人類最強は楽じゃない!   作:@ジョージ

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ヒロイン全集合まで後二人……


第七話:記憶喪失の破壊神

敬が学園に入学して一ヶ月半が経った。

 

この頃になると既に学内、クラス内では幾つかのグループができ始める。同じ種族や性別、趣味趣向など理由は様々だ。

 

そんな中敬は未だ現状維持であった。

ソフィアは一応『友達』だが、胸を張って友達と言えるかは疑問である。パーフィルとは普通に会話したりゲームする仲になったが、彼女は敬を討伐対象か何かとして見ている可能性がある。

 

「友達、空から降ってこねぇかな」

 

その日、敬は自室の窓から夜空を見上げていた。綺麗な満月が寮の中庭を淡く照らしている。

 

サン・ヴァレロン上空は非常に空気が綺麗な為、月明かりに合わせて多くの星々を眺める事が出来る。

敬はその中に一つ、他の星とは離れてポツンと赤く光る星を見つけた。その光はとても強く、しかし何処か寂しそうに見えた。

 

「赤い星は珍しいな。赤色巨星かな」

 

赤く眩しい光に、目を細める。

 

「そろそろ風呂に入るか。……ん?」

 

窓を閉めようとしたその時、赤星の光が強まったような気がした。それからしばらく眺めていると、その星は次第に大きくなっていく。

 

「待てよ?あれ、本当に星か?」

 

敬は目をゴシゴシと擦り再度夜空を見上げる。

更に大きさを増したその物体は、『ゴゴゴ……』という鈍い音を立てながらこちらに近づいてきていた。

 

「おいおい隕石かよ!しかもこっちに向かってきてるじゃねーかぁぁぁ!!!」

 

数秒後、敬の部屋の窓から数メートルの地点に落下。その衝撃が中庭の地面や寮の壁を炸裂音とともに吹き飛ばしていく。

敬は両腕で顔を覆い、能力で衝撃を反射してその場に踏みとどまった。

 

「ゲホッゲホッ。嘘だろ?一体何が……」

 

敬は完璧に破壊された壁を跨いで中庭に向かった。落下地点と思われるクレーターの中央には何者かが倒れていた。

 

「誰かいるのか?」

 

そう言って近づいた敬が見たのは青みがかった銀髪ツインテールの少女であった。肌面積の多いパイロットスーツの様な物を身に纏い、その近くには彼女が乗ってきたと思われる宇宙船(?)が転がっていた。

 

謎の女はその場でむくりと起き上がると、周囲を見渡してからぬぼっとした目で敬を見た。

 

「おい、何のつもりだよ。これは」

「………」

 

その問いに対し彼女は眠そうな目と無言を返すばかり。

 

「見ない顔に服装だな。学園の生徒じゃなさそうだ。何者だ」

「………???」

 

何を聞いているのか?と言わんばかりにコテンと首を傾げる少女。

 

「何者かって聞いてんだよ、不思議そうな顔をすんな」

「………私は、コホンッ」

 

彼女は一度咳払い、

 

「我が名は破壊神・クルル……この世に終わりを告げに来た」

 

敬にとって予想外の返答が来た。

 

「は、破壊神?」

「そう。我は破壊神クルル……だと思う。たぶん」

「多分って何だよ多分って」

「すみません、ここは何処ですか?」

「ここは人間界ガイア、ヴァレロン国際学園学生寮だ」

「親切な方、ありがとうございます」

 

ペコッと頭を下げる破壊神(?)。

 

「もう一つ質問があるのですが」

「なんだよ」

「私は、一体誰ですか?」

「さっき自分で言っただろ。『破壊神・クルル』って」

「破壊神……ごめんなさい。名前しか思い出せないの。破壊神・クルルって何?教えて」

「俺が聞きたいよ!!!」

 

敬が彼女の扱いに困っていたその時。

 

「あらあら、めちゃくちゃにしちゃって。今度は寮を破壊するつもりかしら?」

 

後ろから現れたのは学生寮長の卦法院紗月(けほういんさつき)さん。彼女は見るも無残な中庭の様子に「はぁ」とため息をついた。

 

「俺は何もしてないですよ!!!こいつがいきなり庭に落ちてきたんですよ!!!」

 

敬はクルルの首根っこを掴んで紗月さんに差し出す。当のクルルは「え?私の事ですか?」と首を傾げている。

 

「あら、その子誰かしら?」

「我が名は破壊神・クルル。この世に終わりを告げに来た。たぶん」

「で?」

 

流石はあらゆる種族が住う学生寮の長。クルルの意味不明な自己紹介に対して少しの動揺も見られない。

 

「ごめんなさい。何も思い出せないの」

「まあいいわ。話は部屋でゆっくり聞かせてもらうから」

 

そう言って紗月さんはどこから取り出したのか手錠でクルルの両手を拘束し、紐をつけて引っ張る。

 

「まって、痛い、手錠、痛い」

「すぐ外してあげるから、こっちに来なさい」

 

何か危機を感じ取ったのか、ガタガタと震えながら寮長に連行されるクルル。

 

「獅子堂くん、ちょうど他の部屋に空きがあるから、修理が終わるまでそちらで寝てくれる?」

「わかりました」

「た、たすけて。この人、目が怖い」

 

まるで奴隷の如く悲痛な顔で、寮の奥へとクルルは消えていった。

 

「……………………………………風呂入って寝るか」

 

敬は意外と切り替えが早い方だった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

翌日、朝のホームルーム。

雑談に花を咲かせる生徒たちを一蹴したのは1-Aの担任教師で天使族のミリエルであった。

 

「ほら、ホームルーム始めるわよ。いい加減静かにしなさい。天罰喰らわすわよ」

 

彼女がバチバチッと掌で放電を起こすと、生徒全員が大人しく椅子に収まる。

ミリエルは天使らしくも教師らしくも無い言動が多いものの、パーフィルと違って抜群のスタイルとエロに寛容である事から男子生徒からの評判は高い。

 

「全く毎日毎日騒々しいわねあんた達は。さて実は今日皆にお知らせがあるのよ。さぁ、入ってらっしゃい」

 

ガラガラッという音の方向に敬が目をやると、昨日彼の部屋を破壊した張本人が立っていた。

 

「うっそだろ」

 

学園指定の制服を纏った破壊神・クルルが先生の横までテクテクと歩いて来た。

 

「えー彼女は今日からこのクラスの新しいお友達になります。はい、自己紹介」

「破壊神・クルルです。よろしくお願いします」

 

破壊神、という単語にクラスメイトがざわめき出す。

 

「え、えーと、クルルさんは機械帝国出身で、もともと貴方達と同じく入学する筈だったんだけど、諸事情で一ヶ月程度遅れてしまったのよ。それと、破壊神って言うのはなんと言うか、彼女はどうやら記憶喪失みたいで、自分が破壊神だと信じ込んじゃってるみたいなの。だから、あまり気にしないで接してあげてね?」

「…………」

 

破壊神である事を否定されたにも関わらず、クルルはぼーっと虚空を見つめたままであった。

 

この瞬間全てのクラスメイトがこう思った事だろう。

 

 

『第二の問題児がやってきた』と。

 

 

「そして席だけど、そうね。獅子堂の右の席でいいわ。そこ、席を交代してあげて」

「俺の隣!?ちょ、先生!?」

「それじゃあ決めたからね。クルルさんはまだ学園に慣れてないから、皆色々と教えてあげてね。他に報告する事とかないからホームルームは終了。それじゃね〜」

 

そう言ってミリエル先生はクルルを残してそそくさと教室から退散した。

 

「あの先生、俺に面倒事押し付ける気だ」

「あの……」

 

その声に振り返ると、いつの間にか敬の隣にクルルが移動していた。

 

「な、なんだよ」

「昨日はごめんなさい」

 

彼女は敬に向かって深々と頭を下げた。

 

「部屋を破壊したことか?」

「うん。本当に本当にごめんなさい」

 

彼女はどこか虚な目をしながら何度も謝っていた。

 

「なんか目に力無くなってるぞ?寮長と何があった」

「怒られた。凄く怒られた」

 

それだけで何が起きたか、敬には察するにあまりあると言う物だ。

 

「獅子堂くんにちゃんと謝るようにって言われたから」

 

見るからに縮こまってションボリとするクルル。

まるで飼い主に叱られた子犬のようだ。

 

「反省してるならこれ以上はとやかく言わねぇよ。そもそも転校生だったとは驚きだな。荷物とかどうした?」

「生活必需品は送り主不明で一式送られてきたよ。でもね?カーテンが足りないの」

「カーテンぐらい買い足せばいいだろ」

「お金は持ってません」

「これからどうやって生活する気だよ」

「寮でバイトする事になったけどお金は殆ど紗月さんに返すために消えていくの」

「部屋の修理費か。いくらだ?」

「25万円」

 

一銭も持たずに学園に来た挙句、借金まで背負う羽目になるとは何とも不憫な破壊神である。

敬の部屋を破壊した張本人だが、彼にはクルルが少し可哀想に思えた。

 

「カーテンが無いんだったな。実家から二つ持ってきて余ってるからやるよ」

「いいの?」

「そのくらいしかできないけどな」

「その優しさは本物?信じていいの?」

「人間不信にも程がある」

「人間の闇を見てしまった後遺症だよ」

 

どうやらクルルは紗月さんに相当絞られたらしい。本気の寮長ほど恐ろしい物は無い。

 

「まずいよ敬くん。このままだとこの世に終わりをもたらすと言う目的を果たす為の資金が稼げないよ」

「そこは自分で何とかしろよ。所持金マイナスになったのは自業自得だろ」

「これはコスパよくこの世を終焉に導く方法を見つけないといけないね。いろいろ考えてみるから後でアドバイスとか貰えない?」

 

クルルのクリクリっとした目は敬の目を捉えて離さず、無視する事を許さない凄みがあった。

 

「はいはい分かった分かった」

 

やれやれと軽く返事をした敬だったが、この判断が間違いであったとすぐに後悔する事になったのだ。




伊織「私の出番少なくない?」
ソフィア「ヒロインが出揃うまでの辛抱よ」
パーフィル「一体後何話になるのやら……」
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