Over and over again. 作:AMATERA
夢の中では、オレはリーに本当の事を話していたんだ。ただ、なんとなくというか、死ぬかもしれないって頭を過ったから、最後に自分の事を知ってほしいと思った。
リーがオレにヨットで一緒に逃げようって言った時、一瞬信じたけど、直ぐに疑った。そんな都合の良い話あるかって。身の上話しただけで人なんて信用出来ない。しちゃいけない。
リーは絶対土壇場で裏切る。危なくなったらオレを切り捨てる筈。そうだ、そうなんだ。
だからオレは、リーに裏切られる前に先に裏切ってやったんだ。生きたいって思ったから。仕方ないって。
夢じゃないこの現実も、オレは同じ事をした。後悔は無い。
だってオレは、生きてるから。
リーが死んだ後、オレはハゲの見張りから解放された。夢と同様、何故か奴等にまだ生かされている。急にハゲが馴れ馴れしく肩を組んできたり、『デミアンも喜んでる』とか、『気に入ったから仲間に入れてやっても良い』なんて言ってる。──クソが。
「此処はお前に任せた」
デミアンに色々を任されているハゲとか髭面タトゥー野郎がオレに指示を出す。まあ、ただの外の見張り番役。どうせ逃げる時の囮りに使う為に殺さないってだけ。
銃は一応渡されたけど、弾は一発のみ。節約だとか何とか言ってるが、どうだかな。
「何か知らねえ奴とか感染者が来たらその一発で報せろ」
その報せで戦う気でもあるのか。……否、オレを囮りに逃げる。
──10人もいてコイツら何やってんだよ。
数時間前に会ったばかりのオレに重要な外の見張りをさせて、自分らは酒やクスリ、飛んでる女とヤッてるとか馬鹿だろ。今感染者や武装した軍が来たら一発で全滅だな。建物の屋上に上らされて外を真面目に見張っていたオレは、『今ならギャングから逃げられるんじゃ?』と思った。
──いや、でも夢と同じなら?
夢の中のオレは、ギャングに怯え、外から来る来訪者に怯えながらもクソ真面目に外を見張ってた。不服だ。でも、言われた通りにやってたから死なずに済んだ。やりたくねーけどやるしかない。それにもう直ぐだ。このホームセンターから去るのは。
朝方、30分くらい経った頃か。ビルやデカい建物の間から立ち昇る煙に目を向けていると、外へ偵察に出ている奴が慌てて1人で戻って来た。オレは様子が気になって、こっそりと下に降りてみた。
「オイ! 此処を出よう!」
腕を怪我しているのか、出血していた。銃で撃たれたんだろう。深くはない、かすめただけに見える。
そいつが店中で騒ぎ立てると、他の奴等は面倒くさそうにして集まった。でも偵察係が1人で帰って来たのと、腕の怪我の様子で『これはただ事じゃない』と場が一気に緊迫し出す。
「何があった?」
髭面タトゥー野郎が吠えるように訊く。
「軍だ! 街に軍が現れた!」
この街にも遂に軍が。となれば、避難所目指して来る難民対策と、増えた感染者らの防衛に道路を封鎖し始めている筈。
──オレゴンに行けたのか?
オレはふと、祖父母の安否が気になった。スマートフォンの電源はもう切れてる。ホームセンターだから充電出来そうなんだけど、奴等に占領されていて無理だった。切れるまで連絡があるかもしれないって期待はしてた。でも、あの電話以来何も無かった。
「もう1人は抵抗して撃たれて死んだ」
他の店で略奪中に軍と遭遇したらしいコイツは、自分も撃たれて命からがら逃げてきたと言う。
「此処にも来るかもしれない!」
「はあ? 付けられたのか?」
「わかんねーよ!」
「ああ?」
あーでもないこーでもない。ギャング共は言い合いから一触即発みたいな雰囲気になった。まあ、所詮寄せ集めみたいな仲だろうし、くだらねぇ絆とかいうもんはコイツらには無いんだろう。
「街が感染者と軍でどうにかなっちまう前に、マリーナ・ディストリクトへ行こう」
この騒ぎの中、ハゲがぽつりとデミアンに向いて言った。
「デミアンは船を動かせるし、そうだ、ポートランドへ行けば良い。あの中国人もそこへ行こうとしてた」
「ポートランド? 何かあるのかそこに?」
「わからねぇ。でも行こうとしてたって事はこの街より安全なのかもしれねえし、とにかく此処から離れた方がいい」
デミアンは少し考えた後、『食料集めて車につめろ』とハゲに命令した。
「お前らも準備しとけ。行きたくない奴は此処に残ってろ」
あれだけ空気悪かったこの場も無かったことに。他の奴等も慌てて動き出した。
「オイお前!」
ハゲが屋上に戻っていたオレを呼んだのは、バイクと車に荷物をつみ終えたからだ。
「お前も来い」
この店に置いてかれると思ったけど……。まあ、聞かなくても理由はわかるし断るつもりもない。屋上から降りたオレは、ハゲが乗っている方の車へ乗ろうとした。サリーや他の女がいない。このホームセンターに縛って置いて行くんだ。散々犯されクスリで壊された女共は、連れて行くのに邪魔なだけ。行った先でまた調達すれば良いとギャング共は笑う。オレは酷く冷静だった。
「クソッ! 早く行けよ!」
「前にも車がいる!」
道は当たり前に混んでた。順調にはいかない。
「歩くぞ!」
早い段階で車から降りる。苛立ったデミアンがそうしたから。荷物は持てる限り持たされた。それが正解だ。じっとしてたら感染者に襲われる。オレはギャング共と歩いてマリーナ・ディストリクトを目指す。先頭はタトゥー野郎、最後尾はオレ。
──夢と同じ。
ヨット乗り場まで道のりは想像以上に厳しかった。10人いたギャング共の内、4人が死んだ。1人は暴徒と揉み合いながら刺されて。もう1人はパニックになって喧しく騒いだせいでハゲが銃で撃った。後2人は子供の感染者に襲われて。その隙にオレ達は逃げたんだけど、合流しなかったから多分、死んだ。
荷物も減り、人も減り、避難所を目指して歩く人の波を抜け、ギャング共に付いて数時間。やっとヨット乗り場に到着した。
「みんな考える事は同じだな」
ハゲが言う。周りを見れば、船で逃げようとする奴が多くいた。オレは心の中で笑った。
──着いた。
もう疲れた。でも安心なんて出来ないし、してない。夢と同じならオレは此処で……。
「探せ!」
リーのヨットをオレも含めて探す。いくら目印があったって簡単に見つかりはしないだろうと思ってたのに、その船は直ぐに見つかった。
「やっとだ!」
「デミアン、動かせそうか?」
富裕層向けのクルーザー系ヨットに乗り込むデミアンとその他は、物珍しさに心躍らせている。は、せいぜい楽しんどけよ。
「オイお前、アイツら呼んで来い」
ハゲがオレに命令する。ヨットをまだ探しているタトゥー野郎ともう1人を連れて来いだとさ。
「早くしろ!」
心の中で舌打ちしながら探しに出たオレは、ハゲやデミアンが乗っているヨットへ振り向いた。
同じならそう、オレはこのヨットに戻らない。コイツらギャングのかき集めとはこの場所でおさらば。タトゥー野郎も同じくヨットには乗らない。何故なら──。
「クソが!」
タトゥー野郎の声。デミアンとハゲがいるヨットから少し離れた場所、幾つも並んで浮かんでいるディンギー型ヨットの側。ここには人が殆どいないから見て直ぐにわかった。
「……あの、もう1人は?」
タトゥー野郎が一人で左手を押さえながら座り込んでいたから声をかける。
「ああ? お前か。アイツは使えねー奴だったからよ、殺した」
「そ、そうか」
取り敢えずの苦笑い。それよりも気になるのは奴の左手。左手を庇うようにしてるし、まだ出血してるのか、タトゥー野郎の足元に血の跡が見えた。
「手、怪我してるようだけど、何かあったのか?」
「うっせぇな!」
苛ついてたタトゥー野郎は立ち上がってオレを睨む。
「お前も殺されてぇのか?」
小銃の先をオレの胸に押し付けるタトゥー野郎の顔色はとても悪い。脂汗も滲んでいて、具合が悪いのは明らか。
「ま、待ってくれ、し、心配しただけだ! 怪我でもしたのかって!」
「ああ?」
「気に障ったなら謝る! それに、デミアンが呼んでる。さっきヨットを見つけて、オレはアンタを連れて来いって頼まれて来たんだ!」
押し付けられた力が弱まった。タトゥー野郎はオレを睨んだまま舌打ちをすると、小銃を下げて前を歩き出した。
「どこだ?」
「ここから真っ直ぐ行って左さ。ほら、あの赤い旗が立ってる向こう」
デミアンらがいるヨットの方向を指しながら、オレは少しだけほっとした。でも完全にじゃない。まだだ。
「……おい」
タトゥー野郎が足を止めてオレに振り向く。
「俺が怪我してる事、デミアン達に言うなよ?」
「え、怪我なら言って治療しないと。化膿したら大変だし、それに言わなくても、それじゃバレる──」
オレの言葉は遮られた。タトゥー野郎が右手でオレの胸ぐらを掴んだからだ。
「てめえぶっ殺されてぇのか? ただの怪我にいちいち報告なんて必要ねぇんだよ!」
「っま、待って! ただの怪我なら、なん、でそんなに!」
焦りが異常。左手の怪我はただの、ではなさそうだ。くそ、苦しい。タトゥー野郎は目を血走らせて手に力を込めてきやがる。
「っるせえ! こんなん見られたらよぉ、俺がやられるに決まってんだろ?」
「はなっ、せ、やめ!」
苦し過ぎて力一杯押し退けたら相手が怯んだ。とほぼ同時、怒りに任せてタトゥー野郎にタックルをかましてやると、奴はバランスを崩して地面に尻餅をついた。
「ッテメエエ!」
──撃たれる!?
咄嗟にだ。オレはまだ持たされていた拳銃を取り出すと、何故か慣れている手つきで安全装置を外し、タトゥー野郎へ向けて撃った。
「がっ……!」
銃弾はタトゥー野郎の喉を貫通した。
「ひ、あ、ああ!」
オレは全身で震えた。タトゥー野郎を銃で撃って殺した。直接的に初めて。人を初めて殺した瞬間だ、これが。この時が──。
「あ、アンタが、お、おお前が! お前が悪いんだ」
弾の入ってない拳銃を、絶命して動かないタトゥー野郎に向けたままでオレは言う。
「オレは、心配しただけなのに!」
夢でも殺した。拳銃で。あの時も必死で逃れようとして地面に倒れたオレを、タトゥーが馬乗りになって首を絞めてきたんだ。死にたくなくて撃って殺しちまったけど。
──同じだよな?
タイミングは違うけど、拳銃で殺した事に間違いはないし大丈夫だよな。
なんて少しだけ冷静になったオレは、持っていた拳銃を捨ててタトゥー野郎の小銃を手にする。
──此処から逃げよう。
今のうちにマリーナ・ディストリクトを去らないと。夢の時には動揺しまくりのパニックでこの場から訳も分からずに逃げたし、同じく長居は無用だ。オレは海に出ようとする人の波に逆らいながらヨットハーバーから走り去った。
──あばよ、クソギャング共。
奴等は『遅い』と思ったと同時に、オレが『逃げだ』とも思っただろう。ハゲはタトゥー野郎を待っていたかもしれないけど、きっと逃げる周りに焦って海に出る。それで奴等はポートランドを目指す。
でもそこには地獄が待ってる。大勢の人間が押し寄せて来るんだ。感染者も混じってな。上陸してもっと田舎を目指そうとするんだろうけど、間に合わない。政府の連中が軍を使って橋や道、トンネルを塞いでいくんだ。海沿いに住んでる奴等や海から来た奴等はみんなそこに閉じ込められて、いずれは死ぬ。想像絶するだろうよ。
これはあくまで夢の中での話。実際奴等がどうなるかは、オレにはわからない。
マリーナ・ディストリクトから去って数時間。オレはなんとかオークランド、バークリー、リッチモンドに移動し、そこで乗り捨てられた車に乗ってカークィネス橋をギリギリで走り通った。どの街にも軍がいて橋を封鎖し、無理矢理渡ろうとする大勢の人間を止める為に爆破までし始めている。
──どこも悲惨だな。
なるべく大きな街を避けるようにして移動し、車内から荒れた街に目を向けた。途中煽られたり助けを求められたりしたけど、構わずにオレは先を進む。アレンデールでタイヤがパンクしてそこからウィンターズまで歩き、荒れた飲食店に入って食い物を頂戴する。オレ以外にも人は居たけど、みんな食い物目当てでオレは眼中に無い。自宅から此処までにやっとまともらしい食事をした気がした。
終えた後、腹も膨れて眠気も来るかと思ったのに、色々頭の中が興奮して眠れない。確か夢でも人を殺したという恐怖で眠れやしなかった。
早朝、軍と暴徒の銃撃戦みたいな騒動が起きて慌てて逃げていると、北を目指しているという4人家族に偶然助けられた。オレゴンを目指してるって言ったら『途中までで良いなら』って、オレを車に乗せてってくれるらしい。
「キミ、名前は?」
車を運転しながら後部座席のオレに声をかけるのは、父親のトム。助手席にはその妻、キミー。オレの隣には高校生の息子マット、その隣は中学生の娘メアリー。
「オレ……僕はレイモンド。レイモンド・サルコジ」
小銃はリュックに入れておいて正解だったかも。警戒されてないし。
「本当に、本当にありがとう。あのままだったらきっと死んでた」
これは誓って心から思ったから。オレがお礼を言ったら、『こんな時だから親切な人間が居たって良い』ってトムは笑った。
「お腹空いてない?」
「まだ……」
夫婦はとても親切で優しかった。深く詮索もしないし、見知らずのオレに良くしてくれる。本当に。その優しさがあだになるとも知らないで……。
オレはその家族と暫く行動を共にする。オレの提案で混雑する道を避けたり、人の去った農場でキャンプしたりして、なんとか北に進んでいたんだ。
「大きな街はやっぱり軍がいて、辺りを封鎖してるって」
まだかろうじてネットが使えていて、スマートフォンで情報を得たメアリーが車内で移動中に言った。
「イリーカとホーンブルックは道が塞がれてるって!」
「ああ、そんな」
オレ達はシャスタの辺りを走ってた。ユーリカウェイ299号線からトリニティダムを通り、途中の道でトリニティーセンターに向かってそこからエトナ、イリーカでオレゴンに入る予定だった。
──ここも一緒か。
期待はしたけど、すんなりとはいかなかった。
「仕方ない、こっからならフォレストルートを通って97号線へ行こう」
車を止めて地図を確認だ。ドーリスに行き、そこからオレゴンに入るルートを決めたオレ達の顔色には、若干の疲れが現れていた。
「運転代わるよ」
「頼む」
普通なら嫌だろうに。ここまで来た道のり、トムやその家族はオレを完全に信用するようにもなっていた。
「ああ、道が……」
大きなハイウェイは車で混雑し、進まない。マクドエルの辺りまでは順調だったのに。遂には完全に止まって前が全く動かなくなった。
「仕方ない」
車を捨てて歩こう。トムが言った。
「歩きたくない」
メアリーが不満気に車から降りる。
「文句言うな。お前だけじゃない」
マットが車から荷物を下ろしながら言えば、『あーはいはい』とむくれ顔のメアリー。トムとキミーはやれやれといった感じで荷物をまとめている。まるでパンデミックなんて起こっていないかの様な家族のやり取りをここまでずっと見てきたけど、正直羨ましくも憎らしくもある。
「封鎖される前に急ごう」
周りが皆同じように歩き出す中、オレ達もドーリス方面へと歩く。
「マット、メアリー、気をつけてね。レイモンドも」
キミーが笑顔でみんなを勇気づける。なんだかママを思い出して辛くなってきた。
「勿論キミーもね。なあ? レイモンド?」
頼り甲斐のある父親像。もしもパパがトムだったら、今のオレはもっとマシだったかもしれない。
「お腹空いた」
「ドーリスまで我慢よ」
「まだなの?」
「後もうちょっと」
メアリーとキミーの会話を聞きながらトムと並んで歩くオレは、ドーリスの案内標識に目を細める。
ドーリスはそんなに大きな町じゃなかった。まだきっと他よりも荒れてはない筈だろうから、食料を手に入れて、ついでにシャワーでも浴びれたらな。
この数日、トム達と一緒に過ごしているうちにオレはすっかり忘れていた。夢の中での事を、この後起こってしまう事を。
ドーリスに着いて直ぐ、オレ達は町の様子に唖然とした。立ち上がる煙、逃げようとする人や家にバリケードをして籠ろうとする人。暴徒。
「この町もか」
トムが言う。この町ならまだ大丈夫だろうって思ってた。夢とは違うんじゃないかって。でも同じ、同じだ。
用心して町を進んだ。感染者の姿は無いけど、此処が封鎖されてないって情報がまわってるし、いずれはその感染者もやって来るだろう。それか軍か。
「誰か助けて!」
暴徒に襲われている女がいた。
──やめろトム。
止めようとしたオレは躊躇した。だって、だって……。
「いやぁトム!!」
トムは暴徒から助けようとして代わりに腹を刺されてしまった。結局、女は連れ攫われて行った。
「そんな、嫌よ!」
キミーが嘆きながらトムを抱き起こした。もうトムは虫の息。マットとメアリーも駆け寄って泣いている。オレは、オレは呆然とその場に立つだけ。
「き、キミー、すまな……」
トムは息絶えた。夢と同じ死に方だった。
──止めるべきだった?
でも止めたらどうなっていたんだろうか。オレは恐かった。死が、自分の死が。
「母さん、行こう! また来るかもしれないから!」
「嫌よ! トムを置いていけない!」
「ママ!」
トムに縋り付いて泣くキミーを、マットやメアリーが何とかして立ち上がらそうとした。
「レイモンド!」
助けを求めるようにマットがオレを呼ぶ。オレは震えている足で何とか側まで寄り、マットと一緒になってキミーを立ち上がらせた。
「行こう母さん!」
「ああ、トム……」
混乱する町から出て北に向かうんだ。もう気にしてなかったけど、誰かの車でも奪って行けるとこまで行かないと。オレは必死に考えていた。
「車を、車を用意してくる。此処で待ってろ」
オレはマット達にそう言って、彼等を飲食店の前で待たせて車を探しに走った。全力で。一度も振り向かずに。マットやメアリー、キミーの顔を最後に見る事なく走った。
次の瞬間、大きな爆発音がした。ガス漏れか何かか。オレは前に吹っ飛んだ。気付いたら爆発した飲食店は原型をとどめてなくて、マット達の姿も無かった。どうなったかなんて知りたくないけど、わかる。
「し、死んだ、死んだ、みんな」
気が触れた様にふらりと立ち上がってオレは、その場から慌てて逃げた。
──オレのせいじゃない。オレが悪いんじゃない。
そうだ。オレは悪くない。夢の中と同じだなんて知らない。知らなかったんだ。きっとそうだ。
言い聞かせるしかない。仕方なかったんだ。魔法の言葉みたいに。
それからどうやってオレゴンに入ったか記憶が曖昧だった。多分夢と同じ行動をしたんだろうと思う。何よりも必死だったんだ。生き残る為に。
その日からひと月以上経ったと思う。その間、色んな奴と行動を共にしたけど、上辺だけの仲で止めた。危なくなったらおいて逃げやすい。それにデミアンやハゲをイメージして、オレがギャングだったって言えば大抵の奴はビビってヘコヘコしやがるし、都合も良い。小銃効果もある。
気付けばオレはリーダーの様になってた。勿論、悪い気はしない。
なるべく暴徒や感染者を避け、オレに付いて来れた数名を連れて各キャンプを転々とする。
そして見慣れた景色がオレを待っていた。
──ロストレイクだ。
まだ何もされてないロストレイク・キャンプに足を踏み入れたオレは、警戒する少人数の奴等と、クソジジイ──、アイアン・マイクに会った。
正直言って少し感動した。だってまさか、本当にマイクが存在するとは思ってなかったしな。
「何しに来た? 此処にはお前らの望んでいる物は無いぞ!」
オレに銃口を向けるマイクに、手下共は一斉に銃の安全装置を外した。それを制してオレは言う。
「此処には暴れに来たんじゃねえ。人手を探してるって耳にして来たんだ。何でもする。力にならせてくれ」
持っていた銃やナイフなんかを全てマイクの前に差し出ように捨てれば、手下も戸惑いながら同じ事をする。マイクは銃を向けたまま誰かに頼み、『用心は大切だ』と一応、念の為に身体中を調べられた。
「……そうか。なら来い。妙な動きはやめるんだぞ」
中に入れた。ただ、マイクは警戒を解かないだろう。でも、人手は今に誰もが欲しがる。はは、こんな無防備なキャンプをオレ達が、いやオレが何とかしてやるさ。
──その時までな。
今度こそは。
Continued....?