閃剣へ至る英雄   作:エアリック

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区切り良いとこまで書いてたら長くなってしまいました。
もう少し上手くまとめられるよう精進します。


14話

 ランドルフ教官によると、セントアークで出会った女性は《結社》の執行者となった人物で、彼の従妹だそうだ。

「つまり《赤い星座》も関わっている可能性が高いと?」

 俺からの質問に頭を掻きながら答える。その顔は苦渋に満ちていた。

「ああ。あいつ──シャーリィは執行者であると同時に、星座の副団長も兼ねているらしい。あいつがいる以上、団として動いていても不思議じゃねぇ……」

「執行者が来ているなら、結社がこの地で何かを起こす可能性は高いよね。……午後からの演習はミハイル主任と相談しなきゃだね」

 一気に剣呑となった報告を兼ねた話し合いだが、俺達もそろそろ動き出さなきゃならない。パルム方面での調査もこうなった以上、今日中に片付けておきたいからな。

「他の生徒達はお任せしっぱなしで申し訳ないですが、よろしくお願いします。

 ──俺達もパルム方面へ急ごう。残りの調査ポイントは今日中に片付けたい」

 席を立ち教え子達に声をかける。異論無しと全員が頷き準備を整える。

「シュバルツァーの見立てでは、中年オヤジはシャーリィよりやべぇとなると、今度出会った時どうなるかわからねぇ。ユウ坊、クルト、アル吉も気を付けろよ」

「みんなっ! 無理だけはしちゃダメだからねっ!」

 二人から激励をもらい、列車の外に出る。これからパルムに向かったとして、夕方までになんとか終わらせたいところだな。

 馬を繋いでいる場所まで歩いていると、アルティナが顎に手を当てて考え込んでいることに気がついた。

「アルティナ?」

「いえ、ランドルフ教官から言われたアル吉とは私のことなのかと思いまして……」

 確かに最後生徒達を呼んでいたときそう言っていたが、クルトだけ普通だったな。

「あぁ、ランディ先輩は勝手に渾名つけちゃうのよ。いくら文句言っても変えてくれないのよね……」

 彼をよく知るユウナから補足が入るが、まぁ女の子に坊や吉はなぁ。彼の気安い雰囲気が許しているのかもしれないな。

 馬に全員が乗ったことを確認し、改めて午後の段取りを伝える。

「今日の夕方までには、残りの調査二件を含め依頼を片付けることを目標に頑張ってみてくれ。ギリギリだがなんとか終わらせられるはずだ」

「は、ハードだ……」

「まぁ、それくらいじゃないと演習の意味が無いのかもしれないな」

「……体力が心配ですね」

 馬をパルムへ向け走らせる。この時、結社の動きのことばかり考えていた俺は、遠くの丘の上に立つ二人の存在に気がつけなかった……。それを後悔するのはまだ先の事となる。

 

 パルムはクルトがそれなりの年月過ごしてきた町ということで、彼に案内を任せながら情報を収集する。その途中でミントという俺の同窓生からもたらされた情報によれば、三体の飛行する人形兵器らしき存在を見かけたらしい。

 午前中に遭遇した【ファランクス】とは明らかな別タイプ。本格的に、結社は何かをこの地で進めていることは疑いようがなくなってきたな。

 閉鎖されたというヴァンダールの道場からは、威勢の良い声が聞こえてきたこともあって、中を覗いてみると、数人の門下生が稽古に励んでいた。

 クルトがその事を疑問に思い、訳を聞いてみると、凄腕の臨時師範から教えを受けるために数日前から復帰しているとのこと。だが、クルトにはその臨時師範に覚えがないようで、その事を聞こうと思ったようだが、タイミング悪く話の内容が変わったことで、結局聞くことができなかった。

「いったい誰が……?」

 道場を後にした今もそこが気になるようだが、そこまでクルトに覚えがないならば、恐らくはヴァンダール流の人物ではないんじゃないかと思う。地図を確認すると、ここパルムはレグラムともそれなりに近いようだ。──ふむ。

 思い浮かぶのは凛とした雰囲気を持つ嘗てのクラスメート。ヴァンダール流とアルゼイド流は二大流派とも知られていることから、交流自体は少なくはないのではないだろうか。確か皆伝を認められたはずだし、可能性は高そうだな。

「まぁ、調査の帰りにでももう一度訪ねてみよう。留守ということだったが、その時は帰っているかもしれないしな」

「……そうですね。時間に余裕があれば、ですが」

 クルトもその提案には不満はない様子を見せる。

「じゃあクルト君のためにも頑張って終わらせようっ!!」

「凄腕の臨時師範という人物は気になりますね」

 ユウナとアルティナもその事に拒否感はない。気持ちが先行しすぎて、彼らの行動が雑にならないように気を付けるか。

 

 ミントから得た情報によれば、人形兵器らしきものを見かけたのは【アグリア旧道】の高台。人の通りもない場所のようだ。

 地図を確認しつつ、その場所と思われる地点に辿り着く。窪地になっているそこには、精霊信仰の名残と思われる石碑がポツンと残されている以外に目立つものはない。

「う〜ん……。ミントって人の話だとこの辺よね?」

 ユウナの言葉を受け、アルティナが地図を確認する。

「パルムから東に50セルジュ……地図上でもここに間違いはなさそうです」

「何か兆候でも掴めれば……」

 生徒達も辺りを確認しているが、やはり石碑があるだけ。その石碑に全員で近づいてみると──。

「ぐっ……!?」

 イストミア大森林でも有った、心臓の鼓動が急激に高まる現象。思わず胸を押さえるが、それはすぐに治まりを見せ、何が起こるわけでもなかった。が、生徒達には胸を押さえている所を見られてしまう。

「ど、どうしたんですか?」

「大森林でも急にそのような感じになったようですが……」

「……例の、ですか?」

 慌てて声をかけてきてくれる彼らに問題ないことを伝えようとするが──これはっ!? 

「総員、戦闘態勢っ!!」

 号令をかけながら背後を振り返り、太刀を抜く。突然の教官の動きに彼らも戸惑いながら武装を展開する──そのすぐ後のことだった。

 突然空間に歪みが生じ、瞬間移動してきたかの様に空中に漂う二体の人形兵器らしきものが顕現する。

「えぇぇぇぇぇぇっ!?」

「なっ……!?」

 いきなり何も無い所から現れた二体に、経験の無い二人は驚きを隠せない。

「拠点防衛型の重兵器【ゼフィランサス】……!」

「午前に戦ったものより遥かに厄介なタイプだが、数は多くない。全員でかかり殲滅するぞっ!」

「「「了解っ!!」」」

 俺からの指示に全員が答える。だが、"一体"足らないのに嫌な予感がするな。

 

「そこだっ! ──ラグナ・ストライクッ!!」

「やぁぁぁぁっ! ──クロスブレイカーッ!」

「クラウ=ソラスッ! ブリューナク照射!」

 クルトの必殺技が炸裂し、それに巻き込まれた二体は大きくダメージを受け、そこを逃さず二人の追撃が入ることで、その活動は停止を余儀なくされる。大きな損害もなく、戦い方も危なげはない。──が、詰めが甘かったな。

 肩で大きく息をしてしまっている生徒達の背後に、先程二体が現れた時と同じ空間の歪みが発生する。態勢が崩れてしまっている生徒達では、既に人形兵器から放たれようとしている熱線を避けられない。

 まぁ、そんなことさせないために俺がいる。瞬時に彼らの前に移動して、攻撃を行う寸前の人形兵器と向き合い、瞬時に抜刀し技を放つ。

 

「遅い──終ノ太刀、暁」

 

 刃に纏った炎を太刀を横に振ることで消失させ、納刀する。鍔と鞘がぶつかり合って音を鳴らした時、人形兵器に斬線が刻まれ、その傷からは炎が噴出する。

 充分な威力をもって放たれたそれは、人形兵器といえど耐えきることは不可能であり、間も無くその活動を停止させる以外に出来ることはなかった。

「…………はぁっ?」

「……あれを……一撃……か」

「……まだまだ……ですね」

 見ていた生徒達からは呆れと悔しさが混じった何とも言えない感情が伝わってくる。少しは教官らしかっただろうか。とはいえ反省はさせねばならない。

「……報告に有ったのは"三体"の人形兵器だ。もう一体がいなかったことを考えれば、あの戦闘で力を出しきって態勢を崩したのは良くなかったな」

「「「……うっ……」」」

 バッサリと言い切られた言葉だが、反論の言葉を見出だせず、ばつが悪そうにしている。だが、そんなことを考えられる程、余裕のある敵でもなかったのも事実。反省はしてもらうが、良くやったと言える戦果だろう。

「しかし、あれを相手に終始優勢に進められたのは誇って良い。"次"に繋げてくれ」

「「「? ……っ! ……はいっ!」」」

 誉められると思ってなかったのか、最初は言葉の意味を理解できていなさそうだったが、少しの間をおいてその意味を理解できたらしく、その返事には多少の嬉しさがこめられていた。

 

 戦闘の反省はこの位にするとして、──防衛拠点型が現れたか。やれやれ、何をするつもりなんだかな。

「最後の調査ポイントもこうなってくると、それなりに厄介なタイプが配置されているかもしれない。気を抜かずに行くとしよう」

「……わ、わかってますっ!」

「今度は同じ轍を踏みません……」

「……次は【パルム間道】でしたか。一度パルムに戻ってから、ですね」

 町へと戻り、残っている依頼がないかを改めて確認し、準備も整えた。ただ、パルム間道での手掛かりは得られなかったため、ここからは手探りでの調査となる。

 その事実を告げると、それぞれ疲れた顔を見せるが、刻限である夕方が近いこともあり、黙って間道の調査を開始した。

 

 調査を進めていくと、コンテナによって塞がれている横道を発見する。

「廃材置き場……なのかな?」

「どうだろう……子供の頃から有った気もするが……」

「ふむ……迂回できるルートがあればいいんだが……」

 ザイルなどは持ってきたいないため、コンテナを避けて進むには少し骨が折れそうだ。

 各自頭を悩ませていると、アルティナが一歩前に出る。そして、現れるクラウ=ソラス。ってまさかっ!? 

「ブリューナク」

 躊躇いなど一切持たずに放たれた光線が、積まれたコンテナを破壊する。けたたましい音と共に崩れていくそれらを確認して、この現状を作り出した彼女は静かに頷いた。

「進路クリア」

 少しの砂埃が晴れた先には、道を塞いでいたコンテナは壊されており、俺達が通るには十分なスペースが作られている。

「えぇ〜〜とっ……。た、助かった……よね?」

「通れるようになった……という点だけ見ればそうだろうね……」

 問題はこのコンテナを壊してしまったことによる責任。仮にこれが何らかの理由をもって、他者を近付けさせないために置かれていたのだとしたら、壊したことによる責任は重いのではないだろうか。クルトもその事に気付いているから、俺を見ているのだろう。

「アルティナ、そういうことは許可を得てからだな……」

「時間的なロスを省いたまでです。夕方も近いですし、調査に必要なことだと言ってしまえば、文句も出ないかと」

 結果よければ良し、といった態度を見ると……何て言うか、ミリアムに似てるよなぁ。

「はぁ……まぁいい。何か言われても責任は俺が持つ。このまま奥の調査を進めよう」

「「……了解です」」

「調査を再開します」

 肩を落としながら絞り出すような声で指示を出す俺を見て、気の毒そうにする二人と、しれっと調査を再開するアルティナ。さて、何が出てくることやら。それ次第で八つ当たりぎみに攻撃をしてしまいそうだ。

 

 横道の奥で俺達が見つけたのは、更に奥へと進むための山道らしき道。そしてそれを塞ぐように作られたゲート、といったものだった。

「……厳重に鍵が掛けられているな」

 鍵を確認したが、頑丈な作りをした物が使われている。鍵穴から見ても、鍵の形は複雑な物だろう。ただの山道を塞ぐには大袈裟すぎるな。

「……? 何度確認してもこの先には何もありませんね」

 アルティナが不思議そうに何度も地図を見返している。

「ゲートに何か書かれてますね。

『崩落により危険なためこの道を封鎖する』

 ……随分とあっさりしてるな」

「え? でも、この先は何も無いのよね? それっておかしくない?」

 崩落した山道を封鎖するのは理解できるが、先に何もないなら、ここまで厳重に封鎖する意味がない。この先には元々何かがあって、それを知る人達が万が一進まないように、ということか? 

 各々が考え込んでいると、そもそもここに来た理由を思い出す。──左側からか。

「総員、戦闘準備を」

「「「……っ……」」」

 指示を受けた三人は一旦思考を切り替え、人形兵器の襲来に備える。

 木々の合間を縫って目の前に現れたのは、これまで二度戦ってきたタイプとは更に異なっており、その見た目はまるでピエロの様だ。

「な、な、な、なぁぁぁぁっ!?」

「こ、これも……人形兵器なんですかっ!?」

 二人が驚くのも無理はない。特殊なタイプだし、これまでのものとは系統が違いすぎる。

「奇襲・暗殺用の特殊型【パランシングクラウン】ですっ! 警戒をっ!」

「麻痺や毒に注意しろっ! ……迎撃開始っ!」

「「り、了解っ!」」

 これは少しばかり攻撃することを増やさなきゃダメかもな。

 

 トリッキーな攻撃を繰り出す相手に、流石に経験が足らない三人は防戦する展開が続いた。それでも粘り強く戦い、隙を見つけては攻撃を繰り出すことで、何とか勝利を手にする。

「……ぜぇっ……ぜぇっ……。な、何とか……倒せた……」

「…………どこまでだ……《結社》というのは……」

「……た、体力が…………限界近い……です」

 疲労困憊といった様子の三人。一日依頼をこなしながらの身体に、この戦闘は流石に堪えたようだ。しかし身体に鞭を打ち、すぐに周りを警戒し始めた。些細なことだが、失敗を繰り返さない姿勢に頬が緩む。

 しかし、体力面も課題だな。すぐにつくような物ではないが、別で訓練メニューを考えてもいいかもしれない。

 ──―今後の訓練内容を考えていた所で、逆側から機械音を察知する。読み違えたか。

「すまない。これは俺のミスだな」

「「「……えっ?」」」

 突然の俺の謝罪に困惑する生徒達。だが、それもすぐに理解させられる。

 先程よりも個体数を増やし、再び同じタイプの人形兵器が目の前に続々と姿を表す。それもこちらの逃げ道を塞ぐ形で。

 生徒達に戦う体力は残っていない。ここは多少の無理も──いや、()()()()()

「君達は下がっていろ。──すまないがこんな状況だっ! 俺が足を止めるから、止めを頼むっ!!」

 突然大きな声で誰かに対して声をかける俺を、不思議そうに見つめる生徒達。だが、もう一人にはそれで十分伝わったようだ。

「──引き受けよう」

 暫くぶりとなるのに聞き間違いようのない、彼女らしい強い意思がこもる声色。あれから実力を更につけただろう。そんな彼女に失望されないためにも、この程度の相手に苦戦など出来るはずもなかった。




エリオットに比べて優遇されてる?知りませんねぇ
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