閃剣へ至る英雄   作:エアリック

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オリジナルクラフトが出ます。
ちなみに作者は『弧月一閃』と『無月一刀』は七の型だと勝手に解釈してます。
性能良すぎ


7話

 ARCUSⅡでの新機能、ブレイブオーダーを使用しての戦闘は順調と言えた。《突撃陣》による攻撃、《防御陣》による防御、それぞれを敵の行動に合わせて適宜変更することで、魔煌兵といえども、有利に事を運べている。

 また、その恩恵を実感できてからというもの、戦闘開始時点では若干の不安があった生徒達も、怖れずに向かっていけている。この事自体は一長一短だが、強敵との戦いでは間違いなく有効な一手となるだろう。

 「……断ち切るっ!!」

 納刀状態からの一閃で、大きく魔煌兵の体勢を崩すことに成功すると、すかさずアルティナから追撃が行われる。それにより更に体勢を崩した相手に止めの一手がユウナから放たれた。

 「クロスブレイク!はぁぁぁ……喰らえっ!!」

 トンファーによる雷を纏った重い一打は、大きな体を持つ魔煌兵を仰向けに転ばせることに成功した。

 「よしっ、一気に攻めるぞっ!!」

 その隙を見逃してやる必要はない。起き上がることもできずにひたすら攻撃を与え続けられた巨人は、呻き声のような雄叫びをあげて、この空間から消えていった。

 

 「……はぁっ、はぁっ……」

 「……ぐっ…。」

 「流石に……限界…です」

 膝をついて肩で息をしている三人を見つめながら、少し乱れた呼吸を整える。

 『フン……、Ⅶ組のテストはこれで終了とする。基準値を大きく超えてのこの結果。次は想定よりも強度を上げても良さそうだな。』

 『は、博士っ!?さっきのことといい、少しは自重してくださいよ〜!』

 アナウンスからは不機嫌そうに次のテストの難易度を考えている博士と、魔煌兵なんかを出したことに怒っているティータの声が聞こえてくる。

 難易度をあげるって、これ以上の敵を用意できるということだろうか。いくら博士といえどもそんな簡単なことではないはずなんだが。

 ……考えても仕方ないな。あの人の行動など読めるはずもない。それよりも頑張った三人に声をかけなくては。

 「三人共、お疲れ様。かなりの強敵だったが、こうして倒せたこと。この事は自信にしていいと思う。実際に内戦ではあの存在に正規の軍人でも手を焼いていたくらいだからな。」

 一人一人に手を貸し、体を起き上がらせる。

 「……ふ、ふん!まぁ、あたしにかかれば帝国で出てくる敵なんてこんなもんですよっ!」

 「いや……それはどうかと思うが…。」

 「ちょっと、浮かれすぎですね…。」

 褒められたが素直に喜べないユウナと、どこまでも冷静な二人。このメンバーなら、今後行っていくことになる《特務活動》も乗り越えていけるんじゃないだろうか。この後改めて転科を希望するかを聞くつもりだが、出来れば残ってほしいと思う。

 「はは…さて、前にも言ったが『では、シュバルツァー。貴様のテストを始めるぞ。』―は?」

 いきなり博士からアナウンスが入る。

 「ち、ちょっと待ってくださいっ!俺のテストとは何ですかっ!?Ⅶ組のテストは先ほど終わったはずでしょう!?」

 『――言っただろう、Ⅶ組のテストだと。あれはあくまで小隊単位でのテストだ。

 これから行うのは貴様個人の戦闘データを目的とする。』

 いきなりのことで頭が追いつかない。一体この人は何を言っているんだ。そんな個人の戦闘データが欲しいなら、分校長にでも相談してほしい。きっと喜んで協力してくれるだろう。

 『小隊単位で計算し難易度を調整したはずだったが、想定よりもズレがある。どうやら貴様個人のデータを更新する必要があると判断した。』

 「そんな勝手な……。」

 どこまでも自分主義な博士らしい言い分だが、こちらにも予定がある。この後の決定次第では転科の手続きなど、調整も必要なのだ。そう思い次の機会にしようとすると――。

 『面白い。やるがいい、シュバルツァー。これは分校長としての命令だ。』

 更に面倒臭いお方が登場してしまう。何で其処にいるのか問いつめたいが、こうなった以上何を言っても無駄だろう。博士だけでも難しいのに、もう一人自由な人が増えてしまった。

 「……わかりましたよ。」

 『最初からそう言え。余計な手間をかけさせるんじゃあない。』

 余りに酷い発言に、こちらを見ていたユウナ達も同情的な視線を隠さない。

 「あ、あの……頑張って下さい。」

 「…御武運を。」

 「まぁ、さっさと終わらせてしまえばよいかと。」

 

 『準備はいいな?』

 「はい……。」

 やる気なんて出るはずもない。取りあえずテストには無関係なユウナ達は地上へ出る扉の前に移動させた。

 『さぁ!見せてみるがいい、シュバルツァー。《剣聖》と至ったという、今のそなたの実力をっ!!』

 分校長が余計な事を言ったようだが、もうどうでもいい。自分としては早く終わらせたい思いしかないのだ。

 「へ……?」

 「は?」

 「あ、バレたんですね。」

 ユウナ達にもバレてしまったが、あとから説明しよう。今は霊的な反応が膨れ上がり、現れようとしている存在に集中するべきだ。

 「――おぉぉぉぉぉぉっ!!」

 赤い闘気を纏い太刀を構える。

 『ほう。鬼の力ではないな。……其処にいる雛鳥達もよく見ておけ。そなたらの教官となるであろう男の実力をな。』

 気配から察するに上位の悪魔クラスが出てくるだろう。何でそんなものが呼び出せるのかは知らないが、素直にデータを取らせる気はない。

 悪魔の存在が場に固定され実体化を終えるのを確認した瞬間――。

 「――無焔閃っ!!」

 皆伝を受けた日から、自分なりに考え編み出した技の一つ。八葉では珍しい突きを利用した突進系の戦技。観の目によって敵の弱点を見抜き、疾風の高速移動で直進しながら、すれ違い様に刹那で射抜く。

 手応えはあった。相対した状態からすれ違ったため、悪魔には背を向けているが、その気配は希薄していることが確認できた。もうその存在を維持することはできないだろう。

 「データは取れましたか?シュミット博士。」

 今できるいい笑顔で言ってやった。

 『フン……、当然だ。私はこれからデータの検証に入る。後は勝手に出ていくがいい。』

 あれでも取れていたのか。少し悔しいな。

 まぁ、これで暫くはデータの更新は必要ないだろうし、今回だけの処置として納得してしまおう。

 地上への扉の前で待機しているユウナ達に向かって歩いていき、改めてⅦ組としてやっていくかの確認を行う。予定よりも遅れてしまったが、博士が悪いという事で許してほしい。

 「さて、想定外なことが起きたが、君達はこれからどうする?

 Ⅶ組としてやっていくか。それとも別のクラスへ移動するか。伝えた通り、その判断で君達に不利益とならないようにするから安心してくれ。」

 俺の言葉に三人は考え込むように黙っているが、その沈黙を最初に破ったのはアルティナだった。

 「アルティナ・オライオン。Ⅶ組特務科へ参加します。」

 「……理由は?情報局からの命令だとか、そういった理由では悪いが認める気はないぞ。」

 正直、彼女にこの言葉は酷だろうと思っていた。今の彼女は俺のサポートを命じられているはずなので、それを遂行するためだけにⅦ組で活動すると判断したと思ったから。

 「これ以上の被害者を増やさないためです。リィン教官は不埒ですので、近くで監視する必要があると判断します。」

 ……うん、この理由は予想外だったな。

 「誤解を招くようなことを言わないでくれ。俺はそんなことしたつもりはないし、被害者と言われても心当たりは無いぞ。」

 「自覚がないのは厄介です……。まぁ後は単純にⅦ組特務科という存在に興味があります。

 ……これが理由ではダメでしょうか?」

 内戦の経験からⅦ組に興味を持ったのは想像できる。これまで自主的に自分の意志を伝えてこなかったことを考えれば、十分な理由だ。

 「最初のだけならダメだと言いたいが、そういったことなら歓迎する。よろしくな、アルティナ。」

 「はい。」

 これで分校長に付き合わされることは回避できた。後は残る二人だが――。

 「ユウナ・クロフォード。Ⅶ組特務科へ参加します。」

 次に声をあげたのはユウナだった。俺に思うところがありそうな彼女だが、どんな理由で参加の意志を決めたのだろう。目線で続きを促す。

 「この小要塞で自分の実力不足を痛感しました。戦闘中の貴方の判断や指示は的確でしたし、正直それがなかったらクリア出来なかったでしょう。

 英雄としての貴方はいけ好かないですが、教官としての貴方は信用できると思ったし、私の成長にも繋がると判断します。」

 「……わかった。君の参加を歓迎する。これからよろしくな、ユウナ。」

 「……っ!はいっ!!リィン教官!!」

 英雄としての俺でなく、教官として、か。その期待に応えられるように頑張らないとな。

 「最後は僕ですか……。クルト・ヴァンダール、同じくⅦ組特務科へ参加します。」

 剣士としてこちらを見定めるような目を何度か向けていたクルトだが、彼なりに納得できたということだろうか。

 「彼女と似たような理由になりますが、自分も実力不足を痛感しました。これでも剣の腕には覚えはあったのですが、それも最後の貴方が見せた剣技によって打ち砕かれました。

 八葉一刀流の技の冴え。今後も近くで見させていただきたく思います。」

 「……君ほどの剣士にそう思われるのは光栄だな。喜んで歓迎する、よろしくなクルト。」

 「はい。ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い致します。」

 これで当初のメンバー全員が参加となった。教官としてとてもありがたいことだが、それと同時に彼等を導かなくてはならない。責任は重大だ。

 「では三名の参加をもって、Ⅶ組特務科を発足する。俺も教官として学ぶことが多い立場だが、共に成長していけるよう頑張っていこう!」

 「「「はいっ!」」」

 

 Ⅶ組のオリエンテーションも終わり、小要塞から出たところで、そういえばとユウナから質問を受ける。

 「分校長がリィン教官を《剣聖》って呼んでましたけど、あれってどういう事なんですか?」

 ああ、その説明もしなくちゃいけないか。

 「俺の流派である八葉一刀流は奥伝、つまり他で言う皆伝だな。それを授けられると《剣聖》を名乗ることを許されるんだ。だからそう言ったんだろう。」

 世の中には《剣匠》や《雷帝》など色々な通り名があるが、要は八葉一刀流の奥伝者は《剣聖》って決まりがあるだけだ。それでも十分に重いけどな。

 「じゃあリィン教官もアリオスさんみたく《風の剣聖》みたいな呼称があるんですか?」

 「はは、俺はまだ未熟だからな。自分から《剣聖》を名乗るつもりは無いよ。」

 ただでさえ他の奥伝者が実力者なのだから、それと比較されては堪らない。

 「そういうものですか……。あ、じゃあアルティナがたまにリィン教官みたいな技を出してたのは?まぁ、アルティナがと言うよりはあの謎の機械が出してた、ですけど。」

 「その点は僕も気になりました。あの技の時だけ妙に斬撃として鋭さが違うような…。」

 クルトはともかくユウナも気づいたか。隠すようなことでもないから構わないか…。

 「アルティナには少しの間、剣を教えたからな。その際に一つだけだが八葉の型も教えたんだ。それを戦術殻で再現しているんだろう。」

 「そうですね。もちろん、クラウ=ソラスが技を使うために調整する必要はありますが。」

 吸引して敵をまとめた上での魔法属性の斬撃。あれはクラウ=ソラスだからこそ可能だろう。教えた技を自分ができる範囲で改善したあれは既にオリジナルと言っていい。

 「型?」

 一つ答えると複数の疑問が出てきてしまっているな。……ふむ、確か学院の地下に訓練場があったはず。

 「……教室で今後の日程を話そうと思ったが、少し寄り道するか。」

 「へ?」

 「……いいんですか?」

 たぶん問題ない。先程からこちらを窺うようにつけてきている人も含めて、どうも先程の戦闘が気になっているみたいだし、クラス内での疑問はさっさと解消してしまった方がいい。

 「じゃあこっちだ。このままついてきてくれ。」

 「了解しました。」

 こちらの提案に戸惑いながらもしっかりとついてきてくれる三人と、向かう先を察したためか気配が強まった自由人。

 最後の人はまぁ……今後も絡まれるのは防げそうにないし、諦めるしかないかな。

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