閃剣へ至る英雄   作:エアリック

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読んでくださっている皆様ありがとうございます。
拙い文章で申し訳ない。

原作でいう第一章のメインにやっと入ります


11話

 自由行動日を終えて、今週末に特別演習を控えた週始めには、Ⅶ組、Ⅷ組、Ⅸ組全てのクラスを交えて機甲兵教練が実施された。

 Ⅸ組では主に整備や運用の方法をシュミット博士とトワ先輩によって説明を受け、残りのⅦ組、Ⅷ組では実際に操縦を行い、生徒全員が二種類の機体の特徴を学んだ。

 幸いと言っていいのか、優秀な生徒が多く、模擬戦を行えるレベルまでは持っていけることができ、これなら仮に実戦となっても戦いにはなるだろう。ランドルフ教官も同意見であった。

 軍の最新機体である機甲兵に触れた生徒達の興奮は激しく、その熱が冷めないまま特別カリキュラムとして行われる内容を説明を受けたのだった。地方への演習という特殊な内容に心踊らせる者、不安に思う者様々だったが、少なくとも演習自体を否定する雰囲気ではないことが救いだ。

 ──そして本日金曜の夜、クレア少佐によって分校に受け渡された装甲列車《デアフリンガー 号》に乗り込み、第Ⅱ分校は帝都南部サザーラント州へ向けて出発する。

「──諸君ら全員が一回り大きくなって帰還することを期待する!!」

 分校長による出発前の激励。その気迫に多くの生徒は心を震わせる。気合いも入っただろう。

 その一方、俺達教官陣は──。

「くっ……厄介な……」

 ミハイル主任が厳しい表情を浮かべている。それを見ているしか出来ない。

 出発前に判明した分校長と博士の同行拒否。戦力の計算に含まれていたはず。それも反則レベルの切り札として。この無茶な演習内容でも彼女の存在があれば対応は可能だという判断も有ったのだろう。それが覆された。

 生徒を預かる責任者であるミハイル主任としては納得できかねるに違いない。

「流石に同情しちまうな……」

「ええ……。ただこれに関しては俺達の認識が甘かったとしか……」

 そもそもあの二人が大人しく言うことを聞くはずがないのだ。誰が彼女達に鈴をつけられるというのだろう。それこそ、至高の武を持つ者と至高の技術を持つ者。それらを同時に用意する。そんな事でもない限り、積極的な協力は得られないかもしれない。

 まぁ、なんにしてももう決まってしまったことだ。後は俺達が協力して対処するしかない。最終確認も済んだようだし、列車に乗り込むとしようとした所で、話題の人物が近づいてきた。

「ハーシェル、オルランド。雛鳥たちの事、よろしく頼む」

 声をかけられた二人はそれぞれ頷きを返し、返事をする。

「はいっ! お任せください!」

「まぁ、やれるだけの事はやりますよ」

 その返事に満足そうな様子を見せる分校長。そして俺の方へ振り返って続ける。

「シュバルツァー。北方戦役より続いていた『凪』は終わった」

「っ……」

「そなたも感じているだろう? これより先、この国がどう動いていこうとしているか、そなたなりに見極めてくるがいい」

「……了解です」

 凪……か。分校長は事態が動くと確信している。その理由を聞いても答えてくれはしないだろう。やっぱり気が抜けない演習となりそうだ。

 

 列車内でのブリーフィングも終わり、今はそれぞれが就寝まで自由に過ごしている。俺も車内最後尾に積み込まれた相棒の前に来ていた。

「悪いな。いつもいつも狭い場所で」

『ふふ、もう慣れっこというものだ。気にする必要はない』

 片膝を立てた状態で待機しているヴァリマール。俺の謝罪にも気を悪くすることなく、悠然と構えている。しかし、本当に流暢に喋るようになったな。

『……む?』

「どうした?」

 何か疑問を覚えた様子を見せたヴァリマール。彼は地脈や霊力などの特殊な力の流れなどを察知することに長けている。もちろんそれを利用することも可能だ。内戦の時には多いに助けられた。

『向かっている方角で何か、地脈に揺らぎを感じた。──今はそれも無くなっているようだが』

「そうか……」

 安定しない様な事態があったのか、只の偶然か。不穏な動きが想定されるような演習の方面で、ヴァリマールも何かを感じた。気に留めておく必要があるだろう。

「不足の事態があればお前にも出てもらうつもりだ。──その時はよろしく頼む」

『うむ、遠慮なく呼ぶがいい。お主の力となるために私はいるのだからな』

 頼もしい限りだ。だが、彼に負担ばかりかけてもいけない。俺は俺でもっと精進しなくちゃな。

 そんなことを考えていると、トワ先輩による社内放送が入る。……確かにそろそろいい時間だし、俺も割り当てられた部屋で寝るとしよう。相棒にその事を告げ、俺はその場を後にした。

 

 ──早朝。列車はサザーラント州へと無事に辿り着き、少しの補給時間をおいて、演習予定地へと到着した。それぞれが慣れない拠点の設営をなんとかこなしている中、俺達Ⅶ組の面々は教官陣を含めて、今回の演習で行うという特殊なカリキュラムの説明をミハイル主任から受ける。

「──という訳で、Ⅶ組の与えられたカリキュラムは《広域哨戒》と《現地貢献》ということになる。この二つを合わせた活動を《特務活動》と我々は定義している」

 成程、確かにこれは《Ⅶ組》だ。まだ理解が完全でないユウナ達は、軍らしくない活動を含んだカリキュラムに疑問を抱いている。まぁ、そうなるよな。

「へえ? こりゃまた、なんつーか懐かしくなってくるな……」

 一緒に説明を受けていたランドルフ教官も心当たりがある内容だった様子を見せる。──そうだった、そういえば彼の前の職場も。声をかけようとも思ったが……いや、よそう。俺が何か聞ける立場じゃない。彼らの居場所を奪ったクロスベル戦役に俺も関わっていたのだから。

 とにかく説明は終わった以上、こちらも動くべきだろう。

「活動内容は理解しました。まずは現地の責任者てあるハイアームズ侯と面会でしょうか?」

 俺からの質問に答えてくれたのはクレア少佐。そういえば大尉だと思い込んでいたが、昇格して少佐だったようだ。以前、分校に来る前に会ったとき指摘されなかったから気付かなかった。

「ええ、流石にお話が早くて助かります。セントアークにいらっしゃるハイアームズ侯爵閣下からも、いつでも伺っていいと了解を得ていますので、まずはそちらに」

 多くはないが何度か面識はある。パトリックの父親で四大名門でありながらとても雰囲気の良いお方だ。

「侯爵って……そんな偉い人と会うの?」

「偉いなんてもんじゃないさ。帝国でも最大貴族である四大の内の一家だ」

 ユウナ、クルトはまさかそんな大物と会うことになるとは、と衝撃を受けているが、全く意に介していない者もいる。まぁ、アルティナなんだが。

「四大で唯一、当主が表に出ている方ですね。彼の人であれば、少々の無作法は不問としてくれるのではないかと」

 率直というか直球というか、オブラートに包むことをせずに言葉にした彼女に対して、誰も突っ込めない。どうもユウナに向けて言ったらしいが……。それはフォローなのだろうか。

「ま、まぁ、俺も知らない人ではないから大丈夫だ。

 ──では、これからセントアークに向かいます」

「……くれぐれも失礼のないようにな……」

 釘を指してくる主任に背を向けて、列車から出る。どうやらクレア少佐もこの後、侯爵閣下と打ち合わせがあるようで、セントアークまで同行することとなった。

 

 道中、魔獣との戦闘やアルティナによる迂闊な発言は有ったものの、特に問題なく目的地へと到着する。【白亜の旧都】セントアーク。帝都と同じくらいの歴史を持ち、時の皇帝が遷都した都市。当時白く輝いていたと言われる街並みは、くすんだ灰色へと姿を変えているが、それでもなお流麗な街並みを誇っている。

 それらに見惚れているユウナ達に微笑みを浮かべていると、クレア少佐から提案を受ける。

「侯爵閣下は北西区画の奥にある城館でお待ちです。よろしければ案内しましょう」

「ええ、よろしくお願いします」

 既に何度か足を運んでいると思われるクレア少佐からの提案に、断る理由はないためお願いする。案内に従って町中を進み、辿り着いた城門前で見張りをしている衛兵に要件を告げ、俺達は城館へと招かれた。

 

「よく来てくれた。私がサザーラント州を治めている、フェルナン・ハイアームズだ」

 執務室に案内され中に入った俺達を、侯爵閣下は席を立ちながら迎えてくれた。こういった態度が取れるからこそ、このお方は住民にも支持されているのだと理解できる。

 それぞれ自己紹介を行った後、演習活動の開始を報告し了解を得られたことで、早速だが今回の演習での要請を伺うこととした。

 執事であるセレスタンさんが侯爵閣下から指示を受けて、要請をまとめた書類を差し出してくる。

「──拝見します」

 受け取った要請には、過去俺達Ⅶ組が行ったような、住人からの要請などが記載されている。

 そして、重要調査案件として書かれている内容に目を通すと、それは"謎の魔獣"の調査となっていた。

「これは、一体?」

 俺からの疑問に、最もだと頷いた侯爵閣下は説明をし始める。その事をまとめると、"金属の部品で出来た魔獣"であり、"歯車が回るような音"がした、とのことだ。

 この説明で俺はとある存在を思い浮かべる。恐らくアルティナとクレア少佐も同じことを思っているだろう。明らかに、内戦で使われたあの人形兵器の特徴だ。

「……確かなんでしょうか」

「わかりません……。ですが、報告は複数件寄せられています」

 俺からの質問にセレスタンさんが答える。確実ではない。しかし、無視できるものではない。当然、閣下も領邦軍を使って調査は行ったらしいが、軍の縮小もあった影響で調べきれないというのが現状のようだ。

「よ、よく分かりませんけど、変な魔獣が彷徨いているってことですよね! 困っている人もいるだろうし、無視できることじゃないですね」

 ユウナの意見に俺も同意し、侯爵閣下へ伝える。

「ああ、当然だ。──必ず、突き止めて見せます」

「ありがとう。よろしくお願いする」

 

 その後、侯爵閣下との話し合いをするクレア少佐に別れを告げ、部屋を辞する。エントランスへ出たことを確認し、少し場を借りて改めてⅦ組のメンバーに特務活動の説明を行うことにした。

「さて、これが俺達が行うことになる《要請》の内容だ」

 まとめられた書類を彼らに見せると──。

「猫の捜索……?」

「……任意と必須の二種類があるな」

「パルムでの依頼も有りますね」

 各々の内容を吟味しているようだが、共通しているのは困惑した表情を浮かべていること。なぜ自分達がこれをやるのか理解できない。そういった様子だ。

「少し説明すると、《必須》ではない《任意》の要請は必ずしもやる必要はない。

 そして、おれは教官として君たちの行動は見守るが、どの依頼をやるのかは君たちに決めてもらう。ただ、重要事項案件である"謎の魔獣"の調査ポイントの三ヶ所は今日中に回るつもりでいてくれ」

 俺の言葉に頭の中でスケジュールを考えたのか、全員顔を曇らせた。

「それ、結構ハードなスケジュールになりますよね……」

「ああ。ここだけじゃなく、パルム方面にも行く必要があるからな」

「《任意》なんですし、やらなくてもいいのではないかと」

 それぞれが意見を出しながら、どの依頼をこなすか話し合っている。──当時を思い出すな。ケルディックで初めて行った特別実習。あの時もお互いに意見を出しながら、結局全部回ったんだったか。無謀な挑戦だったが、それに見合った充実感は得られた。この子達もそういった経験が出来るといいが、まずは城館から出た方がいいな。

「まぁ、よく話し合って決めてくれ。──それでは、Ⅶ組特務科。これより《特務活動》を開始する。

 他のクラスの生徒にいい報告が出来るよう頑張ってくれ」

 最後の台詞を挑発と受け取ったのか、三人とも少し顔をしかめた。

「……っ、ええっ! やってやりますよ!!」

「ヴァンダールの名に恥じぬよう、全力で挑むだけです」

「行動開始、ですね」

 煽ったつもりはなかったが、やる気が出たならいいとしよう。空回りだけ気を付けてやらないとな。

 こうして始まった特務活動だが、初日から早速不穏な情報が出てきている。想像通りならこの情報の背後には彼らがいるのだろう。そうなった時、俺は三人をどうするべきなのか。その事を考えながら、前を歩く生徒達に付いていった。

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