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とある水辺の側にある洞窟の前でオッサンであった存在は仰向けで倒れていた。
もっとも、姿は人の形からかけ離れてしまっていた。
顔は美形だが、背中からは黒色の蝙蝠のような羽、肩からは大きい角が生えており、胸には紫色の玉が埋め込まれていた。
又、体の至るところに人の体とは思えない違いがあり、体の肌の色は灰色だった。
詰まるところオッサンは異魔神曰く、巨大だった第二形態の質量を凝縮し、パワーとスピードが以前の形態よりも上昇した最終形態の異魔神に成り果てていた。
そんなオッサンの指がわずかに動いたかと思えば、上半身が震え始め、両目が開いた。
目覚めたオッサンは上半身を起こして辺りをキョロキョロと見回すと休んでいたはずのアパートの寝室ではない明らかに森の中の泉のそばにある洞窟の前であることに顔を歪めると立ち上がり、自身の手を見た。
自身の手を見たオッサンは額に右手の手のひらをあて天を仰いだ。
生前の自分の手とは違い、灰色の肌をした人間の手とは思うことの出来ない形をした手だったからだ。
夢だと思っていた白い空間での出来事が事実である事が証明されたオッサンは嘆くしかなかった。
それでも、諦めることが出来なかったオッサンは夢であることに一塁の望みをかけ、オッサンは自身の右頬を全力で殴った。
結果は輝く右手で右頬を殴ったオッサンは右方向に吹っ飛んでいき途中で勢いがなくなり、泉に落ちて沈んでいった。
しばらく泉に沈んでいったオッサンは泉の中を歩いて元の岸まで戻って行った。
そして、泉から上がったオッサンは嘆きの感情から段々と怒りの感情が勝っていき、全力で暴れ出したい気分だったが、異魔神の全力が『たいよう』や『りゅうせい』などの効果範囲が広く威力が高い高密度魔法言語であることから様々な存在に目をつけられることを恐れ暴れることは我慢した。
それでも、我慢しすぎるのは体や精神に与える影響がでかいと判断したオッサンは天に向かって叫び声を上げた。
「クソッタレヤロー!何が暇潰しだ!いい加減にしろが!ちゃんと仕事しやがれ!このカスがーーーー!!!!!!」
その後もあらん限りの馬事雑言を天に向かってオッサンは叫び続けた。
何もかもを忘れ、思いつく限りの青年に対する不満を叫び続けたオッサンだったが、一時間もすれば怒りの炎もある程度鎮火し落ち着きを取り戻していた。
もっとも、オッサンの心の中で怒りの炎は燻り続けていたが、もうどうしようもなくなったこの状態で問題にし続ける事がオッサンには出来なかった。
オッサンにはこれからの人生(?)をどのように過ごしていくかをしっかりと考える必要があった。
オッサンは地面にあぐらで座り込み、腕を組み空を少し見上げた後、目を閉じ現状分析を始めた。
オッサンが異魔神としてダイの大冒険の世界に転生したとしてここが魔界であるとしたら外見の問題は無いが、空には青空が広がっており、オッサンが漫画雑誌で見たロン・ベルクの回想にでていた魔界の空とは違いすぎた。
ここは地上である可能性が高かった。
そうなるとこの外見は問題しかなかった。
地上には人とモンスターが暮らしているのだが、モンスターは外見を気にはしないが、人は異物を嫌う。
これが可愛らしい外見ならば人も受け入れるかもしれないが、異魔神の外見はラスボスにふさわしく強く恐ろしい姿をしている。
もっとも、今の時期が魔王ハドラー侵攻中か、その直後だとしたら可愛らしい外見をしていたとしても受け入れられないとオッサンは思い直した。
モンスターが魔王の瘴気により凶暴になり、地上で猛威を振るった事による恐怖によりモンスターは人々に受け入れてもらえる要素が皆無だと思われたからだ。
とはいえ、ダイの大冒険の中で語られていたように獣王クロコダインやブラスなどが受け入れられていたが、それはダイという勇者、ブロキーナという武神流の師範など多くの人々に影響のある人物と深い関係にあるからだとオッサンは考えた。
転生したばかりのオッサンにはそんな影響力のある人物でこの外見を受け入れてくれる者との繋がりは無いし、どこにいるのかもわからないオッサンにはハードルが高かった。
だいたい、オッサンにはここが地上のどこであるのかもわからないのにどうしようもなかった。
そこでオッサンは外見を何とかする方法としてモシャスで何とかならないかと考えたが、モシャスの効果時間はどれくらいなのかもわからかったし、モシャスを使用する事が出来るのかもわからかった。
それにオッサン自身がいつバレるわからい状態で暮らすのは真っ平御免だったのでモシャスで外見を誤魔化す事は諦めた。
オッサンは何の情報も無いこの状態でこの問題を解決事は不可能だと判断し、今後、解決する問題として棚上げにする事にした。
そこまで考えてオッサンは人々と争うことになったらどうなるのかを考えたが、安心は出来ないが問題は無いと考えた。
ダイの大冒険の登場人物の中で異魔神を倒す事が出来る可能性がある者は少ないと考えられたからだ。
異魔神はラスボスらしく倒すのが難しい存在だった。
異魔神の弱点は体にある聖核セイントコアだ。
勇者アルスには生き残った戦士達の魔法力を集めたミナデインを籠められたアルスの剣により体を開きにされて行動不能になった所をアルスの鉄拳で聖核セイントコアを砕かれて倒されている。
当然、オッサンを倒すには異魔神と同じ肉体である以上聖核セイントコアを砕くしかない。
それが出来る可能性があるのは勇者サイドでは勇者ダイ、大魔道士マトリフ、その弟子ポップ、ロン・ベルク、大魔王サイドでは大魔王バーン、龍騎将バラン、ミストバーン、超魔生物となったハドラーとオッサンは考えた。
勇者ダイのギガスラッシュと龍騎将バランのギガブレイクは異魔神が倒される切っ掛けとなったミナデインの籠められたアルスの剣による攻撃と同種のようにオッサンには感じた。
威力はオリハルコン製のアルスの剣が折れたことからミナデインの籠められたアルスの剣による攻撃の方が高いとオッサンは考えたが、二人は竜の騎士であり攻撃には竜闘気ドラゴニックオーラなる力が籠めれており、ロトの紋章ではないこの力が二人の持つオリハルコン製の武器を強化し、技の威力も強化している可能性が高い事からはっきりとどちらの威力が高いのかオッサンには判断がつかず、常に最悪の事態を考慮し自身を倒しうる存在として認識した。
そして、マトリフとポップには極大消滅魔法メドローアを習得している。
この魔法は対処方法が躱すか、マホカンタなどで弾き返すか、同じメトローアで打ち消すかしかない。
体の時を止めていようが、魔法の効かない存在であろうが命中したら終わりだ。
つまり、マダンテに耐えた異魔神だが、回復力が如何に高くても闇の衣を纏っていてもこの魔法の前では意味も無く、聖核セイントコアがある所に命中したら即終了になる。
そして、ロン・ベルクの星皇十字剣は魔界のモンスターの死体を凝縮し作り上げた妖魔司教ザボエラの超魔ゾンビを簡単に十文字に切った。
十分に異魔神の肉体も切り裂く事が出来るようにオッサンには感じられた。
そこまで考えてオッサンは急に不安になった。
イズナは自ら鍛え上げた鬼刃ムラサメで異魔神の腕を切っている。
もしも、腕ではなく、聖核セイントコアがある場所を切っていたとしたら異魔神は倒されていたのではないのかと。
そう考えるとヒュンケルやラーハルトなんかもオッサンを倒せそうだとオッサンは思った。
案外、明確な弱点のある異魔神は倒しやすいのかとオッサンの不安は増大していった。
オッサンはため息を吐き、異魔神に胃があるのかわからないが、人だった時に胃のあった場所をさすり始めた。
オッサンも始めからわかっていたことだが、異魔神に転生して良いことがない事は膨大なダメージをオッサンの精神に与えていた。
「ハッハッハッハ、コアを潰されたら終わりって、禁呪法で生み出された。フレイザードやハドラー親衛騎団と同じだな。こんちくしょー」
元々、異魔神は超古代文明のムー帝国によって世界樹のエキスから造られた不死の肉体を依り代にして異魔神曰く異次元に潜伏していた異魔神を召喚して顕現しているので禁術法で生み出されたフレイザードやハドラー親衛騎団とは全く違うのだが、コアとなっている物を破壊されない限り倒す事が出来ないのは確かに同じなのだろう。
「まさか、アバン流殺法の空の技で倒されねぇよな。仮にもラスボスでそれはないか。ハッハッハッハッハッハ・・ハッハ・・・ハ・・・・・・ハ」
オッサンはロトの紋章とダイの大冒険の設定の違いにかなり疑心暗鬼になっていた。
ここにはオッサンの認識で異魔神の聖核セイントコアが勇者の鉄拳で砕ける程の強度しかないという勝手な思い込みがあった。
確かにロトの紋章の最終話でアルスの鉄拳で砕かれている。
しかし、その場に集い生き残った戦士達の魔法力を籠められたミナデインをその前に受けている。
ミナデインを受けた事により聖核セイントコアの強度が著しく低下していた可能性もあるので実際に聖核セイントコアをオッサン自身が強度のテストでもしない限りわからないことだ。
もっとも、そんなことはオッサンはしないだろうが。
結局、情報が不足しているこの状況では検証する事が出来ないと判断し、オッサンは早期に情報収集する必要がある事を認識したのだが、そうなると再び異魔神の外見が問題になった。
もっとも、言葉を話すモンスターから話を聞くという方法もあるのだが、言葉を話すモンスターの数は少なく、魔王の瘴気によって正気を失ったモンスターは正気を取り戻した際に正気を失った時の記憶が残らないのが、獣王クロコダイン戦でブラスがポップのマホカトールで正気を取り戻した際の様子から見られた。
また、獣王クロコダインクラスのモンスターならば、魔王の瘴気の影響も無いのだろうが、それほどのモンスターならば大魔王サイドの監視もあり、オッサンの存在が大魔王サイドに露見しかねない。
オッサンはできる限り大魔王サイドに自身の存在を知られるのを遅らせたかった。
もしも、拠点が魔界にあるのならば、オッサンは誰かに非難されたとしてもひたすら拠点を中心に生活環境を整えることに力を尽くしただろう。
英雄願望も名誉欲なども無く、人々と関わり合うことに大きなハンディキャップを背負ったオッサンにとっては無理に地上を救う行動を起こそうとは思わなかっただろう。
そして、オッサンには大魔王に手を貸す理由もない。
故に人付き合いが苦手だが寂しがり屋の魔界なら魔界の住人達と友好な関係を築くために行動を起こすのがオッサンだ。
好き好んで争いの中心に赴くことなど自殺志願者でしかないとオッサンは考えていた。
だが、大魔王の最終目的が地上を邪悪な六芒陣で威力を増幅させた黒のコアで吹き飛ばし、太陽の光を魔界にもたらすことである以上、オッサンが大魔王サイドと関わりになる可能性が出てきた。
なぜなら、魔界に行く方法を知らないオッサンは魔界に避難することは出来ず、地上の者達と関係を構築する他ないオッサンに今のところ逃げ道は無い。
その事を理解しているオッサンは万が一大魔王バーンと敵対関係になった時を考えて行動する必要があった。
様々なインターネットの書き込みで大魔王バーンと異魔神どちらが強いか議論されてきたが意見が別れている以上、オッサンにはどちらが強いかの判断は出来なかった。
それでもオッサンには一つだけはっきりとしていたことがあった。
異魔神の肉体を持ち、転生する際に得た力をコントロールする事が出来たとしても前世でしがない研究者でしかないオッサンが強大な力を有する存在が跋扈する魔界で覇を競っていた大魔王バーンには遠く及ばないということが。
「最低でも貰った能力を理解し、意識的に発揮出来るようにしないとまずいな。それまで隠遁生活だな。はぁ~~」
それでも、最低限この場所がどこであるのか知る必要があると感じたオッサンは何となく周りに生物の気配がないと感じ、背中の翼に力をこめて羽ばたき少しずつ飛び上がった。
この時、オッサンは異魔神が飛ぶ事に慣れていない事がわかる台詞を思い出して内心びくびくしながら高度上昇していき、ある程度全体を見渡すことが出来る程の高度で眼下に広がる光景を見た。
オッサンの眼下に広がる光景は絶海の孤島だった。
ここが絶海の孤島である事に少し安堵を覚えた。
とりあえず、外見の問題も気にすることなく、大魔王サイドに発見される心配の少ない場所であることに。
それでも、時間を無駄にする事は出来ないと感じたオッサンはゆっくりと降下していった。
だが、この時のオッサンは知らなかった。
勇者アバンに魔王ハドラーが倒される少し前に転生した事に。
そして、魔王ハドラーが倒された後に善良な魔物であるブラス達が移り住み、竜の騎士であるバランとアルキード国の王女ソアラとの子である勇者ダイが流れ着き、物語が始まるまで過ごすことになる怪物島であるデルムリン島である事をオッサンは知らなかった。
前回より時間が空いてしまいすいませんでした。
また、読んでいただきありがとうございました。