閃剣へ至る英雄   作:エアリック

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生徒たちは無理矢理関わらせました。
行き当たりばったりで書いてるとこういう所で無駄に苦労するんだと思い知りました。


22話

 ラウラ達の戦況も気になるが、俺は俺で戦いに集中しなくてはならない。鉄機隊の二人に専用機、決して油断できる相手ではないのだから。

「フンッ!!」

「そこっ……!」

 重量武器で大ダメージを狙ってくるアイネス。攻撃を避けることは正直容易い。しかし、そこから反撃に移行しようとする絶妙なタイミングでエンネアによる弓での狙撃。二人とは独立して動く専用機も鬱陶しい。

「まさか、俺相手に三人……二人と一機でくるとは思ってなかったな……」

 俺の力をそこまで評価するとは。昨夜襲ってきた二人は確かに返り討ちにしたが、撤退の様子から見ても不意を打たれなければ問題ないと思ってそうだったのにな。俺が溢した言葉を耳で拾ったアイネスが疑問に答えてくれた。

「フフ、デュバリィはこの対応に不満だらけだがな。それでも貴殿の実力は認めていたのだろう。

 ──我らの目的の前に私情は無用。筆頭殿のリベンジは後に回してもらったのだ」

 答えながらも攻撃の手は緩まない。専用機の攻撃も苛烈になってきた。……さて、まず対処するべきはあちらからだな。

 闘気を纏わせ、身体能力を強化する。鬼の力は使わない。仲間と約束したことを早速破るわけにもいかない。

「その目的とやらが何かは知らないが、易々と達成されるわけにはいかないな」

 仕掛けられる長物の攻撃をギリギリの間合いで見切り、彼女の死角となる方向へ踏み出す。攻撃体勢から戻っていない今、絶好の反撃機会だが──。

「させないわよ?」

 当然、エンネアによる攻撃が飛んでくる。だが、分かっている攻撃を喰らう道理はない。そもそも、彼女から攻撃させるのが目的だ。既に足に力は溜めている。

「──無焔閃」

 俺が持つ最速の突進技。彼女の矢と同様に、俺自身が一本の矢と化し、離れた場所で狙撃している彼女を狙い穿つ。相手は連続で矢を射れるとは思うが、それをしながらでは俺の攻撃は避けれない。

「……しまっ!? ──―きゃあっ!!」

「エンネアッ!?」

 彼女の持つ弓の中央部分で突きを咄嗟に受け止めたようだが、その程度の耐久で防ぎきれるほど温くない。

 衝撃を殺しきれなかった彼女は、背後の壁に全身を叩きつけられて起き上がれない。武器も壊れてはいないだろうが、弓は精密な武器だ。少しの歪みが射撃精度に大きく影響する。復帰してもこれまでのような援護は出来ないだろう。まず一つ。

 こちら側を振り向き動きを止めているアイネス。距離が離れているというのもあるだろう。だが、今の俺にとってこの程度の距離は一息の間で詰まるものだ。

「仲間をやられて動揺したか? ──隙だらけだ」

「っ!! 【スレイプニル】!」

 突如背後に現れた俺の気配に驚きながらも、彼女は専用機を盾に飛び下がる。盾とされた専用機も防御体勢をとるが、関係ない。……スレイプニルというのか。

「蒼き焔よ、我が剣に集え──斬っ!!」

 スレイプニルと呼ばれた専用機ごと一刀のもとに斬り捨てる。が、彼女はその攻撃の余波を利用して相方の方へ飛ぶ。合流することを優先したか……。

「最新のスレイプニルすら歯が立たぬか……。エンネア、無事か?」

「……ええ、なんとかね」

 互いに距離が開いてしまったか。すぐに詰められる距離とは言え、今の状態なら他のメンバーとも合流できる。そう思いそちらに目を向けると──。

 

「そらそらそらぁっ! 遅いですわよっ!! 

 ──ええ、理解はしましょう。しますともっ! ですが、それで納得できるかは別問題ですわぁっ!!」

「なんという気迫……っ!」

「くそっ! 速さに付いていけねぇ!」

 神速が荒ぶっていた。大柄な武器を使う二人をその速度で圧倒している。あれでは二人も大きな一撃を与えられない。それほどまでに今の神速はその名に恥じぬ動きを見せている。

「所詮は傍流と我流の剣……至高の存在であるマスターから指導を受けた私の剣に、貴方方ご・と・きが敵うはずないと知りなさいなっ!!」

 その言葉を受けた二人もさすがに頭に来たようだ。目に見えて気が昂っている。

「言ってくれるではないか……! ならば、その傍流と蔑んだアルゼイドの真髄、その身に刻むがよいっ!」

「我流だろうが何だろうが、勝ちゃいいだけだろうがぁ!!」

 …………盛り上がってるなー。さて、フィーとエリオットの方はいうと。

「あははははっ! いいじゃん、いいじゃん! 妖精も楽士のお兄さんも、楽しませてくれるねぇ!!」

「……こっちは全然楽しくない」

「この娘のリズム、荒れ狂い過ぎて上手く掴めないなぁ……」

 温度差が酷い。それに所々から入る銃撃に少し手間取っている様子だ。しまったな、さっきエンネアと距離を詰めたとき、そちらにも一撃入れておくべきだったか。

「灰のお兄さんとは楽しめなかったけど、やっぱり戦いは楽しくないとねぇ!! もう少し付き合ってもらうよぉ!」

 彼女は拮抗してる者との戦いを楽しむタイプか。二人を相手にしても互角以上に戦える自信があるからこそ、ああやって楽しめていると。

「リィンと楽しめなかったからって、こっちを付き合わせないでほしい」

「うーん、これ僕らはとばっちりじゃない?」

 どうも昨夜の戦闘のせいで、ラウラ達もフィー達も相手が昂りすぎているようだった。いや、襲ってきたのはそっちだろうに。

 

「余所見とは甘く見られたものだ……!」

 彼らを横目で見ていた俺に、距離を詰めてきたアイネスがその得物を上段から振り降ろす。それを敢えて太刀で受け止めることで、俺は想定通り身体ごと吹き飛ばされる事になった。ラウラ達がいる方向へ。

「? ……ちっ! ……デュバリィ!」

 狙いが読まれたのだろうが、もう遅い。俺は吹き飛びながら姿勢を変え、既に技を放つ準備は完了しているのだから。

「裂空斬・連」

 二つの衝撃波が神速、戦鬼のもとへ向かう。避けられはするだろうが、一時の時間さえ稼げればいい。

「ちょっ!? アイネス、エンネア! 何やってるんですのっ!?」

「ととと……。あぁ〜あ、灰のお兄さんが来ちゃったか……」

 分断させての各個撃破が当初の作戦だったようだが、合流してしまえばそらは破綻する。

「みんな、無事かッ!?」

 声をかければ、全員が揃って頷きを返す。ただ、ラウラとアガットさんが不完全燃焼気味で、戦いを中断されたことに不満を持っているようだ。……いや、目的違いますからね。

「チッ、仕切り直しか……」

 苛立ちを隠そうとしないアガットさんが悪態をつく。あちらも距離をとって全員が合流していた。銃による狙撃はあの男性からか。それはそうと、あちらはあちらで神速が騒いでいるのが窺える。何を怒鳴ってるんだ? 

「ふむ……リィンと戦えないことに不満があったようだからな。譲ったにも関わらず、押されていたことに怒っているのではないか?」

「ありそう。何かスゴい声で騒いでたし」

 ああ、マスターの指導がどうとか言っていたな。彼女達がその人から指導を受けての結果なら、あらゆる武に精通しているのだろう。三人が全員違う武器だしな。

「まぁまぁ、神速のお姉さんもその辺にしときなよ。あっちもまだ様子見みたいだし……さぁて、改めて五対五のチーム戦って所かなぁ」

 戦鬼が武器を構え直す。様子見? 先程も本命がいるような口振りだったし、俺達が知らない情報をあっちは持っているのか? 

「っ〜〜〜!! あーもう! こうなったら、シュバルツァー! 貴方をぶちのめして、この苛立ちを解消させてもらいますわよ!」

「あはは、リィンは敵とも仲良くなるよねぇ。いったい何を話せばそうなるのさ?」

 神速の言いがかりというか、身勝手な言い分を受けて、エリオットが抜けたことを言い出す。……いや、どう見ても嫌われていると思うが。

 ──それはともかく、そろそろいいタイミングだが、あの子達は出てこれるかな。

 

 ──少し前。俺は生徒たちを揃えてある指示を出した。

「君たちはここから別行動だ」

 俺が告げた言葉に、ユウナが真っ先に反応する。

「ちょっと、教官! あたし達も付いていくって言いましたよね!」

 他の二人も言葉にはしないが、その指示は不服と表情に出ている。わかってるから落ち着いてくれ。

「話は最後まで聞くように。別行動と言ったのは遊撃としてだ」

「遊撃……ですか?」

 指示の意図が理解できず、クルトが疑問を口に出すが、これはアルティナもユウナも同じ。

「風の流れとかで何となく地形は理解できた。ここからハーメルの手前まで道らしい道は一本だけだろう。

 だが、獣道なら話は別だ。君たちには敵の背後を強襲する役目を与えたい」

 恐らく二人とは再び戦闘になるだろう。その時に援軍がないとは言い切れない。そうなった場合に不意をつける存在はあるに越したことはないはずだ。

 俺の説明には納得できるが、それがどうして自分達になるのかがわからない。そんな様子の三人。真意を聞くべく、代表してアルティナが質問を投げた。

「事情は理解しました。……ですが、何故私達を? そういった意味ではフィーさんや、アガットさんなどの遊撃士の方々が適役な気がしますが」

 もちろん、彼らの方が柔軟に動けるのは間違いない。それでも彼らではなく、生徒達に任せる大きな理由。言ったら怒るだろうが、言わなきゃ納得しないだろう。

「これを言うのは心苦しいが……君達は相手から驚異と見られていないからだ」

「……そ、そんなはっきり……」

「確かにぐうの音も出ませんが……」

「……実際に言われるとキツいですね」

 怒るよりも落ち込む方が先に来たか。ここまで同行してきたことで、何か思い当たることでもあったらしい。

「だが、警戒されていないならそれを利用する。君達が姿を見せなければ、敵は君達が潜んでいるとはほぼ間違いなく考えない。そんな状況なら不意を衝くにはもってこいだ」

 勿論、充分に警戒して行動する必要があるが、アルティナがいるならそれも容易い。クラウ=ソラスを持つ彼女なら得意分野だろう。

「うぅ……納得できるんだけど……できるんだけどー!」

 ユウナが憤慨しているが、クルトとアルティナはそうでもない。

「仕方ないさ……役割があるだけ良かったと思うしかないだろう」

「ある意味でこれは私達にしか出来ないかと」

 少なくとも二人がこの様子なら暴走することも無さそうだ。タイミングを誤れば、迎撃される危険な役だが、彼らならやりきれると信じている。

「仕掛けるタイミングは……アルティナ、君に任せる。自分の判断で決めてくれ」

「……了解しました。クルトさん達の事はお任せください」

 経験なら二人に比べ、確実に上である。リーダーといった役割ではないが、常に冷静を保つ彼女は、チームでも頼りになる頭脳となるだろう。

「ああ、それと……どうやら尾けてきている問題児がいるみたいだから、そいつも拾ってやってくれ。たぶん分校生だ」

「「「……は? ……」」」

 

 誰が尾行してきていたかはわからないが、教官陣を出し抜いてここまで来れているなら、足を引っ張ることはないだろう。…………許す気はないが。

 さて、そろそろ戦闘が再開されてしまいそうだが……出てこれないなら、それも良し。次回があるかは知らないが、その時に活かしてくれればいい。

 そして戦鬼が足に力を込めて、それを爆発させようとした瞬間の事だった。

『ハッ……貰ったぜっ!!』

 結社側の背後にある森から、機甲兵が飛び出してきた。

「へぇ……?」

「お嬢……!」

 星座の二人に対しての攻撃だったが、それはあっさりと回避されてしまう。

 ……あの声は戦術科のアッシュだな。機甲兵まで持ち出すとは……ヴァリマールで空中散歩でもするか。ランドルフ教官とのコンビで戦闘指導でもいいな。後で相談しておこう。

「今です……!」

「──承知!!」

「やあぁぁぁっ!!」

 機甲兵とは違う方向、ちょうど鉄機隊の三人が機甲兵へ振り向いたその背後から、クルトとユウナが強襲をかける。

「ムッ……!?」

「あら……?」

 その攻撃はダメージを与える事は叶わなかったが、相手は迎撃準備が整っておらず、反撃に出ることは出来ない。

「雛鳥ごときが……! 痛い目を見たいよ──っ!?」

 生徒二人を見ながら、剣を構えようとする神速。そうはさせじと、空中からアルティナを乗せたクラウ=ソラスがその大きな腕を振り回す。

黒兎(ブラックラビット)……! そういえば、分校には貴女がいましたか……!」

「お久しぶりですね。リィン教官に返り討ちにされたポンコ……神速、でしたか」

「喧嘩売っているんですのっ!? 買ってやるから降りてきやがれですわっ!!」

 煽ることはしなくて良かったんだが。しかし、あの人は簡単に挑発に乗るな……。今後相対したときに使えるかもしれない。とにかく、生徒達の奇襲によって相手の体勢は崩れた。彼らは自分達の役割を十全にこなしたんだ。

 なら、教官としてそれに応えてやらなきゃな。

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