第六天魔王の死神生活   作:七瀬一五

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序章
第1話 ここはどこじゃ?


 気がついた時、わしには記憶がなかった。

 いや、一応ちょっとはあるんじゃが炎と坊主、灰色の砂漠しか思い出せんかったしのう。

 とりあえず、死んだということだけは理解しておる。そんでもって、わしが天国に行けるような人間ではないということもわかっている。

 じゃが、ここは何だ?

 

「いいモン持ってんじゃねぇかよ。それくれたら殺さないでやるよ」

「女には勿体ねぇよなぁその服!」

「いいカモだなぁ!」

 

 目の前には、わしの二倍ぐらいの身長の大男がおり、その右には小太りのチビ、左には出っ歯のハゲ。

 そやつらが、このわしに対して恐喝をしておる。

 一瞬、ここが天国かと思ったのじゃがそれはないかもしれんな。

 わからんことが多すぎるし、とりあえずこいつらから話を聞いてみるか。

 

「おぬしら、ここがどこかわかるか?」

「あぁん?教えるわけねぇだろ。今から殺されるんだからよ」

 

 駄目じゃなこれ。

 仕方ない、無理やり聞き出すか。

 

「もう一度聞こう。ここがどこか教えてくれるか?教えてくれるなら、命までは取らんぞ」

「何言ってんだてめぇ。自分の立場をわかってんのか?」

「はぁ……忠告はしたぞ?」

 

 刀を抜き、右足を踏み込み、一気に距離を詰める。その勢いのまま男の喉元に刃を突き刺した。

 

「げぁ?」

 

 わしのような小娘に反抗されるとは思わなかったのだろう。死に顔は、困惑と怒りにまみれていた。

 

「てめぇ!」

 

 それを見たハゲが短刀を構え飛び掛かってくるが、足を引っかけて転がし、それと同時に男の首から刀を引き抜き、倒れたハゲの頭蓋に押し込む。

 

「あぇ?」

「ひぃぃぃぃ!?」

 

 それを見て逃げ出したチビが逃げ出した。

 至極当然の反応だ。だが、それは読んでいた。

 ハゲが使っていた短刀を拾い、それを投げる。

 

「あぐっ」

 

 見事に太ももに命中。ハゲの頭から抜いた刀を振り、血糊を払いながらチビに近づく。

 

「い、命だけは助けてくれ!頼む」

「なら、この世界について教えるがよい。教えるならば、考えてやらんことでもない」

「わ、わかった」

 

 チビの話を要約すると。

 ここは尸魂界(ソウルソサエティ)という場所で、人間が現世で死んだ後に行き着く場所あること。死神が住む瀞霊廷(せいれいてい)と、それを囲むように作られている現世で死んだ人間が住む流魂街(るこんがい)に分けられており、今いる場所は第80地区『更木』らしい。

 死神という存在がいるというだけでも頭が痛くなりそうだが、厄介なことにこの『更木』という地区は流血沙汰は日常茶飯事の北流魂街最低地区とのこと。

 

 ……どうなっとるんじゃこの世界。

 それに死神?

 

「死神とは何だ?」

「し、死神ってのは俺もよく知りません!馬鹿強い戦闘集団だとしかわかりません!」

 

 こいつあんまり使えんのう。

 

「知っていることはそれだけか?」

「ゆ、許してくれ。それに、おまえは死ななかったからいいじゃないか!」

 

 儂に命が握られてるというのに逆切れするとは、愚かな奴じゃな。

 

「そうじゃな。確かにわしは死ななかった」

「じゃ、じゃあ」

「じゃが、それで貴様を殺さないことは別問題じゃ」

「は?ふざけんじゃねぇよ!教えたら殺さねえって言ったじゃねぇかよ!」

「わしは『考える』と言っただけで、『殺さない』とは言ってないじゃろ?」

「このクソヤッ」

「来世ではもう少し賢く生きよ。もっとも、ここで死んで生まれ変わるかは謎じゃがの」

 

 人の肉を裂く感触が手に伝わる。記憶はないというのに、随分となれ親しんだ感触だ。

 しかし、これからどうするかのう。見知らぬ土地に、味方もなく、記憶もない。

 じゃが、覚えていることもある。

 己の所業と自身の名前。

 それだけ覚えていればいい。

 死んだとしてもわしは織田信長じゃ。

 ならば、この死後の世界で天下を取るのもまた一興。

 

 

 

 

 ……というか天下ってなんじゃ?無意識のうちに考えておったが、なんか良い言葉じゃな。

 まあ、記憶喪失だし是非もないよね!

 




ありそうでなかったので…
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