TS転生者はレセプターチルドレン   作:くらむちゃうだあ

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ルナアタックの英雄

「フィーネ! 貴様は立花と分かり合ったのではないのか!? なぜ、世界を支配するなどと世迷いごとを口走る――!?」

 

 ガングニールの装者にフィーネという戦力にも怯まず、観客を人質に取られてもその覇気は衰えず、か。

 やはり、風鳴翼という女性は只者では無さそうだ。

 

 フィーネが人と分かり合うねぇ。立花とはガングニールとの融合症例第一号と呼ばれている立花響という子のことだと思うけど。

 どんな子なんだろう。興味あるな……。

 

「世迷いごとなどでは無い。我らが王道を敷く世界……今の腐ったこの世よりも遥かに素晴らしいモノにしてみせよう」

 

「私たちはフィーネを信奉して集ったの。彼女の作る世界を見てみたいと思わない?」

 

「……ガングニールのシンフォギアが貴様のようにフィーネを信奉する者に纏えるものか! 私の前でその手の騙りは止めた方が良いと覚えろ! Imyuteus ameno……」

 

 あっ!? もう聖詠を唱えようとしてるの?

 いやいや、ちょっと待ってよ。怒らせ過ぎちゃったみたいだ。

 時間はまだ稼がなきゃいけないのに……。

 

「待て……風鳴翼よ。貴様、全世界に今の状況が放送されているのだぞ。良いのか? その姿を晒しても!」

 

「――っ!? だが、この状況で戦えるのは私一人。そのような保身で……」

 

「それは結構な心構えだ。そうさな……、貴様の心意気に免じて人質を解放してやろう。ノイズには手を出させないと約束してやる」

 

 とりあえず、なるべく交戦せずにセレナたちの到着を待ちたいし……話を逸らして冷静にさせよう。

 この人、本当に全世界中継でシンフォギアを纏うのも厭わない感じだったし。

 

「人質を解放だと? フィーネ、貴様は何を考えている?」

「シオ……、いやフィーネ。人質を解放するのは段取りと違います……」

 

「では、反対するか? マリアよ」

 

「いえ、全てはフィーネの意のままに……」

 

 ということで、私はオーディエンスたちに帰ってもらった。

 何かあって巻き添えを食らうと寝覚めが悪いし、人質作戦は最初から乗り気じゃなかったんだよね。

 

『シオン……。勝手なことをなさらないでください……』

 

 マムは通信器越しに私に苦言を呈した。

 でも、この口調は私かこうすると半分読んでた感じである。

 

 マリアはどことなくホッとしたような顔つきになった。彼女も人質を取るような作戦には乗り気じゃなかったから……。

 

 

 

「風鳴翼、そう睨むな。シンフォギア無しで立ち向かって勝てるほど甘くないことは分かっているはず。降参すれば、我らも手荒な真似はしない」

 

「手荒な真似はしない……? 貴様、フィーネではないのか?」

 

 あれ〜〜? なぜバレたし。

 無駄な戦いをしたくなかったから、大人しくしてもらおうと思っただけなのに。

 

「どうもおかしい。あのときに対峙したような殺気がまるで感じられない」

 

「ふぃ、フィーネだよ!? めっちゃフィーネだわ! 失敬だぞ! 君は!」

「バカ! シオンに戻ってるわよ!」

「だって、この人がいきなり私のことをフィーネじゃないって言うんだもん!」

 

「…………」

 

 つい動揺してしまい……変な主張をした私の頭をマリアがポカリと叩く。

 だって、翼が殺気とか抽象的なことで見抜こうとするからさ……。

 

 そんな言い訳をしてる私を翼は唖然として見ていた……。

 

「やはり、フィーネを騙っているだけなのか……。しかし、その見た目は間違いなく……」

 

「だから、フィーネだってば。魂はいるんだけど、まだ覚醒仕切ってないだけだから。身体は、ね。フィーネのクローンなんだ。そっくりなのは当然だよ」

「全部バラしてどうするの!?」

 

 騙すのも厳しくなったので、本当のことを言う。

 この見た目だけで十分に脅威だろうし、フィーネのリィンカーネイションを知っていれば、私の話に信憑性があると捉えるだろうし……。

 

 

「フィーネのクローン……?」

 

「そうだよ。あの人の恐ろしさは私よりも実際に戦った君が知ってるだろ? ギアペンダントを渡してくれたら、本当に何もしない。君には歌で世界を変えるって夢がある。志半ばで散るのは私も見たくないからね」

 

 翼に私は手を差し伸べる。

 彼女が少しだけ無力で居てくれたら、それでいい。

 戦って勝つだけが全てではないのだから。

 

「……随分と違うのだな。クローンというのは。だが、お前は見誤っている! 聞け! 防人の歌を!」

 

「「――っ!?」」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron……」

 

 なるほど。私は風鳴翼という人を甘く見ていたようだ。

 ギアペンダントを渡さずとも、ちょっとくらいは迷うと思っていたのに……ここに来て躊躇なく聖詠を唱えるとは。

 

 嫌だなぁ。こんなにも、心の強く……凛々しい顔付きをされると……。

 似た人物を知っているからこそ、戦うのは憚れる。

 

 おや? いつの間にか、中継が途切れているな。

 うーん。多分、あの緒川という人が切ったのか。ちょっとだけホッとしたよ……。

 

 

「呆けているのなら、その首をもらうぞ!」

「うえっ……!?」

 

 ノータイムで私の首を剣状のアームドギアで狙う翼。

 悪即斬みたいな容赦のなさを感じるな……。

 

「シオン! 下がってなさい! ここは、私が……!」

 

 私はマリアに首根っこを掴まれて後ろにポイっとされた。

 シンフォギア同士の戦闘か。マリアは四人の中で最も戦闘が得意だけど……どうなるか。

 

 翼とマリアのアームドギアがぶつかり、不本意だが戦闘の火蓋は切って落とされた――。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「話はベッドの上で聞かせてもらおうか!」

 

 いやー、やっぱり強いわ。風鳴翼は……。

 言葉遣いは長く米国にいたからなのか、ちょいちょい変に聞こえるけど、戦闘経験の差でマリアを押している。

 その上、マリアは時限式。LiNKERの効果が切れればシンフォギアは纏えない。

 このまま勝負が続けば、どちらが勝つかは明白。

 

 そろそろ、私も動こう。2対1が卑怯とか言うような相手ではないだろうからね……。

 

 そう、私が足を動かそうとした時――

 

「マリア姉さんは私が守ります……!」

 

 翼のアームドギアを受け止める銀色の刃が私の視界に入る。

 戦いを嫌う彼女だが、姉を守るために彼女はギアを纏うことを決意した――。

 

 そう、セレナがマリアのピンチに駆けつけたのである。

 

 そして、駆けつけてきたのはセレナだけではない――。

 

「シオン、こんなときも怠けているなんて、ドン引きデスよ〜」

「こんなに早くボロが出ちゃってることも引く……」

 

 手厳しいことを口にしながら、切歌と調がギアを纏ってこちらにやってくる。 

 こちらはこれでシンフォギア装者が四人……武装組織フィーネの戦力はこれで勢ぞろいだ。

 

 風鳴翼が如何に戦闘経験で上回っていてもこの人数が相手では勝てないだろう。

 

 これで5対1――。

 

 いや、この気配は――。

 

「フィーネ!? 本当に復活してやがったのか!?」

「大丈夫ですか? 翼さん!」

 

 雪音クリス……、そして立花響……。

 ルナアタックから世界を守ってくれた英雄が勢ぞろいというわけか。

 まったく、いい表情(かお)をしている……。

 

「雪音! 立花! 心配には及ばない。及ばないが……!」

 

「了子さんが何故ここに……!?」

 

「あれは櫻井女史ではない。どうやら、彼女のクローンらしい」

 

「クローンだって!? んなもん作ってやがったのか、フィーネのやつ……!」

 

 3人は手短に情報を交換して、こちらを向く。

 5対3になったか。ここまでは、想定どおりかな……。

 

「マリア、セレナ……、君たちは風鳴翼を……。切歌、調……、君らは雪音クリスを相手にするんだ。離れずに常にコンビネーションで戦闘を行うこと。いいね?」

 

「急にリーダー振るんだから」

「でも、2対1なら有利……」

 

 私はマリアたちに指示を出す。

 姉妹同士の……親友同士の……コンビネーションこそ、彼女たちの1番の強み。

 もちろん、日本の装者たちにも絆とかそういうのがあると思う。

 だからこそ、こちらの強みを活かしつつ……あちらにはそれをさせないように動くべきだ。

 

 

 まぁ、そうなると私は一人で相手にしなきゃならないんだけどさ。

 融合症例第一号……立花響と――。

 

 

 マリアとセレナは翼と……、切歌と調はクリスとそれぞれ戦闘を開始した。

 彼女らも戸惑ってくれているみたいだ。急にコンビネーションで挑まれて……。

 

 で、私はというと……。

 

「つ、翼さん! クリスちゃん……! ――っ!?」

「立花響さんだね。初めまして。私は南條シオン……。フィーネのクローンだ」

 

 翼たちのフォローに回ろうとする彼女の進行方向に割って入る私。

 見たところアームドギアは所持していない。報告のとおりだ。

 つまり、彼女は私と同じで素手で戦うタイプってことみたいだね……。

 

「は、初めまして。じゃなかった。そこを退いて下さい!」

 

「あはは、ノリの良い子じゃないか。君はあのフィーネと分かり合うことが出来たって聞いたけど。本当なのかい?」

 

 彼女が私の横を過ぎ去ろうとしたので、道を塞ぎながら声をかける。

 律儀に挨拶を返したところを見ると、素直で良い子みたいだ。

 

「了子さんと分かり合えたかどうか、全然分かりません。でも、そう信じたいです。……あなたはどうしてこんなことを!? 人間同士で争うのは嫌です。話し合いで解決出来ないでしょうか! きっと分かり合えるはずです!」

 

「バカ! 何を甘ェこと言ってんだよ!」

「立花! 今はそのようなことを論ずる時ではない。そんな理屈が――」

 

「うん。いいよ。話し合おうか、響さん」

 

「「――っ!?」」

 

 もう一人のガングニールの装者も、いいことを言うじゃない。

 そうだよね。同じ人間同士だし、正義を握りしめて戦ってる人なんだからさ。この事態を一緒に解決したほうが効率的だ。

 

 向こうが話し合いを求めているなら、私は乗っても良いと思ってる。

 

「ほ、本当ですか? じゃあ、戦いを止めて――」

「君たちがギアペンダントをこちらに預けて、交戦の意志がないと示せば私だって君たちを信頼するよ。ああ、そういえば……響さんはガングニールと融合しているのか。どうしようかな……」

 

「そんな要求飲めるかよ! お前ら、自分のやってること分かってんのか!?」

「シオン! 話し合いは常識的に考えて無茶デスよ!」

 

 私の提案に対してクリスは反発して、切歌は常識を説く。

 だって、こっちの安全が確保されなきゃ怖いじゃないか。いざという時に逃げられないかもしれないし……。

 

 でも、よく考えたらギアペンダントは要らないか。だって――。

 

「ごめんね。考えさせちゃって。思ったよりも早く勝負が終わってしまったようだ。やはり2対1になるとこちらが圧倒的に有利みたいだね」

 

 風鳴翼と雪音クリスは善戦したが、ノイズに気を取られながら装者二人のコンビネーションを相手にするのはキツかったみたいだ。

 マリアたちは彼女らを制圧し、動きを封じる――。

 

 すまない。こっちが有利な状況に誘い込んだ形だし、必ず勝てるように計画を練ったからこれは必然。

 予定どおり、残りは立花響だけとなった……。ここまでの流れはおおよそ計画通りなんだけど――。

 

「これで勝負はほとんど私たちの勝ちなんだけど。話し合いって言葉は魅力的だと思う」

 

「シオン! 喋ってないで、攻撃なさい!」

 

 響を攻撃しない私にマリアは叱咤する。

 セレナは話し合いも有りだと思ってくれてるのか、何も言わない。

 

「響さん。君は私の手を握れるかい? もし君が躊躇なく私と手を取り合うことが出来れば、私は――」

 

 差し出した手を無言で握る響。

 その瞳はこの状況にも決して絶望せずに、心に“絶対”という意志の力が宿っていた。

 

 私はこの瞬間に確信する。

 立花響という子は信頼に値する、と。

 

 仲間がやられて……、普通なら100パーセント罠だと思うこの状況で手を取り合うことを選んだ彼女はよほど高潔な人物か……よほどの馬鹿者……。もしくはその両方か……。

 

 もしも彼女らが仲間となってくれたらなら、この世界の危機も救うことが出来る。

 そう、私は確信したのである……。

 

 だが、組織の方針は私一人の意志では決められないし、それは響とて同じだろう。

 

 残念ながら、話は私の思い描くほど簡単には動いてくれなかった――。

 




やはり、5対3に加えてノイズが加わっている状況だと、響たちが不利になるのではとこのような展開にしました。

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