スロットの結果、ラスボスになりました   作:トントン

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 大変遅くなりすいませんでした。
 ほほえみさんからVジャンプで出されているアバンの物語でこの時すでにブラスがデルムリン島にいると指摘を受けてどうしようかと悩んでおりました。
 結局、オッサンとすれ違いになり、デルムリン島にたどり着いた事にしました。
 
 


オッサン戦場で余計なことを考え油断する

 オッサンが戦闘に参加し、数時間経過した。

 オッサンはワザと膝をつき、剣を支えにして疲れ切っているように振る舞っているオッサンの前に親子を助ける為に投擲したレプリカのロトの盾を両手でしっかりと持ちモンスターからオッサンを守るようにオッサンに立つ立派な口髭の生えた40歳代と思われる兵士がいた。

 実際には油断を誘いモンスター達に襲い掛からせ、襲い掛かってきたモンスター達がオッサンに到達する前に暗がりであることを利用し、あたかも空の小瓶に回復薬が入っているかのように飲み干したふりをして、モンスター達を引きつけつつ、人々の畏怖を低下させる為の作戦だったのだが、数回、繰り返した後にこの兵士が守ってくるようになった。

 

 「坊主!早く薬を飲むんじゃ!その間は!このパプニカ一番の守護者であるバラックが護りきってみせるから安心せい!」

 

「バダック様に続け!一歩も通すな!」

 

 そうなるとバラックという兵士に触発され畏怖を抱いていた兵士達も少年にしか見えないオッサンばかりに戦わすわけにはいかないと心を奮い立たせ、バラックという兵士に続くようになるのに時間は掛からなかった。

 この状況にオッサンにとってはありがた迷惑でしか無かった。

 あの青年に精神を弄られて生死の価値観がダイの大冒険の世界に順応させられてはいるが、それでも前世の価値観に引きずられている部分があり、オッサンを守ろうとしている兵士達が犠牲になるのを見過ごす事はオッサンには出来なかった。

 そうなると兵士達に犠牲を出す事の出来ないオッサンは焦っていた事もあり、効果範囲内全ての兵士に補助呪文である『スクルト』『ピオリム』『バイキルト』の効果を持つ合体呪文である『スピオキルト』を使用してしまった。

 当然の話だが、限界までパワーアップした兵士達はモンスターを圧倒し始めた。

 そして、モンスターの相手をしている兵士達から離れるオッサンだったが、バダックだけはモンスターにはめもくれず、ひたすらオッサンを追い掛けてきた。

 オッサンの方が圧倒的に速い為にバダックを引き離すのだが、至る所にモンスターは侵入しており、それほど距離を引き離す事が出来ない状況でモンスターの相手をせざるを得ない為にバダックに追いつかれてしまい、再び、バダックの叫びにより兵士達が集まり、合体呪文の『スピオキルト』を使用しなければならないというループに陥っていた。

 しかも、段々と兵士の数は増加しており、最早、引き離す事も出来なく成りつつあった。

 それでも、前に出て戦おうとしたオッサンだったが、次第にオッサンを中心に円陣を組まれた状態で遠距離攻撃と補助合体呪文の『スピオキルト』を兵士達にかけるしか出来なくなっていた。

 モンスターの数はかなり減少し、兵士達がパワーアップしたこの状況では余程の事がない限り、勝利は目の前だった。

 そうパワーアップした兵士を歯牙にもかけない存在がいなければ、このままパプニカ王国の防衛は完了していただろう。

 オッサンもそう考えて警戒を緩めてしまった。

 戦いというものに無縁の存在だったオッサンにとっては意識してはいなかったが、初めての戦闘でかなりの精神的な負荷が掛かっていた。

 そして、精神的な負荷はそれだけでは無かった。

 異魔神への転生、そのための孤独、人々の恐怖への対応、そして、人々とどの様に付き合っていくかなどの様々なモノがあった。

 一時的だったとしても大幅に精神的な負荷が大きく減ったことによる安堵はこの場では悪い方向に進むことになった。

 オッサンの油断に繋がってしまったからだ。

 強化した兵士達を歯牙にもかけない存在が戦場の様子に激怒していたなど知らなかった。

 オッサンと怒れるハドラーが激突するまで後少し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (バダック?パプニカの守護者?パプニカの名前を出してバダックといえば、本編に出たバダックなんだろうが、どう考えても若すぎる。それに本編であるダイの時代ならば、パプニカに侵攻していた軍団は不死騎団だったはず、だが、攻めている軍勢は様々なモンスターの混成軍、アンデッド系のモンスターもいるが不死騎団という名にしては少なすぎる。ならば、時代が違うとしか思えない。そして、この人物がダイの大冒険で登場したバダックならば、年齢から考えて大魔王バーンが地上に侵攻を開始するまでには時間があると考えて間違いないはず……)

 

 断片的に手に入れた情報を元に考察していたオッサンに話し掛ける者がいた。

 考察の対象になっていたバダックだった。

 

 「坊主のおかげで助かった。礼を言うぞ」

 

 「いえ、こちらも助かりました」

 

 思考の海に漂っていたオッサンはバダックに礼を言われて、咄嗟に礼を返すしか出来なかった。

 

 「しっかし、坊主は強いな!おかげで魔王軍を押し返すことが出来た!坊主がいなかったらさすがのワシもパプニカ王国を守りきることはできんかったじゃろう。本当にありがとう」

 

 もっとも、バダックにほめられたオッサンだったが、貰い物でしかない能力をほめられて、何とも言えない微妙な気分を味わっていた。

 とはいえオッサンにはそんなことを気にしている余裕はなかった。

 なぜならば、オッサンはこの国の恩人とはいえ、年齢不相応の実力を持った不審人物でしかない。

 しかも、モシャスを解除し、正体がばれた場合は出来るかどうかは別として排除対象になることは確実だった。

 オッサンは目の前の人物を納得させつつ、如何にして自身の正体を誤魔化すかを考えるオッサンだったが、ダイの時代では無いことが災いしていた。

 上手い嘘というのは真実を織り交ぜる必要がある。

 1から10まで嘘で固めると必ずぼろが出てしまうことをオッサンは今までの人生で知っていた。

 詐欺師など人を騙すことに慣れている者ならば、わずかな嘘で目の前の人物を騙すことが出来るだろうが、オッサンにはそんな話術は持っていなかった。

 そうなれば、当然なことなのだが、多くの真実を織り交ぜ話を作る必要がオッサンにはあった。

 だが、アバン時代の話などダイの大冒険ではわずかな事しか描かれていなかった。

 どう考えてもぼろが出てしまうことがわかっていたオッサンはどうすべきか頭を悩ませていたのだが、自身の転生特典からロトの紋章の世界から転移したことにすることを思いついたのだった。

 この世界の者達が知らないことならば、相手には話の真偽がわからない。

 信じて貰うことが出来ないかもしれないという問題など様々な問題もオッサンの脳裏に浮かんだが、少なくとも目の前のバダックという人物ならば、信じて貰うことが出来ると判断した。

 

 「すいません。質問をしても良いでしょうか?」

 

 「何じゃ?何でも聞いてくれ。恩人の坊主のためならば、知っていることならば、何でも答えるぞ!」

 

 そう言ってバダックは胸を力強く叩いた。

 

 「パプニカという国に聞き覚えが無いのですが、新たに誕生した国なのですか?」

 

 その質問を聞いたバダックは驚愕に満ちた表情になり叫んだ。

 

 「何を言っとるんじゃ!古くから存在するパプニカ王国の事を知らんのか!」

 

 「ええ、聞いたこともありません」

 

 「坊主、かなり世間から隔離された場所で暮らしとったんじゃな」

 

 「確かに町からは離れた場所で暮らしていましたが、それほど僻地で暮らしていたわけではないのですが」

 

 そう話すとバダックは腕を組んで真剣に悩み始めた。

 その様子にオッサンはバダックがダイの大冒険で描かれているように善良な人間であると確信した。

 バダックという人物ならば、常識では考えられないことを話しても真摯に話を聞いてくれると確信してオッサンは話を切り出した。

 

 「ではアリアハンという国に聞き覚えがありませんか?」

 

 オッサンの言葉に心底不思議そうに答えた。

 

 「坊主、そんな国など聞いたこともないぞ?」

 

 オッサンにとっては知られている方が困るので内心は安堵していたのだが、驚愕した表情に変えて慌てた様子でこの世界に無いロトの紋章の世界の国を口に出した。

 

 「ではアッサラーム、イシス、カーメンという国に聞き覚えはありませんか!」

 

 そう言い、バダックに詰め寄り、声を荒げながらオッサンは聞く。

 そんな必死な様子にバダックは困惑した様子で答えた。

 

 「坊主、さっきから何を言っとるんだ。この世界に国などこのパプニカ王国、そして、ロモス王国にテラン王国、アルキード王国にカール王国、リンガイア王国、最後にオーザム王国の6つしかないぞ」

 

 そのバダックの言葉にオッサンは考え込んでしまった。

 その様子にバダックは聞きたいことがたくさんあったが、オッサンの考えがまとまるまで静かに待つことにした。

 そんなバダックの気遣いに気がつく様子もないオッサンはアルキード王国が竜の騎士であるバランによって滅ぼされていないことにより少なくとも大魔王バーンの侵攻以前であり、大魔王バーンの侵攻まで十数年以上の時間があることを確信した。

 そして、この情報から大まかに分けて2つの選択に迫られていることに気が付いた。

 一つは大魔王バーンに臣従し、地上を滅ぼすという選択。

 この選択ならば、オッサンの苦労は少なくなくてすむ。

 デルムリン島に漂着する大魔王バーンによる地上侵攻戦の最も重要なキーパーソンであるダイを回収し、天界の不条理により魔界がどれだけの不利益を被ってきたのかを教え込めばいい。

 その上でダイが納得できる選択肢を大魔王バーンに飲ますことが出来るだけの手柄を立てる事にすれば良いとオッサンは考えた。

 もっとも、不確定要素として大魔王バーンが地上を吹き飛ばし、魔界に太陽の光を手に入れることで満足してくれるのか、天界がどういう動きを見せるのか、バランが地上を吹き飛ばすことを知った時の反応などの問題もあるが、それでも、大魔王バーンに敵対するよりも難易度は少なくなる事は間違いなかった。

 もう一つは地上を守る為には大魔王バーンと敵対するという選択だった。

 この選択肢を選ぶと問題しか無かった。

 第一として自分の外見が魔物でしかないことだった。

 最終的に人と敵対する未来しか思いつかなかった。

 人という生き物は酷く異端な存在を排除したがる。

 現代で生きたオッサンはその事を様々な情報媒体などから人の歴史として知っていた。

 宗教による争い・少数民族への弾圧・主義主張の違いによる争い・肌の色の違いによる差別、様々な違いにより多くの悲劇を人の歴史は生み出してきた。

 その事を知るオッサンから見て悲観的にしかならなかった。

 その他にも黒のコアへの対処方法の模索、凍れる時の秘法によりほぼ無敵状態のミストバーンへの対応、真大魔王バーンに実力が追いつくことが出来るのか、大魔王バーン打倒後の天界の動き、マザードラゴンの命を尽きさせた邪悪な存在の動きなど様々な問題がオッサンの脳裏に浮かんだ。

 よくよく考えたオッサンはどちらにの選択肢を選んだとしても多くの問題が積み重なっている事に気が付いた。

 そこまで考えて、オッサンはこの時点で選択をする事を諦めた。

 まだまだ、選択するまで時間的猶予は残されており、判断材料も少なかったオッサンは選択することが出来ないとこの問題を保留した。

 そこでオッサンは自身がバダックと話をしていたことを思い出し、失礼なことをしたと謝ることにした。

 

 「すいません。バダックさん。少し考え事をしてしまって」

 

 そうオッサンは言い、頭を下げた。

 

 「なに気にする必要はないぞ。考えはまとまったようじゃな」

 

 「ええ、ある程度の予測は立てることが出来ました」

 

 「そうか!それは良かった!聞かせてくれんか?」

 

 「最初に言いますが、荒唐無稽な話になります。とても信じることが出来るような話ではありませんよ。それでも、聞きますか?」

 

 そうオッサンが前置きをするとバダックは笑いながら答えた。

 

 「何を言っとる。坊主はこの国の恩人だぞ。ワシは信じるぞ」

 

 そのバダックの言葉にオッサンは安堵すると同事に罪悪感を覚えたが、本当のことを話すことが出来ないオッサンは予定通りの話をすることにした。

 

 「ありがとうございます。どうやら私は異世界に迷い込んでしまったようです」

 

 その言葉にバダックはポカンとしてしまっていたので、オッサンはバダックが再起動するまで待った。

 しばらくすると訳がわからないという表情をしたバダックが質問を投げかけた。

 

 「どういうことじゃ、坊主。もう少し詳しく説明してくれ」

 

 「旅の扉という場所と場所の空間を超えて移動することが出来る移動装置があり、私はこの国の港に来る前にその装置を使用しました。何が原因かは不明ですが、何らかの要因により旅の扉が誤作動を起こした結果、次元を超えてこの場所に来てしまった様です」

 

 そうオッサンが言うとバダックは難しい顔をして考え込んでしまった。

 その様子をオッサンは眺めながらこの国がどう動き、自身がどう動くのかを思案し始めた。

 オッサンはこの時点でパプニカ王国が滅ばないことを知っていたが、それは神の視点といってもいい、原作の知識があるためだ。

 その事を知らないこの国の上層部は魔王ハドラーの拠点がある事によりいつ滅ぼされるか気が気でないはずだ。

 もっとも、それはパプニカの国民も同じだろうが。

 そこまで考えたオッサンだったが、知っていたとしても魔王の拠点がある時点で問題しかないなと考え直した。

 それに所詮、オッサンの持つ情報は物語ではこうなるというモノでしかなく、確定情報ではない。

 その上、オッサンという異物が混ざっている以上、オッサンの行動により未来は変化するだろう。

 この時点でオッサンは自身の持つ情報を参考にする程度にし、絶対視しないよう心がけようと心に誓った。

 そんなことを考えていたオッサンだったが、突然、何かが爆発する轟音が轟いた。

 ここで完全に油断し、警戒を解いてしまったオッサンは呆然自失に陥ってしまった。

 

 「坊主!危ない!」

 

 そんなオッサンに輝くエネルギー球が迫っていたが、オッサンは反応することも出来なかった。

 そして、爆発により辺りを吹き飛ばした。

 




 

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