TS転生者はレセプターチルドレン   作:くらむちゃうだあ

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七つの聖遺物

 

「ったく。思った以上の化物ボディじゃないか。融合症例第一号は大丈夫なのか……聖遺物と雑に結び付いてるみたいだが……」

 

 夜中に一人……廃病院の屋上にいる私。

 目覚めたフィーネに身体のことを聞いた私は少なからずショックを受けていた。

 フィーネによって、様々な聖遺物の微細な欠片と融合させられた私は人並外れた力を手に入れたが、持っている力はそれだけじゃない。

 

“シオンちゃんって、ノイズに触ってみたことはあるかしら?”

 

 最初の彼女の言葉には思わず笑いそうになってしまった。

 触ったら即死確定の災害に触れるなんてするわけが無いじゃないか。櫻井理論の提唱者のあんたが何言ってるんだと思ったよ。

 

“あなたの身体と融合させた7つの聖遺物の欠片にはちゃんと意味があるのよ。櫻井理論に基づいてノイズの存在を調律して位相差障壁を無効化出来るように、細工しているの。言うならば、その身体はギアそのものに近い特性を持っている……”

 

 つまり、ノイズをぶん殴って倒すことも可能らしい。

 攻撃範囲的にはアームドギアのあるシンフォギアには劣るが、出力はほぼ互角。ノイズを駆逐する力があるとは、研究者たちも知らなかったのか、試して身体が炭になったら堪らないから実験を憚ったのか……。

 

 大体、何で私の身体に聖遺物なんて埋め込んだんだ? 今のままでも、十分化物なのに……。

 

“7つの調和の力を自分の身体に取り込もうとしたのよ。あの方と対等な存在になるためにね……”

 

 あの方ってのは、フィーネが月を壊すきっかけになったという神様みたいな人物のことだ。

 なんでも、この人に愛を伝えるために滅茶苦茶なことをして暴れ回ったらしい。

 

 7つの調和の力というのはよく分からないけど、身体に埋め込まれてる聖遺物はフィーネが作った7つのギアペンダントの残りカスである。

 

 フィーネはこの7つの聖遺物を一体のボディに融合させて神様と対等な存在になるつもりだったという。

 

 アガートラーム以外にもガングニールなど、他のシンフォギアに使われている聖遺物と私は融合している。

 

 つまり、厳密に言えば私は立花響よりも早く聖遺物と融合した例だと言えるだろう。

 まぁ、フィーネが安全に配慮して人為的に行われた分……症例とは言えないだろうが。

 

“そうね。あなたの身体は私が使うために力の反動にも耐えられるように作ってるわ”

 

 じゃあ、やっぱり心臓にガングニールの欠片が融合してしまった立花響は力を手に入れた代償は大きいのではないか。

 この人、立花響にそれをちゃんと伝えたのか?

 

“言われてみれば……確かに響ちゃんは何度もギアを纏うとガングニールとの融合が強まって危ないかもね。自分と関係なかったから考えてなかったかも”

 

 やっぱり、どこかおかしいよこの人。呑気そうな声でそんなことを言うんだもん。

 野望とか、そういうのは無くなったのかもしれないが……。

 立花響はシンフォギアを使い続けると体調が悪くなりそうって……そんなの酷いよ……。

 彼女のおかげで沢山の命は救われてるのに。

 

“でも、それを伝えても無駄だと思うな。あの子はたとえ自分の命が危険に晒されても……躊躇なく知らない誰かのために拳を握り締めることが出来る子だから。そんな子が相手だったから、私は敗けたのよ”

 

 思った以上に危うい子だな。

 そりゃ、私だってマリアたちの為なら命を投げ出す覚悟はあるが……他人のために命は張れない。

 敵として出会った私と手を取り合うような子だから、そんな印象はしてたけど。

 

 

“それはそうとして、シンフォギアと一緒に戦うときは気を付けなさい。絶唱などで高まったフォニックゲインに聖遺物が共鳴するときがあるから。むやみに叩きつけたりしたら、反動で身体が壊れるわよ”

 

 ――六年遅いよ! その警告は……!

 この人、私に無関心だったのか? 私が右手のリハビリしてたこと知らなかったのかよ……。

 そういや、この前もやたらたと身体中が熱かったけど……セレナが絶唱したときみたいな事が起きてたのかな……。

 

“共鳴した聖遺物のエネルギーは全身に分散させて馴染ませるの。慣れれば、そんなに難しくないから”

 

 うん。全然分からん。

 この人、長く生きすぎて簡単とか難しいとかいう感覚が馬鹿になってるんだろう。

 

 しかし、よくもまぁ……あれだけ実験に付き合ってやったのにこれだけ知らないことがあったな。

 フィーネの技術力が埒外の領域ってことは聞いたことがあるけど、こういうことか。

 

 嫌だなぁ。化物のスペアボディなんだから当たり前なんだけど、全然普通じゃないじゃん……この身体。

 

“さぁ、これでもあなたは第二の人生を楽しめるかしら?”

 

「……天寿を全うするまで、笑って生きてみせるさ」

 

 そのためには月の落下を食い止めて、それから政府とか色んな追手から逃げ切らなきゃならない。

 そう考えると多少なりとも力を得たことはありがたかったかもしれん。

 負けないよ。私は……。大事な人が居るからね……。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「……ど、どうしてこうなった」

 

「暖房がなくて、ちょっと寒かったのデスよ」

「シオンの布団……温かい」

 

 ちょっと夜ふかししたなぁって、思って布団に入ったら……数分後に切歌と調が私の布団に潜り込んできた。

 

 いや、寒いのは分かるけどさ。

 何ていうか、その。これは良くないんじゃないか……。子供の頃は、こういうこともあったけど……今は二人も大きくなったし――。

 

「ていうか、二人とも足冷たいな……!」

 

「あたし、冷え性なんデスよ」

「私は低体温……」

 

「そっか。悪かったね。じゃあ、明日にでも何か買っとくよ」

 

 あまりにもヒンヤリとした足をふくらはぎに付けられて、私は思わずツッコミを入れる。

 冷え性に、低体温か……。そうだったっけ……?

 とはいえ、そんなに密着しなくても暖は取れないか?

 切歌も調も寒がりなんだね……。いや、これは寝れそうにないなぁ。

 

「昔もシオンにこうして寝かせてもらったことを思い出しました」

 

「それって、切歌が本当に小さいときだろ? 誕生日の話とかしてて」

 

「そして、眠れないあたしたちに沢山おとぎ話を聞かせてくれたのデスよ」

「うん。シオンの話はいつも面白かった」

 

 レセプターチルドレンである私たちに与えられる娯楽は少なかった。

 絵本なども支給はされたが、何度も同じ話だけではこの子たちもすぐに飽きる。

 だから私は眠れぬと訴える彼女らに知っている話を聞かせたことがあった。

 

 不思議なもので、この子たちはそれで眠りについた。それはもう穏やかな寝顔を見せて。

 彼女たちを守りたいと強く想うようになったのは……その頃からかもしれない。

 

「でも、シオンは悪い人を退治する話をした後でいつも同じことを言ってた。悪さを正すことも大事だけど――」

「それと同じくらい、許す心を持つことも大事デスって」

 

「よく覚えてるね。二人とも。ちょっと気恥ずかしいじゃないか」

 

 おとぎ話には勧善懲悪の話が多くて、私もちょっと説教じみたことを言いたかったのか、そんなことを彼女らに話していた。

 別に他意はない。何もかも憎みっぱなしだと世の中争いが無くならないって真理を突いただけだ。

 

 それに――。

 

「憎んだり、争っていた相手を許すことが出来るから人類は成長出来るんじゃないかな? そりゃあ、そもそも争わない方が良いのかもしれないけど」

 

「でも、この世の中には許せないことが沢山ある」

「全部許すなんて到底無理デスよ〜」

 

「もちろん、私だってそんなに寛容になれないさ。ただ、ちょっとでも理解しようと歩み寄る精神を持つだけで景色が変わることがあるかもしれない。悪いから力で押さえつけようとだけ考えることは逆に平和から遠ざかる行為だということも歴史が証明してるからね」

 

 私は聖人でも何でもない。

 嫌いな奴は多いし。割と怒りっぽい。

 だから、偉そうなことは言えないけど……許すという行為は人と人の関係を一歩進めるという面で大切な行動だから……。

 

 ちょっとでも、そんな余裕があるならばそうしてみようと考えられるくらいの隙間を心に作ろうと考えたのである。

 

「「すー、すー」」

 

 って、いつの間にか寝てるし。

 まー、色々とストレスがかかる逃亡劇になったからね。

 眠れるときに寝ておいて欲しいものだ。

 

“統一言語があった頃は「許す」なんて行為は無かったわ……”

 

“あー、そりゃあ争うという概念がないから当たり前だよな”

 

 フィーネが巫女とかいうのをやってた時分には統一言語とやらがあったらしい。

 要するに心の内が全部丸出しで一切の嘘がない世界ってやつだ。

 人類の全員が理解しあっているから、争いごとはなく平和だったんだと。

 

 それをフィーネの言う“あの方”とやらが、世界にバラルの呪詛というのを撒き散らし、共通言語は消滅した。

 人々はお互いを理解することが出来ずに、争いをおこすようになったという。

 

 で、そのバラルの呪詛の発生装置とやらが月の遺跡にあるらしい。

 統一言語を復活させるためにフィーネが月を破壊しようと数千年頑張ったんだっていう話はさっき聞いて目眩がした。

 

“でも、まぁ……。統一言語が無くなってさ。不便もあったろうけど、みんな頑張ってここまで生きてきてる。許したり、手を取り合うことを覚えたんだから進化はしてるさ”

 

“進化してる……か。あの方たちの庇護を離れても人類は前に進んでいると言い切れるあなたはやっぱり面白い。この先、退屈しなさそうだわ”

 

 ああ、フィーネ(この人)はこれからも私のプライベートを覗く気満々なんだ。

 頭の中は読まれっぱなしだし……。早く寝よう……。

 

 ううっ、調と切歌が両腕にしがみついてきて……意識してたら目が冴えてきたよ。

 

 

 素数でも数えるか――。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「ドクター、これはどういうことだ? 何故、こんなにも早く……この場所が二課の連中にバレている?」

 

 私はドクターの胸倉を掴み、睨みつけた。

 医療品などの補給物資の手配は彼に任せていたが、ワザと痕跡を残すくらいしないとこんなに早く足はつかないはずだ。

 

「もちろん。故意に痕跡を残しました。彼女らをおびき寄せるために。それがスポンサー様のご意向でしたので」

 

 ヘラヘラとしながらドクターは故意に見つかるような行為をしたと告白する。

 こいつ、マジでぶん殴ってやろうかな……。

 

「シオン、待ちなさい。ドクター、スポンサーというのは先日話していたパヴァリア光明結社のことでしょうか?」

 

「そのとおりです。多大なる軍資金の追加融資を快く承諾してくれただけでなく、次の潜伏先の確保まで保証してもらっています。どうやら、日本のシンフォギア装者に新たな動きがあったみたいですから……。我々では勝てないと踏んだようです……」

 

 怪しい秘密結社――パヴァリア光明結社が追加融資だって……?

 意味が分からん。潜伏先まで提供するってどういうことだ……。

 

 とにかく、今……この状況を打破するには3人のシンフォギア装者には帰ってもらうしかない。

 

「私たちならいつでも出られるわよ。シオン!」

 

 マリアはいつもどおりの凛々しい顔つきで私を見て頷く。

 さすがに無策で来るわけないからな。相手の策には十分に気を付けないと……。

 数の有利を活かして長期戦は避けて……何とか頑張ろう。

 

 マリアたち、四人の装者たちを引き連れて私もまた彼女らを迎え撃つ。

 

 立花響はあれから、月の軌道計算を誰かにお願いしただろうか? それは聞きたいところだったけど……。

 

 私たちにはそんな余裕は無くなってしまった。

 

 立花響以外の二人のシンフォギア装者――すなわち……風鳴翼と雪音クリス。

 

 この二人がとんでもないくらいのパワーアップを果たしており、私たちは一気に劣勢に追い込まれたのである……。

 

 

「「イグナイトモジュール――抜剣ッ!」」

 

 

 禍々しい黒いオーラを放つ、見たこともないシンフォギアの新たな形態。

 想定外すぎる事態に、我々は逃亡を余儀なくされるが、それはあまりにも難易度が高い――。

 我々武装組織フィーネは大ピンチに陥っていた――。

 




ここから、大幅に原作から離れます。
G編とかGX編とか、そういう概念が無くなりそうです。
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