TS転生者はレセプターチルドレン   作:くらむちゃうだあ

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新生フィーネ

 ――フィーネの魂が私の中にいる。

 彼女のスペアボディたる私はそのために作られたのだから必然といえば必然だ。

 思ったより早いじゃん。転生してどうにか生き延びようって頑張ってたのに……もう詰んでるって。

 

“まぁまぁ、そんなに悲観しなくたっていいでしょ? 食べられるわけじゃないんだし”

 

“食べるじゃん! 魂乗っ取るって言ってたし! 本当、怖いから!”

 

“取らないから安心しなさい。もう止めたのよ。そういうのは……。――ふわぁ、急いで復活したら眠たくなってきちゃった。しばらく寝てるから、何かあったら起こして頂戴”

 

“人の身体の中で自由だな、おい。起こすわけ無いだろ”

 

 

「――シオン。シオン……、聞いていますか?」

 

「ううん。全然聞いてなかった。もう一回言って」

「清々しい顔して言うんじゃないの!」

 

 フィーネと頭で会話してたら、マムの話を全然聞いてなかった。

 マリアに横腹を肘で小突かれてしまう。

 

 フィーネが死んだとこまでは聞いてたんだけどね……。あいつが人の身体の中に入り込んだのが悪い。

 

「仕方ありませんね。もう一度説明をします。フィーネによる月への攻撃が原因で月の軌道が変わってしまい――」

 

 うわぁ……。フィーネっていう奴は私が思っている以上に頭がどうかしてた。

 月にある遺跡を破壊するために、月をぶっ壊したんだって。

 それが原因で月の欠片がこっちに落ちてきたらしい。まぁ……それ自体は日本にいる3人のシンフォギア装者たちが阻止したらしいんだけど……。

 

 月自体の軌道は変わってしまって、ゆっくりと地球に向かって来てるみたい。 

 

 ――いやいや、すげー大事になってんじゃん。

 

 あいつ、全人類巻き込んで何してんだ……。やっぱりめちゃめちゃ悪人じゃないか。

 

 さっきはほっこりしたようなスッキリしたような声を出してたけどさ。

 まずは、もっと悪びれろよ――。人類に謝罪しろ。謝罪……。

 

「それにしちゃ、静かというか。外ではパニックになってるの?」

 

「いえ。NASAはデータを改ざんして発表しています。米国政府はこの事実を隠蔽するつもりです」

 

 つまり、言っちゃったら世界中がパニックになるから、権力者だけ何とか逃げ出そうってしてるってこと? 酷いな……。普通は一丸となって事態を回避しようとかしない?

 

「そこで、私は考えました。マリアかシオン……あなた方の内のどちらかが新生フィーネとして覚醒したと公表し、武装蜂起しようと。そして、人類を救うために動くのです……。その計画は――」

 

 マムは私たちに自ら考えた計画を話す。

 私は彼女の正義感は凄いと思った。

 彼女はたとえ米国を……世界を敵に回しても、人類を救おうと動くつもりである。

 

 だが、同時に無茶だとも思ってしまった。

 

 マリアとセレナ……そして、切歌と調に加えて私。たったこれだけの戦力で世界に歯向かいつつ、あのネフィリムを起動させて……さらに巨大なフロンティアなんてものを動かせるのか……。

 しかも計画実行のためにウェルとかいう倫理観が狂ってそうな生化学者を利用するって……。

 

「それで、新生フィーネを騙らなくてはならないのね。私かシオンが……」

 

「ええ。そのとおりです。マリアならリーダーシップが取れますし、シオンはフィーネのクローン……見た目が瓜二つなので信憑性が上がります」

 

 そういう人選か。まぁ、見た目的にもセレナたちではインパクトに欠けるよな。

 新生フィーネねぇ。そんなのであの英雄バカのドクターが動いてくれるのかね……。

 

「わかったわ。私が――」

「よし。マリアよりも私の方が適任だろう。実際にフィーネの魂が身体に入ってきたしね」

 

「「――っ!?」」

 

 あー、驚いてる。驚いてる……。

 話の腰を折るのも申し訳なかったから、一通り聞いてから話してみたけども……びっくりさせちゃったみたいだね。

 

「ちょっと! シオン!? ふざけてるんじゃないでしょうね!?」

 

「さすがにそんな嘘は吐かないよ。元々、フィーネは魂の器に最適な身体として私を創ったんだ。次のフィーネに私がなるのは確率的に一番高いだろ?」

 

「じゃ、じゃあ本当に……シオンがフィーネに……? そ、そんなの嫌……! 何であなたが……」

 

 いつかのように涙ぐむマリア。

 そうなんだよな。私も実際は不安でならないよ。

 でも、安心させなきゃ……。

 彼女のこんな顔は見たくないから。

 

「大丈夫だって。フィーネは止めたんだってさ。魂を塗りつぶすのを。ほら、見てご覧……いつもの私だろ?」

 

「本当に? 確かにこんな弛みきった顔はシオンとしか思えないけど」

 

「おいおい。傷付くな……」

 

 自然にマリアにディスられて、私は苦笑する。

 とりあえず、少しは落ち着いたかな。

 フィーネは何かあったら起こせとか言ってきたけど……。それは怖すぎるからしたくないなー。

 

「シオン、身体は大丈夫なのですね?」

 

「もちろん! マムだって本当のフィーネの依代を使ったほうが都合が良いでしょ?」

 

「そうですね。それでは……シオン。あなたが新生フィーネだということを大々的に発表します」

 

 ちょいちょいツッコミどころがある計画だけど、一番最初のハードルはネフィリムの起動だろう。

 完全聖遺物の起動には、フォニックゲインとか言う歌のエネルギーが大量に必要なんだけど、それを集めるには誰かしらがトップアーティストクラスにならなきゃいけない。

 で、新生フィーネの私がそうなるのが理想なんだが――。

 

「シオンは歌が不得手ですから。マリア……あなたに任せられますか?」

「そうね。どう頑張ってもシオンの歌唱力じゃ無理だもの。私がやるしかないか」

 

 いや、そうなんだよね。

 最近になって気付いたけど……私ってほんの少〜しだけ音痴っぽいからさ。マリアたちみたいに歌ってギア纏うなんて芸当なんて出来る気がしない。

 アーティスト役はマリアに任せよう……。

 

「じゃあ、私はマリアのバックダンサーでも――」

「シオンはマネージャー兼ボディガードとして常にマリアの側を離れぬようにしなさい」

「イエス、マム……」

 

 てなことで、私とマリアはマムと秘密裏に“F.I.S.”から抜け出す計画を立てて――Dr.ウェルを勧誘。

 ギアペンダントやら必要な物を根こそぎ奪って、セレナと切歌と調を連れて脱出に成功した。

 

 私がフィーネの依代だと世界中に発表すれば、レセプターチルドレンの存在は明るみとなり、きっと救出へと世論は傾くだろう。

 みんなを助けるためにも、この計画は必ず成功させなくては――。

 

 でもなぁ。いくらマリアが歌が上手いからってトップアーティストになんか簡単になれるものなのかしら――。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「デビューから2ヶ月で全米ヒットチャートの頂点に登り詰めた気鋭の歌姫か……。ふーん。このマリアがねぇ」

 

「人の頬をぷにぷにしながら、新聞読まないでくれる?」

 

「でも、マリア姉さんの歌……とっても格好いいから。きっとみんなの心を打ったんだよ」

 

「シオンは何でメガネをかけてるデスかー?」

「潜入美人捜査官メガネをかければ、眠たそうな表情も隠せて頭が良さそうに見えるからだよ。切ちゃん」

 

 マリアが一気に米国のアーティストの頂点に立ってしまった。

 マネージャーをやってる私は各方面への営業活動など大忙しである。

 今やマリア・カデンツァヴナ・イヴの名は世界中に響き渡っていた。

 

 しかし、マムもマリアも商売っ気を出さないというか……私が交渉してなきゃ出演料とか色々と金が入るところを足元見られるとこだったよ。

 ここは自由の国アメリカ、金は稼げるだけ稼がなきゃ。いつ必要になるのか分からんし。

 

 だけど、そんな私らをどうやって知ったのか……パヴァリア光明結社とかいう怪しい団体が支援を申し出たのには驚いたな。

 何の目的で私たちに手を貸すのか全く分からんけど、この状況じゃ借りない理由がない。一応……警戒だけはしとこうっと……。

 

 

「じゃあ、そろそろ夕食を作ろう。調、手伝ってくれるかい?」

「うん。今日は何を作るの……?」

「肉じゃがとか色々と……」

 

 私は夕食を作るためにキッチンに向かう。

 調は料理に興味があるみたいだから、出奔してからというもの彼女に調理の仕方を教えている。

 

「何ていうか意外な特技デスよね。シオンが料理が得意なんて」

「何故か和食が多いですけどね」

 

 だって日本人だったんだもん。今も日系人って設定だけど……。

 料理が出来るのは学生時代にバイトしてたのと、独り身時代が何年も続いたからだ。

 意外と覚えてるもんだから、びっくりしたよ。

 

 

 夕食を作った私はアジトの私室に籠もってるマムを呼んでみんなで食卓を囲む。

 肉しか食わない偏食家のマムはいくら注意しても直してくれない。

 病気がちだってのに、頑固なんだから。

 

 

「風鳴翼とのコラボレーションライブの打診を出したら、オッケーを貰えたよ」

 

 私はマムから言われたとおり、風鳴翼というアーティストに日本で合同ライブをしないかと打診を出した。

 どうやら、この女性はあのフィーネを倒して月の欠片から世界を守ったシンフォギア装者の内の一人なんだそうだ。国家機密らしいけど……。

 

 正義の味方じゃん。世界を救うなんてそうそう出来ない。

 そんな彼女を利用するのは些か気が引けるけど、手っ取り早くフォニックゲインを集めるにはこの方法が一番だから仕方ない。

 

「出来れば穏便に済ませたいけどねぇ……。ルナアタックから私たちを救ってくれた英雄なんでしょ?」

 

「そうですね。戦いだけが解決方法じゃありませんから」

 

 計画では、そのライブ中に“ソロモンの杖”という完全聖遺物を使ってノイズを使役し……世界へ私たちの活動拠点を要求することになっている。

 

 そうなれば、例の英雄たちとの交戦は必至――。

 私もセレナもそれには否定的だった……。

 

「シオンもセレナも甘いですよ。フォニックゲインを高めることも含めて、日本のシンフォギア装者との戦闘は既定路線です。心を強く持ちなさい」

 

「大丈夫デスよ。二人ともあたしたちが守りますから」

「それが世界を守るためなら、私も戦う覚悟は出来ている」

 

 マムに一喝され、切歌と調に鼓舞される私とセレナ。

 言ってることは分かるけどさ。私は傷付いて欲しくないんだよ。マリアたちには……。

 

 その人たちも正義の味方なんだったら、手を取り合うことも出来ないものかな……。

 

「あなた、変なこと考えてない?」

 

「あはは、まさか。日本に早く行きたいとしか考えてないさ。ラーメン食べたいなぁ」

 

「ラーメンって中華料理じゃないの?」

 

「馬鹿言っちゃあいけないよ。ラーメンは日本の文化。ソウルフードさ。マリアも一緒に食べに行こ」

 

 ともかく想定外なことが起きることは十分に予測できる。

 マリア……私はね、世界を守ることなんかより君たちが傷付かない方が大事なんだ。

 

 だから、私はなるべく血を見ない方法を考えたいって思ってるよ――。

 




セレナとシオンが加わっているので、戦力的には響たちよりも上になっていると思われます。
フィーネの魂を持ったシオンがどう動くかご覧になってください。


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