2年A組のロビンフッド   作:vtuber好きの一般人

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登場人物

坂元リョーマ…バスケを愛する少年。事故でトウジの妹を庇って負傷してしまい、現在入院中。

綾波レイ…無口の美少女。零号機専属パイロットを務める。

赤木リツコ…金髪の科学者。レイの管理を任されている。

葛城ミサト…最近、ネルフ本部へ移動となった国際公務員。リツコと旧友の仲。


少女の独白

 綾波レイはある日から第壱中学校に転校することになった。

 転校初日はクラスの生徒たちも興味があり、積極的に話しかける人が多かった。しかし、レイが答えることはなかった。

 不器用だった。初対面の人間にどう接すればよいか分からない。口を閉ざし、その場をやり過ごすしかなかった。

 距離感を感じさせる態度に生徒たちは辟易し、その日のうちにレイは一人でいる時間が多くなった。

 レイがそのことを気に掛ける様子はなかった。この学校という場所でもいつものように時間を潰すだけだと考えていた。

 でも、彼女の予想した学園生活は訪れなかった。一人だけ例外がいた。

 「放課後にすぐ帰って、何してるんだ。」

 また例の少年が話しかける。少年の名はリョーマ、彼はレイにとても興味を持っているようでよく絡んでくる生徒だった。

 彼は転校初日にレイがファーストチルドレンだと見破った。そして、巨人について知らないかとも尋ねてきた。

 初めはレイもネルフの機密事項を知る危険人物なのかと身構えた。しかし、リョーマはエヴァンゲリヲンについて無知だった上、当然レイが零号機パイロットであることも知らないようであった。

 リョーマの発言は世迷いごととも捉えられる。彼のことをどう評価すればいいのか、レイは判断に困った。

 しばらくはリョーマを様子見するだけに甘んじて決断を止めていた。

 「あなたには関係ないわ。」

 「またそれかよ。」

 いつものぞんざいな態度にリョーマが不平を漏らす。

 でもそれだけだ。冷たく突き放すと眉を顰めるだけでリョーマもあっさりと引き下がる。リョーマの中でも強く拘るほどのものではないことが分かる。

 結局は彼にとっては軽い興味でしかない。鼻であしらっておけば、そのうち興味をなくしてしまうだろう。

 レイはそう思いながら机の上を片付ける。

 「もう帰るのか。」

 諦めるようにリョーマも座っていた椅子を戻す。

 「さよなら。」

 「じゃ、また明日な。」

 レイは静かに教室を離れ、リョーマも友人たちと共に体育館へ向かう。

 こうして今日も二人はあっさりと別れてしまうのだった。

 

 ネルフのどこか。コンクリートの壁に囲まれ、最低限の物しか置かれていない殺伐とした部屋に白衣に身を包んだ女性、赤城リツコとレイの二人がいた。

 「学校の生活にもそろそろ慣れてきたかしら。」

 「問題ありません。」

 「相変わらずね。それで、お友達や気になる人は出来たのかしら。」

 友達なんていない。ましてや気になる人なんて。

 真っ先に頭の中で浮かんできたのだが、レイはその言葉を口にするのを躊躇う。クラスに気になる人がいないわけではないからだ。悪い意味で気になる生徒が一人いる。

 「あら、ちゃんといるみたいね。安心したわ。」

 少し困ったことになった。

 椅子にゆったりと腰掛けるリツコをしり目に、レイはあの少年のことを思い出した自分を恨めしく思っていた。

 「その子、何て名前なの?」

 「坂元リョーマです。」

 「まあ、その子は男の子なのね。」

 リツコは嬉しそうに微笑む。一方で、レイは何が嬉しいのか分からずリツコの様子を不思議そうに見ていた。

 「どんな子なのかしら。やっぱりカッコいい子なの。」

 「綺麗な顔をしています。でも変わっている人で信用に欠けます。」

 真面目に答えるレイにリツコから温かい眼差しが送られる。

 「よく知っているのね、リョーマ君って子のこと。普段からよく話すの?」

 「向こうが勝手に。」

 「そうでしょうね。少しリョーマ君に同情しちゃうわ。」

 リツコがすこし可笑しそうに笑う。

 「なんで笑っているんですか。」

 レイの知る彼女はいつも涼しげな表情で仕事を片付ける人物であった。こうして笑う姿を見るのは初めてであり、レイはとても新鮮に感じていた。

 「あなたとやっとお喋りできたからでしょうね。私もリョーマ君に感謝しないと。」

 そこには楽しそうに話すリツコから目を離せないレイがいた。

 誰かが笑って話す姿を見るのは初めてじゃない。ネルフの職員もクラスの生徒も碇司令も、彼らが笑う姿を私は見ていたはず。

 「そろそろ起動実験の時間ね。行きましょうか。」

 「はい。」

 レイとリツコは共にその質素な部屋を出ていく。

 しかし、レイの脳裏にはリツコの笑った表情がいつまでも残っていた。

 

 起動実験の事故で負傷したレイは病室での生活を余儀なくされた。入院中、使徒の襲来で初号機搭乗のために出動したが、最終的には司令の息子碇シンジが目標を殲滅する。レイは再び入院生活に戻ることになった。

 使徒襲撃の翌日、静かな病院で大勢の笑い声が聞こえてきた。娯楽なんて殆どない病院では珍しい出来事だ。

 その声がいつまでも耳に残り、レイの心に引っ掛かっていた。

 「レイ、調子はどう。」

 「変わりないです。」

 入院してもレイの観察はリツコが行っている。今日もその一環である。

 「そういえば坂元リョーマ君、この病院にいるみたいね。シェルターでの事故で緊急搬送されたそうよ。」

 「そうですか。」

 「歩けるようになったのだし会いに行ったらどう?」

 「いいです。」

 レイはリョーマと会うことにあまり積極的ではなかった。会っても意味がないと決めつけていた。リツコもそれ以上は言及せず経過観察を続ける。

 「今日、たくさんの人の笑い声がしました。ここには何もないのに。」

 病室の向こうを見て心の内を吐露する。彼女にしては珍しいことだった。

 「しっかり気にしているじゃない。素直じゃないわね、レイ。」

 リツコにまた羨ましそうに微笑まれ、理由の分からないレイは首を傾げる。

 その様子に笑いを零しながらリツコが訳を語る。

 「あなたが聞いた笑い声。リョーマ君の病室から聞こえたのよ。」

 思いもしない名前が上がりレイの目が大きく見開く。

 「クラスの生徒も先生もみんな集まっていたらしいわ。だからあんなに笑い声が響いていたのね。」

 彼の周りによくクラスの人が集まっていたことを思い出し、リツコの話に納得する。レイが感じていた以上に彼はクラスの人気者だったようだ。

 「聞けば彼は鉄骨から身を挺して女の子を守ったそうよ。事故の怪我はそれが原因らしいわ。あの人望も納得がいくわね。」

 リツコが近くの看護師から聞いた事情を話していると、レイが突然口を開く。

 「彼の病室の番号を教えてください。」

 レイも似たような経験をしていた。閉じ込められていた彼女の元へゲンドウがいち早く駆け付けたのだ。

 その出来事以来レイはわだかまりを抱えていた。ゲンドウの微笑んだ表情を素直に受け取ることができない自分がいた。なぜそう感じるのか分からなかった。

 リョーマもゲンドウと同じように自身の犠牲を厭わなかった。その彼の考えを聞けば、この違和感を解消できるかもしれない。

 レイの質問にはそんな思惑があった。

 快く少年の病室を教えたリツコは仕事を終えるとすぐさまレイの病室を後にする。

 それから暫くしてレイはベッドから起き上がり、点滴台を手に少年のいる病室へと歩いていった。

 

 開かれた病室のドアの先で見えたものはベッドが一つだけ置かれた寂しい部屋だった。そして病室にはリョーマ以外誰もおらず彼も熱心に何かを読んでいる。

 車輪の転がる音が鳴り、リョーマもやっと気付いた様子で顔を上げた。

 「あれ、綾波さんか。同じ病院なんて奇遇だ。」

 知人が同じ病院にいたことに驚くリョーマをよそにレイはベッドの近くの椅子に座る。

 しかし何か喋るわけでもなく黙って彼を見つめるばかり。読みかけの物を片付け、レイの言葉を待っていたリョーマだったが次第に眉を寄せていく。

 「黙って見ているだけなのも困るんだけど。何しに来たんだ。」

 「笑い声が聞こえたから。」

 レイの重い口からようやく言葉が返される。

 短絡な言葉の意味を読み取れず、リョーマはその言葉を反芻し、一度考える素振りを見せる。そして間の抜けた表情へ変わると弾んだ声で口を開く。

 「綾波さんも暇なんだな。面会時間も短いし、することと言えば読書くらいだし。」

 「そう。」

 「英語で書かれた本を読んでいたよな。洋書が好きなタイプ?」

 勝手に話しを進めているリョーマだが、レイが遊びに来たのだと勘違いしている。しかし、レイも会話の経験が少ないせいか、話の方向がズレていることに気付かない。リョーマの質問に機械的に応えるばかりだった。

 「海外の雑誌も読んだことあったりしないか?」

 「読んだことないわ。」

 「丁度いいな。じゃあさ、これ読んでみてくれ。」

 リョーマはさっき片付けたものをレイへ手渡す。表紙にはアメリカのバスケット選手が大きく飾られていた。

 「これはなに。」

 「バスケを中心に扱っているスポーツ雑誌。時間あるなら試しに読んで感想を聞かせてほしいんだよ。」

 レイは手に持った雑誌をまじまじと眺める。今まで触れたことのないタイプの本だったのでレイには物珍しかった。

 雑誌に釘付けの様子をリョーマは愉快そうに笑う。

 「どうして私に。」

 「学校だと英語できる人いないだろ。いい雑誌なんだけど紹介できる機会が無くて。でも、英語ができる綾波さんなら大丈夫だ。」

 そう語るリョーマの顔を見た時レイはふと心の奥底で引っ掛かるのを感じた。矛盾した感覚が襲っていた。

 今、私は何を感じているの。

 レイは自分の身に起きていることを理解できなかった。

 いや、理解することを拒んでいるのがより正しい。

 リョーマの顔に面影があることに気付いてしまった。脳裏にチラつく、靄のかかった影を理解してしまうのが恐ろしかった。

 「結構よ。あなたの友人に頼めばいいわ。」

 先程の態度からガラリと変わり、レイはリョーマを突き放すような態度で雑誌を手放す。しかし今日に限って、彼は諦めが悪かった。

 「専門誌じゃないからバスケに詳しくなくても面白い内容だし楽しめる。読んで損はないって。」

 「だから私は。」

 リョーマはレイにもう一度雑誌を握らせる。そして、その手をレイは振りほどくことができなかった。

 「バスケ選手のインタビューが載っているんだけど彼のバスケ観が一味違って読み応えあるんだよ。そこだけでもいいから読んでくれないか?」

 熱く語るリョーマからいくつもの幻影が揺らめく。レイが躊躇ったのは彼女から見てリョーマはよく似ているからだ。

 それは彼女にとって有り得ないことであり、受け入れがたいことだった。レイが目を背け、見逃したくなるのも当然の帰結であった。

 「騙されたと思って。」

 「読めばいいのね。」

 「ああ!是非読んでみてくれ!」

 早く抜け出したいレイはとうとう諦めてしまった。

 リョーマの追撃が終わり一呼吸入れる。変な疲労感を感じたレイはリョーマから渡された雑誌を手にし、離席する。

 「さよなら。」

 「今日はありがとうな。」

 目的を遂げられていないが今日はもう疲れてしまった。

 「そうだ、綾波さん。」

 もう帰ろうとしているとリョーマがレイを呼び止める。

 「綾波さんの病室ってどこ?今度は俺が遊びに行く。」

 彼女の内心も知らずにリョーマは無邪気に笑っている。

 場違いな彼にすっかり毒気を抜かれてしまい、勝手に悩んでいた自分が馬鹿らしくなってしまう。レイはあっさりと自分の病室の番号を教える。

 「そんなに遠くないな。じゃあ、また明日。」

 リョーマは嬉々として手を振り見送る。レイはそんなリョーマを傍目に開かれたドアの先へ歩を進めた。

 

 レイは退屈しのぎにリョーマから渡された雑誌に目を通していた。

 スポーツ雑誌という本を読むのは初めてのレイだったが意外にも楽しめる内容であった。リョーマなりに考えて薦めた本ということだ。

 「あら、雑誌なんて読んでいたのね。」

 様子を見に来たリツコが目を見張る。レイが今まで俗なものに手を出したことがなかったからだ。

 「それもここには置いてない海外の雑誌ね。誰から借りてきたの。」

 誰がレイに渡したか目星も付いているだろうに、リツコはわざわざ尋ねる。

 「坂元少年から借りました。」

 「あら、リョーマ君とはすっかり仲のいい友達ね。」

 リツコの言葉がピンと来ず、レイは呆けた表情を晒す。

 おかしなレイの顔にリツコが耐えられず笑っていると、急に病室の自動ドアが開かれる。予定のない来訪に二人して驚き、ドアの方へ視線を向けると

 「約束通り遊びに来たぜ。」

 入り口で陽気に笑うリョーマがいた。

 レイの隣にリツコがいることに気付くと、リョーマは一礼する。

 「初めまして、クラスメイトの坂元リョーマです。」

 「私は赤木リツコよ。よろしく。まだ中学生なのにちゃんとしているわね。」

 「父から厳しく教えられましたから。」

 初対面でとんでもないことを言っていたリョーマだが今は礼儀正しく接している。

 昨日と言い、今日と言い、リョーマの違いすぎる一面にレイは困惑しながら二人のやり取りを眺めていた。

 「そういえば先に仕上げるべき仕事が残っているんだったわ。レイ、診断はまた後にしましょうか。」

 「はい、分かりました。」

 「私は先に失礼するわね。」

 リツコは二人を残し、颯爽と病室を出ていく。

 その後ろ姿を見ながらリョーマは気を使わせてしまったかと申し訳なさげに呟いていた。しかし、レイの手元にある雑誌を見て再び白い歯を零す。

 「ちゃんと読んでくれたんだ。その雑誌、面白かっただろ?」

 「そうね。」

 雑誌が面白いのは本当だった。

 素直な反応を見せるレイにリョーマも嬉しそうに頷いている。

 「あなたの怪我、女の子を助けたのが原因って聞いたわ。」

 「まあ、そうだけど。病院で流行っているのか、それ。」

 振られた話題に苦笑している。この短い間にリョーマは同じことを聞かれていたようだ。

 「赤の他人をなんで助けたの。」

 「難しい質問だな。あれは反射で助けたってのが本音だけど、この答えじゃ納得しないんだろ。」

 レイは表情一つ動かさずに見つめ続ける。口も開かない彼女の様子に、そうだよなと眉を下げ、リョーマは言葉を探す。

 「助けた子はトウジの妹だ。トウジが妹想いの優しい奴でな、妹が怪我すれば本人よりも悲しむって想像できるくらいだ。だからこんな無茶をしても助けたかったんだ。」

 「でもあなたは損をするだけよ。」

 リョーマの答えに対し否定的な態度を取る。レイには無駄な行為にしか思えない。

 あの人も同じ。私は計画の鍵で、私はたくさんいる。どうして助ける必要があったの。計画が完遂する、その日まで無に還る時を待つ。それだけで良かったのに。

 レイは逆恨みに近い気持ちをぶつけていた。不器用な方法でしか自分と向き合うことができなかった。

 「綾波さんの言う通りだ。あの瞬間、自分のことを考えてなかった。」

 「じゃあ、どうして。」

 「人には自分を殺しても守りたいものがある。トウジやクラスのみんな、俺の知る人達が笑顔でいることが俺の守りたいものなんだろうな。だから体が動いたんだ。」

 リョーマの表情が和らぐ、その変化に息を呑む。彼の緩んだ口元にレイは再び残像を見ていた。

 ゲンドウが自分を救いに来た、あの瞬間だ。しかしフラッシュバックした表情はリョーマのそれと違うものを映している。ゲンドウは過去を、リョーマは今を。

 やっと違和感を理解できたというのに、レイの心が晴れることはなかった。

 彼らへの羨望がレイの中で蠢き、彼女に悩みと苦しみを与える。彼女に生を縛り付ける。

 無を願う彼女はもうそこにはいなかった。

 「そう。」

 レイの言葉は続かなかった。

 この数日間にあまりに多くの出来事が彼女の身に起きている。その情報量に彼女の感情が追いつかなかった。

 混乱したレイは隣の存在も忘れ、ただ前を茫然と眺める。

 彼女が自己の世界へ陥っていると、眼前に突然バスケットボールが現れる。

 「煮詰めすぎるのは体に毒だぜ。」

 「なに。」

 「悩んでいるんだろ。そういう時は一回忘れるのが肝要。」

 顔の横でボールを回しながらリョーマは得意げに語っている。また変なことを企んでいるとレイから睨まれるがどこ吹く風だ。

 「ってことでバスケしようぜ!」

 ボールを突き出し自信満々な声でバスケに誘う。一方で予想通りの展開にレイは一つ溜息をついた。

 「嫌よ。」

 「そ、そんな!?即答!?」

 レイの一蹴に目を丸くし、ガックリと肩を落とすリョーマ。そんな彼の反応にレイも慣れてきたようで面倒そうに見ているだけだった。

 しかし、次の瞬間には顔を上げ、完全に立ち直っている。この騒がしい時間はまだまだ終わりそうになかった。

 

 「シンジ君の様子はどう?」

 リツコは赤いジャケットを着た旧友、ミサトに尋ねる。

 「あんまり良くないわね。クラスに馴染めてないみたい。」

 「あなたが落ち込んでどうするのよ。シンジ君の保護者になったんでしょ。」

 気落ちした声色で弱音を吐くミサトに励ましの言葉を送る。しかし、当の本人は背もたれに寄りかかり、首を垂らしたままだ。

 「繊細な年頃だし、どう接したらいいのか分からないのよね。リツコはどうしてるの?レイも気難しそうな子じゃない。」

 「私は何もしてないわね。」

 「それ、大丈夫なの?」

 リツコの発言に一瞬目を丸くした後、釘を刺すような視線を送る。

 追及するミサトに対しリツコはコーヒーを飲み、悠然としていた。

 「もうあの子は一人じゃないわ。大人が関わるだけ野暮よ。」

 「それってレイに友達ができたってこと?」

 「意外でしょ。あんな不器用な子がね。私もビックリしたわ。」

 目を細めながらリツコは病室での二人の様子を思い出す。

 顔を輝かせて熱心にバスケを語るリョーマといつもの能面のような顔で聞き、適当に頷くレイ。

 凸凹な二人のやり取りを思い出し、つい吹き出してしまう。

 「ちょっと急にどうしたのよ。そんなに面白い子なの、レイのお友達って。」

 「そうね、可愛げがあって面白い子よ。おまけにイケメンさん。」

 「あら男の子。もしかして期待していい?」

 イケメンの一言にミサトがいやらしく口の端を上げる。それに対し、リツコは眉を顰め不快感を示していた。

 「それこそ蛇足というものよ。二人がどうなるか、遠くから見守るのが一番だわ。」

 「でも気になるのが性ってもんでしょ。なんて名前なの、その男の子。写真とか撮ってないの?」

 リツコの注意を気にも留めず、ミサトは勢いに任せてグイグイと質問を押し込む。

 その強引さにやれやれと首を振り、ミサトへ一枚の写真を渡す。

 「流石リツコ!話が分かるわね。いつ撮ったの、これ。」

 「丁度今日、退院記念にと一緒に写真を撮ったのよ。長身の男の子が話していた子よ。」

 「へー、こりゃリツコがイケメンというのも納得ね。相当モテてそうね。」

 始めはニマニマとその写真を眺めていたミサトだったが、何かに気付いた様子でだんだんと目つきが厳しくなる。

 写真と睨み合っているミサトをリツコは愉快そうに見ていた。

 「後ろに写っている建物、もしかしなくてもネルフの病院よね。」

 「そうよ。訳あって私たちの病院に入院していたわ。名前は坂元リョーマ、第壱中学の2年A組、シンジ君のクラスメイトよ。」

 「訳アリって。そんな子がどうしてシンジ君の学校に通っているのよ。」

 疑うようにジロリと睨むが、リツコは肩をすくめて私に聞かれてもと否定するばかりだった。

 ミサトは大きく息を漏らし、リョーマが写った写真を手持ち無沙汰に揺らす。

 「これから大丈夫かしら、シンジ君。」

 彼女の懸念する声が暗い天井を木霊する。復唱するように何度もその声を響かせながら、次第に奥の方へと遠ざかり消えていった。

 




一応の補足です。

リョーマがネルフの病院に入院できた理由…リョーマが官房長官の息子だから。わざわざ拒否して一国の大臣の反感を買うメリットがない。

リョーマの学力…英才教育と亡き義母の影響で学業の成績も良い。英語も当然のように話せる。

リョーマの容姿…容姿端麗な原作キャラからも褒められる程に美少年なリョーマだが、理由なくイケメンにしているわけではない。設定上、イケメンになる運命だった。
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