スロットの結果、ラスボスになりました   作:トントン

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 大変遅くなりましたことお詫びします。
 


オッサン初戦闘を行う

薄暗い水中をオッサンは一人泳いでいた。

島から出る決心をしたオッサンは大陸に渡る手段として選んだのは海中を泳いで進む事だった。

オッサンは島から出る決心をするまで、転生して一週間程は拠点の中で過ごしていた。

拠点の最深部に到達した後、青年の仕打ちに床でふて寝をしていたが、異魔神の体は睡眠が必要ではない様子でオッサンは結局、すぐに起き上がり異魔神としての能力と良く解らない特典のケンオウの検証だった。

もっとも、ケンオウという特典についてある程度の予測はオッサンの中ではついていた。

青年の言っていた複合能力という言葉から複数のケンオウという存在の能力を合わせたモノだとオッサンは予測した。

そして、ドラゴンクエストの中で複数のケンオウが登場するのはロトの紋章に登場する剣王・拳王・賢王である三人の聖戦士しかオッサンには浮かばなかった。

そのオッサンの予測は正解だったが、同時に問題も見つかった。

まず、剣王と拳王の技は普通に攻撃するよりも威力が大幅に低下した。

実際は異魔神としての攻撃力にプラスされた威力では発揮される事はなく、異魔神との最終決戦時の剣王キラと拳王ヤオが使用した威力で固定されている為だった。

それでも、普通の存在として転生していたのならば、十分な威力なのだが、異魔神として転生したオッサンにとっては普通に攻撃した方が威力が高く意味がなかった。

もっとも、剣王の幻魔剣と拳王の波動拳をオッサンが習熟したのならば、異魔神としての攻撃力にプラスする事が出きるようになるのだが、オッサンにとって地上の存在ならば竜の騎士などの一部の例外を覗けば、癒えない傷を残す幻魔剣を使用するよりも異魔神としての威力で攻撃すれば、一撃でオーバーキルなのであまり意味がなかった。

また、波動拳にも同じ事が言えるのだが、波動拳には幻魔剣すらも癒すことが出来る軟気功があり、この技は暗黒闘気による回復力の阻害にも効果があるとオッサンは考えており、剣王の幻魔剣よりも必要性は上だった。

それに対して賢王は加減することの出来ない高威力、広範囲の高密度魔法言語しか使う事が出来ない異魔神と違い作中で賢者ポロンが使用していた合成呪文とドラゴンクエスト3で賢者が使用することが出来る呪文を使用する事ができたので、用途にあった攻撃呪文を選択する事が出来た。

 また、攻撃呪文以外の補助呪文も使用する事が出来るのでオッサンにとっては最も賢王の能力はありがたかった。

 特にルーラとモシャスは島から出るのに必要不可欠な呪文だったのでオッサンは島から出る決心がついたのだった。

 もっとも、賢王にも問題があり、作中に登場した合成魔法以外は組み合わせの呪文では発動しなかった。

 それでも、オッサンは根気よく何度も下級呪文を試し続けた結果、下級呪文に関しては合成魔法を発動させることが出来るようになった。

 その結果、オッサンにとってケンオウという能力は最も役に立つのは賢王で意味がなかったのは剣王、そして、拳王に関しては保留という結果になった。

 その他にも様々な検証をした後に前世で運動があまり得意ではなかったのでやってみたいとは思いながらも二の足を踏んでしまいすることのなかったスキューバダイビングが出来ると期待して海の中に入ったオッサンだったが、数時間たった現在、オッサンは全く生物を発見することの出来なかった事でただ泳ぐしかないオッサンは飽きてしまった。

 オッサンは全く生物がよってこない状況に不思議に感じてはいたが、理由は解らなかった。

 これが異魔神の姿をしたオッサンを見て逃げたのならオッサンも危険な存在から逃げたのだと理解できたが、これではオッサンには判断材料がなく原因を考察する事が出来なかった。

 実際、この現象の原因は異魔神に転生したオッサンから流れ出ている魔力が強すぎた為だったのだが、転生して一人で過ごしていた為に比較する事の出来なかったので気が付く事がなかった。

 それでも、ひたすら真っ直ぐ泳ぐオッサンはだったが、目印もない海の中では真っ直ぐ泳ぐことなど出来るはずもなかった。

 実際、日本で起きた八甲田山雪中行軍遭難事件では何も目印のない場所で吹雪により視界を阻害された結果、リングワンダリングという方向感覚を失い円形状に同一地点を彷徨い続けたという。

 ましてオッサンが進んでいるのは海中だ。

 海流などの影響を受けて真っ直ぐに進むはずがなかった。

 オッサンは目印になるものを失い円形状に彷徨い、海流の影響で蛇行し、一度島に戻るかを思案する間に流され、様々な影響によりオッサンは陸地を見つけることが出来ず、7日間を彷徨い続けたオッサンだったが、何とか人工的に整備された海岸線を発見した。

 しかも、海中には様々な船が沈んでおり、沈没船は明らかに人為的?に破壊されていた。

 オッサンは何か面倒事が起きていることを予測してはいたが、せっかく見つけた陸地を諦めることが出来ず、夜になるのを待って上陸することにした。

 オッサンは知らなかった。

 上陸しようとしているここが魔王ハドラーにより危機にあるパプニカ王国であることを。

 そして、アバンにより『凍れる時の秘法』で封印されていたハドラーが憂さ晴らしにパプニカ王国を滅ぼそうと総攻撃を仕掛けようとしていると。

 知らなかったオッサンは自らの意思でやっかい事に首を突っ込む事になった。

 後にオッサンは情報収集能力も欲しかったと嘆く事になった。

 

 

 

 月明かりが照らす水面にオッサンの顔が出ていた。

 その顔だが、眉間に深い皺が刻まれており、夜であってもよく見える視線の先には燃え上がる町並みと空中から城に襲いかかるモンスターの姿がしっかりと見えており、オッサンは自身の運の悪さに目眩を感じたがこの事態に関わらないという選択が取ることが出来なかった。

 オッサンが関わらないという選択が取れなかったのは別の大陸を探す為に何の変化も無い海の中を彷徨う事が最早耐える自信がオッサンには無かった為だった。

 オッサンはできる限り人にもモンスターにも見つからないようにゆっくりと静かに港に向かい泳いでいった。

 港に近付くにつれて、優れたオッサンの聴力にはモンスターの雄叫び、人と思われる叫び声、様々な存在の断末魔などここが戦場である事が理解できた。

 それなのにまったく動じる事が無い自身の精神に元から精神異常者だったのか、それとも、あの青年に精神を弄られたのか、もしくは異魔神に精神を浸食されているのかを葛藤しながら港に到着したオッサンは陸に上がると倉庫だと思われる物陰に隠れた。

 

 「モシャス」

 

 物陰に隠れたオッサンはモシャスで黒髪の鋭い目をした少年に素早く変身した。

 前世の姿が最も安定してモシャスで変身していることが出来るのだが、ダイの大冒険の世界で東洋系の国の名前はオッサンの記憶の中にはなく、登場人物の中にも東洋系の名前も記憶になかったオッサンは東洋系の顔である前世の日本人の姿では不審がられると考えた為に前世の姿以外で最も安定して変身していられるこの少年の姿をとる事にしていた。

 ロトの紋章のアイテムが保管されていた部屋にオマケとして置いてあった道具袋を取り出し、装備を整えた。

 オルテガの剣を持ち、アルスが装備していたレプリカのロトの盾を背中に背負い、ほしふるうでわを身につけ、ブラックシーザーはモシャスで変身しても攻撃力以外は異魔神の時と変わらない為にブラックシーザーを身に纏う必要は無く、敵になるであろうモンスターが多い為に自立行動させる事にした。

 また、情報を得る為にこの場では人につく必要がある為にモンスターサイドのスパイだと疑われかねない装備は使用しないことにした為に幻魔剣を使用する為の呪われたハヤブサの剣では無くオルテガの剣を使用する事にした。

 装備を整えたオッサンは物陰から飛び出すと戦闘音のする方向に走り出した。

 モシャスにより放出されている魔力が低下し、見た目も少年の姿になったオッサンを発見したモンスター達が殺到する事になった。

 そんなモンスターをオッサンは迎撃することになった。

 モシャスを使用している状態では賢者ポロンと同じ攻撃力になってしまうオッサンだったが、剣さえ装備していれば、剣王キラと同等の攻撃力を発揮できるオッサンは猪が人のように二足歩行となり、槍を構えて突進してくるオーク達をオルテガの剣の切れ味もありなで斬りし、空中から襲い掛かる剣を持った頭に角、背中にコウモリの羽が生えたホークマン達をイオラでまとめて吹き飛ばし、神官風のきとうし達がオッサンに呪文を一斉に放つがオッサンは左手に気を集中し、波動拳の技の一つである捷星魔光弾で呪文諸共吹き飛ばした。

 モンスター達を蹂躙するオッサンだったが、内心は人の型をした存在を殺すという行為に何も感じることの無い事に精神が異常になったことを確信せずにはいられなかった。

 

 「いよいよ、本当に化け物になっちまったな。はぁ~~~~。」

 

 自身の境遇にオッサンは嘆きながら襲い掛かってくるモンスターを容赦などする事は無く、モンスターの屍を量産していった。

 このオッサンの加勢により夜襲を受け指揮系統が寸断され、散発的な抵抗しか出来なかったパプニカ軍は息を吹き返し、組織立った抵抗が出来るようになり戦況はパプニカ軍に有利に傾いていったのだが、オッサンに取っては歓迎できない状況に成りつつあった。

 その事を一番理解していたオッサンは舌打ちをしたい気分だった。

 人々がオッサンに向ける視線が畏怖に満ちたものだった。

 友好的な関係を築きたかったオッサンには致命的な状況だった。

 オッサンに対する畏怖の視線の要因としては戦闘に参加しなければいけない状況だったが為に安定しており、世界観にあった外見だったとはいえ、少年の姿にモシャスで変身し蹂躙したのは失敗だった。

 青年にも成っていない少年がモンスターを蹂躙する姿は人々には異様としかいえないものだった。

 とはいえ、戦況がパプニカ軍の敗北に流れていた状況でオッサンが戦況を立て直すにはできる限りのモンスターを倒し、多くのモンスターを自身に引きつける必要があった。

 

 (これならば、外見が東洋系の顔立ちでも前世の姿の方がマシだったか?)

 

 そんな後悔を抱いたオッサンだった。

 もっとも、魔王ハドラーに追い込まれているパプニカ王国としては一騎当千の存在であるオッサンを警戒しつつも受け入れるしか無いのだが、平和に成れば大魔道士マトリフの様に確実に排除されることになるだろう。

 その頃にはいくら警戒されていたとしてもオッサンが望む大魔王バーンが侵攻するまでの猶予となる時間を測る為の必要最低限の情報は十分に満たすことが出来るだろうが。

 そういう意味ではオッサンは目的を達成する事が出来るが、本当に最低限の目標しか達成する事が出来ない。

 それでは大魔王バーンに目をつけられる危険性を無視して、この戦闘に参加したのにリターンが少なすぎるとオッサンは内心で焦りを抱いていた。

 オッサンは必死に打開策を考えながら淡々とモンスターを処理するが、良い案が思い浮かばなかった。

 状況は良くなっているが、予断を許す状況では無い。

 戦況は切迫した状態だった。

 オッサンの精神はこの世界に適合されていたが、残っている前世の常識が手を抜けば犠牲が増えるこの状況で手を抜くという選択を取らせなかった。

 そんなオッサンの視界に親だろう二人の男女にかばわれた少年を視界に捉えた。

 そして、そんな親子に紫色の大型の悪魔であるアークデーモンが手に持った槍を振り下ろそうとしていた。

 オッサンはアークデーモンに背中に背負っていたレプリカのロトの盾をぶん投げた。

 本来ならば、攻撃を防ぐ物である盾は使用方法では無い投擲によって、その強度を存分に発揮し、アークデーモンの体に命中して絶命させた。

 そして、オッサンは親子に駆け寄り、親子を守る為には前に立った。

 オッサンが親子を守る立ち止まったことによりチャンスだと思ったモンスター達は一斉に襲い掛かった。

 

 「早く逃げろ!」

 

 そうオッサンは親子に叫ぶとオルテガの剣を地面に突き刺してモンスターを近づけ無いように呪文を連続で放つ。

 

 「に、逃げるぞ!」

 

 「は、はい!あなた!」

 

 男が少年を抱え、男女は走り去った。

 その様子を見届けたオッサンは呪文を放つのをやめて、地面に突き刺したオルテガの剣を引き抜き、連続で放たれる呪文に足を止めていたモンスターに斬り掛かった。

 そんなオッサンを男に抱えられた少年は見えなくなるまで見ていた。

 オッサンは知らなかった。

 とある登場キャラの運命を変えてしまったということを。

 少年は本来ならば、この時に父親と母親を殺されて、権力や力を手に入れるために道を踏み外してしまうのだが、その運命から外れてしまった。

 オッサンという異物が混ざり、少しづつ物語はオッサンが知らない方向に進む。転生させた青年が望む知らない物語へと。

 




 最後に出た少年はの設定はねつ造になります。
 原作ではそんな話はありません。


 モシャスで変身した少年の姿はロトの紋章に出てきたアランの少年の頃の姿です。
 異魔神に体を乗っ取られたり、ロトの力を奪われたりして、異魔神の体がよく知っているために安定したモシャスによる変身が出来るという設定です。

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