで喉が焼ける感覚。これこれこれ。俺が求めていたのはこれだよ!
「っっかぁ~~~……美味い……久々に飲んだっていうのを引いてもこのワイン美味い……」
「わしの秘蔵のワインじゃ。とくと味わうがよい」
「はぁ~神様仏様リリア様……」
「うむ、苦しゅうない。お主の作ったつまみも美味いぞ」
「お口にあったようでなにより」
五臓六腑に染み渡る美味さ、というのを初めて体験してるかもしれない。美味い。テーブルの上には今飲んでいるワインのほかにも数本、別のボトルがある。つまみも十分。
よーし今日は飲むぞ!
…………リリアと2人で調子こいてガンガン飲んだ結果酔いつぶれて、リリアの部屋の床に沈んでしまい。
翌日になっても帰って来ない俺を心配したグリムがハーツラビュルの面々に声をかけ、大々的な捜索に発展してしまうのは、まだ少し先の話だ。
ユウ
ディアソムニア寮のリリア・ヴァンルージュの部屋に泊まったことにより伝説の人物扱いされることになった。
このあとしこたまリドルに叱られる。
朝の散歩のときにすれ違った2人組の関係が気になって仕方がない。
最近ちょっと夢見が悪い。