閃剣へ至る英雄   作:エアリック

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ハーメルでの戦闘は原作よりリィンが強化されてるので、相手も人数増加。
そろそろ展開が怪しい。


21話

 アガットさんが語ってくれたハーメルの真実。彼自身も又聞きとなる内容とのことだが、それはあまりにも醜悪で、哀しいものだった。

 手柄を焦った一部将校によるマッチポンプ。ミラで雇った猟兵を使い、"生け贄"として選ばれてしまった村への虐殺を行い、それをリベール王国の策略と言い張り、侵略を仕掛けるための一手とした。

「……なによ…………それ……」

「国家機密なのも当然だな……」

「ええ。これが公になったしまった時の騒動を考えれば、政府が箝口令をしくのは当然かと。……自業自得な上に、勝手な言い分ですが」

 侵略を開始した帝国は、その戦力差から優位に場を進めていく。リベールが防衛に専念したとしても、それは一時しのぎにしかならなかっただろう。それくらいの差が両国には存在していたはずだ。

「──だが、そこで帝国軍は思いもよらない状況に追い込まれる。王国軍の智将、カシウス・ブライト大佐の作戦によって」

 軍用飛空挺が初めて使われた事でこれは有名な話だ。この作戦によって優位に進めていたはずの帝国軍師団は分断され、各個撃破されたという。

「エレボニアは大国だ。軍も更なる兵力を投入しようとした時、突如として王国と帝国の間に停戦条約が結ばれることになった。

 ──戦争の発端となったハーメルの虐殺。それを未来永劫、闇に葬る条件でな」

 真実を語る彼は、少し疲れた様子を見せる。肉体的な疲れではなく、精神的な疲れだろう。それほどまでにこの事実は重い。特に帝国に籍を置くものにとっては、簡単に受け入れられるものではない。

「……そういえば、団長が言ってた。一つの村を滅ぼした外道たちが、しばらくして皆殺しにされたって」

「……陰謀が発覚して口封じされたんだろうな。事を企てた貴族派の将校も同様だろう」

 ミラだ雇われたとはいえ、そのような事をしでかす連中だ。生かしておいてもデメリットしかない。当然、元凶である将校も。

「ああ、極秘の軍事裁判にかけられて極刑を受けたらしい」

 そして停戦が結ばれた後、ハーメルに関しては徹底した情報工作が行われ、"山津波"が起きたということで、地図上からも姿を消した。

 ──これが、ハーメルの真実。帝国が起こしてしまった悲劇。そして、それから十数年で再びケルディックだ。どこまでも業が深い国民性と言われても否定できない。

 しかし、何故ここまでエレボニアという国は愚行を繰り返す? まるで、裏から何かに操られているような……いや、都合よく考えすぎだな。どんな事情があろうと、許されることではない。

 語り終えたと思われたアガットさんは、最後に一つ付け加える。

「リベールの女王陛下はこの提案を受け入れるか相当悩んだそうだぜ。このような非道を隠すことは正しいのかとな。

 ──最終的には国民の安全と平和を取った」

 苦渋の決断だったろうな。国を守るため、相当な覚悟を持って決めたのだろう。

 

 帝国の影、それを知ってしまった俺達だが、ここでずっと立ち止まっているわけにもいかない。この廃道の先には、結社の拠点があると思われるのだから。

「色々と考えることはあるだろうけど、先に進もう。結社の企みは止めなきゃいけない」

 先を促すと、全員ゆっくりとだが足を動かし始める。精神的に危うい状態だが、それでも前を向いて歩いてくれる級友たち。だが、生徒達は異なっていた。

 呆然としたまま、ただ歩くだけのクルトとユウナ。アルティナはそれほどでもないが、最近になって感情を表し始めた彼女だ。二人を気にかけつつ、自分の心の整理をつけるには精神的に幼すぎる。

「クルト、ユウナ、アルティナ。その精神状態では戦いにならない。ここで引き返すか?」

 敢えて厳しい言葉をかける。

「……ま、さすがにガキどもには辛い内容だったか」

 アガットさんはそもそも生徒がいることに反対のようだな。連れてきてしまった原因が俺だと知ったら怒られそうだ。

 ここまで言われては三人も頭に来たらしく、先程までの暗い表情を消して、俺達に強い視線を投げてくる。

「か、勝手なこと言わないでくださいよっ! ここまで来て戻るなんて、絶対に認めませんからっ!!」

「未熟なことは承知ですが、そこまで言われては黙ってられません……!」

「教官のサポートとして、ここでの離脱は認められません」

 強がりだったが、それでも前を向いて歩き始めた姿を見て少し笑ってしまう。アガットさんも俺と同様、懐かしいといった様子で笑っていた。

「無茶すんのはガキの特権だが……見守る方はたまんねぇよな」

「ですね。ですが、それをするのが教官の仕事でもありますから」

 違いねぇと声を出して彼も再び歩き出す。今の俺と似たような事が過去にあったのかもしれないな。何だかんだで面倒見は良さそうだし。

 さて、こうなれば生徒達にはもう一つ大事な役目を任せてもいいかもな。重要な役目でもあるが、彼らならこなしてくれるだろう。……どうやらおいたをしたらしい、誰かさんを含めて。

 彼らに声をかけ、役目の内容を伝える。……反発はあったが、生徒達だけの行動となることにやる気を見せる。すぐに行動に移っていき、ここで彼らとは別行動となった。

「リィン……いいの?」

 心配しているのはエリオット。ラウラやフィーも同じではあるが、これまでの同行中にある程度の実力は見抜けているようで、彼らなら出来ると太鼓判を押してくれた。

 

 ハーメルへ向かう山道はあまり見かけないタイプの人形兵器が哨戒を行っており、数回の戦闘を余儀なくされた。あくまで哨戒用だったためか、多少の厄介さはあれど苦戦することは特に無く、順調に足を進めている。

 途中、あまり見かけない種類の山百合が咲いている場所があったので、献花として少し摘ませて貰うことにした。これもきっと過去に村の人達が世話していたのだと思うと、心が痛い。だが、謝る資格など俺達には無いだろうな。

 そこから少しして、朽ちてはいるがハーメル村とギリギリ読める看板が立っている場所まで辿り着く。

「……存在を消した割りに看板は残ってるんだね?」

 フィーが疑問を覚えてつい口に出してしまったようだが……ふむ。

「罪の意識からかもしれないぞ。許されないことをした事は間違いないが、敢えて全てを残すことで、忘れてはならないと戒めているのかもな」

 そうだったらいいと、俺の願望が混じった考えだ。ハーメルの全てを抹消したのに、こんな看板が残っているのはせめてこれだけでも、といった気持ちがあったと信じたい。

 この考えに疑問を発したフィーも頷いてくれた。ラウラとエリオットも。……アガットさんはあまっちょろい考えだと一蹴したが、決して彼も否定しようとはしなかった。

 

 村の入り口に着くと、俺達を出迎えたのは朽ち果てた建物の残骸。営みを忘れ、哀しみに満ちたこの場所は、何故か安らぎを感じさせる。

「美しい邑だったのだろうな……。この穏やかさは、この地に眠る魂が今は安らいでいる証拠かもしれぬ」

「ああ。……実はハーメルには生き残りがいてな。その内の一人が一度里帰りしたこともあって、安心したのかもしれねぇ」

「そうですか……。そんな方が」

 互いに村の様子を口にしながら、奥にあるという慰霊碑を目指す。ちなみに先程の生き残りというのは、リベールの若手遊撃士の一人だそうで、かなりの有望株だとか。もう一人いたようだが、その人物は亡くなったらしい。

「──そいつはこれから会うだろう奴らと無関係じゃねぇ。執行者No.Ⅱ、《剣帝》と呼ばれた男だ」

「なっ!?」

「……サラが言ってた気がする。凄腕の執行者達の中でも圧倒的な強さを持つ人がいたって」

「内戦の時にも聞いた覚えがあるな……」

 剣帝、か。恐ろしく腕が立ったのだろう。劫炎が火焔魔人と化した際に、言葉にしていた人物。彼を退屈させなかっただけでも、単独での実力はとんでもないものだったに違いない。

「実際、奴の実力はずば抜けていた。何よりもその覚悟……いや、執念と言った方がいいか。その身を修羅と堕としてまで磨きあげた技は、届く気がしねぇと思っちまうくらいだった。

 ──最後には笑って逝っちまった馬鹿野郎だがな」

 面白くなさそうに喋っていたが、節々に彼への敬意が感じられた。素直じゃないんだな。

「アガットのツンデレとかめんどくさいね」

 フィーがどストレートに言い放ったが、彼はそれに少し文句をつけるだけ。照れているのだろう、結構分かりやすい。

 そんなことを話していると、奥まった場所に人影を見つける。……あの二人だ。慰霊碑らしきものの前で、祈りを捧げているように見える。

 こちらを警戒してるわけでもなさそうなので普通に近寄ってみると、俺たち同様の場所で摘んだと思われる花があった。フィーが他にも摘んだ跡があると言っていたのはやはり、彼女達の事だったか。

 こちらに背を向けていた二人は、ほぼ同時に道を空けるように左右に別れる。

「──さてと、お待たせ」

 戦鬼と呼ばれていた女性がこちらに振り返り、軽い口調で話しかけてくる。昨夜襲ってきたとは思えないほどの気軽さだ。少し呆けてしまっていると──。

「何をグズグズしてますの? 待っていて差し上げますから、花を捧げてしまいなさい」

 神速と呼ばれる女性からも声がかかったため、お言葉に甘えて、先に花を捧げることにした。

 

 慰霊碑には似つかわしくない折れた剣が刺さっている。……これは先程言っていた剣帝の? 

 疑問に思っていると、アガットさんが神速に話しかけ始めた。

「この折れた剣は……あいつのか?」

「ええ。魔剣《ケルンバイター》……盟主から授かったようですが、その力はもう失われています」

 懐かしそうに話す神速。どうやらそれなりに付き合いはあったらしいな。

「《剣帝》レオンハルトかー。滅茶苦茶強かったらしいね。……火焔のお兄さんも気に入ってたみたいだし」

 あの人に気に入られるのは苦労しそうだな。いきなり焔が飛んでくるとか有りそうで嫌だ。

「……終わったようですわね?」

 余計なことを考えてしまったが、この地に眠る魂に祈りは捧げた。同じ帝国人として許しては貰えないかもしれないが、それでもどうか安らかにと。

 ──ここからは気持ちを切り替えなければならない。

「聞きたいことは山ほどあるが……まずはここから移動しないか?」

 だが、この静謐な場を乱すのは御免だったので、移動の提案をする。全員がそれは思っていたようで、村手前の広場で対峙することとなった。

 その際に戦鬼が気になることを言っていたが、今は余計なことを考えている場合じゃない。どうにかして彼女達から目的を聞き出し、それがどのようなものであれ防がねばならない。

 

 広場へと出てきた俺達は、改めて向かい合って対峙する。……二人? いや、これは──。

「単刀直入に聞こう。──この地で何をしようとしている? 何故、よりにもよってこの地を利用した?」

 真っ直ぐなラウラらしい問い掛けだった。死者を悼む心と礼節を持ちながら、この地を利用したことが許せないようだ。

「……こういった里は、別にこの地だけに限りませんわ。帝国以外でも野盗崩れに滅ぼされた集落など少なくありません。……私の故郷のように」

 ぼそっと最後に付け加えていたのが聞こえたが、それが事実なら、この地を利用することを躊躇いそうなんだけどな。

 少しそっちに気をとられていると、戦鬼は戦鬼で猟兵らしい価値観を披露していた。刹那の喜びと安らぎを感じながら死んでいく世界か。まさしく戦いだけに生き甲斐を感じているようだ。

「それじゃあ、始めようか?」

 戦鬼の彼女が距離を開けて武装を取り出したタイミングで、少し離れた場所から気配を感じる。

「っ! ──狙撃だっ!!」

 俺の言葉に反応した四人がその場から飛び下がる。そのすぐ後、先程まで俺達が立っていた場所に銃弾と矢が突き刺さった。

「あはははっ! さすがに当たんないかぁ」

「昨夜の事でそちらに対する認識は改めました。特に……シュバルツァー。貴方は他と分断させていただきます」

 神速がそう言うと、転位の術により新たな人影が現れる。それは瞬時に俺と距離を詰め、持った得物で斬りかかってきた。それを避けることは難しくなかったが、それによってみんなとの距離が離れてしまう。

「リィン!」

「アルゼイドの貴女と重剣は私が相手を務めさせて貰いますわぁ!!」

「くっそがっ! 舐めんなっ!」

 共に重量武器である大剣を使う二人は、スピードで翻弄する神速に距離を詰められている。

「さぁ!! 楽しもうか、妖精!!」

「こっちも今回は届かせてもらう……」

「フィー! サポートするよ!」

 猟兵として接点が有った二人も戦闘を開始している。エリオットはそれぞれのサポートに回るつもりだろう。

 そして、俺はというと──。

「お初にお目にかかる。我が名は《剛毅》のアイネス。音に聞こえし八葉の剣聖、会えて光栄だ。是非ともお相手願おう……」

「私も初めましてね、剣聖さん。《魔弓》のエンネア。よろしく頼むわね」

 二人の後ろには白銀色をした重装の人形兵器。

「神速と似た甲冑姿……察するに鉄機隊のメンバー。それとその専用機か」

 二人が合流を阻むようにコンビネーションで攻めてくる。その合間には人形兵器からの攻撃。みんなと合流は難しいか。

「いいだろう。──なら全力で立ち向かうまでだ!」

 特別演習、二日目。ついに結社と相対した俺達は、帝国の闇であるハーメル跡地でこの地での活動の佳境を迎えようとしていた。

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