「はあ、今日も疲れたな」
俺の名前は平上太一。地方の大学に通う平凡な大学三回生だ。取り立てて面白い話もない退屈な日常を過ごしている。何故ため息をついているのかというと、来年に就活が控えているからだ。
何だかんだでどうにかなるだろうと考えていた就活だが 、某ウイルスの影響で将来に見通しがたたず、不安で頭がいっぱいだ。自分にはこれといって得意なことがなく、目立たず日陰に住んでいるような人間なので、大学を卒業後、社会で生きていけないんじゃないかという不安で夜も眠れない。
「俺この先社会で生きていけるのかな?」
そんな不安を抱えて夜道を一人で歩いていると、道端に落ちている一冊の本を見つけた。普段、落ちているものは拾わない性分なのだが、この時はほんの気まぐれで本を拾い上げた。その気まぐれが自分の日常を大きく変化させる全てのきっかけとなった。
「な!何だこれは!?」
本に手が触れた瞬間、本が勝手に開き始めた!自分はただ本に触っただけなのに!そして一人で開いた本から手が出てきたのだ!
「おいおい!?幻覚でも見てるのか?」
俺は咄嗟に本から離れた。どうやらとんでもないものに触れてしまったらしい。状況の整理がつかないが、とにかく逃げないとヤバい!そう思って俺はその場から走り出した!が、
「手が!本から手が俺の方に伸びてきている!」
本から伸びてきて手に俺は捕まり、そして本に引きずり込まれてしまった。
「ああああああああああああああああああ!!!」
同日、時刻不明、所在地不明
気がつくと俺は見知らぬ場所に居た。さっきまで俺の近くにあった本はなくなっていた。辺りには俺以外に何もない。
「何だ?夢でも見ていたのか?」
さっきまで見たものは幻覚か何かかと思ったが、どうやらそうではないらしい。辺りを見渡して見るとさっきまで居た場所と景観がまるで違う!周りに木がたくさん生えている。まるで自分が森の中で一人ただずんでいるように!それに辺りを照らす光が月の光しかない!この辺りには外灯がないのか!?
「一体何がどうなっているんだ!?分からないことだらけだ!まさか神隠しなんてオカルトの仕業じゃあねーよなあ?」
状況は呑み込めないが、分かったことが一つだけある。それは、自分の人生においてかつてないほどに迷子になっているということだ!一体どうすれば…
ガサガサ!!
「何だ今の音は!?」
突如、周りから音がした。動物か何かが草むらで動いた音かと思ったが、
「いや違う!何かが俺の方に向かって来ている!危ない!」
咄嗟にその場から離れることで何とか俺の方に向かってきた何かを避けることが出来た。しかし、
「これは一体何だ!」
自分の目の前に闇が浮いていたのだ!黒い球体状の何が、俺の眼前にふわふわと浮いている!
「マズい!」
俺は直ぐにその場から駆け出した!理由は良く分からなかったが、動物的本能があいつの目の前にいたら喰われると直感的に理解したのだ!俺は一心不乱に走り出した!脇目もふらずただ真っ直ぐに!振り返る余裕はない。後ろから来ている闇に飲まれないように、一刻も早く、逃げ切らなければ!
そうして暫く走っていると明かりが見えてきた。村らしきものが見える。どうやら森の出口らしい。
「間に合ってくれ!」
俺は出口に向かって飛び込んだ!森の外に出た瞬間、後ろから俺を追っていた何かの気配が消えたように感じた。恐る恐る振り返ってみると、
「何もいない?」
どうやら逃げ切れたらしい。自分は決して足の速い方ではないが火事場の馬鹿力とでも言うのだろうか、何とか逃げ切れたらしい。
「一体何だったんだ。あれは」
これ程までの恐怖体験をしたのは人生で初めてかもしれない。逃げ切れなければ喰われていた。何故だか分からないがそう確信できた。
「とにかく、ここが何処か分からなければいけない。辺りに人はいるか?」
辺りを見渡して見る。人は見当たらない。もう少し歩いて村の中に入ると、人がいるのかもしれない。しかしこの村、妙な点が多い。
「限界集落なのか?ここは?」
辺りにある一軒家が全て木造家屋しかない。いくら村とはいえ、21世紀の令和の時代において木造ではない一軒家が一つくらいあってもおかしくないはずだ。
「ここが何処だか分からないが、少なくとも俺の住んでいる所の近所ではないことは確かだ」
そう言って少し村の中を歩いていると、一人、店の前で暖簾を仕舞おうとしている人を見つけた。ちょうどいい。あの人に聞いてみよう。
「あの、すいません。お聞きしたいことがあるのですが」
「はい?」
声をかけた人が振り返ってくれた。年は中学生くらいだろうか?振り向いた彼女を見た瞬間、俺は目を見開いた。こんな変わった格好した人は今まで見たことがない。
まずは髪型、飴色の髪を髪留めでツインテールにしている。ツインテールの長さは肩に髪がかからないくらいで全体的にショートヘアーに近い髪型だ。髪留めにはそれぞれ2つの鈴?がついている。こんな髪留めは見たことがない。飴色の髪色というのも珍しい。
それに服装も現代では珍しい着物を着ている。着物は紅色と薄紅色の市松模様で、スカートは若草色で白いフリルのついたスカートを履いている。こんな格好をしているのは大正浪漫の女学生くらいだ。
「あの?」
「あ、すいません。見慣れない格好だったので、つい気が動転してしまって」
「見慣れない格好…。お兄さんも洋服を着ているのだからそれはお互い様なのでは?」
「洋服が見慣れない格好?ここに住んでいる人は皆洋服ではなく和服を着ているのですか?」
「ええ。そうですけど」
どうやら俺はとんでもない所に迷い混んでしまったらしい。彼女の格好といい、村の景色といいタイムスリップでもしたのかと錯覚しそうになる。
「あの、お兄さんもしかして外から来た人ですか?」
「外?外とは一体?」
「その反応、やっぱり幻想入りしたんですね。お兄さん」
「げんそういり?」
「異世界にでも迷い混んだと言えばいいのかしら、とにかく幻想入り関しては私より詳しい人がいるから、その人のとこまで案内しますね」
どうやら案内されるらしい。よく分からないけど、他に行く宛もないし、彼女に付いていったほうがいいのかな。
「お母さーん!ちょっと人を神社に連れていくから」
「はーい!気をつけて行ってきてね」
店の中から声が聞こえる。彼女の母親だろうか。
「さあ、行きましょうか。お兄さんは私の後ろについてきて下さいね」
「わ、分かりました。道案内よろしくお願いします」
こうしてひょんなことから幻想入りした俺は、この先様々なトラブルに巻き込まれるだが、その話についてはいずれまたどこかで…
第一話終了
就活に対しての現実逃避の為に、僕の大好きな東方鈴奈庵を題材に以前から興味のあった二次創作を書いてみました。気まぐれで書き始めた為、物語の大筋は決まっていますが、細かいところに関してはネタが皆無に等しいので、定期的に投稿することは難しいと思います。
しかし、作品を読んでくれた人の中で、続きが読みたいという人がいましたら、一生懸命作品を書き続けていきたいと思っておりますので、応援や批判等のコメント待ってます!