人類最強は楽じゃない!   作:@ジョージ

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すみません、内容が古いものになっていたので更新しました。
矛盾点があったので………


第七話:『ユースティ』の盛衰

『刧魔界』

 

ガイア界では魔族と呼ばれている種族が暮らし、高度に発達した魔法文明が存在する世界。

 

その世界の由緒正しき貴族である『ユースティ家』にソフィア=ユースティは生を受けた。

 

父は刧魔界魔王、ギルヴァス=ユースティ。

たった一人で強者が跋扈する刧魔界の殆どを纏め上げ、実質的な独裁者としての立場に立っていた。

 

刧魔界随一の実力と権力を合わせ持つ者の血を引いたソフィアは、生まれた瞬間から権力闘争に巻き込まれる事になった。

赤ん坊の頃から他勢力に暗殺者を仕向けられるのは日常茶飯事。彼女は父親譲りの圧倒的な魔法の才能を駆使してその悉くを返り討ちにした。

 

そして五歳の誕生日、ソフィアは新たな名を授かった。

 

その名は『ソフィア=テラ=フランマソル=サンダ=ヴァニム=アクリ=ユースティ』。

 

元の姓名の間に連なる六つの姓はユースティ家を支持する有力貴族を示している。彼らはソフィアを『姫』と呼び、次期魔王となる事を期待していた。

同時に仲の良かったメロウ=アクリと言うセイレーン族の名家の娘と、擬人化した大型魔獣のチコが正式に側付きとなった。

 

八歳の時には学園の生徒や教師すら誰も魔法でソフィアに敵わなくなっていた。一応魔法学院に在籍してはいたが、授業には全く出席せず、あらゆる権力とコネを使って学園を私物化していた。

彼女の行動を邪魔する者がいないのを良い事に、敷地内に城を建てる等好き放題過ごしていた。

 

その頃、刧魔界ではある問題が起きていた。

それは後にガイア界や大自然郷などと呼ばれる異世界との関係の悪化だった。

 

突如として刧魔界に四つの異世界と繋がる空間の穴、『ゲート』ができたのはソフィアが生まれる前の出来事で、人間界では『変革の日』と呼ばれたその日から、十年もの間異世界に住む種族との交流が続いていた。

 

五つの世界が繋がった当時はギルヴァスが刧魔界で自勢力の地盤固めをしている真っ最中で、とても異世界の事に首が回る状態では無かった。

だから異世界の種族との争いはなるべく避け、交流をしていた。

 

だがギルヴァスが魔王として刧魔界を統一してからは、ユースティ家の対抗勢力に向いていた矛先が異世界に向けられた。

刧魔界を征服した次は異世界の征服だと豪語した魔王は突然態度を豹変させ、ガイア界・天楽園・機械帝国・大自然郷全てに同時宣戦布告。

 

刧魔界政府は十年かけて各界から得た情報を元に作戦を立て、四界に進軍した。

勿論敵軍の強い抵抗はあったが、都市一つを一体で制圧できるほどの力を持つ最上級魔獣や、魔王を含めた優秀な魔術士の力で強引に戦線を切り開き、暴れ回った。

 

しかしその頃、ソフィアは戦争には全くの無関心で、メロウとチコと一緒にお茶をしながら逐一上がってくる戦果報告を聞き流すだけだった。

そこで軍上層部が魔術士として高い実力を持つソフィアに何度も協力を要請したが、

 

『私が力を振るうのはあくまで私自身の為よ。パパみたいに血に飢えている訳でも無いし、戦争なんてする暇があったらメロウやチコと遊んだ方がまだ楽しいわ』

 

と言って参戦を拒み続けた。自分が好き放題できる刧魔界という世界があるソフィアは異世界には全くの無関心。征服が完了したら少し遊びに行こうかしら、ぐらいの感覚であった。

 

そしてついにガイア界へ本格的な侵攻を計画。

外交によって得られた情報から人間界には『ネオス』と呼ばれる強力な能力者がいる事が分かっていた為、刧魔界政府は大自然郷等を侵攻した時よりも戦力を増強する事にした。

第一陣で用意されたのは最上級個体5体含む30体の魔獣と、10000人の精鋭魔導士。ギルヴァスが統一する前の刧魔界であれば、国一つなど余裕で落とせる戦力。この第一陣には魔王は諸事情で参加せずに第二陣で参加する事になっていた。

最上級魔獣であるチコにもこの戦いに収集がかかっていたが、遊ぶ相手が減るのが気に食わなかったソフィアがそれを拒否した。

 

 

 

但し、ガイア界はそれを指を加えて見ているだけでは無かった。

この頃には刧魔界には多くのスパイが潜入しており、戦力や侵攻日時、更にはガイア界における侵攻ルートまで、あらゆる情報が筒抜けになっていたのだ。

ガイア界の対抗作戦は単純で、『ゲートを通って現れた魔族軍をその場で叩く』というもの。

 

そこで戦力として送られたのは国連軍でも核搭載無人機でもなくたった2人の『新』人類、しかも当時8歳と9歳の少年少女であった。

少年はあらゆる魔法や物理攻撃を威力を増大させて反射し、加えて大規模な竜巻や地割れを連続的に発生させて軍を圧倒した。

少女はサイズが変わる黒い立方体を自由自在に幾つも操り、大型魔獣や魔導士を大勢纏めて切り裂き、押し潰した。

 

結果、侵攻初日に2人と会敵した10000人の魔導師と30体の魔獣は抵抗虚しく、死体すら残らず殲滅されることとなった。

 

そして未曾有の大損害により、刧魔界における魔王の立場は一気に悪化する事になった。

この戦いで魔族側が得た情報は殆どなく、敵の数やその詳しい能力や姿は生存者が居なかった為に不明のままであった。

そして魔王を信じて応援していた権力者や民は掌を返した様に責任を追求し、デモや反乱が立て続けに勃発。刧魔界は一夜にして大混乱に陥った。

それにより軍事拠点との連携が取れなくなり、刧魔界以外の四世界連合軍により侵攻を受けて撤退を余儀なくされた。

魔王は信用を回復させる為に何度か異世界に侵攻を試みたものの、連敗。

ゲートを通じて刧魔界に侵攻され始めた所で連合軍の要求を飲み、刧魔界は降伏宣言した。

 

 

 

 

平和条約締結がガイア界のサン・ヴァレロン島で行われ、以下の事項が決定した。

 

・刧魔界魔王ギルヴァス=ユースティの政権剥奪

・賠償金請求

・各界政府の上層部により構成された最上位統治機関、『五界統合政府』の設立

 

その他五界の平和を守る為の様々な取り決めが為され、戦争は終結を迎えた。ギルヴァスの政権放棄は刧魔界で大きな騒動となったが、その後継としてとある上級貴族の名前が上がった。

 

その名は『ロイセス家』。

当時ユースティ家に次ぐ権力持っていた貴族であり、現当主であるレイン=アーク=ロイセスが多くの貴族の賛同を得て新魔王となった。

 

ロイセス家は刧魔界統一前からユースティ家の暴力的な支配行動を批判し続けており、ギルヴァスが統一に首っ丈になっている最中に異世界との交流を担っていたのもこの一家であった。

ユースティ家とロイセス家は昔からの犬猿の中であり、今回の戦争も外交担当のロイセス家の静止を振り切ってギルヴァスが異世界を侵攻した事から溝はさらに深まっていた。

この事により刧魔界の勢力がユースティ家を支持する『旧魔王派』とロイセス家を支持する『新魔王派』に二分化した。

 

そんな中、刧魔界に更なる衝撃のニュースが流れた。ユースティ家当主のギルヴァスが全権をソフィアに一時的に移譲したのである。

権力も家臣からの信頼も失い疲れ果てたギルヴァスはソフィアを当主代理とし、田舎に小さな家を建てて隠居するに至った。

 

それを受けた旧魔王派はギルヴァスを見限ってソフィアを本格的に次期魔王候補として祭り上げた。更には政権を握るロイセス家当主レインが両家の友好の為に息子とソフィアの婚約を発表。こうして彼女は見事政争の操り人形と化した。

 

今まで住んでいた刧魔界最大級の城『紅魔級』を追い出され、自由も娯楽も奪われて魔王になるための教育を受け続ける日々。さらに婚約の時期を様々な理由をつけて送らせてきた。

ソフィアは何度も反発しようとしたが、『父の無念を晴らす為』『再び自由を手にする為』と多くの家臣に説得され、自分を殺して努力を重ねた。

 

そうして政権を奪還できぬまま9年の時が流れ、ついにソフィアに限界が訪れた。トリガーとなったのはロイセス家の婚約の強行であった。

これまでの我慢と怒りを全て世界にぶつける様に、ザルツェインを片手に暴れ回ったのである。

流石の非常事態に隠居していたギルヴァスは重い腰を上げ、刧魔界最大級の親子喧嘩が勃発。

島を五つ、山脈を二つ、湖を三つ地図から消した所でソフィアは力尽きた。

 

その後目を覚ました時、彼女は既に刧魔界を追い出され、メロウとチコと共にガイア界に移動していた。ギルヴァスはソフィアを無理やり政争から引き離したのである。

そしていつの間にかガイア界の国際学園への入学が決まっており、何もかもが嫌になっていたソフィアは流れるままに入学した。

 

 

 

 

『五界対戦から全てが狂ってしまった』

『自由を奪われた』

『あらゆる物事が煩わしい』

『このつまらない世界で時間を浪費するのか』

 

 

 

ソフィアがそう思いながら迎えた入学式。

一人の獣人が彼女の肩にぶつかる。

 

「チッ」

 

獣人は謝罪も無く舌打ちして立ち去ろうとしていた。

 

「待ちなさい。そこの駄犬」

「あぁん?」

「今、私にぶつかったわよね?謝罪は無いのかしら」

「テメェがノソノソ歩いてんのが悪いんだろうが。しかも俺の事を駄犬だと?喧嘩売ってんのか?」

 

自分との実力差も分からずソフィアを睨みつける獣人。

 

「嗚呼、貴方って愚かね」

「はぁ?」

「身の程を弁えなさい」

 

 

気がつけば獣人を血祭りにあげていた。

周囲の者たちは恐れ慄いた目でソフィアを眺めている。

 

 

『そう、私は支配する側になるべき存在』

『何故今まで単純に力で支配しようとしなかった?』

『恐怖が最も効率的に支配できるって、パパが証明してくれたじゃない』

 

 

「や、やめて、、、くれ、、、たのむ、、、」

「丁度いいわ。暇潰しにこの学園を支配してしまおうかしら」

 

ソフィアが獣人に再び手をかけようとしたその時。

 

 

 

「ちょっと!これは一体どう言う事なのよ!」

 

 

 

一人の少女が立ち塞がった。

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