閃剣へ至る英雄   作:エアリック

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書き貯め分の最後です。
展開が遅すぎな気がしますね。


8話

 Ⅶ組メンバーを引き連れてやって来たのは、クラブハウス地下にある訓練場。何故ここに来たのか流石に説明していないので、それぞれが困惑するように顔を見合わせている。

 「ここは…錬武場のようですが……、一体何故ここに?」

 代表してクルトが質問を投げかけてくる。

 「ああ、疑問はもっともだと思う。それについてだが、既に君達も理解しているかもしれないが、四人での戦闘では俺は君たちのサポートに重きをおいていたため、積極的に攻撃を行っていない。

 そして、単体での戦闘は……見ていただろうがあの通りだ。」

 あれだけでは俺の戦闘方法などわからないだろう。

 「今後Ⅶ組として君達と共に戦うのに、俺の戦闘スタイルがわからないままだと不安だろうし、さっきのユウナの質問にも答えるためにも、一通り技を見せながら説明した方がいいと思ってな。」

 それぞれが理解できたと頷いたので、説明しようと思うのだが、扉の外にいる人にも声をかけた方がいいだろうな。

 「――そういうわけですから、分校長。何か用があるならまたの機会にしていただけませんか?」

 「つれないことを言うな、シュバルツァー。技を見せるにも相手がいるだろう?」

 扉を開けて現れる分校長。その存在に気付いていなかった三人は驚きを隠せない。

 「…………えぇっ!?」

 「いつの間に……。」

 「全く気付きませんでした…。」

 限りなく気配は消してたからなぁ。剣気は隠していなかったけど、それは前と同様に俺だけに向けていたのだろう。

 「型の簡単な説明と、初歩の技を見せるだけなので、分校長にお見せするほどのものではないですよ。……近い内に模擬戦の機会を設けるので、今回は勘弁してください。」

 できればこのような約束はしたくなかったが、放っておくと何をしでかすか本気で心配なため、俺が折れるしかない。

 「ふむ……。八葉の技に興味はあるのだが…まぁ、よい。今日の主賓は雛鳥達であるし、言質は取った。その時を楽しみに待つとしよう。」

 言いたいことを言って去っていく。あまりにも自然な振る舞いに誰も口を挟めない。

 「あの人の事は、ああいう人だと理解してくれ……。」

 訓練場に俺の言葉が虚しく広がった。

 

 「さて、気を取り直してまずは八葉一刀流の型について説明しようか。」

 壱から漆までの剣術で使用する型、無手で使用する特殊な捌の型。それぞれの型に特徴があり、八葉を修める者は例外無く、全ての型を教え込まれる。その過程で本人に最も合った型を探し、その型を専門的に鍛えていく。

 「そこまで行けば初伝となり、それ以降は中伝、奥伝、って進んでいく。ユウナもよく知るアリオスさんなら、弐の型である《疾風》の奥伝、といった形だな。」

 なかなか知る機会のない内容だけに、初めて聞くことが多いのか話を聞くことに集中していた様子を見せていた。

 「へぇぇ〜。最初に特化しちゃうんですね。」

 「ああ、正直それは知らなかったな……。」

 八葉一刀流自体、帝国ではマイナーな流派であるし、詳しく知る機会など無かっただろう。武門に通じていれば名前くらいは聞く。そんな程度だ。遊撃士とは何故か縁が深いので、そちら方面ではやたらと有名みたいだが。

 「まぁ、八葉一刀流の説明はこの辺にしておいて、技の方だが……クルト、すまないが相手もしてもらえるか?」

 「っ!?……はい、八葉の妙技。光栄です。」

 残る二人を下がらせ、訓練場の中央で相対する。

 「相手といったがまぁ、演武とでも思ってくれ。これから順に技を出していくから、それを受けるか避けるかしてくれればいい。」

 「はい、勉強させていただきます。」

 「ははは……そんな大層なものじゃないんだけどな…。」

 やたらと気合いが入っている様子に、少し戸惑ってしまう。気を取り直して技を繰り出すため剣を構える。それに合わせるようにクルトも双剣を構えた。

 ――じゃあ、いくか。

 

 一通りの型で技をゆっくりと繰り出していき、いよいよ次で最後となる。無手による格闘術である捌の型。滅多に使うことなど無いが、老師によって徹底的に叩き込まれたため、ある意味で俺にとってはよく馴染んでいる型だ。

 「――最後だ。しっかりと踏ん張れよ、クルト。」

 破甲拳。単なる拳による殴打だが、剄を使うためその威力は見た目よりも遥かに高い。といっても、泰斗流などに比べれば数段劣るものだが。

 「ぐっ!?」

 剣の腹で拳を受け止めたクルトだが、その威力を押さえきれず、地に足をつけたまま後方へ吹き飛ばされる。

 「……パンチで人ってあんなに吹き飛ぶんだ。」

 「そんなわけありません…と言いたい所ですが、実際に見てしまうと否定できませんね。」

 流石にこの結果には二人とも驚いている。アルティナはクラウ=ソラスで同じようなことができると思うから、そこまで驚くことではない気がする。

 「これで一通りの技は見せた。基本的にはこれらを使用して戦うのが俺の戦闘スタイルだ。

 ――クルトも付き合ってもらって助かった。ありがとう。」

 膝をついて息を荒げているクルトに手を差し出し、その身体を起き上がらせる。

 「……はぁっ…はぁ。…いえ、こちらこそいい経験になりました。特に疾風…でしたか、あの高速移動からの斬撃。…直前に声をかけていただけなければ防げなかったでしょう。」

 相手に防ぐ暇を与えずに斬るのが、疾風の真骨頂だからな。だが、クルトは声をかけたとはいえ防ぐことができたのだから、その反応速度は素晴らしいものがある。

 「防げただけ、スゴいと思うぞ。俺が初めて見たときは、同じように老師から声をかけていただいたが反応すらできなかったからな。」

 「いえ、そんなことは…。」

 あくまでも謙遜を続けるクルトだが、俺の言葉に、見ていたユウナ達も同意見だと告げる。

 「いやいや、クルト君スゴいって!あたしも声は聞こえたけど、どっちからとかわかんなかったよ!」

 「はい、あれに反応できたことでも素晴らしいことだと。……実際、私やエリゼさんは肩に手を置かれるまで何も出来ませんでしたし。」

 ああ、確かにアルティナやエリゼにも見せたが、そんな感じだったな。流石に斬る訳にもいかないので、肩を叩くだけで終わらせた記憶がある。

 「俺から説明したいことは以上だ。――あとは何かあれば適宜答えようとは思う。が、その前に教室へ移動しよう。」

 こちらから付き合わせたのに慌ただしくて申し訳ないが、これ以上遅くなってしまうと、他の連絡事項を伝える前に下校時刻となってしまう。

 「了解です。」

 「はーい。」

 「では、行きましょうか。」

 武器をしまい、Ⅶ組へ宛がわれた教室へ向かって歩き出す。

 色々予定外なことになったが、ユウナやクルトとは最初に比べれば、大分打ち解けられた気がする。博士や分校長のおかげ……とは言いたくないが、切っ掛けになったことは感謝してもいいのかもしれないな。……いや、それ以上に振り回されそうだし、やはりこれくらいで感謝するのはやめておこう。

 その後教室へ辿り着き、必要な連絡事項を伝える。その際にアルティナから剣術指導の継続を訴えられ、そこに他の二人も参加を希望した。俺としても彼らの力になれるならと、この提案を承諾する。

 だが、彼等が想像しているよりも分校のカリキュラムは厳しい。それに慣れるまでは頻繁に開催すべきではないため、週に二度だけとした。その事に不満を抱いている様子を見せたが、きっと俺の提案に感謝すると思うぞ。

 

 七曜暦1206年、4月半ば。生徒達が第Ⅱ分校へ入学して二週間が経過した。生徒達は予想よりも厳しいカリキュラムを受けて、やはりまだ慣れないのか、疲労の色が強く表れていた。今日は第Ⅱ分校では初となる《自由行動日》だ。

 本校では無くなったとされる、このトールズならではの特殊な決まり。ここ第Ⅱ分校では分校長が実施に踏み切ったと聞いている。本来であればかなりの行動に許可が出る、文字通り自由に過ごせる日だが、今回生徒達には一つの制限がある。

 それは、《部活》を決めなくてはならないこと。もちろん、今年から開校した分校に部は存在しない。最低二人以上の部員を揃え、部活に使用する用具などを申請すれば、正式に認められるという形だ。この費用は分校長の私財から出されると聞いているが、そうまでするとなると、あの人もトールズの卒業生として、自由行動日に何か思い入れがあるのかもな。

 なお、部活を決められなかった生徒は強制的に生徒会へと入れられ、分校長の手伝いをする。となっている為、Ⅶ組のメンバーにはそうならないようにお薦めしたことは当然のことだった。

 また、教官陣は15時からブリーフィングを行うために、分校の戦略会議室へ時間までに集合することとなっている。……いよいよ、この分校が持たされた役割の中でも大きなウェイトを占める《特別演習》の概要が伝えられる事となる。

 それまでの時間をどう過ごすか…。部活決めに戸惑っている生徒のフォローとかは必要かもしれない。よし、街を軽く見回りつつ、校舎へ向かうとしよう。

 

 ――状況を整理しよう。何故こうなった?

 街中で配達業者が困っていたから、手を貸した。問題ない。その後も学生達の部活動に対するサポート、悩んでいる生徒にはそれとなく提案したりしてその解決に努めた。これも問題ない。

 では、今俺に対して武器を構えている、獰猛な獣の如くその瞳をギラつかせている分校長の存在は?――そう、問題しかない。

 俺が校舎を回っている途中、分校長に遭遇した。そこで生徒のフォローを行っていると報告すれば、心当たりがあるとグラウンドに案内されたのだった。グラウンドではテニス部として活動する予定のユウナ達の姿が見えたが、それ以外には見当たらない。

 「ええっと、分校長?悩んでいる生徒というのは?」

 「ふむ、そやつはな…とある約束をしたはずなのに、いくら待っても相手からの誘いがないようでな。ならば自分から相手を引きずり出してしまうしかなかろう?」

 こういった雰囲気には覚えがある。どうやっても俺に言うことを聞かせる時のエリゼと同じだ。つまり対象は俺で、相手は――。

 「さぁ、シュバルツァー。構えるが良い。今日こそ我が相手となってもらうぞっ!」

 身を越えるほどの大剣を担いだ分校長だ。つまり、そうして今の状況は作られている。

 「貴女は一体何を言っているんだっ!?」

 つい非難するような口調となってしまったのはしょうがないだろう。俺は生徒のフォローをしていると伝えたのに、何でグラウンドで羅刹の相手をしなければならないっ?

 「おや、これでも待った方だと思うのだがな。入学式の日よりお預けを喰らったままなのだ。流石の私でも限界というものがある。」

 いけしゃあしゃあと自分本意な理由を語る姿を見ると、本当にここの分校長はこの人でいいのかと疑ってしまう。

 「雛鳥達もここでの生活が二週間となり、余裕がなかった最初に比べれば、こうして《自由行動日》を迎えることができた。当初気を使っていたそなたも多少は楽になったであろう。」

 言葉を続けながらも、その剣気は闘気へと姿を変え、分校長の身体を強化していく。

 「偶然とはいえ、そのような状況で出会ってしまったのなら――是非もなし。」

 「滅茶苦茶だ…。」

 だが、こうして向かい合ってしまえば解ることがある。もう、この人を言葉では止められない。

 ならば――。

 太刀を抜き、同様に闘気を練り上げる。格上のこの人相手に、出し惜しみなどしてる余裕などない。最初から全開でいっても、何分持ちこたえられるか。それくらい分校長とは力量差がある。

 「――結構。もう言葉などは要らぬな。あとは存分に剣で語り合うとしよう。…クク、八葉の妙技、しかと楽しませてもらうぞ、シュバルツァー。」

 「失望だけはさせないようにしますよ…!」

 周りには既に騒ぎを聞きつけた生徒によるギャラリーが出来始めている。ランドルフ教官やトワ教官、頭を抱えたミハイル主任の姿も見える。俺は悪くないはずだが、後でお詫びとして、胃に優しい食べ物でも用意しよう。迫り来る分校長を見つめながら、俺は心に誓った。

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