閃剣へ至る英雄   作:エアリック

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遅くなりましたが最新話です。
正直オリジナル要素がほぼないなら、ダイジェストでもっと飛ばしていい気がしてきた。


18話

 セントアークまでの移動。それは結局何とかなった。……クラウ=ソラスが生徒達をまとめて運んでくれたからな。最初は空中を移動するそれにおどおどしていたユウナなんかは、途中から見事にはしゃいでおり、フィーがそれを見て興味を持ってしまった程だ。巻き込まれたクルトは心底げっそりとしていたが。

 フィーの案内により着いたのは、セントアークに設置された《遊撃士協会》の仮支部。簡単な設備のみが設置されているが、行動が制限されてしまう帝国内ではこれが限界だったそうだ。

 「フィーさんって、既に正遊撃士なんですねっ!」

 「ぶい。」

 最年少での正遊撃士資格を得た事実を知ったユウナは尊敬の眼差しでフィーを見ている。彼女も満更ではなさそうだ。

 その後トヴァルさんと通信が繋がり、結社の動向に関しての現状を共有し合い、今ある情報の中で推測を重ねていく。

 (随分親しげだけどトヴァルさんって誰……?)

 (データではB級の遊撃士となってますが、実績的には"A級"でもおかしくないとされている方ですね)

 (そんな人とまで繋がりがあるのか……)

 俺たちの邪魔にならないよう遠慮しているのか、こそこそと喋っている生徒組。別に遠慮する必要はないんだぞ。

 最終的に《結社》は奪われたとされる《幻焔計画》とやらを取り戻すために動いている。だが、この地で大きく事を構える気はない。そして、昨夜の人形兵器の量からして、どこかに拠点となる場所を確保しているのではないか。といった結論となり、当面の目標はその場所を探し当てることとなった。

 そこに突如登場した赤髪の青年。トヴァルさんが助っ人として手配した人のようで、既にフィーは面識を持っている様子だ。

 「アガット・クロスナーってもんだ。リベールから一時的に帝国のギルドに出向している。ちょっとは話も聞いてはいるが――よろしく頼むぜ、トールズⅦ組とやら。」

 

 フィーから紹介されたアガットさんは凄腕の遊撃士らしく、ランクは既にA級。つまり、サラ教官と同等の実力者ということになる。そんな人がわざわざ協力をしてくれるのなら、こちらに否など有るわけがない。協力に感謝を告げる。

 「こっちこそ、《剣聖》にアルゼイド流の皆伝者といった人物と会えて光栄だ。」

 握手を交わし、先程まで話し合っていた内容を共有する。彼も拠点の存在は気にかけていたらしく、昨日の活動を通して心当たりはないか質問を受けた。

 「……怪しいと思える場所は複数有りましたが、どこも決定的な要素は有りませんね。」

 そもそもサザーラント州は自然のままで保たれた場所が多く存在し、拠点となりそうな場所なんて数えきれない。演習地に仕掛けてきた事を考えると、それほど遠くない場所だとは思うんだが。

 「うーん、やっぱり正規軍の情報は知っておきたいよね。」

 それぞれが足がかりとなりそうな情報はないかと思案している時に、突然エリオットがそんなことを言い出した。

 それはその通りだが……座視すると言っても、結社の動向を静観しているだけなんてことは有り得ないだろうし、何かしらの情報は持っているだろう。領邦軍はまともに動けていない現状を考えても、何かしらの備えはしているはずだ。

 「…そだね。協力とまではいかないかもだけど、何かしらの情報は得られるかもしれない。

 ――行ってみよっか?【ドレックノール要塞】に。」

 フィーもこのまま闇雲に動くよりは、少しでも可能性がありそうな道に懸けた方が良いと判断したようだ。しかし、アガットさんはそう思わないのか、疑問の声をあげる。

 「待て待て、軍が民間の言うことなんざ聞くわけねぇだろ。門前払いされるだけなんじゃねぇか?」

 その疑問は最もだと思う。しかし、エリオットがそんなことも考えずにあんな提案をしたとは思えないんだよな。話を聞いてくれる確信でもあるのか?

 『あー、それなら大丈夫かもしれんな。今の要塞を預かっている将軍は、最強と名高い第四機甲師団長――《紅毛》のオーラフ・クレイグらしい。』

 トヴァルさんからの情報で、俺の疑問は解消された。そうか、だからエリオットは。

 「……あれ?確かエリオットさんもクレイグ、でしたよね?」

 彼の家族構成を知らないユウナがエリオットのフルネームを思いだし、素直に疑問を口にする。

 「……おいおい。どうなってんだⅦ組とやらは。」

 今いる面子だけでも、《灰色の騎士》である俺、アルゼイド流の後継者。そして遊撃士に将軍の息子、それも息子はデビューしたての演奏家だ……今更だが濃い面子だな、他含めて。アガットさんの呆れ顔も当然と言える。

 「まさか、エリオットさんがあの"紅毛"のご子息とは……ちょっと想像つきませんね。」

 ヴァンダール家であれば、将軍と顔を合わせたこともあるかもしれない。クルトはその記憶の人物とエリオットが結び付かないらしい。そこは本人も自覚しているため、頬を掻きながら事情を説明する。

 「あはは、去年ぐらいからそうなっててね。こっちでの巡業が終わったら会う約束もしてるから、不在ってことはないと思う。」

 確かにあの人であれば話を聞くくらいなら出来るだろう。方針は決まりだな。

 

 アガットさんは俺たちとは別方向での足を使っての調査となり、仮支部を出たところで別れた。そして移動距離の問題を解消するために、厚かましくも侯爵閣下にお願いさせてもらい、馬をもう一頭借りることができた。アルティナは引き続きクラウ=ソラスでの移動となる。

 ドレックノール要塞に向けて馬を走らせるが、やはり少し距離があるためか、魔獣との戦闘も全てが避けられるわけではなかった。

 それでもこの戦力では問題など起きるはずもなく、順調に進んでいく。途中、戦闘終わりにラウラから質問を受けるまでは。

 「そういえば、リィン。何故『神気合一』による消耗があそこまで激しいのだ?」

 「……確かに。内戦の時は普通に使えてたはず。」

 やはり聞かれるか。生徒達がいる前で喋る内容でもないが、これもいい機会なんだろうか。

 「ええっと…。そのシンキ?なんちゃらって何ですか?」

 「…『神気合一』とのことですが、察するに昨夜の?」

 「…………ぁ……」

 まだ彼らに"あの力"のことについて、詳しく語ったことはない。使うつもりも無かったんだが、昨夜のように生徒達に危険が及べば、躊躇なく使うだろう。そして第Ⅱ分校の役割的に、可能性は考えたくないが高い。ならどうせ話すことになるだろう。遅いか早いかの違いだけだ。

 「ああ。昨夜も言った通り、俺は"特殊"な体質で、その力を引き出すのを『神気合一』と呼んでいる。」

 詳しくは俺にもわかっていない力なので、簡単に身体能力が跳ね上がること、見た目が変わることを説明した。

 「ここまではラウラ達も知っている通りだ。明らかに変わったのは昨年の《北方戦役》に参加してからになる。」

 「……っ…………」

 アルティナが俯いてしまっている。別に彼女が気に病むことなど何もないのに。

 「《北方戦役》……。リィンが辛そうにしてたから僕も詳しく聞くことは遠慮していたけど…何があったの?」

 エリオットの質問に、あの時の事を思い出しながら、その内容を伝える。

 「ああ。――あれこそある意味で一番、今の帝国の在り方を示している出来事だったのかもしれない。」

 

 ――当時、俺は月に一度くらいのペースで政府からの様々な"要請"をこなしてきた。そして最後にして最大の要請が《北方戦役》への協力だった。

 内戦の時に実行された《北の猟兵》によるケルディックへの焼き討ち。それの責を巡っての事が発端だったらしい。結局、猟兵達とどこからか導入された大型の人形兵器。それらが守りを固めてしまったことで、遂に戦端は開かれてしまった。

 「戦力として投入されたのは正規軍ではなく、オーレリア将軍とウォレス准将が率いる最新鋭の機甲兵師団。大義名分は自治州を不当に支配してきたテロ集団『北の猟兵』の制圧…。」

 「……馬鹿な。あれは暴走した貴族の独断と…………っ!?まさか……」

 やはりクルトは鋭いな。考えている通りだ……つまり、政府も最初からこうなることを望んでいた。

 「戦いが激化するなか、俺はアルティナや後から合流したサラ教官、クレア少佐率いる鉄道憲兵隊の人たちと協力して、何とか市民を避難させていった。」

 「そんな場所にアルも一緒にいたんだ」

 「はい…………?あのユウナさん。アル、とは?」

 なんだろうな、ユウナがいるとシリアスになりきれない。そこが彼女のいいところでもあるのだが。

 話を戻そう、その避難誘導しているときのことだ。――放たれていた数千にも及ぶ人形兵器が暴走を始めた。逃げ遅れた市民達がその攻撃に曝されようとしているの見た時、俺は迷うことなくヴァリマールを召喚して、"神気"を全力で解放した。

 「最後の人形兵器を斬った所までは覚えている。だが、そこで意識を失った俺の身体は"神気"を解放した状態から戻らず、相当衰弱していたらしい。」

 「……らしいではなく、していました。まるで、自分の命を燃やし続けているように。」

 アルティナから訂正が入る。反論は認めないと目で訴えいるのがわかる。はい、認めます。

 「三日後だったかな。目を覚ました俺に伝えられたのは、自治州全土の占領は完了し、ノーザンブリアが帝国に併合されたという事実だけ。」

 それが、俺の知る《北方戦役》。これに対して事実を知る"貴族派"は文句も言えず、政府としてはノーザンブリアを労せず手に入れた。領邦軍に手柄を譲ることで彼らに貸しを作りながら。

 

 「そこからは老師の導きによって、何とか制御することは再び出来るようになった――代償として抑え込むのに相当の体力と気力の消耗を必要とするけどな。」

 昨夜のように使うこと自体は出来る。だが、昨夜解放したことで、更に支配は強まってきているのを感じた。恐らくだが次に使えば、昨夜よりも短い時間しか抑え込めない。

 「……成程な。」

 全員が痛ましい表情をしている。させてしまったのは俺なんだけど、そう悲観しないでほしい。使わなければいいのだから。

 「幸い"神気"を使わなくても、身体は強化できるようになったからな。基本的に使う気はないよ。」

 なるべく前向きな感じで言ってみたが、その反応は様々だった。

 「だが、そなたのことだ。そうは言っても、いざとなれば使うことに躊躇いはすまい……我らがいる内はどうやっても使わせぬがな。使おうとしたら……覚悟することだ。」

 「ん。正直、戦闘力って意味ではだいぶ離されたっぽいし、リィンがそんな状況まで追い詰められたとき、止められるかわかんないけどね。取りあえず、みんなで囲んでボコればワンチャン?」

 「剣聖だもんねぇ……。やっぱりそうなったら、睡眠効果のあるアーツとかぶつけるとかかな?」

 頼もしいのか恐ろしいのか、級友ともあって遠慮がない。一方で生徒達は――。

 「あたし達が頑張らないと……!」

 「ああ。せめて、昨日のような状況でも自分達で打破できるようにならないといけないだろう。」

 「ですね。旧Ⅶ組の方達だけに負担をかけるわけにもいきませんし、普段近くにいるのは私達ですから。」

 気負いすぎるのはよくないが、やる気になっているし、下手なこと言うと睨まれそうだ。

 それに全員が俺のためを思って言ってくれているのは確かだし、その気持ちが嬉しくないわけがない。だから、俺から言うことは一つだけ。

 「みんな……ありがとう。」

 感謝を告げることだけだろう。

 

 多少時間を使ってしまったが、俺達はあれからも目的地に向けて順調に進んでいき、遂に要塞前まで辿り着くことが出来た。

 「すごい……。クロスベルでも【ガレリア要塞】は見たことあるけど、ここもそれに負けてないくらい大きい…。」

 「ここまで近くに来たのは初めてだな…。」

 「ここを攻略しようとするなら、かなりの損害が出るでしょうね。」

 生徒達がそびえ立つ要塞の威容に気圧されている。気持ちはわかるが、時間も惜しい。

 「まずは門衛に問い合わせてみるとしよう。」

 「そうだね。父さんがいてくれれば話くらいは聞いてくれると思う。」

 すんなりといってくれればいいが……。この時はそう考えていたのだが、俺達はあっさりとアポイントを取ることができた。

 同窓生であるアランや途中から案内を買って出てくれたナイトハルト中佐との再開。そして、通された部屋で待ち受けていた将軍が最初に行った行動は――。

 「よ〜く来てくれたぁぁ。エ〜リオットォォオオ!!」

 愛息子への抱擁だったのは言うまでもないだろう。

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